⇒ニュース走査

★1㌦=150円目前、「悪い円安」なのか「良い円安」なのか

★1㌦=150円目前、「悪い円安」なのか「良い円安」なのか

   ドル・円のレートが急激に円安・ドル高に振れていて、きょうは1㌦=149円になった。去年の終盤は1㌦=115円台だったので、30%ほど円安になった計算だ。メディア各社は、アメリカの長期金利が再び4%台に乗せたことで日米の金利差が拡大し、円売り・ドル買いの動きが加速したと伝えている。

   きょう午前中のNHKの国会中継。衆院予算委員会で野党の議員が日銀の異次元の金融緩和が円安を加速させていると、黒田東彦総裁の責任を問い質していた。以下。

階猛議員(立憲民主党):「日銀は円安を加速するような異次元の低金利をやってる。金融政策を正常化したり、あるいは柔軟化したりするためにも、今すぐ退くべきだと考えます。総裁、どうですか」
黒田総裁 :「ご指摘のような量的・質的金融緩和がまったく失敗したというのは事実に反する」
階議員 :「だから、辞めるか、辞めないか、どっちなんですか」
黒田総裁 :「辞めるつもりはありません」

   怒りを募らせたような野党議員の質問には前段があった。きのう17日の衆院予算委員会で、野党側の質問に、黒田総裁は「(物価の見通しについて)エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、年末にかけて上昇率を高める可能性が高い」「円安の影響によって輸入品価格が上昇していることが影響している」と答えていた。物価はまだまだ上がると、まるで他人事のような答え方だった。

   「良い円安」「悪い円安」といった議論が沸き起こっている。「良い円安」は、金利低下により住宅景気を押上げ、かつ企業の投資環境もよくした。 円安は海外への工場移転を停止させ、雇用を国内に戻す効果ある。さらに、 輸出競争力も高まる、といった論拠だ。

   一方、「悪い円安」は、日本からの輸出が多かった時代は円安のメリットはあったものの、産業構造が変わり、日本企業の製品の多くが海外で生産されるようになった現在ではそのメリットはない。8月の貿易収支は2兆8千億円の大幅赤字となっており、このまま貿易赤字が定着すれば、日本経済は窮地に立たされる、などの論拠だ。

   アメリカが利上げを続け、日銀が異次元緩和を続行すれば、1㌦=150円も単なる通過点だ。ただ、懸念されているアメリカの景気悪化が進行すれば、ドル安・円高に振れる可能性もあるだろう。先が読めない。

⇒18日(火)夜・金沢の天気    はれ

☆朝刊一面に踊る「統一」の文字

☆朝刊一面に踊る「統一」の文字

   読売新聞と日経新聞の朝刊一面の見出しに「統一」の文字が踊るように出ていた=写真=。読売は「台湾統一」と「旧統一教会」、日経は「台湾統一」の見出し。きょうのトップニュースはこれだ。

   5年に1度の中国共産党大会が16日、開幕した。党トップの習近平総書記(国家主席)は活動報告で、台湾統一について「必ず実現しなければならないし、実現できる」と語った。5年前の報告より大幅に表現を強めた。党大会では異例の3期目続投を決める見通し。習氏は超長期政権を視野に、台湾統一を事実上の「公約」に掲げたかたちだ(17日付・日経新聞)。

   約1時間45分の報告で人民大会堂にひときわ大きな拍手が起きたのが台湾統一の部分だった。習氏は「決して武力行使の放棄を約束しない」とも語り、台湾に軍事圧力をかけた(同)。

          中国はすでに新疆ウイグル自治区などでの人権問題で欧米など世界から厳しい視線が向けられている。台湾統一を公約にしたことで、世界との隔たりがさらに拡大するのではないか。これで世界経済はどうなる、か。

   世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)のさまざまな問題をめぐり、政府は宗教法人法に基づく調査に踏み切る方針を固めた。同法が規定する「質問権」を初めて行使する。組織の実態を調べた上で、裁判所への解散命令請求の適否を判断する構え(17日付・読売新聞)。岸田総理はようやく、腹をくくったのかとの思いがした。

☆物価高や旧統一教会問題 ズルズル下がる内閣支持率

☆物価高や旧統一教会問題 ズルズル下がる内閣支持率

   内閣支持率が急落している。共同通信社の世論調査(10月8、9日)を各紙が伝えている。それによると、岸田内閣を「支持する」は35%で、前回調査(9月17、18日)の40%を5ポイントも下回っている。「支持しない」は48%で、前回より2ポイント高まった。(※小数点以下は四捨五入)

   支持する理由については「ほかに適当な人がいない」が49%、また、不支持の理由は「経済政策に期待が持てない」36%とそれぞれ突出している。とくに、経済政策については前回より9ポイント増えている。この背景にあるのが物価高のようだ。値上げによる生活への打撃についての問いでは、「非常に打撃」19%、「ある程度打撃」60%で、8割が「打撃」と答えている。

   自身が注目したのは、北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射に関連する質問だった。問いでは「政府は、外国からミサイル攻撃を受ける前に、相手国のミサイル発射基地などを攻撃する『敵基地攻撃能力』の保持を検討しています」との説明で、賛否を尋ねている。「賛成」が54%、「反対」が38%となっている。弾道ミサイル発射は9月25日以降7回目、そして、調査期間中のきのう9日未明にSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの発射があり、急激高まった世論の危機意識のあらわれとも言える。

   関連して、「日本の防衛費をどうするべきか」との問いでは、「大幅に増やす」11%、「ある程度増やす」45%、6割近くが増額と答えている。「今のままでいい」は31%、「ある程度減らすべき」7%、「大幅に減らすべき」3%と4割が現状ないし減額と答えている。これは、防衛費より物価高対策にお金を回せとの民意のようにも読める。

   安倍元総理の国葬(9月27日)についての問い。「全額を国費で負担しました。あなたは安倍氏の国葬実施を評価しますか」では、「評価しない」39%、「どちらかといえば評価しない」23%、と評価しないが6割を占めている。一方、「評価する」13%、「どちらかといえば評価する」26%だった。積極的な意見だけを取り上げれば、「評価しない」が「評価する」の3倍となる。

   連日のようにメディア各社が、政治家と世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の関係を取り上げている。「自民党は旧統一教会と党所属の国会議員との関係を調査し公表しました。あなたは、自民党の対応が十分だと思いますか」との問いでは、「十分ではない」が83%で、前回調査の80%よりさらに増えている。また、「細田衆院議長は、旧統一教会側との関係を自民党調査の発表後に相次いで公表しました。あなたは、細田氏の説明は十分だと思いますか」の問いでは、「十分ではない」が87%だった。旧統一教会に対する厳しい世論の風当たりが政治に向かって吹き続けている。

   共同通信の前々回調査(8月10、11日)では54%あった内閣支持が今回と比べると19ポイントも落ちている。物価高や旧統一教会問題に対して有効な手が打てず、現状の「ズルズル内閣」では、次回は20%台ではないかと憶測してしまう。

⇒10日(月・祝)午後・金沢の天気    あめ 

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

★SLBMを繰り返す北朝鮮の執念「瀬戸際戦略」

   今度は海からの弾道ミサイルの発射だ。防衛省公式サイト(9日付)によると、北朝鮮はきょう未明、午前1時47分と同53分の2回、半島東岸付近から東方向に向けてそれぞれ1発の弾道ミサイルを発射した。2発とも最高高度は100㌔程度で、約350㌔飛翔したものと推測される。ことし5月7日にも半島東岸付近から、1発のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射している。今回も、海岸付近という発射場所などから、SLBMの可能性が高い。弾道ミサイル発射は9月25日以降7回目(計12発)だが、未明の発射は初めて。

   去年10月19日にも半島東部の潜水艦の拠点となっている新浦(シンポ)付近から、SLBMを東方向に発射させている。このときの労働新聞(同20日付)は「조선민주주의인민공화국 국방과학원 신형잠수함발사탄도탄 시험발사 진행」(国防科学研究所が新型潜水艦発射弾道ミサイルを試験打ち上げ)の見出し=写真=で、2016年7月9日にSLBM「北極星」を初めて発射した潜水艦から再び新型SLBMの発射に成功し、国防技術の高度化や水中での作戦能力の向上に寄与したと記事を掲載している。

    防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(令和4年度版)によると、北朝鮮は弾道ミサイルを発射可能な潜水艦を1隻保有し、その潜水艦にはSLBM1発が搭載可能。さらに、北朝鮮はより大きな潜水艦の開発を追求しているとの指摘もある。例えば、北朝鮮メディアは金総書記が「新たに建造された潜水艦」を視察したと発表(2019年7月)している。これは、通常の攻撃用潜水艦(24隻)を改造して、SLBMを3発搭載可能にするという指摘もある。SLBM搭載の潜水艦の開発は、弾道ミサイルによる打撃能力の多様化のほか、敵からの攻撃に対して残存性が高いため報復攻撃を狙っているとされる。

          「残存性」を別の言葉で解釈すれば、敵に対してはSLBMでしつこく攻撃する、復讐を繰り返す、そんな意味だろう。北朝鮮の「瀬戸際戦略」の執念がここに見えるようだ。

⇒9日(日)午後・金沢の天気   あめ

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

   国連安保理が事実上の機能不全に陥っているが、きのう6日朝の北朝鮮の弾道ミサイルの発射はそれに付け込んだかのようなタイミングだった。国連安保理は、北朝鮮が4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルを発射したことを受けて緊急会合を開いた。その会合の終了間際に、北朝鮮が日本海に向けて発射したのだ(6日付・NHKニュースWeb版)。

   会合そのものも、常任理事国である中国とロシアが「朝鮮半島周辺でアメリカが日本や韓国と軍事演習を行い緊張を高めた結果だ」と反発したことから、アメリカやヨーロッパの各国と一致して安保理決議違反であるとの声明を出すことはできなかった(同)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   そもそも、中国とロシアがなぜ国連安保理の常任理事国なのか。中国の場合。もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れる。アメリカのニクソン大統領の中華人民共和国への訪問が公表され、国際社会がにわかに動いた。1971年10月のいわゆる「アルバニア決議」によって、国連における中国代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。代わって中国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。では、常任理事国として相応しいとする正当性はどこにあったのだろうか。

   ロシアも同じだ。もともと、戦勝国であるソビエトが崩壊した。それを、ロシアが常任理事国として拒否権を持ったまま引き継いでいる。それが、ウクライナ侵攻やウクライナ4州併合という行為があっても国連安保理は機能不全、という現実問題を生み出している。

   解せないもう一つの国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。北朝鮮やロシア、中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。

   日本人にはある意味で「国連離れ」という現象が起きている。データは少々古いが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は2020年10月、国連の実績について先進14ヵ国で実施した世論調査を発表している。その中で、日本は国連に対する好感度は14ヵ国中で最も低く、「好感を持つ」29%、「好感を持たない」55%だった。

   アメリカでも国連に対する評価は低下している。ピュー・リサーチ・センターがことし6月に発表したアメリカ国内調査では、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

(※写真は、国連安全保障理事会の会議室。バックの壁画はノルウェーの画家ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥」=国連広報センター公式サイト)

⇒7日(金)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆異例の代表質問で議長沈黙 また弾道ミサイルが

☆異例の代表質問で議長沈黙 また弾道ミサイルが

   衆議院の「TVインターネット審議中継」の公式サイトにはライブラリー映像が掲載されている。参院選後で初の国家論戦なので、まさに安倍元総理の国葬や世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)と政治家の関係をめぐる不透明な関係をめぐって、追及する野党側の質問も熱を帯びて、言葉はふさわしくないかもしれないが、まるで「国会ワイドショー」の様相だ。

   きのうの衆院代表質問で立憲民主党の泉代表は、本来ならば岸田総理の所信表明演説に対する質疑となるが、矢面に立ったのは細田議長だった=写真・上=。旧統一教会の関連団体の会合に4回出席し、地元の島根1区で選挙支援を受けたことをA4用紙一枚でまとめ、記者に配布していた(9月29日)。ところが、その後も教団組織票の差配などの証言が次々と出ている。

   泉代表は真後ろの議長席を見上げて、細田議長に異例の質問を浴びせた=写真・下=。「細田議長、あなた自身その中心人物として、4つの会合への出席、関連団体の名誉会長就任、選挙の支持を得ていた、これを認めましたね。今うなずいていただきましたね」

   さらに、「あなたが示した一枚紙では全く説明不足で、もっと真相を語るべきです。議長、答弁していただけませんか。答弁できぬようでしたら、しぐさで答えていただきたい」と。質問は続く。「パーティー券の購入はありませんか。関連イベントの挨拶で『安倍総理にさっそく報告したい』。議長はこのように発言していました。その後の報告は、なされましたか」

   代表質問では議長に対する質疑をもともと想定していないので、細田議長は終始沈黙していた。ただ、臨時国会では物価高・インフレ対策など難問が山積している。重要な国会がこのあり様でよいのか。

   反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査と警察による情報収集で実態解明に着手すること。その上で、問題が露呈すれば非課税などの優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討すると総理が有権者に公約すればよい。信頼回復を急ぎ、本来の難問に議論を深めてほしい。 

   きょうも北朝鮮は午前6時と同15分の2回、弾道ミサイルを計2発発射した(6日付・防衛省公式サイト)。2発は飛翔距離が800㌔と推定され、日本のEEZ近く落下した。EEZ内では能登半島から漁船が出て、スルメイカのイカ釣り漁が行われている。北朝鮮の弾道ミサイルから安全操業をどう守るのか、早急に国会で議論してほしい。

⇒6日(木)午前・金沢の天気    くもり

★北朝鮮の挑発的な弾道ミサイル ロシアの終末的な核兵器

★北朝鮮の挑発的な弾道ミサイル ロシアの終末的な核兵器

   強烈なバトルとなるのか。NHKニュースWeb版(5日付)によると、きのう北朝鮮が中距離弾道ミサイル1発を発射したことへの対抗措置として、韓国軍とアメリカ軍はきょう未明に日本海に向けて地対地ミサイル4発を発射した。韓国軍が公開した映像では、移動式発射台から激しい光と煙を伴って発射されたミサイルが上昇していく様子が確認できる。米韓両軍による北朝鮮への対抗措置は、6月5日に短距離弾道ミサイルを8発発射したときも行っている。

   BBCニュースWeb版(5日付)=写真=も「North Korea fires ballistic missile over Japan」の見出しで日本列島を越えた北朝鮮の中距離弾道ミサイルの発射を伝えている。記事では、「Japan issued an alert to some citizens to take cover.」と、日本でのJアラートによる避難勧告の様子も伝えている。

   それにしても、世界の人々がこの北朝鮮の弾道ミサイルのニュースに接してどのような印象を抱いただろうか。日本を含め東アジアは戦争状態になりつつある、と。おそらく、インバウンド観光などへの影響も今度出てくるのではないだろうか。

   ここは終末期のバトルの様相だ。共同通信Web版(5日付)は、イギリスの『タイムズ(The Times)』の記事を引用して、ロシアのプーチン大統領がウクライナとの国境近辺で核実験を計画し、核兵器を使う意志を示そうとしているとの見方があり、NATOは加盟国に警告した、と報じている。その根拠として、ロシア国防省で核兵器の管理を担う秘密部門に関連があるとみられる列車がウクライナ方面に向けて動き出した、と報じている。

   プーチン氏はウクライナ侵攻についてのテレビ演説(9月22日)で、「西側諸国によるロシアへの核の脅威」と述べ、「反撃すべき兵器を多く持っている」「わが国の領土保全が脅かされるとき、ロシアと国民を守るために、ロシアが持つすべての手段を用いる。はったりではない」と発言していた(同日付・BBCニュースWeb版)。

   「はったりではない」とすれば、いよいよ本気だ。核兵器の使用がヒロシマとナガサキに続き現実となるのか。国連安保理が機能しない、混沌とした21世紀を象徴する展開となるのか。

⇒5日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

☆挑発のレベル高める北の核・弾道ミサイル

☆挑発のレベル高める北の核・弾道ミサイル

   北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたびにこのブログで取り上げている。だから分かることがある。この10日間で5回(9月25日、28日、29日、10月1日、4日)合計8発、これほど頻繁な発射はある意味で異常な事態だ。この国は何を企んでいるのか。

   防衛省公式サイトによると、北朝鮮はきょう4日午前7時22分ごろ、北朝鮮内陸部から東に向けて弾道ミサイル1発を発射した。同28分から29分ごろに青森県上空を通過した後、同44分ごろに太平洋上の日本のEEZの外に落下した。最高高度は1000㌔、飛翔距離は4600㌔と推定される。日本政府は、Jアラート(全国瞬時警報システム)で、北海道と青森を対象に警戒を呼びかけた。

   日本列島の上空を通る弾道ミサイルを発射したのは、2017年9月15日以来となる。このとき発射されたのは、北朝鮮が「火星12」と称していた中距離弾道ミサイルで、北海道の襟裳岬の上空を通り、飛翔距離は3700㌔だった。同年8月29日に発射した中距離弾道ミサイルもほぼ同じ北海道上空を通る飛行コースだった。憶測だが、北朝鮮は東北地方から北海道の上空を中距離弾道ミサイルの「発射実験ル-ト」として設定しているのではないか。航空機や船舶はもとより、上空を弾道ミサイルが通過したと判断される地域の安全確保の観点からも極めて問題のある行為だ。

   いったい何を想定して今回、中距離弾道ミサイルを発射したのか。飛翔距離は4600㌔だ。距離としてはこれまでの弾道ミサイルで最長と言える(防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」より推定)。この射程内には、アメリカ軍のアジア太平洋地域の戦略拠点であるグアムがすっぽりと入る。核弾頭が搭載でき高いステルス性能を持つB2戦略爆撃機などが展開するアンダーセン基地がある。

   さらに、北朝鮮にとっては、中距離弾道ミサイルと核実験はセットとも言える。別の言い方をすれば、「車の両輪」である。2017年9月15日の中距離弾道ミサイル発射の前の同月3日に6回目となる核実験を豊渓里(プンゲリ)で行っている。このとき、北朝鮮は「ICBMに搭載可能な水爆実験に成功」と発表している。推測の域を出ないが、今回も核実験が伴うのではないか。

   ここ10日間で、迎撃が困難とされる変則軌道の短距離弾道ミサイル、そして4600㌔という最長距離の中距離弾道ミサイルを発射させた。今後の展開はICBMなのかと憶測する。ことし3月24日に新しいICBM「火星17型」の発射させ、「実験は成功した」と公表している。このときは、最高高度は6248.5㌔に達し、1090㌔の距離を67分32秒飛行した。角度を変えて発射すれば1万5000㌔を超える射程距離となり、アメリカの東海岸を含む全土が射程内に入る(当時の岸防衛大臣の会見)。北朝鮮による挑発のレベルが高まっている。

(※写真・上は過去の中距離弾道ミサイルの発射、写真・中は今回の推定される飛行ルート、写真・下は北朝鮮の弾道ミサイルの射程=出典は防衛省資料「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」ほか)

⇒4日(火)午後・金沢の天気   くもり 

★1週間で4回の弾道ミサイル発射 狙いはどこに

★1週間で4回の弾道ミサイル発射 狙いはどこに

   10月に入った途端にこのニュース。防衛省公式サイトによると、北朝鮮はきょう1日午前6時42分と同58分に平壌近くの半島西岸付近から、計2発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。いずれも最高高度50㌔程度で、飛距離は400㌔程度と350㌔程度と見られ、落下は日本のEEZ外だった。この1週間で4回(25日、28日、29日、1日)合計7発の弾道ミサイルを発射している。この間で行われてきた米韓、あるいは日米韓の合同訓練をけん制する狙いがあるにしても、頻繁だ。何に執着しているのか。

   前回ブログをアップして、ふと気が付いたことがある。防衛省サイトで一連の弾道ミサイルの落下場所(想定)を見ると、核実験がこれまで行われてきた北朝鮮北東部にある豊渓里(プンゲリ)と近い。9月28日に発射された弾道ミイサルは2発。午後6時10分の弾道ミサイルは最高高度約50㌔程度の低い高度で、約350km程度飛翔。午後6時17分の弾道ミサイルも最高高度約50㌔程度の低い高度で、約300㌔程度飛んだとみられる。その発射場所と落下場所を防衛省は略図で示している。落下場所は上の図の豊渓里ととても近いことが見て取れる。

           落下場所は日本海とされているが、それにしても豊渓里と一部重なっているようにも見える。あと3回の弾道ミサイルの落下場所をチェックしても、この豊渓里がある咸鏡北道の沖合になる。韓国の中央日報Web版日本語(29日付)は、28日の弾道ミサイルは2発ともに咸鏡北道吉州郡沖の無人島に向けて発射したと報じている。

   無人島という目標地に確実に着弾するか、弾道ミサイルの精度を試す目的があったのだろうか。以下はあくまでも憶測だが、とすれば、これは単に米韓、あるいは日米韓の合同訓練へのけん制ではなく、攻撃目標を見定めた上での着弾実験ではないか。それにしても、豊渓里と近い。ほかに意図があるのだろうか。見ようによっては、はやく核実験を行えと催促しているようにも読める、のだが。

⇒1日(土)午前・金沢の天気    はれ

☆弾道ミサイルの次は核実験なのか 北朝鮮の思惑は

☆弾道ミサイルの次は核実験なのか 北朝鮮の思惑は

   連日の弾道ミサイルの発射だ。防衛省公式サイトによると、北朝鮮は29日午後8時47分と同53分に平壌近くの半島西岸付近から、計2発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。いずれも最高高度50㌔程度で、300㌔程度飛翔したと見られ、落下は日本のEEZ外だった。前日28日にも午後6時10分と17分に計2発の弾道ミサイルを発射している。

    連日の弾道ミサイルの発射についてメディア各社は、29日にアメリカのハリス副大統領が韓国入りし、尹大統領と会談した後、南北の軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)を訪れたことから、北朝鮮が強くけん制したと報じている。

   そして、もう一つの理由が、きょう30日に日本海で行われる日米韓3ヵ国の共同訓練へのけん制だ。NHKニュースWeb版(29日付)によると、海上自衛隊の護衛艦1隻、アメリカ海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」や潜水艦など5隻、韓国海軍の駆逐艦1隻が参加する。訓練は潜水艦を探索・識別・追跡しながら、情報を相互交換する形で行われる。日米韓の海上共同訓練は2017年12月以来となる。

   この対潜水艦の共同訓練は明らかに、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を想定したものだろう。防衛省サイトによると、北朝鮮は「新型潜水艦発射弾道弾」と称するSLBMをこれまで2021年10月19日と2022年5月7日に2度発射させている。SLBMは変則的な軌道で、低高度(最高高度50㌔程度)を飛ぶため、ミサイル防衛システムによる迎撃は困難とされる。

   日本海側に住む者として、SLBMもさることながら、さらに懸念するのは北朝鮮による核実験だ。IAEAのグロッシ事務局長が警告しているように、北朝鮮北部の豊渓里(プンゲリ)の核実験場の坑道の1つが再び開かれ、核実験の可能性が高くなっている(6月7日付・NHKニュースWeb版)。プンゲリでは2006年10月9日に最初となる核実験が行われ、2017年9月3日までに6回行われている。長崎大学核兵器廃絶研究センター公式サイトによると、6回目のとき、北朝鮮は「ICBMに搭載可能な水爆実験に成功」と発表している。このとき、核実験の地震規模は最大でマグニチュード6.3だった(米国地質調査所)。

   では、核実験はいつ行われるのか。韓国メディアは、10月16日に開催される中国共産党第20回党大会以降から11月8日のアメリカ中間選挙の間に行う可能性が高いと報じている(29日付・ハンギョレ新聞Web版)。ただ、北朝鮮では、「建国以来の大動乱」と称された新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大で国全体が混乱し、農作物の不作で食糧難と飢えがまん延しているとも言われる。このような状況の中でも、最高権力者には核実験を実行するモチベーションがあるのかどうか。

⇒30日(金)午後・金沢の天気    はれ