#TPP

★「核汚染水」と呼び禁輸する中国に「TPP」ブーメラン

★「核汚染水」と呼び禁輸する中国に「TPP」ブーメラン

    日本など参加するTPP(環太平洋パートナーシップ協定)に先月、イギリスが協定に加入することが決まった。加盟国は12ヵ国となり、TPP経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(7月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初アメリカが主導した加盟12ヵ国だったが、2017年に当時のトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国でTPPを再出発した。日本はアメリカに復帰を求めているが、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「IPEF(インド太平洋経済枠組み)」を2022年5月に発足させている。加盟国は日本を含めた14ヵ国で、半導体のサプライチェーンの強化などを進めている。

   こうしたアメリカ主導の対中包囲網に対し、中国はTPP加盟申請を2021年9月に行っている。貿易制限による自国経済への影響を憂慮してのことだろう。現在、TPPに加盟申請しているのはウクライナ、中国、台湾、ウルグアイ、エクアドル、コスタリカの6つの国・地域だ。

   ここにきて、中国のTPP加盟について、日本では強烈な批判が起きている。福島第一原発の処理水の放出を理由に、中国が日本からの水産物を一方的に禁輸とした件だ。自民党の世耕参院幹事長は先月29日の記者会見で、「科学的な根拠なく、政治的・恣意的に、特定の国の特定の水産物を全面禁輸するような国には、TPPに加入する資格は全くない」と中国を批判。日本国内で相次ぐ中国発信の迷惑電話については「全く関係のない日本の店舗に電話をかけ、威力業務妨害に相当するようなことを行っている」と問題視し、日本政府に毅然とした対応を求めた(8月29日付・共同通信Web版)。

   憶測だが、中国がTPP加盟を望んでいる背景には、アメリカが離脱している間に加盟をすることで、アメリカ排除の主導権を握ろうとしているのかもしれない。ところが、処理水の放出に対する中国の動きに、日本は態度を硬化させた。中国がTPPに加盟するには、全加盟国の支持が必要だ。中国にとっては「ブーメラン」として戻って来る。

⇒3日(日)夜・金沢の天気   はれ

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

★世界が加盟に動く 新たな2極化なのか

   これはロシアのプーチン大統領の「敗北」を意味しているのかもしれない。国連憲章違反であるにもかかわらず偽旗を掲げてウクライナを侵攻して500日が過ぎ、さらに国連安保理を拒否権で機能不全に落とし込んでいるロシアに対して世界の多くの国々が疑心暗鬼になっている。これまで伝統的に中立政策を掲げてきた北欧のスウェーデンとフィンランドでさえ、NATOの加盟を申請し、フィンランドはことし4月に正式加盟。スウェーデンも難色を示してきたトルコが議会で批准の手続きを進めることになり、加盟に向け前進することになった(11日付・NHKニュースWeb版)。

   プーチン大統領にとってはNATO拡大そもののがロシアの脅威に映っているに違いない。そして、ウクライナも去年9月にNATOへの加盟を正式に申請している。ただ、NATOは第三国からの攻撃に対し加盟国が互いに防衛参画することで合意しているため、ウクライナの加盟がNATOとロシアの全面的な対立となる可能性もあるとして、加盟に慎重な国もある。そのNATOの首脳会議が11日から12日まで、ロシアと国境を接するバルト三国のリトアニアで開かれる。この会議でウクライナの加盟についてどのような議論が交わされるのか。

   「ブレグジット(Brexit)」と呼ばれ、イギリスがEUから離脱したのは2020年1月だった。そのイギリスが今月16日にニュージランドで開催されるTPP(環太平洋連携協定)の閣僚級会合で加盟を認めることが正式に承認される。IMFによると、イギリスの加盟によりTPPの経済圏は世界全体のGDP合計額の15%を占めることになる(今月8日付・Bloomberg-Web版日本語)。

   TPPは当初、アメリカを含めた12ヵ国の協定だったが、2017年にトランプ大統領が離脱を決め、日本など11ヵ国で「CPTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定)」として再出発した。日本は引き続きアメリカに復帰を求めている(同)。ただ、アメリカは対中包囲網の構築に向けて、ローバルサウスの代表格であるインドとインドネシアを加えた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の構築を進めている。

   軍事の対ロシア包囲網をNATOが、経済の対中国包囲網をアメリカが、それぞれ担っている。世界の新たな2極化の動きでもある。

⇒11日(火)午後・金沢の天気    くもり

★中国とTPPの信頼関係を築けるのか

★中国とTPPの信頼関係を築けるのか

   先月、中国と台湾がTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定、日本など11ヵ国)への加盟を相次ぎ申請した。このニュースの率直な感想は、中国にとってハードルは高いということだ。

   中国とすれば、タイミングを見計らっていたのだろう。今年は日本がTPPの議長国だが、2022年は中国加盟に歓迎の意を示してきたシンガポール、2023年はニュージーランドと関係が良好な国々だ。しかし、中国の加盟を歓迎しない国々も多い。オーストラリアは対中関係そのものが対立化している。カナダやメキシコはアメリカと締結しているFTAで「非市場経済」国との経済パートナーの締結を禁止している。さらに、中国より先に加盟申請しているイギリスが加盟条件を満たすことがほぼ確実とされ、この加入条件が中国にとってのハードルになるのではないだろうか。

   そもそも、中国には国有企業への優遇措置、知的財産権保護の不徹底、また、電子データ移転制限措置などTPPルールに抵触する要素が多い。さらに、TPPには強制労働の撤廃などの規定がある。新疆ウイグル自治区での強制労働が疑われている問題について、中国はどう説明するのだろうか。

   さらに警戒するのは、中国が2017年6月に施行した「国家情報法」だ。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があれば、ハッカー集団や中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。

   事例がある。警視庁はことし4月20日、日本に滞在歴がある中国共産党員でシステムエンジニアの30代の男が、サイバー攻撃に使ったレンタルサーバーを偽名で契約していたとして私電磁的記録不正作出・供用の容疑で書類送検した=写真=。2016年からJAXAや防衛関連の企業など、日本のおよそ200に上る研究機関や会社が大規模なサイバー攻撃を受け、警察当局の捜査で、中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊の指示を受けたハッカー集団「Tick」によるものと分かった。こうしたことが起こる限り、TPPパ-トナーとしての信頼が築けない。ここが問題なのだ。

   きょうの日経新聞(25日付)によると、中国は政府調達で外資企業が受ける差別的措置に乗り出したと報じている。入札条件などの公平性を高め、外資企業を事実状締め出す購入候補リストなどを修正する、としている。中国はTPPの加盟をにらみ、環境整備をアピールする狙いだろう。今後もいろいろな手を打ってくるだろう。しかし、上記で述べたように中国が「国家情報法」を最優先する限り、経済の信頼関係を築けない。

⇒25日(月)夜・金沢の天気     くもり時々あめ