⇒ニュース走査

★能登半島の尖端が大揺れ 震度6強

★能登半島の尖端が大揺れ 震度6強

   きょう午後2時42分ごろ、スマホに緊急地震速報のアラームが不気味に鳴った。金沢の自宅にいたが、グラッグラッと横揺れがあり、さらに突き上げるような揺れになった。思わず自宅の天井を見上げた。ミシッミシッと音がした。20秒ほどの揺れだっただろうか。その後も小さな揺れが断続的に続いた。棚から物が落ちたりといったことはなかった。

   テレビをつけNHK総合を視ると、能登半島の尖端にある珠洲市でマグニチュード6.3(※後に6.5に修正された)、震度6強の地震だった=震度図=。午後5時現在、同市の総合病院にはけが人13人が運ばれ、うち1人が死亡した。能登半島での震度6強は2007年3月25日以来だ。このときはマグニチュード6.9の揺れで、輪島市や七尾市、輪島市、穴水町で家屋2400棟余りが全半壊し、死者1人、重軽傷者は330人だった。

   能登半島では2020年12月以降、地震が頻発するようになった。気象庁による緊急地震速報が発出された地震は今回で9回におよぶ。2022年6月19日には震度6弱(マグニチュード5.4)、翌日20日には震度5強(同5.0)と続いた。ことしに入って、珠洲市付近で観測された震度1以上の揺れはきのう4日までに49回を数えていた。(※写真は、去年6月20日午前10時31分の震度5強の揺れで、珠洲市の観光名所である見附島の側面の一部が土煙を上げて崩れる様子)

   2022年7月11日に開催された政府の地震調査委員会の定例会合では能登半島の地震について重点的に議論された。地震活動の原因について、「地震活動域に外部から何らかの力が作用することで地震活動が活発になっている可能性」が考えられ、その外部からの作用とは「能登半島北部での温泉水の分析からは、何らかの流体が関与している可能性がある」としている。その流体の作用によって、岩盤が球状に膨らむ「球状圧力源」、岩盤の亀裂が板状に開く「開口割れ目」、断層がすべる「断層すべり」の3つの揺れの原因が考えられるが、「いずれの可能性も考えることができ、原因を1つに特定することは困難」としている。

   気象庁は午後4時40分から記者会見を行った。きょう能登では震度1以上の地震が13回観測されている。揺れの強かった能登北部の地域では、今後1週間程度は、同じ規模の地震が発生する恐れがあるとのこと。特に、この2、3日の間は注意が必要と呼びかけていた。

⇒5日(金)夜・金沢の天気    くもり

☆ドローン攻撃が本当なら 「恥ずべきはクレムリン」

☆ドローン攻撃が本当なら 「恥ずべきはクレムリン」

   モスクワのクレムリン上院宮殿の建物の上にある旗ざおの近くでドローンが撃ち落された映像が世界のニュースになっている。メディア各社の報道によると、ロシア大統領府は3日、「2機の無人機が夜、首都モスクワのクレムリンにある大統領府を攻撃しようとした。無人機は軍や特殊部隊によってレーダーで無力化され、クレムリンの敷地内に破片が落下した。被害は出ていない」と発表した(NHKニュースWeb版)。

   また、ロシア大統領府は無人機による攻撃の試みはウクライナのゼレンスキー政権によるものだとして、「ロシアの大統領を狙ったテロ行為だ」と主張。そのうえで「ロシアは適切な時期と場所で報復する権利がある」と報復措置を取るとしている(同)。

   これに対して、ウクライナ大統領のスポークスマンは「ゼレンスキー大統領が以前に何度も述べたように、ウクライナは他国を攻撃するのではなく、自国の領土を解放するために自由に使えるあらゆる手段を使用している」と述べ、ドローンによるクレムリンへの攻撃を否定している(CNNニュースWeb版)。

   アメリカのブリンケン国務長官はワシントン・ポスト紙主催の会合で、何が起きたかは「全く分からない」とし、事実関係を確認すると表明。「ロシアの言うことをうのみにはしない」とも述べ、ロシアの主張に懐疑的な見方を示した(共同通信Web版)。クレムリンでのドローン撃墜がロシアの偽旗作戦(自作自演)かどうかを判断する決定的な証拠は見当たらないものの、だからと言って、証拠が見当たらなければそれが直ちにウクライナによる攻撃であることの証拠にはならない。 むしろ、証明すべきはロシア側の責任だろう。

   上記に関連して、BBCニュースWeb版(4日付)の論調はロシア側の矛盾を突いている=写真=。「Kremlin drone attack is highly embarrassing for Moscow」の見出しで、クレムリンが言っていることが真実であり、プーチン大統領を狙ったものだとすれば、それはクレムリンにとって「非常に恥ずかしい事件」ではないのか、と質している。要約すると、記事の写真にもあるようにクレムリンの空域は厳重な警備下にある。なぜ、ロシア軍はクレムリンに飛来するまでこのドローンを迎撃しなかったのか、大きな疑問が残る。むしろ、この矛盾を解明すべきではないのか、と。

           確かに、ウクライナのドローンが突然、クレムリンに現れたとすれば、それはなぜなのか、ロシアが証明しなければ、「やはり偽旗か」と世界のロシアに対する不信の念は一層深まる。

⇒4日(木)午後・金沢の天気    はれ  

★能登半島の尖端 デジタル通貨の最先端

★能登半島の尖端 デジタル通貨の最先端

   能登半島の尖端にある珠洲市は「すずし」と呼ぶ。万葉の歌人として知られる大伴家持がこの地を訪れ、「珠洲の海に 朝開きして 漕ぎ来れば 長浜の浦に 月照りにけり」。748年、越中国司だった家持は能登を巡行し、最後の訪問地だった半島先端の珠洲から朝から船に乗って越中国府に到着したときは夜だったという歌だ。当時は大陸の渤海(698-926年)からの使節団が能登をルートに奈良朝廷を訪れており、能登では日本海の荒波を乗り切る造船技術が発達していたとされる。家持が乗った船も時代の最先端の船ではなかったのかとイメージさせる。

   珠洲市はいまでも時代の先端を試みるユニークな地域で知られる。メディアの報道によると、同市で独自のデジタル地域通貨サービス「珠洲トチツーカ」を流通させるプロジェクトをスタートさせると、きのう27日の記者会見で発表した=写真=。北国ファイナンシャルホールディングス(FHD)傘下の北国銀行(金沢市)が法定通貨と価値が連動する、1コインが1円のデジタル通貨「ステーブルコイン」を発行する。また、珠洲市が独自に発行し市内の加盟店で使えるポイント制度も統合するなど、ことし夏ごろにサービスの大枠を整える。

   珠洲トチツーカでは、利用者IDがマイナンバーと結びつくことで、行政からの各種給付金の支払いのほか、地方税の納付や公共料金、病院、学校関係費用の納付などにも使えるよう整備する。デジタル通貨を発行するのはことし12月の見通しで、預金口座からのチャージや出金も可能になる。同市は行政サービスのDX化を進めていて、デジタル通貨はその切り札の一つ。金融機関には地域の興能信用金庫も加わり、自治体と金融機関によるデジタル通貨の発行は全国初めてという。

   金融機関と行政がタイップできた背景には、同市のマイナンバーカードの普及率が全国でもトップクラスの79.5%(ことし3月末時点、全国平均は67.0%)であることや、もともと同市には金融機関の支店やATMが少ないことなどから、キャッシュレス決済の利用率が高かったことなどがある。

   同市のデジタルへの前向きな取り組みはデジタル通貨だけでなく、2010年7月には珠洲市が総務省が募集した地デジへのリハーサル候補地に手を挙げ、先行モデル地区に採択され、全国でもいち早く地デジ化に踏み切った。金沢大学のEV研究グループによる公道での走行実験を受けれたのも同市が初めてだった。また、3年に一度のトリエンナーレで開催する奥能登国際芸術祭も2017年にスタートさせている。斬新な取り組みに向き合うのは市長、泉谷満寿裕氏の個性であり、ポリシーなのかもしれない。5期目で全国初のデジタル通貨を采配する首長である。

⇒28日(金)午前・金沢の天気    はれ   

☆金沢医科大学へ「3億円寄付」騒動 怒り心頭の遺族は提訴

☆金沢医科大学へ「3億円寄付」騒動 怒り心頭の遺族は提訴

    金沢で「3億円寄付」騒動が持ち上がっている。地元メディアによると、金沢市に本社がある東証プライム上場の機械メーカー「渋谷工業」の前社長、渋谷弘利氏が2021年5月、入院していた金沢医科大学病院に3億円を寄付した。渋谷氏は同年10月に90歳で死去したが、寄付のことは家族に知らされていなかった。遺族である渋谷氏の妻と娘2人はきのう26日、渋谷氏に認知症の症状があったにもかかわらず、3億円を寄付させたのは公序良俗に反するとして、同大学と主治医に2億4750万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴した。

    渋谷氏は社長在任中の2021年1月にサウナで脱水状態となり、同病院に入院。退院後の同年5月に、「大学創立50年記念事業募金」に応じて3億円を寄付した。その後、8月に再び入院するなど入退院を繰り返していた。以前から認知機能の低下が見られ、入院中にMRI検査を実施したところ、大脳の萎縮などが確認されていた。提訴した遺族側はきょう27日の記者会見で、「患者の病状を利用して、不当で多額な利益を図る所業が容認されていいはずがない」と訴えた。また、提訴前に調停を申し立てたが、医科大側は寄付の時点で認知症という診断書はなく、返還する理由がないと主張したため、不調に終わった。今回の提訴で医科大側は「正当な手続きを経て寄付金を受け入れている」と反論している。

   金沢医科大学公式サイトをチェックすると、「創立 50 周年記念事業募金応募状況」(令和5年2 月1日現在)として、総額15億9430万円が集まっている。中でも、「一般篤志家」からは3億5697万円が寄せられていて、渋谷氏の寄付はこの中の3億円なので、金額では群を抜いている。

   遺族とすれば、認知症の疑いがあったにもかかわらず、家族に断りなく多額の寄付を受けた医科大側に怒り心頭なのだろう。準詐欺容疑での刑事告訴も検討していると会見で述べている。以下、素朴な疑問だ。本来ならば篤志家から3億円もの寄付があれば、医科大学側は本人の了解を得て名前を公表し、感謝状を手渡すというセレモニーなど行ってしかるべきだろう。それが、家族にも知らせずに、淡々と寄付金を受け取るとはどのような思惑が医科大学側にあったのだろうか。また、寄付金は振込だったのか、現金だったのか、小切手だったのか。

(※写真は、渋谷工業の前社長、渋谷弘利氏が入院していた 金沢医科大学病院)

⇒27日(木)夜・金沢の天気    はれ  

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

   韓国の尹錫悦大統領がワシントンポストの単独インタビューで日韓関係について触れ、「欧州は過去100年間に数度の戦争を経験したが、それでも戦争を行った国は、未来に向けて協力していく方法を見つけた」「100年前の歴史のために日本がひざまずいて許しを乞うべきだという考え方を受け入れることはできない」と発言した。メディア各社も記事を引用するカタチで報じている(※写真は、4月24日付・ニューズウイーク日本語Web版)。

   尹大統領は日本との未来志向の外交関係を改めて述べたことになる。ことし3月16日、大統領として初来日し、岸田総理と首脳会談に臨み、トップが互いの国を訪問する「シャトル外交」を復活させることや、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対して日米韓の連携を強化すること、経済安全保障に関する協議体の創設、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化、そして、拉致問題について協力を約束するなど前向きな姿勢を示した。

   尹大統領の日本との未来志向の関係づくりは一貫していて、韓国の閣議(3月21日)で言及した内容からも読み取れる。イギリスのウィンストン・チャーチル首相の言葉を引用して、「もし、われわれが現在と過去を競わせたら、必ず未来を逃すことになるだろう」と述べた。そして、「私は去年5月の大統領就任以来、存在自体、不透明になってしまった韓日関係の正常化の方策について悩んできた。まるで出口のない迷路の中に閉じ込められた気分だった。しかし、手をこまねいてただ見ているわけにはいかなかった。日増しに激しくなる米中競争、サプライチェーンの危機、北の核脅威の高度化など、韓国を取り巻く複合的な危機の中で韓日協力の必要性はさらに高まっている」(3月22日付・NHKニュースWeb版)

   「私も、目の前の政治的利益のための楽な道を選び過去最悪の韓日関係を放置する大統領になる可能性もあった。しかし、昨今の厳しい国際情勢を後回しにして、私までもが敵対的ナショナリズムと反日感情を刺激して国内政治に利用しようとするなら、大統領としての責務を裏切ることになると思った」(同)

   上記の尹大統領の言葉からは「親日家」という言葉は浮かんでこない。むしろ、「実務家」という言葉がふさわしい。日本の歴代の総理にたとえるならば、就任わずか85日で日中国交回復をなし遂げた田中角栄のようなイメージだ。

⇒25日(火)夜・金沢の天気     あめ

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

   衆参院5つの選挙区で補欠選挙(衆院:千葉5区、和歌山1区、山口2区、同4区、参院:大分)、そして統一地方選の投開票がきょう行われた。午後8時、投票が終了するやいなやテレビの「当選確実」の速報が出たのは山口4区の衆院補選だった。安倍元総理の死去に伴い、安倍氏の後継として立った自民新人の吉田真次氏が立ち、本来ならば「弔い選挙」というイメージなのだが、立憲民主党から有田芳生氏が立候補したことで、「統一教会問題を問う選挙」でもあった。

   何しろ安倍氏と旧統一教会との関わりが襲撃事件の引き金となり、その後、連日のようにワイドショーなどでは統一教会による多額献金問題がクローズアップされ、旧統一教会問題に詳しいジャーナリストの有田氏が出演していた。選挙の結果は吉田氏が5万1961票で初当選、有田氏は2万5595票だった。得票率にして、63.5%と31.3%だった。NHKなどの報道によると、安倍元総理の昭恵夫人が候補者選びから選挙戦にも関わるなど、後継者の吉田氏を全面支援したことで、「弔い選挙」となり他の候補を寄せ付けなかったのだろう。

   ただ、山口県選管の発表によると、山口4区の確定投票率は34.71%で前回選挙(2021年10月31日)を13.93ポイントも下回り、過去最低となっている。また、前回、安倍氏は8万票余りを獲得していた。数字だけ眺めると、「弔い選挙」とは言え、山口4区の有権者はさめていたのではないだろうか。むしろ、有田氏が31%の得票率を得たことが気にかかる。落選の報道を受けて、有田氏は「保守王国、自民党王国と戦後ずっと言われてきた山口4区において、それが溶けはじめてきていると本当に確信を持っている」と述べている(23日付・産経新聞Web版)。

   今回の衆参の補選で目立ったのは、女性候補の躍進ではないだろうか。5人の当選者のうち、3人が女性だった。統一地方選挙が行われた石川県でも、市議選で無投票を含めて19人が当選してる。金沢市議選(定数38)では7人が当選を果たしている。これから選挙の様相が変わりそうムードを感じた選挙だった。

⇒23日(日)夜・金沢の天気    はれ

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

   この判決からはオリンピック組織委員会そものが機能不全の状態だったことが浮かび上がってくる。東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲被告が大会組織委員会の高橋治之元理事に大会スポンサー契約をめぐり、2800万円を提供したとして贈賄罪が問われていた裁判。東京地裁はきのう21日、懲役二年六月、執行猶予四年(求刑懲役二年六月)の判決を言い渡した。青木被告以外には元副会長ら2人も有罪判決が下された。まさに、「紳士服の青木」に泥を塗ったカタチだ。

   一連の汚職事件では、「みなし公務員」だった高橋元理事に対する賄賂の総額はAOKIホールディングスや出版社「KADOKAWA」、広告会社など5ルートから1億9800円に及んでいる。収賄側は高橋被告を含む3人、贈賄側は12人が起訴されていて、今回は初めて判決。

   メディア各社の報道によれば、電通元専務の高橋元理事はスポンサー選定にかなりの権限を持っていた。逆に言えば、ほかにスポンサー集めのプロがおらず、大会組織委としては、実績がある高橋元理事に「お任せ」だったのだろう。マーケティング担当として任命したのは大会組織委の会長だった森喜朗元総理だった。

   今回の判決文でも高橋元理事の「強権ぶり」が述べられている。「当時、組織委員会の森会長を交えた会食の場などで、高橋理事の影響力の強さを認識し、その影響力を頼って犯行に及んだ。高橋被告の影響力を利用し、自社の利益を追求しようとした」。AOKI側は高橋元理事にスポンサーの選定や日本選手団の公式服装の優先供給権などを依頼した。コンサルタント料として「みなし公務員」である高橋元理事の会社を経由して5100万円を供与を受けた。ただ、AOKI側から5100万円を受領したと起訴されたものの、贈賄罪の公訴時効は三年で、それ以前の提供分は立件されていない。

   比較するのはお門違いかもしれないが、青木被告は大会組織委の会長だった森元総理に「現金200万円を手渡した」と供述(2022年9月1日付・産経新聞Web版)。これに対し、高橋元理事には5100万円なので、ケタ違いだ。とてつもない「影響力」のある権限を高橋元理事はなぜ振るうことができたのか。その一つには、東京オリ・パラそのものを誘致するロビイストだったという背景がある。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦(8億9000万円)の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。

   「何をどう言われようが、東京五輪を誘致したのはオレさまだ」、そして「スポンサー集めは電通専務だったオレしかできない」との強烈な自負心があったのだろう。大会組織委は高橋元理事の独壇場だったに違いない。

⇒22日(土)夜・金沢の天気    はれ 

☆政治家へのテロ行為 根深い恨みなのか義憤なのか

☆政治家へのテロ行為 根深い恨みなのか義憤なのか

   戦後、政治家への襲撃事件を起こした3人の若者に共通点はあるのか、探ってみたい。解散総選挙を控えた昭和35年(1960)10月12日、東京の日比谷公会堂で当時の自民党と社会党、民社党の党首演説会が行われた。社会党の浅沼稲次郎委員長が演説中に壇上に駆け昇ってきた17歳の山口二矢(おとや)に刃物で脇腹や胸を刺され死亡した。逮捕された山口は東京少年鑑別所に入れられたが、事件の3週間後の11月2日、首吊り自殺した。山口は、銀座・数寄屋橋での辻説法で知られた赤尾敏(1899-1990)が率いた大日本愛国党に入党するなど、右翼思想に傾倒していた。

   今月15日、和歌山市の漁港で選挙の応援に訪れていた岸田総理に向かって手製の爆発物が投げ込まれた事件。逮捕された木村隆二容疑者24歳は、被選挙権を30歳以上とする規定や供託金(300万円)を必要とする規定などがあり参院議員選挙に立候補できなかったのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求める裁判を起こしていた(18日付・NHKニュースWeb版)。

   木村容疑者が起こした裁判は、代理人の弁護士をつけない「本人訴訟」で行われている。裁判所に提出した準備書面で、憲法15条の3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と定められているのに、被選挙権の年齢制限や供託金の制度が設けられているのは実態は「制限選挙」であり、憲法違反だとして批判していた。また、ツイッターで、岸田内閣は安倍元総理の国葬を閣議決定のみで強行したと主張し、「このような民主主義への挑戦は許されるべきものではない」などと訴えていた(同)。

   去年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍元総理を手製の銃で撃って殺害したとして、同市に住む山上徹也容疑者41歳が殺人と銃刀法違反の罪で逮捕された。2005年まで3年間、海上自衛隊の広島県呉地区の部隊で勤務していた。今後、裁判員裁判で審理されることになるが、殺害の動機とされるのが、母親が世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)へ高額な献金をしたことから家庭が崩壊し、恨みを募らせたことが事件の発端とされる。安倍氏は祖父・岸信介の代から三代にわたって旧統一教会と深いつながりがあり、山上被告は安倍氏にも恨みを抱いていたとされる。

   3人の凶行で思い当たるのは、「義憤」という言葉だ。山口の場合は、浅沼稲次郎が1959年に中国を訪問した際に、「アメリカ帝国主義は日中両国人民の共同の敵」と演説したことが、日本の赤化(共産化)を図ろうとする許し難き人物と義憤をたぎらせた。木村容疑者は制限選挙は憲法違反、さらに、世論の反対が多いにもかかわらず安倍元総理の国葬の決行したことは民主主義への挑戦と。また、山上被告はいわゆる「宗教2世」として貧困を体験して、旧統一教会と関わりが深かった安倍元総理に銃を向けた。

   義憤は「道理に外れたことや、公平ではないことに対する怒り」と解釈している。山上被告の場合は当事者であり体感型の義憤、山口の場合は思想型の義憤、木村容疑者は被害者意識型の義憤と言えるかもしれない。彼らの行為を正当化するつもりはいっさいない。

⇒18日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

   前回ブログの続き。北海道の根室の目と鼻の先にある歯舞諸島など北方領土で、ロシアは軍事演習を行う。極東を拠点とする太平洋艦隊を戦闘態勢に移行させ、サハリン本島と日本の北方領土周辺で仮想敵の上陸阻止を想定した軍事演習だ。時期は明らかにしていない。

   ロシア側は去年3月21日、日本との平和条約交渉の中断を一方的に表明して以降、立て続けに北方領土などで軍事演習を行っている。4月には国後島と択捉島にある2ヵ所の演習場で、1000人以上の兵士と軍事装備を投入し、対戦車ミサイルシステムや自走砲などの実弾発射を実施した。「北方四島は固有の領土」との立場を貫く日本を牽制し、ロシアの実効支配を強くアピールする狙いだろう。

   さらに気になるのは中国が、北方四島をめぐるロシアの領有権に軟化の姿勢を表明したことだ。共同通信Web版(4月4日付)によると、3月20-21日に習近平国家主席がプーチン大統領と行った会談で、北方四島の領有権問題について「(どちらか一方の)立場を取らない」と表明していたことが分かった。中国関係筋が明らかにした。中国は1964年に最高指導者だった毛沢東が北方四島は日本領だと明言して以降、その認識を崩していなかったが、ロシア側に歩み寄り、中立の立場に変更したことになる。

   表明した経緯はこうだ。会談でプーチン氏がロシアが去年3月に北方四島に設置した免税特区の活性化が重要だと指摘。先月16日の日韓首脳会談で日韓関係が改善したため、韓国企業による投資は望めないとの認識を示し、中国企業の投資を要請した。これに対し、習氏は領有権問題については「立場を取らない」と表明した。特区への投資に参加するかどうかは、経済政策を担う国家発展改革委員会の担当者に検討させるとのみ述べ、明確な回答は避けた(4月4日付・共同通信Web版)。

   以下はあくまでも憶測だ。この記事の発信は【北京共同】とあり、中国側から共同通信に伝わった情報だ。日本で報道されることで、日本側の反応を中国はうかがっているのだろう。さらに一歩踏み込んで、「免税店特区」と表現されているが、これはたとえで、プーチン氏は「軍事基地」への中国参加を促したのでないだろうか。習氏はとりあえず、領有権問題については「立場を取らない」と返答するにとどめた。北方四島をめぐり中露による何らかの駆け引きが始まっている、との憶測だ。別に根拠があるわけではない。(※地図は、外務省公式サイト「日本の領土をめぐる情勢」より)

⇒16日(日)夜・金沢の天気      くもり

★物騒な世の中「政治家テロ」日本と「北方領土に偽旗」ロシア

★物騒な世の中「政治家テロ」日本と「北方領土に偽旗」ロシア

   日本はいつの間にか「テロ多発国家」になった。報道によると、きょう15日午前11時半ごろ、和歌山市の雑賀崎漁港で、岸田総理が衆院和歌山1区の補欠選挙の応援演説を始める直前に、銀色で金属製とみられる筒状の爆発物が投げ込まれた。「ドン」という大きな爆発音とともに白い煙が上がった。岸田総理は現場から避難してけがはなく、30代の男性警察官1人が左腕にけがを負った。

   投げ込んだ男が警察官に取り押さえられた。威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕されたのは兵庫県川西市に住む木村隆二容疑者、24歳。政治家への襲撃は去年7月8日、安倍元総理が参院選の応援で訪れた奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡している。

   来月15日からG7広島サミットが開催される。世界のメディアの論調は、政治家へのテロが多発する日本は安全なのかと不安視するに違いない。

   話は変わる。「ロシアの言うことが信じられない、プーチンの言うことが信じられない」、世界の民主主義国家の多くの人々はそう思っているのではないだろうか。ウクライナ政府を「ネオナチ」呼ばわりして武力侵攻を正当化する偽旗作戦はその象徴的な事例だ。物騒な話になるが、その二の舞いが日本で起きるかも知れない。

   報道によると、ロシアのショイグ国防相は14日、ロシア軍幹部との会合で、極東ウラジオストクに司令部を置く太平洋艦隊が、北方領土やサハリンへの敵の上陸を阻止することを目的にした軍事演習を開始したと明らかにした。 演習では空軍、海軍、航空宇宙軍が参加し、ミサイルや魚雷発射などの対潜水艦攻撃の訓練も行う。「北方四島は固有の領土」との立場を貫く日本を牽制し、ロシアの実効支配を強くアピールする狙いだろう。

   北方領土の歯舞諸島などは根室の目と鼻の先にある。ここでロシアは敵の上陸を阻止する軍事演習を行うというのだ。日米安保条約があるので、ロシアの軍事演習を阻止すればよいと思ってしまうが、日本が実効支配できていない地域は日米安保の適用対象外となり、アメリカの防衛義務は生じない。北方領土がロシアによる不法占拠であるにもかかわらず、だ。

   去年4月4日、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディアで「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べ、物議を醸した。これを口実に、プーチン大統領が「北海道の権利の奪還」という偽旗を掲げて動き出すのではないだろうか。ロシアの軍事演習はその予行ではないのか、とは考え過ぎだろうか。

⇒15日(土)夜・金沢の天気     くもり