⇒ニュース走査

☆コロナ感染の実態伝えない中国 世界の不信感は募る

☆コロナ感染の実態伝えない中国 世界の不信感は募る

   WHOは中国に対して、新型コロナウイルス感染が拡大しているにもかかわらず、死者数などを過少に報告していることに苛立っている。WHO公式サイト(4日付)によると、WHO担当者が先月30日、感染者の入院やワクチン接種などのデータを定期的に共有するよう中国側に要請。中国と国際社会の医療の効果的な対応のためにもデータ公表が重要だと強調していた。にもかかわらず、中国側は真摯に対応しようとしていない。

   テドロス事務局長の記者会見(今月4日)からもその様子がうかがえる。「WHO is concerned about the risk to life in China and has reiterated the importance of vaccination, including booster doses, to protect against hospitalization, severe disease, and death.(意訳:WHOは、中国での生命に対するリスクを懸念しており、入院、重症疾患、死亡から保護するために、追加接種を含むワクチン接種の重要性を繰り返し表明している)」(WHO公式サイト)

   なぜ中国は正確な数字を把握して世界に公表しないのか。世界各国は不信の念を抱かざるを得なくなる。さらに、中国国家衛生健康委員会は先月25日、感染者と死者の人数公表を同日から取りやめた(同25日付・時事通信Web版)。これを契機に世界各国は水際対策を取ることになる。中国では今月21日から旧正月・春節の大型連休が始まり、中国から観光の渡航者が増えるからだ。

   日本は先月30日から水際対策を実施。今月8日からは精度の高いPCR検査や抗原定量検査に切り替える。韓国と台湾、フランス、イタリアもすでに入国時の検査。アメリカとイギリス、カナダ、オーストラリアはきょう5日から実施している。EUは加盟国に対して、中国渡航者から出発前の陰性証明の提示を求めることを勧告している。

   こうした各国の水際措置に対して、中国は反発している。BBCニュースWeb版日本語(12月29日付)=写真=によると、中国外務省の汪文斌報道官は記者会見(同28日)で、中国の感染状況について西側諸国とメディアが誇張し、ねじまげて伝えていると非難。「コロナ対応は科学的根拠に基づいた、適切なものであるべきで、人的交流に影響をおよぼしてはならない」「安全な越境移動を確保し、世界の産業サプライチェーンの安定性を維持し、経済の回復と成長を促進するための共同努力が必要だ」と述べた。

   述べている内容には間違いはないものの、数字をねじまげて伝えたのは中国側であり、数字の公表を取りやめたことに世界は不信感を抱いている。2020年の春節で中国が行動制限をしなかったことから、パンデミックが拡大した。世界各国はそのことを教訓として警戒している。

⇒5日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆世界史に残る ゼレンスキーお馴染みの姿でホワイトハウス訪問

☆世界史に残る ゼレンスキーお馴染みの姿でホワイトハウス訪問

   まるでスパイ大作戦のようなシナオリだ。メディア各社の報道によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は今月21日、お馴染みのオリーブグリーンのトレーナーと同色のパンツ姿でホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と会談した。会談後、バイデン氏は新たに地対空ミサイルシステム「パトリオット」や航空機搭載の精密誘導弾などの軍事支援、人道的支援を表明した。(※写真は、会談後の共同記者会見の模様=ホワイトハウス公式サイトより)

   このニュースを見て、多くの視聴者は「アメリカの大統領と会談するのだから、スーツにネクタイではないのか」とちょっとした違和感をおぼえたに違いない。自身もそうだった。軍事支援を得るための依頼の訪問であればなおさらだろう、と。ただ、逆に考えると、スーツにネクタイだったら、戦うウクライナ国民のモチベーションは下がったかもしれない。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、ゼレンスキー氏はスーツとネクタイを脱ぎ捨て、ロシア軍と戦っている兵士たちと近い服装に着替えることで、国民との団結を示してきた。その姿勢は侵攻から300日を超えたいまも一貫している。

   そのゼレンスキー氏がスーツとネクタイに着替えてバイデン氏と会ったら、自国民も世界の人たちも「物乞い」の印象を抱いたかもしれない。それにしても、どのようなルートで訪米が可能になったのだろうか。BBCニュースWeb版(23日付)は「How did President Zelensky get to Washington?」の見出しで、その移動ルートを伝えている。以下要約。

   21日未明にウクライナ国境から夜行列車で10㌔のポーランド南東部プシェミシルの駅に到着。アメリカ側が手配した車で90分ほどかけて、ジェシュフ空港に到着した。アメリカ空軍の輸送機ボーイングC40Bに搭乗して、ワシントン近郊のアンドルーズ基地に向かった。アメリカのF15戦闘機が護衛した。北海上空ではロシアの潜水艦からの砲撃を警戒して、NATOの偵察機が監視。離陸からほぼ10時間後、ワシントンの正午ごろに到着した。ホワイトハウスは出国が確認できるまで、ゼレンスキー氏の公式訪問の公式発表を控えていた。

   ヘタに移動すれば暗殺のリスクもあったに違いない。一国の大統領が他国を訪問するために秘密裡に夜行列車に乗り、搭乗した飛行機を戦闘機が護衛するという緊張感にこそ、一触即発のキナ臭さが漂う。そして、お馴染みの服装でホワイトハウスを訪問したゼレンスキー氏の姿は世界史に残るのではないだろうか。

⇒25日(日)午後・金沢の天気   くもり時々みぞれ

★雷鳴とどろくJPCZの朝

★雷鳴とどろくJPCZの朝

   朝から雷鳴が響き渡たり、自宅周辺の積雪は15㌢ほどになっている=写真・上=。この時季の積雪をともなう雷を北陸では「雪出しの雷」や「雪おこしの雷」と言う。ちなみに、気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1991-2020年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の45.1日だ。12月から2月にかけての冬場に多い。いよいよ来たか冬将軍。

   問題はこの冬の積雪量だ。気象予報士が大雪の予想でキーワードとしてよく使うのが「ラニーニャ現象」。同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象をいう。ラニーニャの年には豪雪がやってくる。あの1981年の「五六豪雪」も1963年の「三八豪雪」もラニーニャだったと言われている。

   さらに近年よく使われるキーワードが「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」だ。シベリアから寒気団が日本海に向かって流れてくる際に朝鮮半島北部の白頭山によって、いったん二分されるが、その風下で再び合流し、雪雲が発達しやすい収束帯(ライン)となって北陸地方などになだれ込んでくる。2021年1月にJPCZが若狭湾付近に停滞して大雪が降り続き、福井県の北陸自動車でおよそ1600台が2日間動けなくなったことが連日ニュースとなった。

   今回の降雪もこのJPCZの影響のようだ。NHKニュースWeb版(19日付)によると、強い冬型の気圧配置はきょうも続き、北日本から西日本の日本海側を中心に雪が続く見通し。とくに東北南部や北陸は夕方にかけてJPCZの影響で、局地的に雪雲が発達し、平地でも大雪となるおそれがある。あす20日昼までの24時間に降る雪の量はいずれも山沿いの多いところで、新潟県で70㌢、東北と北陸で50㌢と予想されている。

   話はがらりと変わる。北朝鮮はきのう18日、半島西岸から日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射した。最高高度は550㌔程度で、500㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下したと推測される。きょうの北朝鮮の国営メディア「労働新聞」Web版は「국가우주개발국 정찰위성개발을 위한 중요시험 진행」の見出しで 宇宙開発事業団の偵察衛星開発のための重要な試験を実施したと報じている=写真・下=。

   実験では、宇宙環境における撮影やデータ転送の技術で「重要な成果」を得たとし、2023年4月までに「軍事偵察衛星1号機の準備を終える」と報じている。偵察衛星の打ち上げなのか、あるいは、それを名目とした事実上の長距離弾道ミサイルの開発なのかは定かではない。ただ、この記事では、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有などを明記した日本の安全保障関連3文書改定には触れていない。

⇒19日(月)午後・金沢の天気    ゆき

☆北朝鮮また弾道ミサイル 「反撃能力」への反発なのか

☆北朝鮮また弾道ミサイル 「反撃能力」への反発なのか

   北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射した。防衛省公式サイトによると、北朝鮮はきょう18日午前11時11分と52分の2回、朝鮮半島西岸から日本海に向けて弾道ミサイルをそれぞれ1発発射した。2発とも最高高度は550㌔程度で、500㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下したと推測される。弾道ミサイルの発射は11月18日にICBMを1発を発射して以来で、ミサイル発射はことし35回目となる。

   日本海側に住む者として、北朝鮮の弾頭ミサイルの発射に注視している。そこで思うことは、35回という頻度もさることながら、着実に弾道ミサイルの性能を高めているということだ。先月18日のICBM「火星17型」の発射では、北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央テレビ」「労働新聞」は金正恩総書記の「世界最強の戦略兵器としての威力ある性能が検証された」と成果を誇示するコメントを出した。同時に、白の防寒ジャケットに身を包んだ娘が金総書記と手をつないで兵器の前を歩く姿も掲載した。(※写真は11月19日付・CNNニュースWeb版日本語より)

   また、今月15日に金総書記の立ち会いのもと大出力の固体燃料エンジンの燃焼実験に初めて成功したと発表している。固体燃料ロケットは、北朝鮮がこれまでのICBM発射実験で使用した液体燃料ロケットよりも安定性に優れ、ICBMをより容易に移動することが可能で、打ち上げにかかる時間も短縮できるとされる。北朝鮮は2021年からの「国防5ヵ年計画」で固体燃料のICBM開発を重点目標に掲げており、金総書記は今回の実験で「優先課題実現に向けた重大問題を解決した」と強調した(今月16日付・産経新聞Web版)。

   きょうの発射の目的は何だったのか。共同通信Web版によると、韓国メディアは、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有などを明記した日本の安全保障関連3文書改定に対して北朝鮮が反発した可能性があると伝えているようだ。北朝鮮の国営メディアはあすどう伝えるのか。反撃能力に対する反発なのか、あるいは固体燃料ロケットの実用化に向けた試射なのか。

⇒18日(日)夜・金沢の天気   ゆき

★ロシアのICBMに「反撃能力」は可能なのか

★ロシアのICBMに「反撃能力」は可能なのか

   政府はきのう、敵のミサイル発射拠点などを攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記した安全保障関連3文書を閣議決定した。北朝鮮による弾道ミサイル発射、ロシアのウクライナ侵攻、中国による尖閣諸島周辺への領海侵入など、隣国による安全保障面の脅威は増している。

   たとえば、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディア(4月4日付)で「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べたことが、日本でも報道された。プーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と称して偽旗を掲げて侵攻を始めたように、「北海道の権利」の奪還に動くかもしれないと憶測を呼んだ。

   ロシア軍は今年9月1日から7日に、北方領土や日本海、オホーツク海など極東各地で戦略的軍事演習「ボストーク(東方)2022」を実施した。中国やインドなど14ヵ国の兵員5万人が参加。さらに、9月下旬から1ヵ月ほどかけて、中国海軍とロシア海軍の艦船計7隻が日本列島を半周した。

   問題はここからだ。ことし4月20日にロシアがカムチャッカ半島にICBMを撃ち込んでいる。ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型のICBM「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場の目標に命中したと発表した(4月21日付・NHKニュースWeb版)。BBCニュースWeb版はロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真=。

   読売新聞Web版(4月21日付)によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   以下、素人の目線だ。カムチャツカ半島の目標にICBMを撃ち込めるのであれば、目標を北海道に設定することも可能ではないか。ロシアが「北海道の権利」の奪還という偽旗作戦を掲げて動き、プレセツク宇宙基地の発射場に再びICBMを構えた場合、日本の反撃能力は可能なのだろうか。

⇒17日(土)夜・金沢の天気   あめ

☆日本の「反撃能力」と北朝鮮の「固体燃料ロケット」

☆日本の「反撃能力」と北朝鮮の「固体燃料ロケット」

   日本海側に住んでいると、北朝鮮の動きが気になる。先月18日に平壌近郊から、1発のICBM級弾道ミサイルを発射し、北海道の渡島大島の西方約200㌔の日本海、EEZ内に着弾させている。飛翔距離は約1000㌔、また最高高度は約6000㌔で、弾頭の重さによっては、射程は1万5000㌔を超えてアメリカ全土に届くと推定されている。

   CNNニュースWeb版日本語(16日付)によると、北朝鮮はきょう新型の固体燃料ロケットエンジンのテストに成功したと発表した。これにより金正恩総書記は将来、より迅速かつ確実にICBMを発射できるようになる可能性がある、と報じている。固体燃料ロケットは、北朝鮮がこれまでのICBM発射実験で使用した液体燃料ロケットよりも安定性に優れ、ICBMをより容易に移動させられるうえに、打ち上げにかかる時間も短縮できるとされる。

   北朝鮮は2021年からの「国防5ヵ年計画」で固体燃料のICBM開発を重点目標に掲げており、金総書記は今回の実験で「優先課題実現に向けた重大問題を解決した」と強調した(16日付・産経新聞Web版)。

   政府はきょうの臨時閣議で「国家安全保障戦略」など新たな防衛3文書を決定した。敵の弾道ミサイル攻撃に対処するため、発射基地などをたたく「反撃能力」の保有が明記され、日本の安全保障政策の大きな転換となる(NHKニュースWeb版)。「反撃能力」は「敵基地攻撃能力」とも呼ばれる。このため、国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」の改良型の開発・量産や、アメリカの巡航ミサイル「トマホーク」の取得など、防衛力の抜本的な強化策を盛り込んでいる。

   先の北朝鮮のニュースと照らし合わせすると、反撃能力はどこまで効果があるのか。固体燃料ロケットの開発でICBMをより容易に移動することができるとなれば、敵基地攻撃は意味を成すのだろうか。分かりやすく言えば、移動したICBMを追尾し、発射前にたたくことはできるのだろうか。

(※写真はことし3月24日に北朝鮮が打ち上げた新型ICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版)

⇒16日(金)夜・金沢の天気    くもり

★五輪めぐる汚職事件は「個人的な問題」なのか

★五輪めぐる汚職事件は「個人的な問題」なのか

   電通の元専務もある高橋容疑者はオリンピックそのものを誘致するロビイストだった。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、五輪招致をめぐり高橋容疑者が招致委員会から820万㌦の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じた。IOC委員に対するロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていて、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長は2019年6月に退任している。

★アワビの危機にどう取り組むのか 舳倉島の海女たち

★アワビの危機にどう取り組むのか 舳倉島の海女たち

   日本海に突き出た能登半島の尖端・輪島市のさらに49㌔沖合に舳倉島(へぐらじま)という周囲5㌔ほどの小さな島がある。アワビが採れる島で「海女の島」として知られる。自身も記者時代に海女さんたちを取材に島に何度も訪れた。輪島市や舳倉島を拠点に現在でも200人ほどの海女さんがいる。ウエットスーツ、水中眼鏡、足ひれを着用して、素潜り。採れたアワビは「海女採りアワビ」としてブランド化されていて、浜値で1㌔1万円ほどの値がする。

   アワビ漁では、海女さんたちが自主的に厳しいルールをつくっている。アワビの貝の大きさ10㌢以下のものは採らない。アワビとサザエの漁期は7月1日から9月30日までの3ヵ月。海に潜る(磯入り)の時間は、午前9時から午後1時までの4時間と制限している。さらに、休漁日はすべての海女が一斉に休む。こうしたルールを互いに守ることで、持続的なアワビ採りの恩恵にあずかっている。

   舳倉島にはアワビの長い歴史がある。万葉の歌人・大伴家持が越中国司として748年、能登を巡行している。島に渡っていないが、詠んだ歌がある。「沖つ島 い行き渡りて潜くちふ あわび珠もが包み遣やらむ」。沖にある舳倉島に渡って潜り、アワビの真珠を都の妻に送ってやりたい、との意味だ。この和歌から分かることは、1270年余り前からこの島ではアワビ漁が連綿と続いたということだ。  

   世界の野生生物の絶滅のリスクなどを評価しているIUCN(国際自然保護連合、本部=スイス・グラン)の公式サイトによると、世界に54種あるアワビのうち、日本で採取されている3種(クロアワビ、マダカアワビ、メガイアワビ)を含め20種について、「絶滅の危機が高まっている」として新たにレッドリストの絶滅危惧種に指定した。

   公式サイトの事例によると、アワビは日本だけでなく世界でも高級食材であり、南アフリカでは犯罪ネットワークによる密猟で壊滅的な打撃を受けている。さらに、「海洋熱波」によりアワビが食物としている藻類が減り、西オーストラリア州の最北端では大量死。また、農業および産業廃棄物が有害な藻類の繁殖を引き起こしていて、カリフォルニアとメキシコ、イギリス海峡から北西アフリカと地中海にかけてはアワビの病弱化が報告されている。

   このアワビ激減の対応策として、IUCN研究員は「養殖または持続可能な方法で調達されたアワビだけを食べること。そして、漁業割当と密猟対策の実施も重要です」と述べている。

   先に述べた舳倉島でもクロアワビ、マダカ、メガイの3種が採れているて、昭和59年(1984)の39㌧の漁獲量をピークに右肩下がりに減少し、近年では2㌧ほどと20分の1に減少している。このため、島に禁漁区を設け、種苗の放流、アワビを捕食するタコやヒトデなどの外敵生物の駆除作業などを行っている。今回のIUCNによるレッドリスト化によって、海女さんたちは今後さらにどのような取り組みを進めるのか。海の生態系から得られる恵み、「生態系サービス」の視点からも海女さんたちの取り組みが国際的にも注目されるのではないだろうか。

⇒10日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆「信教の自由」名目の搾取、ネグレクト、信仰的な強制

☆「信教の自由」名目の搾取、ネグレクト、信仰的な強制

   旧統一教会の被害者救済を図る法案について、きょう参院消費者問題特別委員会で参考人質疑が行われた。NHKニュースWeb版(9日付)によると、「小川さゆり」の名前で被害を訴えている宗教2世の女性は「裁判で実効性を伴うのか検証するとともに、見直し期間を1年にし、検討部会を今すぐ立ち上げてほしい。最大の積み残しは子どもの被害が全く救済できないことだ。新法は献金の問題を解決しようとするものだが、問題はそれだけではない」と指摘し、「これだけ悪質な団体が活動の一時停止もなく、税制優遇を受けていることはあってはならない。政府として責任を果たし、早急な対応をお願いしたい」と訴えた。

   小川さんの意見陳述の全文が朝日新聞Web版(9日付)で掲載されている。驚愕する内容だ。以下。

「幼少期から学生時代にかけて、貧しい暮らしを強いられ、親戚からのおこづかい、お年玉をもらっても没収され、親からも当然ありませんでした。誕生日、クリスマスプレゼント、小学校の卒業アルバムなどはお金がないため、買ってもらえませんでした。

 服はお下がりで、美容院等へは行かせてもらえず、小学校1年生の頃から見た目のまずさからいじめに遭いました。20歳の成人式にいたっては興味がないと言われ、してもらえませんでした。

 両親が親戚中を勧誘したり、お金を要求したり、そのことで怒られているところも見てきました。また、高校生から始めた5年間のアルバイト代200万円ほどの給与も没収され、一度も返ってきませんでした。

 両親はこのような生活状況にもかかわらず、私たちきょうだいに一切相談なく、教会への高額な献金を繰り返してきました。そういった献金につながる教育は幼少期から強制的に行われていきます」

   さらに強烈な証言を小川さんは発している。以下。

「礼拝ではサタンや天国地獄を使って脅す教育を受けます。私は18歳の頃、統一教会の公職者からセクハラを受け、その理由はあなたに悪霊がついているからだと言われて韓国の清平に除霊をしに行きますが、そこで精神崩壊する信者さんたちを複数見て自分も精神が崩壊して精神疾患を負い、精神病棟に入院しました。

 退院後も、うつ症状とパニックを起こして救急車で複数回運ばれました。またもう一度入院もしました。そんな中、両親は協会活動を平然と続け、当時体調を崩し引きこもっていた私のことを家にお金も入れないでいつになったら働いてくれるのかと、お金のアテにしか思われていなかったことを知り、限界を感じ、家を出た後に脱会しました」

   信教の自由という名目の搾取、ネグレクト、信仰的強制を小川さんは強いられていたことが実によく分かる。この宗教団体の信者の家庭内ではこのような事例が数多く報告されている。これを信教の自由と言うのか。まさに民主主義が問われている。法案は、あす10日の委員会で可決されたあと、参院本会議でも採決が行われて可決・成立する見通しとなっている。

(※写真は、バチカン美術館のシスティーナ礼拝堂のミケランジェロの天井壁画『最後の審判』=撮影:2006年1月)

⇒9日(金)夜・金沢の天気   はれ

★北陸の冬の備え、雪吊りの心構え

★北陸の冬の備え、雪吊りの心構え

   北陸に住む者にとって、冬の備えが少なくとも2つある。まずは自家用車のノーマルタイヤからスノータイヤへの交換だ。積雪で路面がアイスバーン(凍結)状態になると交通事故のもとになる。もう一つが民家の庭木の雪吊り。北陸の雪はパウダースノーではなく、湿気を含んで重い。雪の重みで庭木の枝が折れる。金沢の兼六園では毎年11月1日に雪吊りを施し、民家では12月から始まる。

   きのう我が家の雪吊り作業を行った。素人ではできない仕事なので、造園業者に依頼している。雪吊りには木の種類や形状、枝ぶりによって実に11種もの技法がある。庭木に雪が積もりると、「雪圧」「雪倒」「雪折れ」「雪曲」と言って、樹木の形状によってさまざま雪害が起きる。樹木の姿を見てプロは「雪吊り」「雪棚」「雪囲い」などの手法の判断をする。

   雪吊りで有名なのは「りんご吊り」=写真・上=。五葉松などの高木に施される。マツの木の横に孟宗竹の芯(しん)柱を立てて、柱の先頭から縄をたらして枝を吊る。パラソル状になっていることろがアートではある。「りんご吊り」の名称については、金沢では江戸時代から実のなる木の一つとしてリンゴの木があった。果実がたわわに実ると枝が折れるので、補強するため同様な手法を用いていた。

   低木に施される雪吊りが「竹又吊り」=写真・中=。ツツジの木に竹を3本、等間隔に立てて上部で結んだ縄を下げて吊る。庭職人の親方から聞いた話だ。秋ごろに庭木の枝葉を剪定してもらっているが、ベテランの職人は庭木への積雪をイメージ(意識)して、剪定を行うという話だった。このために強く刈り込みを施すこともある。ゆるく刈り込みをすると、それだけ枝が不必要に伸び、雪害の要因にもなる。庭木本来の美しい形状を保つために、常に雪のことを配慮している。

   ムクゲの木に施されている「しぼり」=写真・下=は低木の枝を全て上に集め、縄で結ぶ。大雪になると枝がボキボキと折れる。「備えあれば憂いなし」の心構えで、暖冬予報であっても雪吊りをする。雪つりは年末の恒例行事でもあり、これをやらないと気持ちのけじめがつかない。北陸に住む者の心構えではある。

⇒8日(木)夜・金沢の天気    くもり