⇒ニュース走査

☆「地震にも津波にも注意を」 大地の変動は続く

☆「地震にも津波にも注意を」 大地の変動は続く

   能登半島だけでなく日本各地で、そして世界で地震が相次いでいる。きょう午前4時16分ごろ千葉県木更津市でマグニチュード5.2、震度5強の揺れがあり、東京23区や横浜市などの広い範囲で震度4が観測された。また、日本時間の11日午前1時2分ごろに南太平洋のトンガ諸島を震源とするマグニチュード7.6の地震があった(気象庁公式サイト「地震情報」)。2月6日にはトルコ南部のシリア国境近くでマグニチュード7.8の地震が起きている。世界が「大地の変動」期に入ったのではないかと想像してしまう。   

   地震で思い起こすのがあのドラマだ。2021年10月10日から5回にわたって放送されたTBS系「日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』」。地盤の変動で日本列島が海に沈むという設定のSF小説「日本沈没」(小松左京著、1973年)をベースにしたテレビドラマだったが、初回放送の3日前の10月7日には首都圏で最大震度5強の地震があり、10月20日には阿蘇山が噴火した。

   若かりし頃、この小説も読み、映画も観ていたので既視感は多少あったものの、内容に迫力があった。ドラマの初回は2023年の東京が舞台。内閣府や環境省の官僚、東大の地震学者らが、天才肌の地震学者が唱える巨大地震説を伏せようと画策する。環境省の官僚が海に潜ると、海底の地下からガスが噴き出して空洞に吸い込まれそうになる。ラストシーンは、実際に島が沈むというニュース速報が流れ、騒然となる。実にリアルな番組だった。

   話は変わる。きょう気象庁の下山利浩地震情報企画官が会見した。震度6強を観測した珠洲市では最大20㌢ほど隆起が国土地理院による地殻変動の観測データ分析で確認された。さらに、一連の活動で地震の発生する場所がやや移動し、能登半島の北側の海域でも発生するようになった。下山企画官は「海域で規模の大きな地震が発生した時には津波に注意する必要もあり、海岸付近で強い揺れを感じたらまずは高い場所に逃げるという避難行動を取ってほしい」と述べた(11日付・NHKニュースWeb版)。地震にも、そして津波にも注意を、大地の変動は続く。

⇒11日(木)夜・金沢の天気    はれ

★能登で2年連続 コウノトリのヒナが誕生

★能登で2年連続 コウノトリのヒナが誕生

   けさも能登半島で震度4の揺れがあった。気象庁公式サイトによると、午前7時14分、震源地は能登半島の珠洲市沖で、震源の深さは10㌔、マグニチュードは5.0だった。地震で揺れる能登だが、ささやかで微笑ましい話題もある。
 
   石川県自然環境課はきのう9日、国の特別天然記念物のコウノトリのヒナが志賀町と津幡町の2ヵ所でそれぞれ3羽誕生したと発表した。志賀町でのコウノトリのヒナの誕生は2年連続、そして、この地はコウノトリのヒナが育つ日本での最北の地となる。詳しく知りたいと思い、志賀町の担当部署の教育委員会生涯学習課に電話で聞いた。以下、話の概要。
 
   志賀町で3羽のヒナを育てているつがいは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと福井県越前市生まれのメスで、去年と同じペアだ。場所も去年と同じ高台に立つ電柱でまったく同じという。ヒナのふ化は4月21日で、7月中頃には巣立つのではないか、とのことだった。(※写真は、志賀町内のコウノトリの親とヒナ=撮影:志賀町教育委員会生涯学習課)
 
   去年、志賀町の現地で子育ての様子を観察したのは6月24日だった。ヒナが3羽いて、一瞬、親鳥かと思うほどすでに成長していた。7月24日に再度訪れた。時折、羽を広げて飛び立とうとしている様子だった。実際に巣立ったのは8月5日だった。

   その後、ニュースもあった。巣立ったコウノトリのオスの1羽が台湾で確認されたのだ。10月31日に台湾屏東県車城の海沿いの村で、11月8日に台湾雲林県台西郷蚊港村の養殖池で見つかった(台湾野鳥保育協会調べ)。地図で確認すると、台湾屏東県は台湾の最南端で、能登半島から飛んで渡ったとすれば、距離は2000㌔にもおよぶ。日本生まれの個体が台湾で確認されたのは初めてのケースとなった(同)。8月に巣立った鳥が3ヵ月後には単独で2000㌔の旅をする。野生の生き物のダイナミックさだ。   

   ヨーロッパでは「コウノトリが赤ん坊を運んでくる」「コウノトリが住み着くと幸福が訪れる」との伝承がある。能登から飛び立ったコウノトリたちが伴侶をともなって戻って定着することで、少子高齢化が進む能登がにぎやかになればと、おとぎ話のような夢を膨らませてしまう。

⇒10日(水)夜・金沢の天気    はれ

★大型連休明け 「日常」に戻るも被災地には多難が

★大型連休明け 「日常」に戻るも被災地には多難が

   能登半島の尖端、珠洲市で今月5日に起きたマグニチュード6.5、震度6強の地震は、日が経つにつれ被害が明らかになって来た。石川県はきょう8日、災害対策本部会議を開き、同市で建物352棟の被害を確認したと明らかにした。応急危険度判定の結果、139棟が「危険」、213棟が「要注意」とされた。7日現在、930棟の判定を実施し、578棟は「問題なし」だった(8日付・共同通信Web版)。珠洲市の世帯数は5400世帯余りなので、今後調べを進めれば、「危険」「要注意」の数字はさらに膨らんでいくのではないか。

   大型連休明けで、被災地にも日常が戻る。地元メディアによると、同市の小中・高校ともきょう通常の授業が再開された。300人の生徒が通う県立高校では、地震で図書室の本が散乱したり、渡り廊下の床や壁にヒビなど校舎に多数の破損が見つかっている。これまで教職員が中心になって片付けを進め、きょうから登校を再開したものの、教室での散乱は生徒たちは2時間かけて片付けを行い、3限目の午前10時半から通常通りの授業を再開した(8日付・北陸放送ニュースWeb版)。

   同市の学校関係のホームページをチェックすると、揺れの強い地域だった正院地区の正院小学校のHPがきょう付で更新されていた。同校は住民の避難場所にもなっている。以下、写真とコメントを引用する。「【8時15分~全校朝会】 体育館が避難所となったことで、1階プレイルームで臨時の全校朝会を行いました。校長からは、今日みんなが元気に登校してくれたことがうれしかったこと、避難所となったことで学校生活に少し不便があること、それでもみんなで『地震に負けない正院小学校』にしようと話しました。『地震に負けない正院小学校』とは『みんなが今までように、いつもどおりの生活をしてがんばること』であることも話しました。みんな真剣にうなづきながら聞いてくれました」。上記のコメントから、教職員による子どもたちへの心のケアは相当の労力と察する。

   そして大雨。珠洲市など能登地方の広い範囲に出されていた大雨警報はきょう午前、すべて解除された。ただ、同市では6日の降り始めから8日午前5時までの降水量が116㍉に及んでいることから、金沢地方気象台は、揺れが強かった地域では地盤が緩んでいるおそれがあり、土砂災害に注意するよう呼びかけている。同市も、土砂災害警戒区域にある9つの地区の740世帯1630人に対し、避難指示を引き続き出している。

⇒8日(月)午後・金沢の天気    くもり

☆震度6強の被災地にさらなる非情の雨

☆震度6強の被災地にさらなる非情の雨

   おととい5日午後2時42分、石川県能登地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、半島尖端の珠洲市では震度6強の揺れを観測した。隣接の能登町では震度5強、同じく輪島市で震度5弱だった。さらに、同日午後9時58分にもマグニチュード5.9の地震が発生し、珠洲市では震度5強が観測。気象庁の観測データによると、震度1以上の揺れは5日だけで58回、6日夜から7日午前10時までに6回発生している。今回の地震で1人死亡、33人が負傷している。

   災難は続く。能登地方では、前線の影響で6日夕方から雨脚が強まったことから、金沢地方気象台は同日午後9時7分に、珠洲市と能登町に大雨警報を、輪島市などに注意報を出した。きょう7日午後6時までの24時間雨量は、多いところで120㍉と予想される。大雨を受けて、珠洲市は6日午後5時、土砂災害警戒区域にある9地区の合わせて740世帯1630人に避難指示を出した。まさに非情の雨だ。

   珠洲市の知り合いにメールをした。木炭製造会社を経営する大野長一郎さんは伝統的な炭焼きを今も生業(なりわい)としている県内で唯一の事業所で、付加価値の高い茶道用の炭の生産にも力を入れている。自宅と作業場は市内の山中にある。メールで被害を尋ねると、「自宅は多少被害はあったものの、不自由なく暮らせている」とのこと。問題は仕事場で、「(炭焼き)窯は崩壊を免れたものの、3つの窯のどれにもヒビが多く入り、余震が続くと崩落の恐れもある。どうしたものかと考えあぐねている」と今後のなりゆきを心配している返信だった。

   メディア各社の報道によると、政府の地震調査委員会は6日の臨時会で見解をまとめた。2020年12月から活発化した一連の地震は、地下深くの流体が誘発しているとみられ、活動域は半島尖端の北側の海域に広がっていることが確認された。今後、海側で強い地震が起きた場合は津波が発生する可能性もあると指摘している。委員長の平田直・東大名誉教授は記者会見で、地震活動は当分続き、「震度6強の揺れは2、3日の間には起きると思って十分に注意してほしい」と呼びかけた。

⇒7日(日)午後・金沢の天気    あめ

★能登半島の尖端が大揺れ 震度6強

★能登半島の尖端が大揺れ 震度6強

   きょう午後2時42分ごろ、スマホに緊急地震速報のアラームが不気味に鳴った。金沢の自宅にいたが、グラッグラッと横揺れがあり、さらに突き上げるような揺れになった。思わず自宅の天井を見上げた。ミシッミシッと音がした。20秒ほどの揺れだっただろうか。その後も小さな揺れが断続的に続いた。棚から物が落ちたりといったことはなかった。

   テレビをつけNHK総合を視ると、能登半島の尖端にある珠洲市でマグニチュード6.3(※後に6.5に修正された)、震度6強の地震だった=震度図=。午後5時現在、同市の総合病院にはけが人13人が運ばれ、うち1人が死亡した。能登半島での震度6強は2007年3月25日以来だ。このときはマグニチュード6.9の揺れで、輪島市や七尾市、輪島市、穴水町で家屋2400棟余りが全半壊し、死者1人、重軽傷者は330人だった。

   能登半島では2020年12月以降、地震が頻発するようになった。気象庁による緊急地震速報が発出された地震は今回で9回におよぶ。2022年6月19日には震度6弱(マグニチュード5.4)、翌日20日には震度5強(同5.0)と続いた。ことしに入って、珠洲市付近で観測された震度1以上の揺れはきのう4日までに49回を数えていた。(※写真は、去年6月20日午前10時31分の震度5強の揺れで、珠洲市の観光名所である見附島の側面の一部が土煙を上げて崩れる様子)

   2022年7月11日に開催された政府の地震調査委員会の定例会合では能登半島の地震について重点的に議論された。地震活動の原因について、「地震活動域に外部から何らかの力が作用することで地震活動が活発になっている可能性」が考えられ、その外部からの作用とは「能登半島北部での温泉水の分析からは、何らかの流体が関与している可能性がある」としている。その流体の作用によって、岩盤が球状に膨らむ「球状圧力源」、岩盤の亀裂が板状に開く「開口割れ目」、断層がすべる「断層すべり」の3つの揺れの原因が考えられるが、「いずれの可能性も考えることができ、原因を1つに特定することは困難」としている。

   気象庁は午後4時40分から記者会見を行った。きょう能登では震度1以上の地震が13回観測されている。揺れの強かった能登北部の地域では、今後1週間程度は、同じ規模の地震が発生する恐れがあるとのこと。特に、この2、3日の間は注意が必要と呼びかけていた。

⇒5日(金)夜・金沢の天気    くもり

☆ドローン攻撃が本当なら 「恥ずべきはクレムリン」

☆ドローン攻撃が本当なら 「恥ずべきはクレムリン」

   モスクワのクレムリン上院宮殿の建物の上にある旗ざおの近くでドローンが撃ち落された映像が世界のニュースになっている。メディア各社の報道によると、ロシア大統領府は3日、「2機の無人機が夜、首都モスクワのクレムリンにある大統領府を攻撃しようとした。無人機は軍や特殊部隊によってレーダーで無力化され、クレムリンの敷地内に破片が落下した。被害は出ていない」と発表した(NHKニュースWeb版)。

   また、ロシア大統領府は無人機による攻撃の試みはウクライナのゼレンスキー政権によるものだとして、「ロシアの大統領を狙ったテロ行為だ」と主張。そのうえで「ロシアは適切な時期と場所で報復する権利がある」と報復措置を取るとしている(同)。

   これに対して、ウクライナ大統領のスポークスマンは「ゼレンスキー大統領が以前に何度も述べたように、ウクライナは他国を攻撃するのではなく、自国の領土を解放するために自由に使えるあらゆる手段を使用している」と述べ、ドローンによるクレムリンへの攻撃を否定している(CNNニュースWeb版)。

   アメリカのブリンケン国務長官はワシントン・ポスト紙主催の会合で、何が起きたかは「全く分からない」とし、事実関係を確認すると表明。「ロシアの言うことをうのみにはしない」とも述べ、ロシアの主張に懐疑的な見方を示した(共同通信Web版)。クレムリンでのドローン撃墜がロシアの偽旗作戦(自作自演)かどうかを判断する決定的な証拠は見当たらないものの、だからと言って、証拠が見当たらなければそれが直ちにウクライナによる攻撃であることの証拠にはならない。 むしろ、証明すべきはロシア側の責任だろう。

   上記に関連して、BBCニュースWeb版(4日付)の論調はロシア側の矛盾を突いている=写真=。「Kremlin drone attack is highly embarrassing for Moscow」の見出しで、クレムリンが言っていることが真実であり、プーチン大統領を狙ったものだとすれば、それはクレムリンにとって「非常に恥ずかしい事件」ではないのか、と質している。要約すると、記事の写真にもあるようにクレムリンの空域は厳重な警備下にある。なぜ、ロシア軍はクレムリンに飛来するまでこのドローンを迎撃しなかったのか、大きな疑問が残る。むしろ、この矛盾を解明すべきではないのか、と。

           確かに、ウクライナのドローンが突然、クレムリンに現れたとすれば、それはなぜなのか、ロシアが証明しなければ、「やはり偽旗か」と世界のロシアに対する不信の念は一層深まる。

⇒4日(木)午後・金沢の天気    はれ  

★能登半島の尖端 デジタル通貨の最先端

★能登半島の尖端 デジタル通貨の最先端

   能登半島の尖端にある珠洲市は「すずし」と呼ぶ。万葉の歌人として知られる大伴家持がこの地を訪れ、「珠洲の海に 朝開きして 漕ぎ来れば 長浜の浦に 月照りにけり」。748年、越中国司だった家持は能登を巡行し、最後の訪問地だった半島先端の珠洲から朝から船に乗って越中国府に到着したときは夜だったという歌だ。当時は大陸の渤海(698-926年)からの使節団が能登をルートに奈良朝廷を訪れており、能登では日本海の荒波を乗り切る造船技術が発達していたとされる。家持が乗った船も時代の最先端の船ではなかったのかとイメージさせる。

   珠洲市はいまでも時代の先端を試みるユニークな地域で知られる。メディアの報道によると、同市で独自のデジタル地域通貨サービス「珠洲トチツーカ」を流通させるプロジェクトをスタートさせると、きのう27日の記者会見で発表した=写真=。北国ファイナンシャルホールディングス(FHD)傘下の北国銀行(金沢市)が法定通貨と価値が連動する、1コインが1円のデジタル通貨「ステーブルコイン」を発行する。また、珠洲市が独自に発行し市内の加盟店で使えるポイント制度も統合するなど、ことし夏ごろにサービスの大枠を整える。

   珠洲トチツーカでは、利用者IDがマイナンバーと結びつくことで、行政からの各種給付金の支払いのほか、地方税の納付や公共料金、病院、学校関係費用の納付などにも使えるよう整備する。デジタル通貨を発行するのはことし12月の見通しで、預金口座からのチャージや出金も可能になる。同市は行政サービスのDX化を進めていて、デジタル通貨はその切り札の一つ。金融機関には地域の興能信用金庫も加わり、自治体と金融機関によるデジタル通貨の発行は全国初めてという。

   金融機関と行政がタイップできた背景には、同市のマイナンバーカードの普及率が全国でもトップクラスの79.5%(ことし3月末時点、全国平均は67.0%)であることや、もともと同市には金融機関の支店やATMが少ないことなどから、キャッシュレス決済の利用率が高かったことなどがある。

   同市のデジタルへの前向きな取り組みはデジタル通貨だけでなく、2010年7月には珠洲市が総務省が募集した地デジへのリハーサル候補地に手を挙げ、先行モデル地区に採択され、全国でもいち早く地デジ化に踏み切った。金沢大学のEV研究グループによる公道での走行実験を受けれたのも同市が初めてだった。また、3年に一度のトリエンナーレで開催する奥能登国際芸術祭も2017年にスタートさせている。斬新な取り組みに向き合うのは市長、泉谷満寿裕氏の個性であり、ポリシーなのかもしれない。5期目で全国初のデジタル通貨を采配する首長である。

⇒28日(金)午前・金沢の天気    はれ   

☆金沢医科大学へ「3億円寄付」騒動 怒り心頭の遺族は提訴

☆金沢医科大学へ「3億円寄付」騒動 怒り心頭の遺族は提訴

    金沢で「3億円寄付」騒動が持ち上がっている。地元メディアによると、金沢市に本社がある東証プライム上場の機械メーカー「渋谷工業」の前社長、渋谷弘利氏が2021年5月、入院していた金沢医科大学病院に3億円を寄付した。渋谷氏は同年10月に90歳で死去したが、寄付のことは家族に知らされていなかった。遺族である渋谷氏の妻と娘2人はきのう26日、渋谷氏に認知症の症状があったにもかかわらず、3億円を寄付させたのは公序良俗に反するとして、同大学と主治医に2億4750万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴した。

    渋谷氏は社長在任中の2021年1月にサウナで脱水状態となり、同病院に入院。退院後の同年5月に、「大学創立50年記念事業募金」に応じて3億円を寄付した。その後、8月に再び入院するなど入退院を繰り返していた。以前から認知機能の低下が見られ、入院中にMRI検査を実施したところ、大脳の萎縮などが確認されていた。提訴した遺族側はきょう27日の記者会見で、「患者の病状を利用して、不当で多額な利益を図る所業が容認されていいはずがない」と訴えた。また、提訴前に調停を申し立てたが、医科大側は寄付の時点で認知症という診断書はなく、返還する理由がないと主張したため、不調に終わった。今回の提訴で医科大側は「正当な手続きを経て寄付金を受け入れている」と反論している。

   金沢医科大学公式サイトをチェックすると、「創立 50 周年記念事業募金応募状況」(令和5年2 月1日現在)として、総額15億9430万円が集まっている。中でも、「一般篤志家」からは3億5697万円が寄せられていて、渋谷氏の寄付はこの中の3億円なので、金額では群を抜いている。

   遺族とすれば、認知症の疑いがあったにもかかわらず、家族に断りなく多額の寄付を受けた医科大側に怒り心頭なのだろう。準詐欺容疑での刑事告訴も検討していると会見で述べている。以下、素朴な疑問だ。本来ならば篤志家から3億円もの寄付があれば、医科大学側は本人の了解を得て名前を公表し、感謝状を手渡すというセレモニーなど行ってしかるべきだろう。それが、家族にも知らせずに、淡々と寄付金を受け取るとはどのような思惑が医科大学側にあったのだろうか。また、寄付金は振込だったのか、現金だったのか、小切手だったのか。

(※写真は、渋谷工業の前社長、渋谷弘利氏が入院していた 金沢医科大学病院)

⇒27日(木)夜・金沢の天気    はれ  

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

   韓国の尹錫悦大統領がワシントンポストの単独インタビューで日韓関係について触れ、「欧州は過去100年間に数度の戦争を経験したが、それでも戦争を行った国は、未来に向けて協力していく方法を見つけた」「100年前の歴史のために日本がひざまずいて許しを乞うべきだという考え方を受け入れることはできない」と発言した。メディア各社も記事を引用するカタチで報じている(※写真は、4月24日付・ニューズウイーク日本語Web版)。

   尹大統領は日本との未来志向の外交関係を改めて述べたことになる。ことし3月16日、大統領として初来日し、岸田総理と首脳会談に臨み、トップが互いの国を訪問する「シャトル外交」を復活させることや、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対して日米韓の連携を強化すること、経済安全保障に関する協議体の創設、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化、そして、拉致問題について協力を約束するなど前向きな姿勢を示した。

   尹大統領の日本との未来志向の関係づくりは一貫していて、韓国の閣議(3月21日)で言及した内容からも読み取れる。イギリスのウィンストン・チャーチル首相の言葉を引用して、「もし、われわれが現在と過去を競わせたら、必ず未来を逃すことになるだろう」と述べた。そして、「私は去年5月の大統領就任以来、存在自体、不透明になってしまった韓日関係の正常化の方策について悩んできた。まるで出口のない迷路の中に閉じ込められた気分だった。しかし、手をこまねいてただ見ているわけにはいかなかった。日増しに激しくなる米中競争、サプライチェーンの危機、北の核脅威の高度化など、韓国を取り巻く複合的な危機の中で韓日協力の必要性はさらに高まっている」(3月22日付・NHKニュースWeb版)

   「私も、目の前の政治的利益のための楽な道を選び過去最悪の韓日関係を放置する大統領になる可能性もあった。しかし、昨今の厳しい国際情勢を後回しにして、私までもが敵対的ナショナリズムと反日感情を刺激して国内政治に利用しようとするなら、大統領としての責務を裏切ることになると思った」(同)

   上記の尹大統領の言葉からは「親日家」という言葉は浮かんでこない。むしろ、「実務家」という言葉がふさわしい。日本の歴代の総理にたとえるならば、就任わずか85日で日中国交回復をなし遂げた田中角栄のようなイメージだ。

⇒25日(火)夜・金沢の天気     あめ

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

   衆参院5つの選挙区で補欠選挙(衆院:千葉5区、和歌山1区、山口2区、同4区、参院:大分)、そして統一地方選の投開票がきょう行われた。午後8時、投票が終了するやいなやテレビの「当選確実」の速報が出たのは山口4区の衆院補選だった。安倍元総理の死去に伴い、安倍氏の後継として立った自民新人の吉田真次氏が立ち、本来ならば「弔い選挙」というイメージなのだが、立憲民主党から有田芳生氏が立候補したことで、「統一教会問題を問う選挙」でもあった。

   何しろ安倍氏と旧統一教会との関わりが襲撃事件の引き金となり、その後、連日のようにワイドショーなどでは統一教会による多額献金問題がクローズアップされ、旧統一教会問題に詳しいジャーナリストの有田氏が出演していた。選挙の結果は吉田氏が5万1961票で初当選、有田氏は2万5595票だった。得票率にして、63.5%と31.3%だった。NHKなどの報道によると、安倍元総理の昭恵夫人が候補者選びから選挙戦にも関わるなど、後継者の吉田氏を全面支援したことで、「弔い選挙」となり他の候補を寄せ付けなかったのだろう。

   ただ、山口県選管の発表によると、山口4区の確定投票率は34.71%で前回選挙(2021年10月31日)を13.93ポイントも下回り、過去最低となっている。また、前回、安倍氏は8万票余りを獲得していた。数字だけ眺めると、「弔い選挙」とは言え、山口4区の有権者はさめていたのではないだろうか。むしろ、有田氏が31%の得票率を得たことが気にかかる。落選の報道を受けて、有田氏は「保守王国、自民党王国と戦後ずっと言われてきた山口4区において、それが溶けはじめてきていると本当に確信を持っている」と述べている(23日付・産経新聞Web版)。

   今回の衆参の補選で目立ったのは、女性候補の躍進ではないだろうか。5人の当選者のうち、3人が女性だった。統一地方選挙が行われた石川県でも、市議選で無投票を含めて19人が当選してる。金沢市議選(定数38)では7人が当選を果たしている。これから選挙の様相が変わりそうムードを感じた選挙だった。

⇒23日(日)夜・金沢の天気    はれ