#IOC

☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

    結局、いいように「金づる」にされているのか。時事通信Web版(6月3日付)によると、WHOが参加を呼びかけたワクチン供給の国際組織「COVAX」のサミット(オンライン会議)が2日開かれ、菅総理は新型コロナウイルスワクチンの途上国への公平な普及に向け、8億㌦の追加拠出を行うと表明した。途上国向けワクチンについては、これまで日本政府は2億㌦を拠出していて、今回の8億㌦と合わせると、拠出額はアメリカに次ぐ10億㌦となる。

   日本国内のワクチン接種は65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種は47万人(6月1日現在・総理官邸公式ホームページ)、率ではわずか1.3%だ。国内でこんな状況なのに、他国になぜ10億㌦も寄付をするのか、国内にもっと注力してほしいと誰しもいぶかるに違いない。

   金づるの仕組みはもう出来上がっている。5月15日付のこのブログでも述べたが、昨年2020年5月16日、WHOのテドロス氏とIOCのバッハ会長は「スポーツを通して健康を共同で促進していく覚書(MOU)」を交わしている。その中で、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)が示される。つまり、パンデミックの下で東京オリンピックを開催するしないの「決定権」を握っているのはWHOだ。

   テドロス氏がオリンピック参加国でもある低所得国にワクチンが行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないと言えば、バッハ会長も従わざるを得ないだろう。そこで、テドロス氏の意向を受けたバッハ氏が今度は東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本会長を通して、COVAXへの拠出を要望してきた。菅総理も日本が拠出しないと東京オリンピックのイメージダウンになると決断したのではないだろうか。

   この「COVAXストーリー」はさらに奥が深い。WHOが中心となってワクチンを共同購入することになるが、主な購入先は中国だろう。WHOは5月7日に中国国有製薬大手「中国医薬集団(シノファーム)」が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認。治験などから推定される有効性は79%。そして、きのう2日にも中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについて緊急使用を承認した。

   CNNニュースWeb版(6月2日付)=写真=によると、WHOはシノバック製ワクチンの使用認可で、供給問題に直面しているCOVAX計画が加速すると期待し、担当者は「世界全体で起きているワクチンへのアクセスの不平等さを克服するには、複数のワクチンが必要だ」と述べた。中国政府は、年末までに30億回分を生産したいとしている。

   これまで最大のワクチン供給元となっていた「インド血清研究所(SII)」は、国内の感染急拡大を受けて3月にワクチンの輸出を停止している。

   世界から集められた拠出金で中国製のワクチンを購入するシステムが出来上がる。同時に、中国としては、来年2月の北京冬季五輪はワクチンが世界に行き渡った状態で開催する。まさに「一石二鳥」と豪語しているだろう。日本はただの金づるになっているだけ。裏読みのストーリーではある。

⇒3日(木)午前・金沢の天気    はれ

☆オリンピックの終焉を暗示する「アルマゲドン」

☆オリンピックの終焉を暗示する「アルマゲドン」

   IOCの委員がイギリスの「Evening Standard」紙(5月26日付)に語ったコメントが波紋を広げている。記事の見出しは「Barring Armageddon, the Tokyo Olympics will go ahead, says IOC committee member Dick Pound」=写真・上=、意訳すれば、「アルマゲドンにならない限り、東京オリンピックはやれるだろう、IOC委員のディック・ポウンド氏は語る」。例えとは言え、「Armageddon」という言葉を使った時点で世界に強烈な衝撃を与えたに違いない。「人類最終戦争」という意味だが、久しぶりに聴いた言葉だ。

   自身がこの言葉を知ったのは、一連のオウム真理教事件の取材を通じてだった。オウム事件は、坂本堤弁護士一家殺害事件(1989年11月)、長野県松本市でのサリン事件(1994年6月)、東京の地下鉄サリン事件(1995年3月)など数々ある。一方で、犯行の首謀者で教祖の松本智津夫(麻原彰晃、2018年7月死刑執行)は「アルマゲドンが迫っている」と不安を煽ることで若者の心理につけ込み、信者を急速に増やしていた。あの電極が付いた「ヘッドギア」は「カルト教団」を強く印象づけた。

   その麻原彰晃が1992年10月、石川県能美市(当時・寺井町)で記者会見した。自身は当時、テレビ朝日系ローカル局の報道デスクで現場にも立ち会ったので覚えている。寺井町の油圧シリンダーメーカーの社長に麻原が就いた。前社長は信者で資金繰りの悪化を機に社長を交代した、という内容だった。ほとんどの従業員は教団の経営に反発して退職し、代わりに信者が送り込まれていたので「教団に乗っ取られた」と周囲の評判は良くなかった。まもなくして会社は倒産。会社の金属加工機械などは山梨県の教団施設「サテイアン」に運ばれていた。その後の裁判で、金属加工機械でロシア製カラシニコフAK47自動小銃を模倣した銃を密造する計画だったことが明らかになった。

   話が随分と横にそれた。「もう時機を逸した。やめることすらできない状況に追い込まれている」。先日届いた東京の知人(メディア専門誌編集長)からのメールマガジンにこのようなことが書かれてあった。東京オリンピック・パラリンピックの開催についてだ。メルマガでは、日本の戦史に残る大敗を喫した「インパール作戦」の事例が述べられていた。

   大戦の末期、日本軍は1944年3月からイギリス軍の駐留拠点だったインドのインパールに侵攻する。当時、十分な武器や食糧もない中での作戦だった。その時の陸軍司令官はこう言ったとされる。「兵器や弾丸、食糧がないことは戦いを放棄する理由にはならない。弾丸がなかったら銃剣がある、銃剣がなくなれば、腕で行け、腕がなくなったら足で蹴れ、足をやられたら噛みつけ。日本男子には大和魂がある。日本は神州である。神々が守ってくれる」と。この事例は、精神論ではもう大会の開催は無理だと物語っている。

   アルマゲドンにならなくても、すでにオリンピックへのモチベーションは下がっている。NHKニュースWeb版(5月17日付)によると、オリ・パラで予定されている海外選手の事前合宿や交流について、国内の感染拡大への懸念などから少なくとも全国の54の自治体で受け入れが中止された。相手国側から「日本で感染が収まらず移動にリスクがある」や「選手やスタッフの安全を確保できない」といった理由で中止が8割余りで、それ以外は、自治体側から申し出たり両者で協議したりしたケースだった。

   IOCが粘って開催を唱えれば、それだけ人々の心はオリンピックから遠ざかっていく。アルマゲドンという言葉を出したこと、それ自体がオリンピックの終わりを暗示しているのではないだろうか。

⇒28日(金)夜・金沢の天気     くもり

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

   WHOの「中国寄り」、またか。時事通信Web版(5月8日付)によると、WHOは中国国有製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。治験などから推定される有効性は79%という。中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについても審査中で、近く結果が発表される見通し。

   WHOの公式ホームページをチェックする。「WHO lists additional COVID-19 vaccine for emergency use and issues interim policy recommendations」のページに承認に至った経緯を紹介している。以下、ポイント。シノファームのワクチンに関しては、WHOは製造施設の現地査察を行った。WHOの予防接種に関する戦略的諮問グループ(SAGE)は入手可能なすべての証拠に基づいて、症候性および入院性疾患に対するワクチンの有効性はすべての年齢層を合わせて79%と推定した。ただし、臨床試験に登録された高齢者(60歳以上)がほとんどいなかったため、この年齢層での有効性を推定できなかった。高齢者とそれ以外の年代で有効性が異なるという分析結果と理論的な根拠はない。

   要は、緊急使用として有効性79%のワクチンを承認した。データは中国の生産現場を訪れて入手したもので、WHOが独自に医療現場で治験に立ち会って得たデータではない。60歳以上の高齢者への有効性についてのデータはない。つまり、消去法でのデータだ。

   実は中国のワクチンの有効性を疑うニュースが以前報じられていた。イギリスのBBCニュースWeb版(2021年4月12日付)は「Chinese official says local vaccines ‘don’t have high protection rates’」の見出しで伝えている=写真=。中国の疾病対策センター(CDC)のトップが4月10日の記者会見で、中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と述べ、「効果を高めるため、いくつかのワクチンを混合させることを政府として検討している」と述べた。しかし、その後、トップは予防効果が低いとした点について、「完全な誤解」と発言を撤回した。

   BBCは同じ記事で、中国のシノバックのワクチンを事例に有効性の数値を上げている。ブラジルでの臨床試験の結果で有効性は50.4%、トルコとインドネシアで実施された臨床試験の中間結果では有効性は65~91%だった。WHOはワクチン承認の条件として、50%以上を目安としている。

   アメリカのファイザーやモデルナ、イギリスのアストラゼネカなど欧米のワクチンの有効性は90%前後かそれ以上と報じられている。中国CDCのトップが「予防できる確率はあまり高くない」と発言して1ヵ月、それから各段にワクチンの有効性が向上したとは考えにくい。WHOはシノファームの「79%」の論拠をもっと明確に示すべきだろう。

   WHOはワクチンを途上国や貧困国などへ配分できるよう、国際的な枠組み「COVAX」を立ち上げたが、製薬メーカーが欧米に偏っており、ワクチン供給がままならない状況に陥っている。焦りを感じたWHOのテドロス事務局長による緊急措置だろう。が、もう一つのシナリオを裏読みしてみる。

   中国のオリンピック委員会はIOCのバッハ会長に、今夏の東京五輪と来年の北京冬季五輪の参加者にワクチンを提供したいとの申し出を行った(2012年3月11日付・ロイター通信Web版日本語)。新疆ウイグルなど少数民族や香港での統制強化が問題視されて欧米などで北京五輪ボイコットの動きに反応したのだろう。このとき、バッハ氏は「WHOのお墨付きが必要だ」とアドバイスしたのではないだろうか。そこで、習近平国家主席はWHOのテドロス氏に依頼。今月7日にテドロス氏から緊急使用ということで承認は可能との連絡が入った。するとさっそく習氏はバッハ氏に電話をし、「IOCと引き続き連携し、東京五輪の開催を支持したい」と表明した(5月7日付・共同通信Web版)。

   時間的なタイミングを読めば、上記のようなストーリーもできるのだ。中国はこれから「WHOのお墨付きがある」と大手を振ってワクチン外交を展開することだろう。

⇒9日(日)午前・金沢の天気     あめ後はれ

☆東京オリンピックまで90日 見えてきた課題

☆東京オリンピックまで90日 見えてきた課題

   7月23日の東京オリンピック開幕式まであと90日に迫った。やはり思うことは、コロナ対策として果たして準備できているのだろうか、そして何を準備する必要があるのか、大会組織委員会から国民に向けたメッセージが聞こえてこない。

   3月20日の大会組織委員会と政府や東京都、IOCなどの5者会談で現在のコロナ禍の状況では海外から日本への自由な入国を保証することは困難だとして、海外からの観客の受け入れを断念することを決めている。さらに、国内観客の入場制限について結論を6月まで先送りするようだ(4月21日付・NHKニュースWeb版)。その成り行きは、25日から5月11日まで実施される東京都などを対象にした緊急事態宣言の効果がどれほど上がるのか、その結果次第かもしれない。5月半ばまでに感染拡大が治まらなければ、当然7月も見通しが暗くなり、無観客とせざるを得ないだろう。

   それと同時に気になるのは医療サポートの体制が組めるのだろうか。選手が1万人以上、コーチなどのスタッフを絞ったとして5万人が集まるとされる。ところが、国内の現状として、ワクチン接種の注射をする医師が足りていない。そのような現状で、オリンピック医師団の体制をつくることができるのだろうか。

   そして、選手へのワクチン接種をどうするか、だ。自民党の下村政務調査会長は、東京オリンピック・パラリンピックに出場する日本選手への優先的な接種の必要性について、党内で検討する考えを示したと報じられいる(4月14日付・NHKニュースWeb版)。現在、選手や関係者にワクチン接種を優先する計画はないが、格闘技などで日本選手がワクチンを接種していないとリスクがあるとのこと。また、IOCのバッハ会長は、ワクチン接種を東京オリンピック出場の前提条件にはしないと発言している(4月8日付・AFP通信Web版日本語)。結局、選手へのワクチン接種は各国での判断となる。     

          あすから始まる緊急事態宣言は、GW中の人の流れを徹底的に抑制する17日間の短期集中型の対策だろう。この効果を見極めてのオリンピック対策なのだが、まさに実行性が問われる。

⇒24日(土)夜・金沢の天気     くもり

☆海外観客を断念、メディアも規制対象か

☆海外観客を断念、メディアも規制対象か

            報道によると、東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会と政府や東京都、それにIOCなど5者による会談が開かれ、現在のコロナ禍の状況では海外から日本への自由な入国を保証することは困難だとして、海外からの観客の受け入れを断念することが決めた。一方で、東京大会の観客の上限については来月改めて方向性を確認し、その後も柔軟に対応していく(3月20日付・NHKニュースWeb版)。会談はオンライン形式で橋本大会組織委員会会長、丸川五輪担当大臣、小池都知事、IOCのバッハ会長らが参加した。

  組織委の発表文によると、世界の新型コロナウイルスの感染状況は変異株の出現を含めて厳しい状況が続いており、世界各国で国境をまたぐ往来が厳しく制限されている状況下では、今年の夏に海外から日本への自由な入国を保証することは困難だと説明。「すべての参加者及び日本の国⺠にとって、⼀層確実に、安全で安心な大会を実現するための結論」だとした(同)。

   大会組織委員会によると、すでに海外で販売されたチケットの枚数はオリンピックが60万枚、パラリンピックが3万枚に上り、これらのチケットは今後、払い戻しされる。ちなみに、国内で販売されたチケットはオリンピックが448万枚、パラリンピック97万枚となっていて、大会の観客の上限については来月改めて方向性を確認し、その後も柔軟に対応していくとしている。

   橋本氏は会見で、「東京大会はこれまでとは全く異なる大会となるが、アスリートが卓越したパフォーマンスを持って、人々の心を動かす本質は変わらない。今の時代にふさわしい方法で人々をつなぐことができるよう、具体的な仕掛けの検討も進める」と述べた。また、丸川氏は記者団に対し、「IOC、IPCの方からは全面的に日本側の判断を支持するというコメントがあった」と発言。国内の観客については新型コロナの変異株の状況がどうなるか分からないとした上で、「4月に判断することになる」と述べた。

   海外からの観客を断念したとなれば、テレビ中継や新聞などメディアによる五輪報道が欠かせない。来月になれば、東京ビックサイトに設営されたIBC(国際放送センター)にIOCから放送権を得たRHBs(Rights Holding Broadcasters)と呼ばれる放送メディアが続々と準備のために東京にやって来る予定だ。

   気になるのは、海外メディアの取材陣も規制対象とするのだろうか。仮にそうなると、IOCに放映権料を払っているテレビメディアは降りるだろう。困るのはIOCだ。そして、国際世論がまた大騒ぎとなる。

⇒20日(土)夜・金沢の天気       あめ

☆「五輪の決断」まであと22日

☆「五輪の決断」まであと22日

   あと5ヵ月だ。森喜朗氏に代わって、橋本聖子氏が東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会会長に決まった。日本国民、そして世界が注目するのは、橋本氏がこのコロナ禍でオリンピックを開催するのか否か、開催するとなれば観客を入れるのか否かの方針をいつどう決めるのだろう。難題が山積するにもかかわらずよく決断したものだ。もう一人、橋本氏の五輪担当大臣の後任となった丸川珠代氏とのコンビネーションが実にいい。この2人が日本のオリンピック開催の顔として、開催に向けて沈んだ雰囲気を反転させるのではないか。

   一方で、島根県の丸山達也知事が東京五輪聖火リレーの中止を検討すると表明して議論を呼んでいる。詳細が知りたくて、地元紙の山陰中央新報社(2月16日付)をチェックすると。聖火リレーの実施について、島根県は大会組織委員会と協定を結んでおり、聖火ランナーやルートを決める県実行委の事務局を担当している。同県の聖火リレーは土日にあたる5月15、16日に実施予定。津和野町をスタートし、松江城(松江市)を目的地とする14市町村(総距離34.3㌔)で170人が聖火をつなぐ予定だ。

   警備費用など約9千万円を県の財源で予算化しており、県の判断で聖火リレーを事実上ストップもできる。知事はすでに今月10日の定例会見で、東京都が感染拡大で手が回らなくなった保健所の調査を縮小したため、感染経路や濃厚接触者の追跡ができていないと不信感を表明している。全国の飲食店などが打撃を受けているにもかかわらず、緊急事態宣言が出た地域と、島根など感染者が少ない地域で、政府の支援に差がある現状にも不公平感を訴えていた(同)。

   島根県知事の不満はおそらく全国の知事が心の中で思っていることではないだろうか。正直な話、県の判断でストップできるのであれば、一億円近くかけてまで無理をしてやる必要はない、中止宣言すればよい。ただ、実施する県との調整を島根県はできるだろうか。「あとは知らない、調整は大会組織委員会が勝手にやればよい」では無責任とのそしりを免れないだろう。

   聖火リレーに関して、むしろ気をもんでいるのは福島県ではないだろうか。今月13日夜に震度6強の激震が走ったが、知事発言として聖火リレー中止の話は聞こえてこない。実は、昨年の延期決定で翻弄されたのは福島だった。IOCと組織委員会が延期決定を発表したのは3月24日(日本時間)、福島から聖火リレーが出発する2日前だった。このため契約上、設営や警備にあたる業者に契約通りの経費を支払う必要が出て、県が支出した費用は約2億5000万円に上った(2020年7月8日付・福島民友新聞Web版より)。

   ことしの聖火リレーは3月25日に福島を出発、栃木、群馬とバトンタッチされていく予定だ。警備会社などのキャンセル料の支払いを考えれば、中止や再延期となると、その決定はその2週間前、つまり3月10日には決断が必要だろう。あと22日だ。コロナ禍での各国のアスリートの選抜やワクチン接種の普及、国際世論を見極めながら決断となる。IOCバッハ会長、橋本大会組織委員会会長、丸川五輪担当大臣の手腕が問われる。

⇒18日(木)夜・金沢の天気     ゆき

☆森発言 批判鳴り止まず

☆森発言 批判鳴り止まず

   東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視ともとれる発言の波紋が広がっている。IOCのバッハ会長は、「組織委員会から森会長が発言を撤回し、謝罪したという報告を受けて、IOCとして、その部分はよく理解した。引き続き、東京大会の成功に向けて努力してほしい」(橋本オリンピック・パラリンピック担当大臣の談話、2月5日付・NHKニュースWeb版)と語ったと、報じられている。果たしてそれでこの発言問題は収束するのか。

   日本の新聞メディアはどうか。「森会長失言、批判噴出」と毎日新聞(2月5日付)は一面のトップ記事だ。朝日新聞(同)も「森会長、発言撤回し謝罪」と同じく一面トップ。一方、読売新聞(同)は「森会長が発言撤回」と一面ながら、扱いは3番目だ。日経新聞(同)も「森氏、発言を謝罪」と一面ながら扱いは4番目だ。では地元新聞はどうか。北國新聞(同)は「森氏『不適切』と謝罪」と一面の準トップ。北陸中日新聞(同)は「森会長 性差別発言を謝罪」と一面トップだ。扱いの大きさでそれぞれの新聞の編集方針が浮き出ている=写真=。

   では、海外の報道はどうか。アメリカのCNNは「Top Tokyo Olympics organizing official apologizes for sexist remarks that women talk too much in meetings」と伝えている。イギリスのBBCも「Tokyo Olympics chief Yoshiro Mori ‘sorry’ for sexism row」と。このニュースがさらに世界に広がり、オリンピックの競技でどこかの国の女子チームが不参加を表明したら、さらに大きなニュースとなって世界を駆け巡る。すでに、カナダのアイスホッケー女子五輪金メダリストでIOC委員を務めるヘーリー・ウィッケンハイザー氏は4日、「(森氏を)絶対に追い詰める」とツイッターに投稿し、発言への憤りを表明した(2月5日付・NHKニュースWeb版)。

   女性差別発言は海外ではさらに厳しくなるだろう。国際的な人権団体の格好の攻撃対象だ。森氏の辞任どころか、東京オリンピックそのものの開催も危うくなるのではないだろうか。ジェンダーの発言問題を収束させる機関も人物も手段もないのだ。

⇒5日(金)夜・金沢の天気   くもり

★東京オリンピック 開催は無理なのか

★東京オリンピック 開催は無理なのか

           きょうは1月23日、東京オリンピックの開会式まであと6ヵ月だ。その開催をめぐって世界にニュースが走っている。イギリスの「タイムズ」紙WEB版(1月21日付)が「Japan looks for a way out of Tokyo Olympics because of Covid」の見出しで、IOCと日本政府との間で、ひそかに東京五輪を中止し、2032年の開催を目指す道を探っていると報じた=写真=。タイムズは1785年創刊の世界最古の日刊紙であり、世論形成の役割を担うメディアの一つだ。ニュースを目にした世界の人々は妙に納得しているかもしれない。

   タイムズと同じく世界のメディアとして存在感を示している、イギリスのBBCニュースWeb(20日付)も「Tokyo Olympics ‘unlikely to go ahead in 2021’」の見出しで「2021年開催は無理」と、ロンドン五輪(2012年)の元最高責任者の言葉を引用して述べている。この2つのメディアが「開催は無理」とのニュースを流すと、世界のニュースのトレンドが定まってしまうので恐ろしい。

   開催は無理なのだろうか。ワクチンが世界に十分に供給されていない状況で、世界中から33競技に出場する1万1000人の選手、加えて審判員が東京に集まる。1万人のランナーが参加する聖火リレーは3月25日に福島県をスタートにゴールの東京都まで121日間かけて行われる。大会では競技場や選手村で活動する「フィールドキャスト」と呼ばれるボランティアが8万人、選手の移動に2190台のバスが用意されるとの報道(1月23日付・NHKニュースWeb版)がある。開催の有無は遅くとも、3月25日の聖火リレーが始まる前に決断しなくては、その途中で開催中止の発表をするわけにもいかないだろう。

   東京五輪・パラリンピックの開催都市契約はIOCと東京都、日本オリンピック委員会(JOC)の3者で締結しているので、この際、この3者で「開催条件」を明示すべきではないだろうか。たとえば、選手や審判員のワクチン接種など具体的な条件を明らかにする。その進捗度で開催する、しないを決める。国内でもワクチン接種をすることで観戦が可能などといった条件があれば、分かりやすい。繰り返しになるが、いつまでにどんな基準を満たしていればオリンピックを開催するのかという「開催条件」を明確に示すことだ。そうでなければ、国民の気持ちがまとまらない。もちろん、他の参加国における条件も決めておくべきだろう。

   話は前後するが、IOCのバッハ会長は22日、各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)とオンラインで意見交換し、大会開催への固い決意を重ねて示した。バッハ氏はタイムズによる「日本政府が中止せざるを得ないと内々に結論付けた」との報道を「フェイクニュース」と否定した上で、日本の準備状況を高く評価。NOCに対し、大会への準備に関するアンケートを近く行う方針を示した(1月22日付・共同通信Web版)。

⇒23日(土)午前・金沢の天気  あめ

★続・世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

★続・世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」なのか

         前回のブログで、WHOのテドロス事務局長は、富裕国が新型コロナウイルスのワクチンを独占して最貧国が苦しむならば、世界は「破滅的なモラル崩壊寸前」だと警告した、との記事(1月18日付・時事通信Web版)を紹介した。次にテドロス氏が打ってくる手は、「最貧国にワクチンが届かなければ、オンリンピックは開催できない」、ではないかと懸念している。つまり、オリンピックを盾に富裕国にワクチン拠出を迫る、荒っぽい手口だ。

   そう懸念する論拠は以下だ。昨年2020年5月16日、WHOのテドロス事務局長とIOCのバッハ会長はジュネーブにあるWHO本部で会談し、スポーツを通して健康を共同で促進していこうという覚書(MOU)を交わした。ICOの公式ホームページにMOUの内容が紹介されている。

「the IOC and WHO are demonstrating their shared commitment both to promoting healthy society through sport, in alignment with Sustainable Development Goal 3 (“Good health and well-being”), and to contributing to the prevention of non-communicable diseases. (IOCとWHOは、SDGs目標3「健康と幸福」に沿って、スポーツを通じて健康的な社会を促進するという共通のコミットメントを示し、さらに非感染性疾患の予防に貢献する)

   問題なのはこの一文だ。「The IOC and sports organisations recently benefited from WHO guidelines on mass gatherings, aiming specifically to provide additional support to sports event organisers and host countries in developing a risk-assessment process, identifying mitigation activities and making an informed evidence-based decision on hosting any sporting events. The guidelines can be found here.」(意訳:IOCとスポーツ組織は、リスク評価プロセスの開発や緩和の特定、およびスポーツ大会の開催の決定に当たり、スポーツイベントの主催者と開催国に追加のサポートを提供する。実施にあたってはWHOからガイドラインを頂戴する)

   つまり、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)を示される。つまり、東京オリンピックでは、参加するすべての国にワクチンを行き渡らせることが開催のガイドラインとしてWHOが示す可能性もあるのではないか。

   実際、IOCとWHOの覚書の後の記者会見で、記者からワクチンが完成する見通しがたたない東京オリンピックの開催は可能かと問われ、バッハ会長は「2021年の7月に世界がどのようになっているかわからない。大会まで1年2ヵ月あり、WHOと作業チームの助言(ガイドライン)に従いながら正しい時期に必要な決定を行う」と、五輪開催の最終決定にあたってはWHOのガイドラインを重視すると述べている。

   IOC公式ホームページの写真でもトレーニング用の固定自転車でツーショット=写真=が掲載されている。解釈によっては、IOCとWHOは「両輪」、あるいは「二人三脚」と強調しているようにも読める。

   結論を急ぐ。MOUによってテドロス氏はある意味でオリンピックを開催するしないの「決定権」を握ったのだ。コロナワクチンを富裕国が独占し、最貧国に行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないとテドロス氏が言えば、IOCも従わざるを得ないだろう。あるいは、テドロス氏は日本に対してオリンピックを開催するためと称して、最貧国へのワクチン購入費を要求してくるかもしれない。それも言葉巧みに脅し、すかしの外交用語で。上記は憶測である。

⇒20日(水)朝・金沢の天気     はれ

★IOCと覚書、WHOの次なる押しの一手

★IOCと覚書、WHOの次なる押しの一手

   新型コロナウイルスのパンデミックの中で外出や運動の機会が減っていることから、WHOのテドロス事務局長とIOCのバッハ会長が16日、ジュネーブにあるWHO本部で会談し、スポーツを通して健康を共同で促進していこうという覚書(MOU)を交わした(17日付・NHKニュースWeb版)。

   どのような内容なのか知りたいと思い、双方の公式ホームページをチェックした。WHOは午前9時現在でMOUに関する記載は見つからなかった。ICOでは写真付きで詳しく掲載されていた=写真・上=。そのMOUを交わす目的については明快だった。SDGs(国連の持続可能な開発目標)に基づいている。

「the IOC and WHO are demonstrating their shared commitment both to promoting healthy society through sport, in alignment with Sustainable Development Goal 3 (“Good health and well-being”), and to contributing to the prevention of non-communicable diseases. (IOCとWHOは、SDGs目標3「健康と幸福」に沿って、スポーツを通じて健康的な社会を促進するという共通のコミットメントを示し、さらに非感染性疾患の予防に貢献する)

   気になる一文もあった。「The IOC and sports organisations recently benefited from WHO guidelines on mass gatherings, aiming specifically to provide additional support to sports event organisers and host countries in developing a risk-assessment process, identifying mitigation activities and making an informed evidence-based decision on hosting any sporting events. The guidelines can be found here.」(意訳:IOCとスポーツ組織は、リスク評価プロセスの開発や緩和の特定、およびスポーツ大会の開催の決定に当たり、スポーツイベントの主催者と開催国に追加のサポートを提供する。実施にあたってはWHOからガイドラインを頂戴する)

   実際、IOCとWHOの覚書の後の記者会見で、記者からワクチンが完成する見通しがたたない東京オリンピックの開催は可能かと問われ、バッハ会長は「2021年の7月に世界がどのようになっているかわからない。大会まで1年2ヵ月あり、WHOと作業チームの助言に従いながら正しい時期に必要な決定を行う」と述べた(同)。オリンピックの最終決定にあたってはWHOとの連携を密にすると。

   IOC公式ホームページの写真でもトレーニング用の固定自転車でツーショット=写真・下=が掲載されている。解釈によっては、IOCとWHOは「両輪」、あるいは「二人三脚」と強調しているようにも読める。覚書はWHOで交わされたので、おそらくこの写真のアングルの提案者はテドロス事務局長だろう。  

   もう一つ、気になるニュースがある。アメリカのトランプ大統領は16日、ツイッターで、WHOの新型コロナウイルス感染症問題などへの対応が中国に偏向しているとして一時停止を決めた資金拠出に関し、部分的な再開を選択肢の一つとして検討していることを明らかにした。これに先立ち、FOXニュース電子版は16日、トランプ政権が、新たな拠出額を中国と同程度となる9割減とすることで準備を進めていると報道した(16日付・共同通信Web版)。アメリカのWHOへの2019年の拠出額は4億㌦だった。

   結論を急ぐ。テドロス氏はアメリカの9割減額分をどう補填するか苦心していることだろう。そこにIOCとのMOUはグッドタイミングだった。アメリカの減額分をオリンピック開催国の日本に肩代わりさせればいい、と今ごろ思案しているかもしれない。テドロス氏の「脅し、すかし、商売上手」はこのブログで何度か述べてきた。「東京オリンピックの開催決定権を握っているのは私なんですよ、安倍さん分かってますね」と押しの一手で迫って来るに違いない。邪推に過ぎない。それにしても、ワクチンの開発が待たれる。

⇒17日(日)午前・金沢の天気   くもり時々あめ