⇒ニュース走査

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

   これはロシアのプーチン大統領の「敗北」を意味しているのかもしれない。国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナを侵攻して500日が過ぎ、さらに国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで伝統的に中立政策を掲げてきた北欧のスウェーデンとフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請し、フィンランドはことし4月に正式加盟。スウェーデンも難色を示してきたトルコが議会で批准の手続きを進めることになり、加盟に向け前進することになった(11日付・NHKニュースWeb版)。

   プーチン大統領にとってはNATO拡大そもののがロシアの脅威に映っているに違いない。そして、ウクライナも去年9月にNATOへの加盟を正式に申請している。ただ、NATOは第三国からの攻撃に対し加盟国が互いに防衛参画することで合意しているため、ウクライナの加盟がNATOとロシアの全面的な対立となる可能性もあるとして、加盟に慎重な国もある。そのNATOの首脳会議が11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで開かれる。この会議でウクライナの加盟についてどのような議論が交わされるのか。

   「ブレグジット(Brexit)」と呼ばれ、イギリスがEUから離脱したのは2020年1月だった。そのイギリスが今月16日にニュージランドで開催されるTPP(環太平洋連携協定)の閣僚級会合で加盟を認めることが正式に承認される。IMFによると、イギリスの加盟によりTPPの経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(今月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初、アメリカを含めた12ヵ国の協定だったが、2017年にトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国で「CPTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定)」として再出発した。日本は引き続きアメリカに復帰を求めている(同)。ただ、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を進めている。

   軍事の対ロシア包囲網をNATOが、経済の対中国包囲網をアメリカが、それぞれ担っている。世界の新たな2極化の動きでもある。

⇒11日(火)午後・金沢の天気    くもり

☆風評をどう払うのか 福島原発事故の処理水を海洋放出へ

☆風評をどう払うのか 福島原発事故の処理水を海洋放出へ

   金沢は強烈な暑さになっている。金沢地方気象台は午後0時07分に36.3度だったと伝ている。外出すると熱波にムッーと包まれる感じがする。酷暑。

       ◇       ◇

   韓国のスーパーでは塩や昆布、ワカメ、海苔など海草類の売上が急増しているようだ。スーパー大手「イーマート」の売上(6月12-25日)の塩の売上は前年同期比で156%、海藻類は品目によって69%から92%の増だった。「ロッテマート」でも同じ期間で塩は150%増、海藻類は20%以上増だった(6月27日付・中央日報Web版日本語)。

   この背景にあるのが、2011年3月11日の東日本大震災の津波で発生した福島第一原発での事故。溶け落ちた核燃料(デブリ)を冷やすための水は高濃度の放射性物質を含んだ「汚染水」となる。さらに、原子炉建屋・タービン建屋といった建物の中に地下水や雨水が入り、汚染水と混じり合うことで新たな汚染水が発生した。これらの汚染水には放射性物質の濃度を低減する浄化処理が施され、「処理水」として敷地内のタンクで保管されている。ただ、放射性物質トリチウムは除去できない。

   政府は処理水を海洋放出する計画を進めている。トリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満になるように海水で薄め、海底トンネルを通して福島第一原発の沖1㌔で放出する計画だ。処理水は溜まり続けていて、保管量は133万㌧になり、容量の97%に達している。ところが、放出となるとさまざまな風評を呼ぶことになる。

   冒頭で述べた韓国のスーパーで塩と海藻類を買い求める動きが広がっているのもその事例だろう。韓国の尹錫悦政権は処理水の放出に関して冷静な対応を国民に呼びかけているものの、最大野党「共に民主党」の李在明代表は先月22日の集会で、処理水を「核廃水と呼ぶべきだ」となどと主張している(6月23日付・読売新聞Web版)。

   そもそも、福島沖に処理水が放出されたとして、それが韓国の海水域での塩の精製に影響を及ぼすだろうか。黒潮は対馬海流となって日本海を流れるが、これは福島側を通る潮の流れではない。韓国がもし塩を採取した際に核物質が混ざるとしたら、それは北朝鮮の核実験場である豊渓里から流れ出た汚染水が日本海に流れ、リマン海流に乗って韓国沖にやってくる可能性の方が高いのではないだろうか。

   IAEAは今月4日、日本政府の海洋放出の計画について包括リポートを公表している。この中で、「Japan’s plans to release treated water stored at the Fukushima Daiichi nuclear power station into the sea are consistent with IAEA Safety Standards.」(意訳:処理水を海洋放出する日本の計画は、IAEAの安全基準と合致している)、「the discharges of the treated water would have a negligible radiological impact to people and the environment.」(同:処理水の放出が人や環境に与える放射線の影響は無視できるほど極わずかなものだ)と評価している。

(※写真は、IAEA公式サイト「福島の処理水の放出に関するIAEAの報告」より)

⇒7日(金)午後・金沢の天気    くもり

★北朝鮮の発射体は「はりぼて衛星」だったのか

★北朝鮮の発射体は「はりぼて衛星」だったのか

    5月31日朝、沖縄県にJアラート=全国瞬時警報システムが鳴り響いた。「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中や地下に避難して下さい」と。間もなくして、「先ほどのミサイルは我が国には飛来しないものとみられます。避難の呼びかけを解除します」に切り替わった。Jアラートを報じるNHKニュースをチェックしていたが、スピード感のある速報だった。緊張が走ったのも、これに先立って北朝鮮が4月29日に「31日から来月11日までの間に『人工衛星』を打ち上げる」と日本に通告していたからだ。

   その後に韓国メディアのWeb版に切り替えた。すると、通信社の「聯合ニュース」は、韓国軍の消息筋の話として、北の宇宙発射体が予告された落下地点に行かず、レーダーから消失したと伝えていた。

   さらに北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央通信」Web版をチェックすると、「午前6時27分に西海衛星発射場から軍事衛星『万里鏡1号』を新型ロケット『千里馬1型』に搭載・発射した」「1段目の分離後、2段目のエンジン始動に異常があり推進力を失って朝鮮西海(黄海)に落ちた」。失敗の原因を「千里馬1型に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安定性が低く、使用された燃料の特性が不安定であることに事故の原因があった」とした上で、「国家宇宙開発局は衛星発射で現れた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、可能な限り早期に2回目の発射を断行する」と報じていた。

   北朝鮮の衛星発射の失敗から36日。きょう6日付の韓国メディア「中央日報」のWeb版をチェックすると、その結末が報じられている。韓国軍合同参謀本部は黄海に落下した北朝鮮の衛星の残骸を引き上げて分析した結果をきのう5日に発表した。米韓が共同分析した結果では、搭載されていたカメラは横・縦1㍍が1個の点で表示されることを意味する「解像度1㍍級」よりはるかに解像度が落ちるもので、偵察を目的とした軍事的効用はまったくないことが分かった。(※写真、先月16日に引き揚げられた発射体の残骸の一部=撮影:韓国軍合同参謀本部)

   その上で、ミサイル防衛に詳しいマサチューセッツ工科大学の専門家のコメントとして、「技術的に発展した国というこ学を見せるためのもの」と紹介し、いわゆる「はりぼて衛星」をあたかも全世界を偵察できる能力があるように見せかける意図があったのではないかと指摘した。

   ただ、北朝鮮は再度の衛星打ち上げを断行すると表明している。必要な技術と部品、装備を調達するとなれば、ロシアの支援を受けるしかないのではないか。

⇒6日(木)午後・金沢の天気    はれ

☆安倍事件まもなく1年 旧統一教会の「献金の闇」

☆安倍事件まもなく1年 旧統一教会の「献金の闇」

   これを宗教というのだろうか。宗教の名を借りた集金システムではないのか。3日付の共同通信Web版によると、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団トップの韓鶴子総裁が6月末、教団内部の集会で「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」「日本の政治は滅ぶしかないだろう」と発言していたことが3日、関係者への取材や音声データで分かった。教団側は6月中旬までに、年間数百億円にも上るとされる日本から韓国への送金を今後も取りやめると説明していたが、トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる。

   あれから間もなく1年になる。2022年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍元総理が銃で殺害された。同市に住む山上徹也容疑者が殺人と銃刀法違反の罪で逮捕された。これから裁判員裁判で審理されることになるが、殺害の動機とされるのが、母親が旧統一教会へ高額な献金をしたことから家庭が崩壊し、恨みを募らせたことが事件の発端とされる。安倍氏は祖父・岸信介の代から三代にわたって旧統一教会と深いつながりがあり、山上被告は安倍氏にも恨みを抱いていた。   

   さらに、2022年12月9日の参院消費者問題特別委員会で、いわゆる「宗教2世」の女性が訴えた。「これだけ悪質な団体が活動の一時停止もなく、税制優遇を受けていることはあってはならない」「両親が親戚中を勧誘したり、お金を要求したり、そのことで怒られているところも見てきました。また、高校生から始めた5年間のアルバイト代200万円ほどの給与も没収され、一度も返ってきませんでした」(同日付・朝日新聞Web版の意見陳述)

   多額の献金は韓国の本部に集められた。それはどこに流れたのか。「文藝春秋」(2023年1月号)は「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」の見出しで報じている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた、と。

   さらにDIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。

   高額献金をめぐる旧統一教会の「深い闇」をどう断罪するのか。断罪がなければまた繰り返される。

⇒3日(月)夜・金沢の天気     くもり

★「ならば自主返納」 マイナカードに渦巻く不安と不満

★「ならば自主返納」 マイナカードに渦巻く不安と不満

   きょうNHK「日曜討論」を視ていた。マイナンバーカードをめぐる一連のトラブル騒動について、河野デジタル大臣は陳謝した。そして、来年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させる方針については「猶予期間が1年あり、現実にはこれから2年半ということになり問題はない」と述べていた。また、河野大臣は「次にカードを更新する時にはマイナンバーカードという名称をやめた方がいいと個人的に思っている」とも述べていた。このコメントそのものがますます国民に混乱を与えるのではないか。

         国民のマイナンバーカードへの不安や不満が、返納というカタチで表れている。 共同通信が都道府県所在地と政令指定都市の計52市区を対象に行った調査で、マイナンバーカードの自主返納について集計していたのは29市で、その合計は4月は21件だったものが、5月以降で少なくとも318件に上っていることが分かった(2日付・共同通信Web版)。最多は堺市の44件だった。金沢市では5月以降で21件の返納があった。返納届の記載には「信用できない」「問題が多い」があったという(同)。

   岸田総理はマイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」と位置づける狙いがあるようだが、国民世論とはズレている。世論調査(共同通信・6月17、18日調査)では、健康保険証の廃止について、「廃止を延期するべき」38.3%、「廃止を撤回するべき」33.8%と計72.1%ものが来年秋の廃止に違和感を持っているこのミゾをどう埋めるかが先決だろう。そもそも論ではあるが、マイナンバーカードは市区町村長が交付するもので、取得は義務ではなく任意である。なのに、健康保険証を廃止して、マイナンバーカードに一本化するなど本末転倒ではないかとの強い違和感が世論にはある。

   政府は国民にもっと丁寧に説明すべきだろう。ところが、政府はマイナンバカードの仕組みそのものに問題はなく、カードを発行する自治体で共用端末のログアウト忘れや事務処理の誤りなど人為的なミスが続発しているとの理解だ。これを受けて、政府は省庁横断の新たな対策本部「マイナンバー情報総点検本部」を総務省や厚労省などを中心に発足させた。総点検本部では、問題があるケースについて、データを点検し結果についてことし秋に公表する。簡潔に言えば、自治体に間違いなくやれと締め上げているようなものだ。   

   岸田総理の肝いりで立ち上げた総点検本部で、国民の不安と不満を払拭し、来秋の保険証の廃止に向けて道筋をつけることができるのかどうか。対応を誤れば間違いなく岸田政権に難局が訪れる。正念場を迎えている。

(※写真は6月18日、母校の早稲田大学で講演する岸田総理=総理官邸公式サイトより

⇒2日(日)夜・金沢の天気     くもり

☆能登大雨で熊木川の氾濫 大伴家持が詠んだ「熊来」伝説

☆能登大雨で熊木川の氾濫 大伴家持が詠んだ「熊来」伝説

   きょうから7月、その初日は能登半島は大雨に見舞われた。とくに中能登と呼ばれている七尾市中島地区の熊木川の一部流域では、氾濫危険水位を超えて農地や道路が冠水し、住宅では床下浸水の被害があった。中島地区など5800世帯・1万4100人を対象に避難指示が発令された=写真、1日付・夕刊各紙=。

   このニュースが気になったもの、中島地区で激しい雨を自身も経験したことがあるからだ。ちょうど6年前、2017年7月1日だ。能登へ乗用車で出かけ、自動車専用道「のと里山海道」の中島地区で、大雨に巻き込まれた。雨がたたきつけるようにフロントガラスに当たり、ワイパーの回転を一番速くしても前方が見えず、しばらく車を停車し小降りになるのを待った。再び出発すると、たたきつけるような雨に再び見舞われた。3度運転を見合わせた。波状的な激しい雨は初めてだった。このとき能登では1時間で53㍉の非常に激しい雨が観測され、七尾市の崎山川や熊木川などが一部氾濫した。   

   話は変わるが、熊木川にはちょっとした思い入れもある。川の河口の七尾西湾は「能登かき」で知られる養殖カキの産地でもある。里山の栄養分が熊木川を伝って流れ、湾に注ぎこむ。その栄養分が植物プランクトンや海藻を育み、海域の食物連鎖へと広がり、カキもよく育つとされる。とくに、里山の腐葉土に蓄えられた栄養分「フルボ酸鉄」が豊富にあると現地で学んだことがある(2010年5月・金沢大学「里山里海環境調査」)。学習的なことは別として、能登かきのファンにとっては気になる場所なのだ。

   和歌をたしなむ人々にとっても気にかかるのが「熊来」(のちに熊木村、現在の中島地区)かもしれない。天平20年(748)に越中国の国司だった大伴家持が能登を巡行している。そのときに詠んだ歌が万葉集におさめられている。「香島より熊来をさして漕ぐ舟の梶取る間なく都し思ほゆ」。以下、自己解釈で。(七尾の)香島から熊来の在所に向かって舟を漕いでいく。舟舵を取るのも忙しいが、それ以上に都のことがひっきりなしに思い浮かんでくる。

   作者は不詳だが、万葉集にはさらに2つの「熊来」が出て来る。「梯立の熊来のやらに新羅斧堕入れわし懸けて懸けて勿泣なかしそね浮き出づるやと見むわし」「梯立の熊来酒屋に真罵らる奴わし誘い立て率て来なましを真罵らる奴わし」(※七尾市「能登国府」パンフより)

   ある愚か者が鉄斧を熊来の河口の海底にうっかり落とした。海に沈んでしまえばもう浮かび上がることはないのに泣いてばかりいるので、しかたなく「そのうち浮かんで来るよ」とみんなでなだめた。熊木の在所の酒蔵でえらく怒鳴られている従業員がいたので、誘って連れ出そうかと思ったが、「怒鳴られているあんたはどうする」と。

   8世紀に成立した日本最古の和歌集に、おそらく当時の最先端の言葉であったであろう「酒屋」と「新羅斧」が出てくる能登はどのような風景だったのか。豪雨の熊木川から連想した。

⇒1日(土)夜・金沢の天気     あめ

★宗教画を強制移設 「聖戦」勝利はプーチンの願い

★宗教画を強制移設 「聖戦」勝利はプーチンの願い

          ロシアをめぐる騒々しいニュースは、「プリゴジンの乱」だけではないようだ。BBCニュースWeb版(今月5日付)は「Ukraine war: Holy Trinity painting on display in Moscow」の見出しで、ロシアでもっとも有名な宗教画とされる「聖三位一体」がプーチン大統領の命令で、国立美術館からモスクワ大聖堂に移され展示されたことが物議を醸している、と伝えている=写真=。

   宗教画は「イコン(Icon)」と称され、聖三位一体のイコンは15世紀初頭に描かれたもので、旧約聖書の一場面でとされる。16世紀にモスクワ教会はこれをイコンと定めて保管してきたが、ロシア革命の後は宗教活動が認められなくなったため、1929年から国立トレチャコフ美術館で所蔵されていた。それをプーチン大統領がロシア正教の総本山であるモスクワ大聖堂に強制的に移設し、6月4日から一般公開している。

  ただ、このイコンは壊れやすく、美術館ではこれまで温度と湿度が制御された部屋に置かれ、修復チームがメンテナンスを行ってきた。まさに、「it was like a person in intensive care(集中治療室にいる人のような)」状態だった(BBCニュースWeb版)。それほど破損が危ぶまれる作品を、プーチン氏はなぜ移設を命令したのか。

   ロシア正教の総主教はウクライナ侵攻を「holy war.(聖戦)」と称して、プーチン氏を支持してきた。そして、総主教は「This icon returns to the Church at a time when our Fatherland is confronting massive enemy forces」と信者に語っている。つまり、戦争中にイコンを大聖堂に戻すとロシアが勝利する、と。

   BBCはこう締めくくっている。「To make Russians believe that God is on their side. And to make them forget that it was their country that invaded Ukraine.」。プーチン大統領の狙いは、イコンがここにある限り敵国に勝てるとロシア人に信じさせる。それは、ウクライナを侵略したのはロシアであることを彼らに忘れさせるため、なのかもしれない、と。

   モスクワ大聖堂に展示されている聖三位一体のイコン。プーチン氏はイコンが奇跡をもたらすと本当に信じているのだろうか。

⇒27日(火)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★たった1日の「プリゴジンの乱」でもプーチンは許すか

★たった1日の「プリゴジンの乱」でもプーチンは許すか

   BBCニュースWeb版(25日付)はそのことを、「Prigozhin was adamant this was “a march for justice”, not a coup. Whatever it was, it came to an end very fast.」と伝えている=写真=。プリゴジンは、これはクーデターではなく「正義のための行進」であると断固として主張した。それが何であれ、それは非常に速く終わった。BBCはじつに簡潔な表現で伝えている。

   ウクライナへの軍事侵攻をめぐり、ロシア国防省を非難する民間軍事会社ワグネルは24日朝にロシア南西部のロシア軍の拠点に入った。これに対し、プーチン大統領は同日午前、緊急テレビ演説を行い、ワグネルの行動は「我が国民を後ろから刺す」「裏切り」と非難した。これに対し、ワグネル創設者のプリゴジン氏は、この行動はロシア国民のためで、「正義のための行進」だと述べ、モスクワへと北上を続けた。

   それが一転、部隊を引き返す。プリゴジン氏は24日夜(日本時間の25日午前2時すぎ)にSNSの音声メッセージで、「われわれは正義の行進に出た。しかし、ロシア人の血が流れることへの責任を自覚し、部隊を拠点に戻すことにした」と、流血の事態を避けるための決断だと述べた(25日付・NHKニュースWeb)。

   一連のニュースに注目していて、プリゴジン氏は反乱者なのか英雄なのかと思っていたが、どうやらただの反乱者のようだ。メディア各社の報道をまとめると、ロシアと同盟関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領がプリゴジン氏と直に協議を行い、プリゴジン氏がルカシェンコ大統領の申し出を受け入れた。プリゴジン氏をベラルーシに亡命させる。ワグネルの部隊はロシア国防省に組み入れる。プーチン大統領は緊急テレビ演説で「国家反逆罪と見なす」「全員処罰すると」と述べていたが、ロシア大統領府の報道官は、プリゴジン氏ならびにワグネルの戦闘員に対して、「罪は問わない」と表明した。

   以下は憶測だ。プリゴジン氏は現政権にたった一日とは言え、反旗を翻した反乱者であることは事実である。この「プリゴジンの乱」をプーチン大統領は許すだろうか。今後プリゴジン氏はベラルーシに逃れるとは言え、将来、同調する勢力が現われ再び反旗を翻すとも限らない。プーチン氏はそう考えるのではないか。覚悟なき反乱の報い、その顛末はどうなる。

⇒25日(日)夜・金沢の天気    くもり

☆真珠湾とヒロシマを世界の子どもたちの平和教育の場に

☆真珠湾とヒロシマを世界の子どもたちの平和教育の場に

   もう7年前になる。アメリカの当時のオバマ大統領が2016年5月27日、伊勢志摩サミット(G7首脳会議)の帰りに、安倍総理とともに広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、献花に臨んだ。オバマ氏は献花の後に頭を下げずに黙祷した。原爆投下の「謝罪はせず」という意味を込めていた。アメリカの現役大統領で初めての献花だった。(※写真・上は、オバマ大統領が安倍総理とともに原爆慰霊碑で献花=外務省公式サイト「オバマ米国大統領の広島訪問」より)

   そして、その7ヵ月後の12月26日、安倍氏はオバマ氏とともにハワイのパールハーバー(真珠湾)を訪れ、かつて攻撃した側と攻撃された側の国の首脳がそろって慰霊した。このとき、安倍氏は「不戦の決意」を語ったが、謝罪に関することは口にしなかった。安倍氏とオバマ氏の双方が戦争の始まりと終焉の地で慰霊したことで、過去の悲しみを耐えて憎しみを乗り越え、過去への謝罪ではなく、未来志向で平和と和解のかけ橋の役割を果たす決意でもあった。(※写真・下は、パールハーバーを訪れ、声明を発表する安倍総理=外務省公式サイト「安倍総理大臣のハワイ訪問」より)

   そして、ことし5月19日、G7広島サミットに訪れた各国首脳らが原爆慰霊碑で一列に並んで花を手向け、記念の植樹をした。国際社会に向けて核兵器による惨禍を二度と起こさないという強いメッセージとなったことは間違いない。

   そのハワイのパールハーバー国立記念公園と広島の平和記念公園が姉妹公園の協定を結ぶことになった。メデアィア各社の報道によると、広島市が発表した。ことし4月、アメリカ側から広島市に対し、G7広島サミットをきっかけに協定を結びたいという打診があり、同市はG7サミットで出された核軍縮に関する声明「広島ビジョン」の実現に向けた機運の醸成にもつながるとして、受け入れを決めた。今月29日に姉妹公園の協定を結ぶ(22日付・NHKニュースWeb版)。

   協定は署名から5年間有効で、具体的には▽若い世代に平和の尊さを伝える企画や▽公園の保全や来場者を増やす手法の共有などで連携する方針。アメリカ側は、パールハーバー国立記念公園について「太平洋戦争の当事者間の相互理解と平和の推進を目的とし、平和公園と目指すところは共通している」という見解を示している。29日の調印式は都内にあるアメリカ大使館で行われる予定(同)。

   パールハーバーとヒロシマにはその背後に脈々と流れる歴史の連続性というダイナミックなドラマがある。ぜひ、日米と世界の子どもたちへの平和教育の場として連携してほしいと願う。

⇒23日(金)夜・金沢の天気   あめ

★マイナカードぶれぶれ 大ぶれ米中関係 ガソリン上ぶれ

★マイナカードぶれぶれ 大ぶれ米中関係 ガソリン上ぶれ

   きのう自宅近くのガソリンスタンドで給油した。これまで1㍑165円前後だったのに、急に1㍑170円にアップした=写真・上=。スタンドの店員との立ち話だが、政府が石油の元売り会社に支給している補助金が徐々にカットされていて、「補助金がなくなれば、あと10円ほど高くなりますよ」とのこと。政府の補助金カットだけでなく、アメリカのFRBも年末までにさらなる利上げを示唆したことから円安が進んでいる。ガソリン価格もどこまでぶれていくのか。

   マイナンバーカード問題もぶれまくっている。目立つのは、マイナンバーカードと一体化した健康保険証をめぐってこれまでに他人の情報が登録されていたケースが7300件余り確認されているにもかかわらず、政府は来年秋に保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化する方針を進めている。政府とすれば、カードを発行する自治体による共用端末のログアウト忘れや事務処理の誤りなど人為的なミスによるもので、マイナンバカードの仕組みそのものに問題はない、との理解のようだ。

   岸田総理はマイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」と位置づける狙いがあるようだが、国民世論は健康保険証の廃止について、「廃止を延期するべき」38.3%、「廃止を撤回するべき」33.8%と、計72.1%ものが来年秋の廃止に違和感を持っている(共同通信・今月17,18日調査)。このミゾをどう埋めるかが先決だろう。

   アメリカと中国の関係もぶれにぶれている。アメリカのバイデン大統領は20日にカリフォルニア州で開かれた民主党の政治資金パーティーで今年2月にアメリカ軍が偵察用と思われる中国の気球を撃墜した問題に言及。「偵察機器を満載した気球を私が撃墜した際、習氏は激怒したが、それはそこに気球があったことを知らなかったからだ」「真面目な話だ。何が起きたか知らないというのは、独裁者にとって非常に体裁が悪いものだ」と述べた。習主席を「独裁者」呼ばわりした(21日付・AFP通信Web版日本語)。

   米中関係が悪化する中、アメリカのブリンケン国務長官が中国を訪れて19日に習主席と会談し、関係改善に向け対話を維持することを確認したばかりだった。バイデン大統領の心情は察するが、タイミングが悪くぶれ幅が大きく感じられた。

(※写真・下は、2022年11月、バイデン大統領と習主席がバリで会談=中国外務省公式サイトより)

⇒22日(木)午後・金沢の天気    あめ