#CM

☆安倍氏銃撃から1ヵ月 さりげなく哀悼の意を

☆安倍氏銃撃から1ヵ月 さりげなく哀悼の意を

   安倍元総理が奈良市で銃撃され死亡し、きょうで1ヵ月。メディア各社は、殺人で逮捕・送検された容疑者41歳について、検察は11月29日までの4ヵ月の鑑定留置を実施して、刑事責任能力の有無を見極めた上で起訴するかどうか決めるようだ、と報じている。

   4ヵ月もの鑑定留置をするということは、容疑者の供述に論理の飛躍や矛盾点がかなり見受けられるとの判断なのだろう。容疑者は母親が入信する「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」)に恨みがあり、教団とつながりがある安倍氏の殺害に至ったと供述。さらに、統一教会と国会議員との癒着の実態が次々と明らかになっていることから、検察側もかなり慎重に捜査を進めているようだ。

   きょうの夕刊紙面で見つけた記事。安倍氏の銃撃事件後に広告主であるCMスポンサー企業がテレビCMを相次いで自粛したため、民放各社のCM枠は公共広告機構「ACジャパン」のCMが平時の50倍に増加した。CM自粛が相次いだ東日本大震災以来で最多となった(8日付・北陸中日新聞夕刊)。

   記事によると、CM総合研究所がまとめた数字で、在京キー局5局のACジャパンの放送回数は銃撃事件前日の7月7日は9回だったが、当日8日は241回、9日は472回、10日は462回、11日には509回に達した。CM全体に占める割合も7日の0.2%から11日は12.5%に上昇した。ただ、5日目の12日には39回に減り、ACジャパンへのCM差し替えは4日間で収束したことになる。

   東日本大震災のときは、2011年3月17日に3557回に達し、さらにこの傾向が1ヵ月以上にわたり続いた。それに比べれば、安倍氏の襲撃事件の衝撃波は短期間で治まったと言える。企業のテレビCMのイメージは明るさが売りでもあり、一時的にしろCMを控える動きはあってしかるべきだったろう。

   事件の2日後に行われた参院選挙。石川選挙区で立候補した岡田直樹氏は安倍氏の側近だった。当選確実のときの様子をテレビで見ていたが、万歳をせずに4期目の抱負を語っていた。さりげなく哀悼の意を示す、そのような心遣いが見て取れた。

   あれから1ヵ月。NHKが毎月行っている世論調査(8月5-7日)では、岸田内閣を「支持する」は前回調査より13ポイント下がって46%、「支持しない」は7ポイント上がって28%だった。安倍氏の「国葬」については「評価する」が36%、「評価しない」が50%だった。国葬と内閣支持率が微妙に絡まっている。

   この事件で誰もが感じたことは、一国の元総理が凶弾に倒れたという歴史的な出来事を肌で知った、ということではないだろうか。

⇒8日(月)夜・金沢の天気    はれ

☆2021 バズった人、コト~その1

☆2021 バズった人、コト~その1

  「人の噂(うわさ)も七十五日」という言葉はかつて使ったが最近は使わないし、聞くこともなくなった。時代が変わって、「人の噂」はネットやSNS、メールが本流になり、「バズる」という言葉が使われている。「バズってますね」などと自身もやりとりしている。ことしも残り9日。このブログで取り上げた話題を振り返る。題して「2021 バズった人、コト」。

          ~東京オリンピック、トヨタのテレビCMストップはなぜ~

  ことしはオリンピックイヤーだった。東京五輪(7月23日-8月8日)は地元石川県では何といっても、レスリング女子57㌔級の津幡町出身の川井梨沙子選手と、62㌔級の妹・友香子選手がともに金メダルを獲得したことが話題になった。地元紙は姉妹で「金」は日本勢初の快挙と讃えた。北國新聞は連日の特別紙面で「最強の姉 約束の金lと、本紙では「梨沙子連覇 川井姉妹そろって金」と。北陸中日新聞は「川井 姉妹で金 梨沙子連覇」とそれぞれ一面の通し見出しだった=写真=。東京オリンピックの日本勢で、姉妹による金メダルは初めてだったので、日本のオリンピックの歴史に新たなレジェンドをつくったのではないだろうか。     

   コロナ禍でのオリンピックの開催をめぐっては反対意見が盛り上がっていた。東京五輪の中止を求めるオンライン署名サイト「Change.org」の署名は45万筆を超えていた。署名の発信者は弁護士の宇都宮健児氏で、相手はIOCのバッハ会長だった。そして、強烈なメッセ-ジを発したのはトヨタだった。東京オリンピックの大口スポンサーでもあるが、新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中での開催の是非について世論が割れていることを理由に、オリンピック関連のテレビCMをいっさい見送ると発表した。実際、五輪番組をテレビを見ていてもトヨタのCMを見ることはなかった。

   いまごろになって思うことだが、トヨタはなぜテレビCMを見送ったのだろうか。ワールドワイドな企業であるトヨタにとっては、オリンピックパートナーとしてメディアを通じてブランドイメージさらにアップさせるチャンスだった。そうした広告・ブランディング戦略にたけているはずだ。

   トヨタがCM中止を表明したのは開催4日前の7月19日だった。テレビと新聞による五輪開催へのマイナスな論調を見極めての決定だったのだろう。おそらく、この批判的な論調が開催期間中も続き、そうした論調のマスメディアにCMを出すのは企業にとってマイナスイメージとなると判断したのではないだろうか。ところが、オリンピックが始まると、開催に疑念を呈していたテレビも新聞もまるで「手のひら返し」をしたかのように、「ガンバレ日本」と選手たちの活躍を中心に報道を繰り広げた。トヨタはマスメディアの動向を見誤った。

   コロナ禍でのオリンピックは是か非かという論調は読者や視聴者に分かりやすいので、先頭だってマスメディアはそうした話題を提供する。身を張って五輪を阻止するというスタンスはもともとない。だから、オリンピックが始まってしまえば、マスメディアは五輪一色になる。別の視点から見れば、トヨタは「トヨタイムズ」という、タレントの香川照之が編集長となった自社メディアをホームページや「YouTubeチャンネル」で展開している。マスメディアの動向を観察しながら、自社メディアをどうカタチづくるか試行錯誤しているようだ。

   オリンピック競技を17日間視聴して、印象に残っているのはもちろんアスリートたちの姿だが、番組での解説やコメントなどスタジオのバックで流れていた桑田佳祐の『波乗りジョニー』だった。オリンピック競技場の無観客の状態は当初さみしいとも感じたが、毎日違和感なく視聴できたのもこの曲の高揚感のおかげだったのかもしれない。

⇒22日(水)夜・金沢の天気     くもり

☆「広告うつ」にさいなまれるテレビ業界

☆「広告うつ」にさいなまれるテレビ業界

    最近知人たちから「電話うつ」という言葉を聞くようになった。新型コロナウイルスのワクチン接種を予約しようと、自治体のコールセンターに何10回と電話をかけても繋がらない。ようやく繋がってもきょうの予約分はすでにいっぱいになっていて、係員から「あすまた電話をおかけください」と言われ、ショックを受ける。電話そのものをかけたくなくなる。   

   話は変わるが、コロナ禍で巣ごもり生活が当たり前になってテレビをよく視聴するが、CMが随分と減っている。石川エリアではよく温泉旅館やホテルなどの宿泊施設、料理店やレストラン、パチンコ店のリニューアルオープン、リクルートを意識した企業のCMなどがよく流れていたが、このところあまり見かけない。バンセンと称される番組宣伝や「ACジャパン」が目立つ。

   その結果が数字となって表れてきた。ローカル新聞の経済面で地元テレビ局の2020年度決算が掲載されている。きのう29日付で掲載されていたテレビ朝日系ローカル局は売上高は前期比で17%減で赤字決算。CM収入の落ち込みやイベント中止が売上に響いた。赤字転落はリーマン・ショックの影響を受けた2010年度3月期以来で11年ぶり。フジ系は16%減で49年ぶり、TBS系も11%減で6年ぶりの赤字だった、日本テレビ系は15%減だったが黒字は確保した。ローカル局だけでなく、東京キー局もCMを中心に10数%の減収となっている。

   これはコロナ禍による一時的な現象だろうか。テレビをはじめとするメディアの広告収入はネットに押されて後退を余儀なくされている。電通が調査した「2019年 日本の広告費」によると、通年で6兆9381億円と広告全体は8年連続のプラス成長だった。このとき、インターネット広告は初めて2兆円超え、テレビ広告を抜いてトップの座に躍り出た。さらに「2020年 国内広告費」では通年で6兆1594億円と広告全体は前年比89%と激減した。ところが、ネット広告は2兆2290億円と前年比106%のプラス成長となった。テレビ広告は前年比89%となり、明暗が分かれた。ネット広告が伸びた背景には通販やオンラインイベントなどのニーズが後押した。コロナ禍の巣ごもり需要の恩恵を受けたのはテレビ業界ではなく、ネット業界の方だった。

   かつて「ローカル局の炭焼き小屋論」という言葉がテレビ業界であった。2000年12月にNHKと東京キー局などがBSデジタル放送を開始したが、このBSデジタル放送をめぐってローカル局から反対論が沸き上がった。放送衛星を通じて全国津々浦々に東京キー局の電波が流れると、系列のローカル局は田舎で黙々と煙(電波)を出す「炭焼き小屋」のように時代に取り残されてしまう、といった憂慮だった。ネット一強の状況がいま、テレビ業界全体の問題として再燃しているだろう。

   コロナ禍は今後数年続くとも言われる。さらに、放送とネットの同時配信という時代のニーズにどう対応していくのか。CMの減少傾向に歯止めがかからない「広告うつ」にテレビ業界がさいなまれる日々は続く。

⇒30日(日)午後・金沢の天気      はれ

★CMガタ落ちテレビ業界、同時配信のチャンス

★CMガタ落ちテレビ業界、同時配信のチャンス

   新型コロナウイルスの感染拡大でさまざまな産業に影響が及んでいる。最近、テレビを視聴していても、自社の番組宣伝や通販のCMが多い。4月7日に東京など7都府県で緊急事態宣言が発令されたころは、「ACジャパン(公共広告機構)」が目立った。公共広告はスポンサーの都合でCMを降りた場合に使われるが、番宣や通販CMが目立つということはCM枠そのものがガラガラになっている、ということでもある。では、CM収入がどの程度落ち込んでいるのか、日本テレビホールディングスがホームページで掲載している今年度の有価証券報告書(第1四半期、4‐6月)と決算説明資料をチェックしてみた。

   まず、視聴率である。日本テレビは独自に「男女13-49歳」の個人視聴率を「コアターゲット」として設定して他社と比較した数字を出している。そのコアターゲット視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は「4月クール」(2020年3月30日-6月28日)の調査で、全日(6-24時)が4.7%、プライム(19-23時)7.7%、ゴールデン(19-22時)8.0%と2位以下を大きく離して「3冠」となっている。3冠は2013年7月期から28クール連続。視聴率そのものも、「ステイホーム」など在宅率と連動して伸びている。では、CMはどうなのか。

   テレビ局の放送収入(CM)には2つの枠がある。番組に提供する「タイム」枠と、番組と番組の間で流す「スポット」枠である。第1四半期(4‐6月)の日本テレビの放送収入はタイムが290憶円、スポットが196憶円と、前年同期比でそれぞれマイナス1.1%、同36.6%となっている。とくにスポットの落ち込みが大きい。さらに、スポットを月別で見ると、4月が前年同月比でマイナス24.7%、5月が同40.2%、6月が47.5%と相当な落ち込みだ。民放キーをリードしている日本テレビがこの落ち込みである。

   とはいえ、放送収入の主力であるタイムがマイナス1.1%なのだから、そう案じることもないのではと考えてしまうのだが、むしろ、問題はこれからかもしれない。タイム枠はほとんどが半年契約である。4月に契約したスポンサーが、10月以降も継続するかどうか。提供を降りるスポンサーが、スポット並みに続出するかもしれない。

   放送収入の減少傾向は、コロナ禍とは別次元でも危惧されている。電通がまとめた「2019年 日本の広告費」によると、広告費は6兆9381億円で8年連続のプラス成長だった。中でも、インターネット広告費が初めて2兆円超え、テレビ広告費を上回りトップの座に躍り出た。テレビ広告費(1兆8612億円)は対前年比97.3%と減少した。テレビ広告費の減少要因は、この年の台風などの自然災害や、消費税増税に伴う出稿控えやアメリカと中国の貿易摩擦の経済的影響などで3年連続の減少だった。ことしはコロナ禍が拍車をかけ、線状降水帯など自然災害、さらに米中の対立が貿易にとどまらず安全保障にまで拡大する気配を見せている。第2四半期(7-9月)の決算が気になる。

   テレビ業界も生き残り戦略に特化していくだろう。先に述べた、日本テレビの「男女13-49歳」の個人視聴率を「コアターゲット」とする戦略はその代表ではないだろうか。従来の世帯視聴率は不特定多数の量的な数字だ。ではなく、個人視聴率を用いて若い層や就業・就学者にどれだけ番組のニーズがあるのかを調査しなければ、クライアント(スポンサー)の満足度を最大化することはできない。視聴率にも質的な転換が求められている。

   と同時に、デジタル化への戦略だろう。番組のネット配信を進めなければ、さらなる番組の価値を生み出すことはできない。日本テレビ社長の定例会見(7月27日)の内容がHPで掲載されていて、同時配信について述べている。「今年10月から12月にトライアルを実施する方向で作業を進めている。私どもが考える意義は、視聴環境が大きく変化する中、テレビを持っていない、あるいはテレビを見る機会が少ないデジタルデバイスのユーザーの皆さんに対して、地上波のコンテンツとの接触機会をとにかく促進する、ということ。プライムタイムの番組で、特に権利者の許諾等々、ネットワークのコンディションにかなうものを配信する予定」

   アフターコロナではテレビ業界も大打撃を受けての再出発となるだろう。放送と通信の同時配信のチャンスではないだろうか。そして、これまでの視聴率を取ればなんとかなるという発想ではおそらく生き残れない。テレビ業界そのものが「ポツンと一軒家」化してしまうかもしれない。

⇒16日(日)午後・金沢の天気     はれ