⇒ニュース走査

☆また北朝鮮の弾道ミサイル 日本海側に緊張走る

☆また北朝鮮の弾道ミサイル 日本海側に緊張走る

   北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射した。防衛省公式サイト(19日付)によると、北朝鮮は午前3時29分に1発目を発射、最高高度50㌔で550㌔を飛翔した。2発目は午前3時45分に発射、最高高度50㌔で600㌔を飛翔した。いずれも朝鮮半島東の日本のEEZ外に落下した=図、防衛省公式サイトより=。ミサイルはいずれも変則的な軌道で飛行した可能性がある。午前4時46分から浜田防衛大臣は臨時会見を行い、「我々としてはこれ容認することはできない。外務省を通じて北朝鮮に対して抗議を行う」と述べた。

   北朝鮮は今月12日にもICBM(大陸間弾道ミサイル)1発を発射した。弾道ミサイルは74分間飛翔し、北海道の奥尻島の西方約250㌔の日本海のEEZ外に落下した。飛翔距離は1000㌔、最高高度は6000㌔を超えると推定されている。北朝鮮が弾道ミサイルや、弾道ミサイル技術を用いたものを発射したのはことし13回目だ。

   「弾道ミサイル」は発射から10分ほどで日本国内へ到達する。国内に落下する可能性がある場合には、緊急情報を瞬時に伝える「Jアラート」が国から伝えられ、防災行政無線や緊急速報メールなどで緊急情報として伝えられる。

   ネットによると、きょう富山市では弾道ミサイルの落下に備えた住民避難訓練が行われた。防災行政無線で「ミサイルが発射されたものとみられます、建物の中、または地下に避難してください」と放送。住民らは近くの地下歩道などに駆け込んだ。国と県、市が共同で行っているこの訓練は今年度で36回実施される予定。昨年の12回に比べ3倍に増えている(19日付・北日本新聞Web版)。(※写真は、きょうの北朝鮮の弾道ミサイル発射を伝える地元紙の夕刊)

   自身も「Jアラート」避難訓練に参加したことがある。2017年8月30日に能登半島の輪島市で実施された。この年の3月6日、北朝鮮は弾道ミサイルを4発発射、うち1発が輪島市の北200㌔の海上に落下した。このため、避難訓練は実にリアリティがあった。午前9時に防災行政無線の屋外スピーカーから「これは防災訓練です」と前置きして、Jアラートの鈍い警報音が流れた。その後「ミサイルが発射された模様です」「ただちに頑丈な建物や地下に避難してください」とアナウンスが流れた。防災行政無線による避難の呼びかけは10分間ほど続いた。

   日本海側に住む者にとっては北朝鮮の弾道ミサイルは脅威そのものだ。

⇒19日(水)夜・金沢の天気    あめ

☆世界で猛威ふるう熱波と水害の異常気象

☆世界で猛威ふるう熱波と水害の異常気象

   猛暑や水害などの異常気象は日本だけでなく、世界を襲っている。16日付のBBCニュースWeb版は「Europe heatwave: No respite in sight for heat-stricken southern Europe」(意訳:ヨーロッパの熱波、暑さに苦しむ南欧にもう猶予はない)との見出し=写真=で、猛暑が続いているギリシャでは14日に気温が40度以上となり、遺跡「パルテノン神殿」がある観光名所アクロポリスが一時閉鎖されたと報じている。また、イタリアでは週末にローマ、ボローニャ、フィレンツェを含む16都市にレッドアラート(「死の危険」を意味する)が発令された。イタリアでは去年も熱波が原因で1万8000人の死者が出て、ヨーロッパでは最多だった。

   同じくBBCは「US heatwave: ‘Dangerous’ temperatures could set new records」(意訳:アメリカの熱波、「危険な」気温記録更新の可能性)の見出しで、世界で一番暑い場所とも言われるカリフォルニア州のデスバレー国立公園では熱波が続き、13日に気温46度となり、今後さらに54度に達するとの予測されており、地球上で最も暑い気温に近づいていると伝えている。

   気温が上昇すれば大気中の水蒸気が増え、大雨のリスクも高まる。韓国では今月13日以降、西部から東部にかけて強い雨が続いていて、川の氾濫や土砂崩れの被害に見舞われている。中部の忠州では地下道が冠水して10台余りの車が水につかり、動けなくなったバスや車に乗っていた7人が死亡している。韓国政府の災害対策本部による16日午前11時現在のまとめでは、水害でこれまでに33人が死亡し、10人の行方がわからなくなっている。韓国の大雨被害を受けて、岸田総理はお見舞いのメッセージを出した。「韓国で尊い命が失われ、市民生活に甚大な被害が生じていることに深い悲しみを覚えています。日本政府と国民を代表し、犠牲になられた方々、ご遺族に心から哀悼の意を表します」(16日付・NHKニュースWeb版)

   ことし11月に国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)がアラブ首長国連邦で開催される。これまでの議論で国際社会は「世界平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5度以内に抑える」との目標を共有している。ところが、世界気象機関(WMO)の年次報告書によると、今後5年間のうち、少なくと1年間で1.5度を超える年が66%の確率である、としている。人類の活動による温暖化ガスの排出と、今年のエルニーニョ現象によって確立が上昇しているという。その66%の確率の年がひょっとして今年なのかもしれない。

⇒16日(日)午後・金沢の天気     はれ

★AIに対して起こす「21世紀のラッダイト運動」なのか

★AIに対して起こす「21世紀のラッダイト運動」なのか

   ネットで「NHK国際ニュースナビ」をチェックしていると、今月13日付で「テニスのウィンブルドン選手権にAI解説者登場 その実力は」の見出しで、2時間半におよぶ試合を終了直後に、AIが3分ほどのハイライト動画に自動で編集、そして解説をつけて公式サイトやアプリで配信する仕組みを紹介している。 

   実際にユーチューブで上がっている、ウィンブルドン選手権準決勝のカルロス・アルカラス(スペイン)対ダニール・メドベデフ(ロシア)のハイライト動画(5分18秒)を視聴すると、AIの解説コメントは冷静で言葉もそれほど多くなく、違和感はない。NHK国際ニュースナビによると、開発したのはIT大手のIBM。同社はウィンブルドン選手権の公式ウェブサイトやアプリを制作するなど、デジタル技術でウィンブルドンを長年支えてきた。今回もAI解説の実現に向けてAIにさまざまな情報を学習させるなど工夫を重ねてきたようだ。

   このニュースを見てふと思った。日本でも、たとえば大相撲の実況解説はAIでできるのではないかと。勝ち技や力士のデータなどを学習させることによって、それは可能ではないか。そうなると、実況アナウンサーの職をAIが奪うことになるのではないか。

   AIに職を奪われることを危惧する動きはすでに世界的に起きている。BBCニュースWeb版日本語(15日付)によると、ハリウッドでは5月から、脚本家労組「アメリカ脚本家組合(WGA)」によるストが続いている。脚本家たちは賃金や労働条件の改善を求めているほか、AIの進歩で仕事が減らないよう保護する体制が不十分だと訴えている。今月14日からは、俳優労組「映画俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」によるストも始まった。アカデミー賞受賞俳優スーザン・サランドンさんは、「(AIは業界の)すべての人に影響を与える」と訴えている。

   俳優と脚本家のストが同時に行われるのは1960年以来63年ぶりという。なぜ、アメリカのコンテンツクリエーターたちがAIに対応するため、ストという手段で向き合っているのか。IBMなどの巨大民間企業やデジタルプラットフォームが進めるAIによって、雇用が失われ、格差が広がることへの懸念を感じ取っているのかもしれない。   

   技術のめざましい進歩はすべての人に恩恵を与えるとは限らない。かつて、産業革命期のイギリスでは「ラッダイト運動」があった。いわゆる、機械の打ち壊し運動だ。アメリカの俳優と脚本家のストは「21世紀のラッダイト運動」の始まりなのかもしれない。

⇒15日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆「まだ降りやまぬ」 北陸の雷雨、北朝鮮のICBM

☆「まだ降りやまぬ」 北陸の雷雨、北朝鮮のICBM

   文部省唱歌に「降っても降っても まだ降りやまぬ」という歌の一節があるが、まさこのことかもしれない。北陸は大気の状態が不安定で、いまも雷鳴が響いて強い雨が降ったり止んだりしている。午後5時までの24時間に降った雨の量は金沢市医王山で70㍉、輪島市三井と小松市で60㍉などとなっている。あすにかけてさらに激しい雨が降る見込みで、予想される1時間の降水量は多いところで加賀・能登ともに40㍉。雨は降り続く。

   さきほど気象庁は午後9時39分に「顕著な大雨に関する情報」を発表した。石川県で線状降水帯が発生し、土砂災害や洪水が発生する危険性が急激に高まっている。

   予報によると、朝鮮半島から東北地方に延びる梅雨前線が南下し、北陸地方に停滞する見込み。前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込む一方、上空5500㍍に氷点下6度以下の寒気が入り込むため、13日にかけて大気の状態が非常に不安定となる。案じるのは、5月5日に震度6強の揺れがあった能登半島の珠洲市を中心とする奥能登エリアだ。地震で地盤に割れが入っているところに大雨が続くと土砂崩れなどの二次災害が発生するのではないかと地質の専門家ではないが、そう考えてしまう。(※写真は、北陸電力公式ホームページ「雷情報」より)

   降りやまないのは雨だけではない。北朝鮮がまた日本海に向けてICBMを放った。防衛省公式サイトによると、きょう12日午前9時59分、北朝鮮の首都平壌近郊からICBM(大陸間弾道ミサイル)1発を東の方向に発射した。弾道ミサイルは74分間飛翔し、同11時13分ごろ、北海道の奥尻島の西方約250㌔の日本海のEEZ外に落下した=イメージ図、防衛省作成=。飛翔距離は約1000㌔、また最高高度は約6000㌔を超えると推定されている。

   このニュースで、北朝鮮が5月31日に「軍事衛星」を打ち上げた件を思い出した。軍事衛星「万里鏡1号」を新型ロケット「千里馬1型」に搭載し発射したが、「1段目の分離後、2段目のエンジン始動に異常があり推進力を失って朝鮮西海(黄海)に落ちた」(北朝鮮国営メディア「朝鮮中央通信」Web版)。そして、「国家宇宙開発局は衛星発射で現れた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、可能な限り早期に2回目の発射を断行する」と述べていた。今回の発射が「2度目の断行」とどう関わっているのか。専門機関の分析を待ちたい。

⇒12日(水)夜・金沢の天気    雷雨

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

   これはロシアのプーチン大統領の「敗北」を意味しているのかもしれない。国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナを侵攻して500日が過ぎ、さらに国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで伝統的に中立政策を掲げてきた北欧のスウェーデンとフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請し、フィンランドはことし4月に正式加盟。スウェーデンも難色を示してきたトルコが議会で批准の手続きを進めることになり、加盟に向け前進することになった(11日付・NHKニュースWeb版)。

   プーチン大統領にとってはNATO拡大そもののがロシアの脅威に映っているに違いない。そして、ウクライナも去年9月にNATOへの加盟を正式に申請している。ただ、NATOは第三国からの攻撃に対し加盟国が互いに防衛参画することで合意しているため、ウクライナの加盟がNATOとロシアの全面的な対立となる可能性もあるとして、加盟に慎重な国もある。そのNATOの首脳会議が11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで開かれる。この会議でウクライナの加盟についてどのような議論が交わされるのか。

   「ブレグジット(Brexit)」と呼ばれ、イギリスがEUから離脱したのは2020年1月だった。そのイギリスが今月16日にニュージランドで開催されるTPP(環太平洋連携協定)の閣僚級会合で加盟を認めることが正式に承認される。IMFによると、イギリスの加盟によりTPPの経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(今月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初、アメリカを含めた12ヵ国の協定だったが、2017年にトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国で「CPTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定)」として再出発した。日本は引き続きアメリカに復帰を求めている(同)。ただ、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を進めている。

   軍事の対ロシア包囲網をNATOが、経済の対中国包囲網をアメリカが、それぞれ担っている。世界の新たな2極化の動きでもある。

⇒11日(火)午後・金沢の天気    くもり

☆風評をどう払うのか 福島原発事故の処理水を海洋放出へ

☆風評をどう払うのか 福島原発事故の処理水を海洋放出へ

   金沢は強烈な暑さになっている。金沢地方気象台は午後0時07分に36.3度だったと伝ている。外出すると熱波にムッーと包まれる感じがする。酷暑。

       ◇       ◇

   韓国のスーパーでは塩や昆布、ワカメ、海苔など海草類の売上が急増しているようだ。スーパー大手「イーマート」の売上(6月12-25日)の塩の売上は前年同期比で156%、海藻類は品目によって69%から92%の増だった。「ロッテマート」でも同じ期間で塩は150%増、海藻類は20%以上増だった(6月27日付・中央日報Web版日本語)。

   この背景にあるのが、2011年3月11日の東日本大震災の津波で発生した福島第一原発での事故。溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための水は高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」となる。さらに、原子炉建屋・タービン建屋といった建物の中に地下水や雨水が入り、汚染水と混じり合うことで新たな汚染水が発生した。これらの汚染水には放射性物質の濃度を低減する浄化処理が施され、「処理水」として敷地内のタンクで保管されている。ただ、放射性物質トリチウムは除去できない。

   政府は処理水を海洋放出する計画を進めている。トリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満になるように海水で薄め、海底トンネルを通して福島第一原発の沖1㌔で放出する計画だ。処理水は溜まり続けていて、保管量は133万㌧になり、容量の97%に達している。ところが、放出となるとさまざまな風評を呼ぶことになる。

   冒頭で述べた韓国のスーパーで塩と海藻類を買い求める動きが広がっているのもその事例だろう。韓国の尹錫悦政権は処理水の放出に関して冷静な対応を国民に呼びかけているものの、最大野党「共に民主党」の李在明代表は先月22日の集会で、処理水を「核廃水と呼ぶべきだ」となどと主張している(6月23日付・読売新聞Web版)。

   そもそも、福島沖に処理水が放出されたとして、それが韓国の海水域での塩の精製に影響を及ぼすだろうか。黒潮は対馬海流となって日本海を流れるが、これは福島側を通る潮の流れではない。韓国がもし塩を採取した際に核物質が混ざるとしたら、それは北朝鮮の核実験場である豊渓里から流れ出た汚染水が日本海に流れ、リマン海流に乗って韓国沖にやってくる可能性の方が高いのではないだろうか。

   IAEAは今月4日、日本政府の海洋放出の計画について包括リポートを公表している。この中で、「Japan’s plans to release treated water stored at the Fukushima Daiichi nuclear power station into the sea are consistent with IAEA Safety Standards.」(意訳:処理水を海洋放出する日本の計画は、IAEAの安全基準と合致している)、「the discharges of the treated water would have a negligible radiological impact to people and the environment.」(同:処理水の放出が人や環境に与える放射線の影響は無視できるほど極わずかなものだ)と評価している。

(※写真は、IAEA公式サイト「福島の処理水の放出に関するIAEAの報告」より)

⇒7日(金)午後・金沢の天気    くもり

★北朝鮮の発射体は「はりぼて衛星」だったのか

★北朝鮮の発射体は「はりぼて衛星」だったのか

    5月31日朝、沖縄県にJアラート=全国瞬時警報システムが鳴り響いた。「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中や地下に避難して下さい」と。間もなくして、「先ほどのミサイルは我が国には飛来しないものとみられます。避難の呼びかけを解除します」に切り替わった。Jアラートを報じるNHKニュースをチェックしていたが、スピード感のある速報だった。緊張が走ったのも、これに先立って北朝鮮が4月29日に「31日から来月11日までの間に『人工衛星』を打ち上げる」と日本に通告していたからだ。

   その後に韓国メディアのWeb版に切り替えた。すると、通信社の「聯合ニュース」は、韓国軍の消息筋の話として、北の宇宙発射体が予告された落下地点に行かず、レーダーから消失したと伝えていた。

   さらに北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央通信」Web版をチェックすると、「午前6時27分に西海衛星発射場から軍事衛星『万里鏡1号』を新型ロケット『千里馬1型』に搭載・発射した」「1段目の分離後、2段目のエンジン始動に異常があり推進力を失って朝鮮西海(黄海)に落ちた」。失敗の原因を「千里馬1型に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安定性が低く、使用された燃料の特性が不安定であることに事故の原因があった」とした上で、「国家宇宙開発局は衛星発射で現れた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、可能な限り早期に2回目の発射を断行する」と報じていた。

   北朝鮮の衛星発射の失敗から36日。きょう6日付の韓国メディア「中央日報」のWeb版をチェックすると、その結末が報じられている。韓国軍合同参謀本部は黄海に落下した北朝鮮の衛星の残骸を引き上げて分析した結果をきのう5日に発表した。米韓が共同分析した結果では、搭載されていたカメラは横・縦1㍍が1個の点で表示されることを意味する「解像度1㍍級」よりはるかに解像度が落ちるもので、偵察を目的とした軍事的効用はまったくないことが分かった。(※写真、先月16日に引き揚げられた発射体の残骸の一部=撮影:韓国軍合同参謀本部)

   その上で、ミサイル防衛に詳しいマサチューセッツ工科大学の専門家のコメントとして、「技術的に発展した国というこ学を見せるためのもの」と紹介し、いわゆる「はりぼて衛星」をあたかも全世界を偵察できる能力があるように見せかける意図があったのではないかと指摘した。

   ただ、北朝鮮は再度の衛星打ち上げを断行すると表明している。必要な技術と部品、装備を調達するとなれば、ロシアの支援を受けるしかないのではないか。

⇒6日(木)午後・金沢の天気    はれ

☆安倍事件まもなく1年 旧統一教会の「献金の闇」

☆安倍事件まもなく1年 旧統一教会の「献金の闇」

   これを宗教というのだろうか。宗教の名を借りた集金システムではないのか。3日付の共同通信Web版によると、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団トップの韓鶴子総裁が6月末、教団内部の集会で「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」「日本の政治は滅ぶしかないだろう」と発言していたことが3日、関係者への取材や音声データで分かった。教団側は6月中旬までに、年間数百億円にも上るとされる日本から韓国への送金を今後も取りやめると説明していたが、トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる。

   あれから間もなく1年になる。2022年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍元総理が銃で殺害された。同市に住む山上徹也容疑者が殺人と銃刀法違反の罪で逮捕された。これから裁判員裁判で審理されることになるが、殺害の動機とされるのが、母親が旧統一教会へ高額な献金をしたことから家庭が崩壊し、恨みを募らせたことが事件の発端とされる。安倍氏は祖父・岸信介の代から三代にわたって旧統一教会と深いつながりがあり、山上被告は安倍氏にも恨みを抱いていた。   

   さらに、2022年12月9日の参院消費者問題特別委員会で、いわゆる「宗教2世」の女性が訴えた。「これだけ悪質な団体が活動の一時停止もなく、税制優遇を受けていることはあってはならない」「両親が親戚中を勧誘したり、お金を要求したり、そのことで怒られているところも見てきました。また、高校生から始めた5年間のアルバイト代200万円ほどの給与も没収され、一度も返ってきませんでした」(同日付・朝日新聞Web版の意見陳述)

   多額の献金は韓国の本部に集められた。それはどこに流れたのか。「文藝春秋」(2023年1月号)は「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」の見出しで報じている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた、と。

   さらにDIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。

   高額献金をめぐる旧統一教会の「深い闇」をどう断罪するのか。断罪がなければまた繰り返される。

⇒3日(月)夜・金沢の天気     くもり

★「ならば自主返納」 マイナカードに渦巻く不安と不満

★「ならば自主返納」 マイナカードに渦巻く不安と不満

   きょうNHK「日曜討論」を視ていた。マイナンバーカードをめぐる一連のトラブル騒動について、河野デジタル大臣は陳謝した。そして、来年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させる方針については「猶予期間が1年あり、現実にはこれから2年半ということになり問題はない」と述べていた。また、河野大臣は「次にカードを更新する時にはマイナンバーカードという名称をやめた方がいいと個人的に思っている」とも述べていた。このコメントそのものがますます国民に混乱を与えるのではないか。

         国民のマイナンバーカードへの不安や不満が、返納というカタチで表れている。 共同通信が都道府県所在地と政令指定都市の計52市区を対象に行った調査で、マイナンバーカードの自主返納について集計していたのは29市で、その合計は4月は21件だったものが、5月以降で少なくとも318件に上っていることが分かった(2日付・共同通信Web版)。最多は堺市の44件だった。金沢市では5月以降で21件の返納があった。返納届の記載には「信用できない」「問題が多い」があったという(同)。

   岸田総理はマイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」と位置づける狙いがあるようだが、国民世論とはズレている。世論調査(共同通信・6月17、18日調査)では、健康保険証の廃止について、「廃止を延期するべき」38.3%、「廃止を撤回するべき」33.8%と計72.1%ものが来年秋の廃止に違和感を持っているこのミゾをどう埋めるかが先決だろう。そもそも論ではあるが、マイナンバーカードは市区町村長が交付するもので、取得は義務ではなく任意である。なのに、健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに一本化するなど本末転倒ではないかとの強い違和感が世論にはある。

   政府は国民にもっと丁寧に説明すべきだろう。ところが、政府はマイナンバカードの仕組みそのものに問題はなく、カードを発行する自治体で共用端末のログアウト忘れや事務処理の誤りなど人為的なミスが続発しているとの理解だ。これを受けて、政府は省庁横断の新たな対策本部「マイナンバー情報総点検本部」を総務省や厚労省などを中心に発足させた。総点検本部では、問題があるケースについて、データを点検し結果についてことし秋に公表する。簡潔に言えば、自治体に間違いなくやれと締め上げているようなものだ。   

   岸田総理の肝いりで立ち上げた総点検本部で、国民の不安と不満を払拭し、来秋の保険証の廃止に向けて道筋をつけることができるのかどうか。対応を誤れば間違いなく岸田政権に難局が訪れる。正念場を迎えている。

(※写真は6月18日、母校の早稲田大学で講演する岸田総理=総理官邸公式サイトより

⇒2日(日)夜・金沢の天気     くもり

☆能登大雨で熊木川の氾濫 大伴家持が詠んだ「熊来」伝説

☆能登大雨で熊木川の氾濫 大伴家持が詠んだ「熊来」伝説

   きょうから7月、その初日は能登半島は大雨に見舞われた。とくに中能登と呼ばれている七尾市中島地区の熊木川の一部流域では、氾濫危険水位を超えて農地や道路が冠水し、住宅では床下浸水の被害があった。中島地区など5800世帯・1万4100人を対象に避難指示が発令された=写真、1日付・夕刊各紙=。

   このニュースが気になったもの、中島地区で激しい雨を自身も経験したことがあるからだ。ちょうど6年前、2017年7月1日だ。能登へ乗用車で出かけ、自動車専用道「のと里山海道」の中島地区で、大雨に巻き込まれた。雨がたたきつけるようにフロントガラスに当たり、ワイパーの回転を一番速くしても前方が見えず、しばらく車を停車し小降りになるのを待った。再び出発すると、たたきつけるような雨に再び見舞われた。3度運転を見合わせた。波状的な激しい雨は初めてだった。このとき能登では1時間で53㍉の非常に激しい雨が観測され、七尾市の崎山川や熊木川などが一部氾濫した。   

   話は変わるが、熊木川にはちょっとした思い入れもある。川の河口の七尾西湾は「能登かき」で知られる養殖カキの産地でもある。里山の栄養分が熊木川を伝って流れ、湾に注ぎこむ。その栄養分が植物プランクトンや海藻を育み、海域の食物連鎖へと広がり、カキもよく育つとされる。とくに、里山の腐葉土に蓄えられた栄養分「フルボ酸鉄」が豊富にあると現地で学んだことがある(2010年5月・金沢大学「里山里海環境調査」)。学習的なことは別として、能登かきのファンにとっては気になる場所なのだ。

   和歌をたしなむ人々にとっても気にかかるのが「熊来」(のちに熊木村、現在の中島地区)かもしれない。天平20年(748)に越中国の国司だった大伴家持が能登を巡行している。そのときに詠んだ歌が万葉集におさめられている。「香島より熊来をさして漕ぐ舟の梶取る間なく都し思ほゆ」。以下、自己解釈で。(七尾の)香島から熊来の在所に向かって舟を漕いでいく。舟舵を取るのも忙しいが、それ以上に都のことがひっきりなしに思い浮かんでくる。

   作者は不詳だが、万葉集にはさらに2つの「熊来」が出て来る。「梯立の熊来のやらに新羅斧堕入れわし懸けて懸けて勿泣なかしそね浮き出づるやと見むわし」「梯立の熊来酒屋に真罵らる奴わし誘い立て率て来なましを真罵らる奴わし」(※七尾市「能登国府」パンフより)

   ある愚か者が鉄斧を熊来の河口の海底にうっかり落とした。海に沈んでしまえばもう浮かび上がることはないのに泣いてばかりいるので、しかたなく「そのうち浮かんで来るよ」とみんなでなだめた。熊木の在所の酒蔵でえらく怒鳴られている従業員がいたので、誘って連れ出そうかと思ったが、「怒鳴られているあんたはどうする」と。

   8世紀に成立した日本最古の和歌集に、おそらく当時の最先端の言葉であったであろう「酒屋」と「新羅斧」が出てくる能登はどのような風景だったのか。豪雨の熊木川から連想した。

⇒1日(土)夜・金沢の天気     あめ