★最後の一滴までモニタリング IAEAの科学のスタンス
きょうの金沢は最高気温が33度の予報で真夏日が続く。ただ、夜にはスズムシやコウロギの虫の音が聞こえ、季節の移ろいを感じさせる。和室の床の間の掛け軸もそろそろ秋のものをと思い、掛け替えた。「清風払明月(せいふうめいげつをはらう)」=写真・上=。すがすがしい秋の夜、月は明るくこの世を照らし、風がしずかに吹きわたる(『茶席の禅語大辞典』淡交社)。
この句は「明月払清風」と対句である。明月と秋風が、互いに主となり客となり無心に払い合って自然美を極めている、という意味だろうか。それに比べ、世俗の人の動きはなんとも醜い。
福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する措置を始めた日本に対し、中国の嫌がらせが止まらない。NHKニュースWeb版(29日付)によると、北京にある日本大使館で今月24日、中国人が大使館の敷地にレンガの破片を投げ込み、その場で警察に拘束された。これについて、中国外務省の報道官は29日の記者会見で、「日本政府が核汚染水の海への放出を一方的に強行し、各国の国民の強烈な憤慨を引き起こしたことが根本的な原因だ」と述べ、日本側に責任があると主張し、レンガの破片を投げ込んだ行為を正当化した。
この建前論で何でも正当化されるのであれば、日本人に対する略奪行為などが許されることにもなる。すでに、日本人学校で石や卵が投げ込まれているのが見つかったほか、日本の大使館や総領事館には嫌がらせの電話などが相次いでいる。
去年2月に処理水の海洋放出についての安全性を評価するため、IAEA調査団が現地調査を行っている。調査団はIAEAスタッフ7人と各国の専門家8人で構成され、中国と韓国の専門家も加わっていた。5日間にわたって、トリチウムを含む処理水の放出方法や、環境への影響を調べた。IAEAはことし7月4日、処理水の海洋放出について、国際安全基準に合致していることを結論付ける「包括報告書」=写真・下、経済産業省公式サイト「国際機関によるALPS処理水海洋放出の安全性確認」より=を公表している。
同月7日にIAEAのグロッシ事務局長はNHKの単独インタビューに応じ、海洋放出する日本の計画は「国際的な安全基準に合致する」と評価したIAEAの報告書について「科学的に正しく、全面的に支える」と強調。中国や韓国などであがっている懸念の声について、「批判的な声があがることは予想外でも驚くことでもない。IAEAは商業的にも政治的にも利害関係がなく、原子力の安全確保を使命とする者として中立の声を届けることで役立てる。批判的な声などと向き合い、不安を取り除くために責任を果たすことが重要だ」と述べ、IAEAとしても向き合っていく考えを示した(7月8日付・NHKニュースWeb版)。
さらに、AFP通信Web版日本語(30日付)によると、スウェーデンの首都ストックホルムを訪問中のグロッシ事務局長は29日、AFPのインタビューに対し、「(日本の処理水の海洋放出について)これまでに確認した限りでは、初期に放出された処理水に有害なレベルの放射性核種(物質)は一切含まれていなかった」「第1段階は想定通りだが、最後の一滴が放出されるまで(モニタリングを)続ける」と述べた。
科学に基づいた調査を行い、その結論からIAEAとしてのスタンスは崩さない。そして、「最後の一滴」までモニタリングを続ける、と。実にすがすがしい秋の夜の明るい月のようなストーリーではある。
⇒30日(水)午後・金沢の天気 くもり
政府は処理水を海洋放出する計画を進めている。トリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満になるように海水で薄め、海底トンネルを通して福島第一原発の沖1㌔で放出する計画だ。処理水は溜まり続けていて、保管量は133万㌧になり、容量の97%に達している。ところが、放出となるとさまざまな風評を呼ぶことになる。
IAEA公式サイト(6日付)=写真・上=にグロッシ氏のコメントが掲載されている。以下(意訳)。
豊渓里では2006年10月9日に最初となる核実験が行われ、2017年9月3日までに6回行われている=写真・下=。長崎大学核兵器廃絶研究センター公式サイトによると、6回目のとき、北朝鮮は「ICBMに搭載可能な水爆実験に成功」と発表していた。核実験の地震規模としては最大でマグニチュード6.3(米国地質調査所)で、メガトン級の大規模な爆発威力だった可能性がある。今後北朝鮮がICBMに搭載可能なレベルにまで核弾頭を小型化させることは時間の問題である、と分析される。