#CNN

★米中冷戦の新たな火ダネ 中国「スパイ気球」のてん末は

★米中冷戦の新たな火ダネ 中国「スパイ気球」のてん末は

         それにしても不気味な光景だ。得体の知れない気球が空を飛ぶ。それが、中国のものであると分かれれば、なぜ我々の頭上にあるのかと、なおさらうす気味悪いだろう。CNNニュースWeb版(6日付)によると、アメリカを横断していた中国の偵察気球を、アメリカ軍の戦闘機がサウスカロライナ州の沖合で撃墜した。「Why the Chinese balloon crisis could be a defining moment in the new Cold War」=写真=の見出しで、アメリカ人は初めて北京からの国家安全保障上の挑戦とも言える具体的な現象を経験したと伝えている。

   防衛省によると、気球は国際法上、航空機に位置づけられ、他国の領空に侵入するのは国際法に違反し、領空侵犯にあたるとされる。過去に軍用機や民間機が他国の領空に入ったことで、当事国だけでなく国際社会全体の緊張が高まったこともある(6日付・NHKニュースWeb版)。

   アメリカ側が気球を撃墜したことに対し、中国側は「私たちの気象観測気球がコース外に吹き飛ばされたのは遺憾だ」「アメリカの政治家とメディアは誇張している」「アメリカがこの飛行物体を攻撃したのは国際慣例の深刻な違反だ」などと述べている(6日付・BBCニュースWeb版日本語)。かりに、中国が主張するように気象観測が目的の気球であったとしても、アメリカの領空を通過するときは事前にアメリカ当局に通知して当然だろう。それをしないこと自体が主権侵害に当たるのではないか。

   アメリカ海軍や沿岸警備隊は撃墜した気球の回収に当たっている。気球の破片は回収後、FBIの研究所に移送される見通し(同・CNNニュースWeb版)。回収された画像データなどが分析されれば、気球の偵察目的が鮮明になってくる。米中の緊張がさらに高まる可能性が出てきた。

⇒6日(月)夜・金沢の天気    くもり

★国連への評価が低くなった日本人の本音

★国連への評価が低くなった日本人の本音

          国連に対するイメージが自身の中で変化していると思っていた。どうやらこれは日本人全体がその傾向にあるようだ。アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は、創設75年を迎える国連の実績について先進14ヵ国で実施した世論調査を発表した。それをCNN が伝えている。「Americans think the UN is doing a good job. Japanese people disagree.」(9月22日付・CNNニュースWeb版)。国連に対する評価が最も低かったのは、国連バッシングを続けているアメリカではなく、日本だった。

   調査は、アジア太平洋地域、北米と欧州の先進14ヵ国で6月10日から8月3日にかけて電話での聞き取り方法で行われた。調査対象国は、日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダ、デンマーク、ドイツ、オランダ、イタリア、スウェ―デン、ベルギー、フランス、スペイン、イギリスでそれぞれおよそ千人、合計1万4276人からデータを抽出した。

   CNN記事によると、アメリカ人の国連に対する評価は、トランプ政権の初期にはやや低下したが、ここ2年間に再び上昇してオバマ前政権時代とほぼ並んだ。国連に「好感を持つ」は62%に上り、「好感を持たない」は31%だった。この傾向は、他の先進国とそれほど大きな違いはなかった。

   突出していたのは日本で、国連に対する好感度は14ヵ国の中で最も低かった。「好感を持つ」は29%で、「好感を持たない」が55%と半数を占めた。1年前の前回調査は、「好感を持つ」が47%で、「好感を持たない」35%を上回っていた。「分からない」と「答えたくない」は今回16%、前回18%だった。

   上記の数字からも、日本人の国連に対する好感度は前回もさほど良くはなかった。それが、1年後には完全に逆転して、「好感を持たない」がハッキリした。では、自身を含め日本人の意識が大きく変化した理由はなぜか。ここからは自身の考えを述べたい。

   この1年で国連を見つめる目が大きく変化したのは、はやり新型コロナウイルスの感染拡大、パンデミックに対するWHOの対応だろう。中国でヒトからヒトへの感染を示す情報がありながら、WHOがその事実を知っていたにもかかわらず世界に共有しなかった。WHOと中国の関係性が疑われたのは1月23日だった。中国の春節の大移動で日本を含めフランスなど各国で感染者が出ていたにもかかわらず、この日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出した。自身を含め日本人の多くはこの一件で中国に配慮したWHOとのイメージが根付いた。

   今回の調査でも数字で表れている。WHOによる新型コロナウイルス対応を「悪い」と答えた日本人は67%と、14ヵ国の平均のおよそ2倍だった。評価が日本よりも低かったのは韓国のみで、「悪い」とする回答は88%だった。ちなみに、アメリカは44%だった(9月22日付・CNNニュースWeb版)。中国の近隣国である日本と韓国の目線は、WHOの中国との処し方が最初から腑に落ちていなかったのだ。

   なぜ国連への好感度が低下しているのか。二つ目は国連安保理の常任理事国の有り様ではないだろうか。香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国が常任理事国の座にある。連日のように尖閣諸島への中国公船の領海侵入がある。常任理事国の座にあれば問題を起こしても国連では問われない。その座を守っているのは拒否権だ。ロシアなどは旧ソ連時代を含めて127回も拒否権を発動している(2008年現在、「ウイキペディア」より)

   そして、国連憲章(第53、107条)で定めらている「敵国条項」に日本がいまだに入っている。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。年間2億4千万㌦もの国連分担金を払っている日本が「敵国」なのである。

   矛盾の数々がこれまで日本人の心の底に眠っていたが、このところのWHOや最近の中国の動向で国連とは何か、このままでよいのかという義憤に転化してきたのではないだろうか。菅政権が向き合うべき課題がまた一つ増えた。

⇒23日(水)午前・金沢の天気     はれ