#BPO

☆報道した週刊誌なぜ排除  企業ガバナンスが問われたフジ社長会見

☆報道した週刊誌なぜ排除  企業ガバナンスが問われたフジ社長会見

  テレビ業界の用語で、映ってはいけないものが映り込んだりすることをバレルと言う。このところテレビ業界は不祥事や違反が相次ぎ、まさにバレバレの状態ではないだろうか。メディア各社の報道によると、きのう(17日)午後、フジテレビ社長による定例記者会見が開かれた。フジテレビ社長の定例会見はもともと2月28日に予定されていたが、記者会から前倒しでの会見の要望があり、フジテレビ側は前日の16日にこの日での開催が決めた。定例会見というより「緊急会見」のような様相だった。

  タレントの中居正広氏の女性とのトラブルをめぐる週刊誌報道がにぎやかだ=写真=。とくに、フジテレビの編成部長が絡んでいると週刊文春(12月26日号)で報道され、さらに最新号(1月23日号)では、フジテレビの女性アナも被害者として証言していると報じられている。フジテレビ社長の会見はこれを受けてのもので、会見内容は全国紙や経済紙なども報道している。冒頭でバレルと述べたが、まさにこの会見はテレビ局らしからぬ側面が見えている。

  会見は、冒頭で述べたように記者クラブ加盟社の記者のみが参加できる定例記者会見の前倒しとして設定され、主催者はフジテレビだった。このため、出席は全国紙やスポーツ紙が加盟するラジオ・テレビ記者会、参加が認められたNHKと民放テレビ局などに限定された。さらに、フジは定例記者会見であることを理由にカメラによる動画撮影を許可せず、週刊誌やインターネットメディアなどの参加も認めなかった。

  そもそも、記者会がフジテレビ社長の定例会見の前倒しを要望したのは、タレント中居正広氏の女性とのトラブルでのフジテレビ編成部長の関わりについて、法人トップの見解を求めるものだった。会見で社長は「多大なご心配、ご迷惑をおかけし、説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪し、外部の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げると述べた。第三者から見ても、これは実質的な謝罪会見だ。つまり、会見を通じて視聴者や国民におわびをするということになる。ならば、定例会見という枠を設けずに、動画撮影を許可し、週刊誌やインターネットメディアなどの参加を認めるべきではなかったのか。むしろ、今回の会見で問われたのは企業統治、ガバナンスの問題だろう。

  もう一つ。テレビ東京の番組「激録・警察密着24時!!」をめぐり、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は2023年3月の放送分について、実際の密着は2日間のみで、1年にわたって密着取材したかのように誤解させる表現をしていて、放送倫理違反に当たるとの意見を公表した(1月17日付・BPO放送倫理検証委決定第46号)。一方で委員会は、制作会社スタッフの過酷な勤務状態による「ひっ迫する制作体制」に問題があると述べ、制作を委託したテレビ東京側にも責任があるとしている。

⇒18日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆ワクチン接種死を「コロナで」と報道、BPO「放送倫理違反」

☆ワクチン接種死を「コロナで」と報道、BPO「放送倫理違反」

   このブログで何度か書いたが、新型コロナウイルスのワクチン接種後に「アナフィラキシー症状」とおぼしき副反応に一時的だったが見舞われたことがある。2022年8月に4回目のワクチン接種を金沢市内の病院で受けた。接種した右腕の付け根だけでなく、左腕のほぼ同じ個所もじんわりとした痛みが続いた。恐怖を感じたのは接種2日目の午後、小刻みに体が震える症状が出た。パソコンのキードボードを打つことができなかった。数分して震えが治まった。

   アナフィラキシー症状は薬や食物が身体に入ってから起きるアレルギー反応で、気道閉塞(喉の奥の空気の通り道が塞がれること)や不整脈、ショックなどで死に至る事例もある。コロナウイルス感染とワクチン接種による副反応はまったく別なものだ。自身は医者と相談し、5回目を受けたのはことし1月だったが、これ以降は副反応は出ていない。

   この話を再び持ち出したのは、ことし5月15日放送のNHK『ニュースウオッチ9』で、ワクチン接種後の副反応で亡くなった人の遺族3人のインタビューをコロナに感染して亡くなったと誤認させる伝え方したとして、報道の有り様が問われている問題。きょう5日、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は報道の経緯を文書でまとめ公表した。以下、抜粋。

「コロナウイルスに感染して亡くなった人とワクチン接種後に亡くなった人の違いは分かっていたものの、広い意味でコロナ禍で亡くなった人に変わりはないだろうと考えた、と(担当者は)説明している。にわかに信じがたい説明だが、仮にそう考えていたのならば、こうした認識は、ニュース報道の現場を担う者としてあり得ない、不適切なものであったと言わざるを得ない」

   放送は「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」というテーマで、およそ1分間の映像だった。担当者は記者やディレクターの部署ではなく、映像編集を業務とするセクションに所属。自ら現場に出て取材・制作を行ったのは今回が初めてだった。にもかかわらず担当者は、職場内では特に助言やサポートを受けていなかった。明らかに死因が異なるにもかかわらず、タイトルに合わせて強引に映像を構成したのではないだろうか。

   この問題を遺族側がBPOに訴えていた。BPO放送倫理検証委は文書の中で、「人の死」という人間の尊厳にも関わる情報を扱う放送であるにもかかわらず、取材の基本をおろそかにした行為はあまりにも軽率だったと指摘し、「事実を正確に伝えるというニュース・報道番組としての基本を逸脱し、視聴者の信頼を裏切り遺族の心情を大きく傷つける結果を招いた」と述べ、放送倫理違反とした。

   BPOの意見を受けてNHKは、「ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行し、視聴者の信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります」(5日付・NHK報道資料)とコメントを出した。この問題でNHKは放送後に番組で謝罪し、編集責任者を減給、編集長をけん責の懲戒処分としている。

⇒5日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆番組の「仕込み」が放送倫理違反になるとき

☆番組の「仕込み」が放送倫理違反になるとき

   テレビ業界ではこれを「仕込み」という。番組側が用意した人物を街角でまたまた見かけた人のように装いインタビューしたり、番組側が用意した質問を視聴者から寄せられた質問として装って番組で紹介することだ。制作者側からすると、番組の流れがスムーズに行くように仕込む、つまり事前に用意しておく。これがなければ「番組に穴があく」ことになる。逆に視聴者側からすれば、こうした仕込みは番組が情報番組であれば、「テレビによる世論操作」と映る。

   きょうの朝日新聞(13日付)によると、テレビ朝日の情報番組「大下容子ワイド!スクランブル」で、番組側が用意した質問を視聴者からと偽った問題があり、BPOの放送倫理検証委員会は12日、放送倫理違反の疑いがあるとして審議することを決めた。番組では、視聴者の質問に答えるコーナーでことし3月以降、番組側が用意した質問を放送当日に視聴者から寄せられた質問のように偽って紹介したことが計117件あった。10月に番組スタッフの指摘で発覚し、番組内で謝罪した。担当した子会社のチーフディレクターを降職とするなど、関係者が処分された。コーナーは10月18日から放送を休止している。

   テレビ朝日公式ホームページの「大下容子ワイド!スクランブル」=写真=をチェックすると、10月21日付「お知らせ」欄で「不適切な演出について」と題して概要を説明している。この「視聴者からの質問にお答えするコーナー」は月曜日から木曜日の番組終了間際に通常2分ほど放送していた。質問を用意したのは番組のチーフディレクターである社外スタッフ(「テレビ朝日映像」所属)。チーフディレクターは、放送に向けた準備のため、それまでに寄せられた意見や質問を踏まえて放送前に想定質問案を作っていた。今年3月以降、その想定質問を視聴者からの質問として放送に使っていた。。これまで放送した質問のうち約2割が想定質問たっだ。

   先ほどBPOの公式ホームページもチェックしたが、審議入りについての記事はアップされていない。番組の仕込み問題については、BPOがことし1月18日付でフジテレビの番組について意見書を公表している。クイズ番組「超逆境クイズバトル!99人の壁」でエキストラを数合わせて出演させていた問題。番組は、得意分野のクイズで全問正解して賞金100万円獲得を目指すチャレンジャー1人と、それを阻む99人が早押しで競う。ただ、実際には99人を集められず、最も多い回で28人、延べ406人のエキストラを参加させていた(2018年10月から25回放送分)。意見書では、「1人対99人」というコンセプトを信頼した多くの視聴者に対して「約束を裏切るもの」と指摘して放送倫理違反と判断した。

   今回審議入りが決まった「ワイドスクランブル」は最新のニュースや時事、社会、経済問題など広範囲に扱う情報番組だ。自身もよく視聴している。番組サイドが用意した「想定質問」を視聴者からの質問として取り上げていたとなれば、「世論誘導」「世論操作」ではないかと不信感が募る。明らかに放送倫理違反だろう。内部告発によって発覚したことは評価できるが、それにしてもテレビメディア全体への信頼を損ねたことは間違いない。

⇒13日(土)午前・金沢の天気       はれ

☆フジテレビは「課題のデパート」なぜ

☆フジテレビは「課題のデパート」なぜ

   フジテレビは「課題のデパート」なのか。また新たな問題が浮上している。フジ・メディア・ホールディングスは、フジテレビなどを傘下に持ち、放送法の「認定放送持株会社」として認定を受けている。放送局が報道機関として社会に大きな影響力を持つことなどから、外国の法人などが持つ議決権の比率を20%未満に抑える外資規制が定められているが、フジ・メディア・ホールディングスでは2012年9月末から2014年3月末にかけて外国の法人などの比率が20%以上となり、外資規制に違反した状態になっていた(4月8日付・NHKニュースWeb版)。

   単純な話、たとえば中国資本の企業が20%以上の株を持って、フジテレビに「中国に友好的な番組をつくれ」と要求してきたとすると、フジはおそらく呑むしかない。友好的な番組とはニュース番組も含めてのことだ。さらに、その中国資本の企業が番組CMのスポンサーとなって、意に反する番組をつくらせないとなったら、実質的にフジを乗っるような状態になってしまう。もちろん、これはフジテレビだけの問題ではない。すべてのテレビ局に言えることだ。何しろテレビ局は出資者とスポンサーには頭が上がらない。

   外資規制の違反があったからフジテレビの放送免許の取り消しをと言っている訳ではない。人気番組をさまざまに持つテレビ局の電波を停止することは視聴者の楽しみを奪うことになる。それにしても、冒頭で述べたようになぜフジに問題が集中しているのか。NHKと民放連によって設置された第三者機関「BPO」のサイトをチェックすれば、一目瞭然だ。審議案件はフジテレビが圧倒的に多い=写真=。

   BPOの放送倫理検証委員会で審議されたことは、フジが2019年5月から2020年5月まで14回にわたり実施した世論調査で、調査会社の社員が電話をしていないにもかかわらず「電話をした」として架空の調査データが入力されていた問題。また、同局のクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』は100人の参加者から選ばれた解答者1人が、残る99人を相手にクイズで競う番組コンセプトだが、参加者が不足した際、エキストラを出演させて補っていた。

   そして、放送人権委員会が取り上げたのは、このブログでも何度かテーマとした、女子プロレスラーの自死が問題となったリアリティ番組『テラスハウス』(放送:2020年5月19日未明)についての審理だった。

   ではなぜ、放送倫理や人権が問われる問題が発生するのか。女子プロレスラーの自死の問題について放送人権委員会が提起した問題は以下だった。「女性の精神状態を適切に理解するために専門家に相談をするなどのより慎重な対応が求められたのではないか」「制作責任者(チーフプロデューサー)、あるいはその他、社内の然るべき立場にある者の間ではこのことが深刻に受け止められていなかったのではないか」と指摘した。

   女性の自傷行為のケアをしていたのはフジテレビの局員ではなく、番組制作会社のスタッフだった。番組の制作現場は、局の制作プロデューサーやディレクター、制作会社ディレクター、孫請け会社の制作スタッフなど二重、三重の構造になっている。そのため、局の制作責任者は末端にまで目が行き届かず、現場任せの状態になっている。これは憶測だが、外資のチェックも社外スタッフに任せていたのではないだろうか。

   フジの業務の下請け化は番組制作にとどまらず、経理や人事、営業などさまざまなセクションに及んでいるのだろう。人件費の圧縮に腐心したツケが回ってきたのだ。もちろん、これはフジだけの問題ではない、テレビ局全体が問われる話ではある。

⇒9日(金)夜・金沢の天気    はれ

★女子プロレスラー自死問題、TVメディアの禍根は残る

★女子プロレスラー自死問題、TVメディアの禍根は残る

   日本人には禍根を新年度に持ち越さないという暗黙の共通認識のようなものがある。その意味で3月は出来事の決着を促す「判断月」と言ってよいかもしれない。一つの判断が示された。このブログでテレビメディアの演出問題として取り上げてきた、女子プロレスラーの自死とリアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ制作、2020年5月19日放送)について、BPO(放送倫理・番組向上機構)放送人権委員会は30日付で見解をまとめ、公式ホームページで公表した。

   問題となったシーンは、シェアハウスの同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れて縮ませたとして怒鳴り、「ふざけた帽子かぶってんじゃねえよ」と男性の帽子をとって投げ捨てる場面だ。放送より先に3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNS上で批判が殺到した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。番組スタッフがこのSNSを見つけ、本人に電話連絡をとってケアを行っていた。ところが、フジテレビは5月19日の地上波の本放送で、SNSで批判された問題のシーンをカットすることなく、そのまま流した。女子プロレスラーは5月23日に自ら命を絶った。 女性の母親は娘の死は番組内の「過剰な演出」による人権侵害としてBPOに申し立てていた。

   放送人権委員会は9月15日に審理入りを決定、6回の審理を重ね今月30日付で委員会決定の通知と見解の公表を行った。審理の論点は7点。「本件放送に過剰な演出はあったか」「予告編や未公開映像、副音声が視聴者に対する過剰な煽りとなっていなかったか」「帽子のシーンを台本によらない自然な行動として放送したことに、人権侵害や放送倫理上の問題はあるか」「出演にあたって締結した同意書兼誓約書が、女性の自由な意思表明や行動を過度に抑制する要因となったか」「Netflix 配信後の経緯において、本件放送を行ったこと自体に人権侵害や放送倫理上の問題はあるか」「Netflix 配信後の、フジテレビの女性への対応に問題はなかったか」「女性が亡くなった後のフジテレビの対応に問題はあるか」

   自身が注目していたのは、上記の「Netflix 配信後の経緯において、本件放送を行ったこと自体に人権侵害や放送倫理上の問題はあるか」の点だ。5月19日の地上波の放送でもSNS炎上が予想されたにもかかわらず、なぜ動画修正の措置などを講じなかったのか。追い詰められた出演者とテレビ局がどう向き合ったのか、だ。

   この点についての委員会の見解はこうだ。「出演者の身体的・精神的な健康状態に放送局が配慮すべきことは社会通念上当然のことであり、場合によっては契約の付随義務等として法的な義務ともなるのであって、出演者へのこうした配慮は放送倫理の当然の内容」と、放送倫理上の問題と判断した。その上で、「女性の精神状態を適切に理解するために専門家に相談をするなどのより慎重な対応が求められたのではないか」「制作責任者(チーフプロデューサー)、あるいはその他、社内の然るべき立場にある者の間ではこのことが深刻に受け止められていなかったのではないか」と指摘している。

   女性の自傷行為のケアをしていたのはフジテレビの局員ではなく、番組制作会社の制作スタッフだった。番組の制作現場は、局の制作プロデューサーやディレクター、制作会社ディレクター、孫請け会社の制作スタッフなど二重、三重の構造になっている。そのため、局の制作責任者は現場に目が行き届かず、ある意味で現場任せになりがちな構図がある。

   もう一つの問題が数字だ。地上波放送の場合、視聴率の評価基準である全日時間帯は6時から24時であり、この番組は深夜0時以降の放送で視聴率の対象外だった。リアリティ番組は出演者のありのままの言動や感情を表現し、共感や反感を呼ぶことで視聴者の関心をひきつけ、SNSコメントとしてそのまま現れる。共感であれ反感であれ、コメント数の多さが番組の視聴率に代わる評価指標のバロメーターとなる。そこで、テレビ的な発想で、SNSコメントの数を稼ぎたかったのではないか。結果的に、5月19日の地上波放送はそのまま流された。

   女性は享年22歳、プロレスラーとして知名度を得て、プロ意識も身につけただろう。縮んだコスチュームに怒りを感じて自身が演じたシーンであるがゆえに、テレビ局側に映像の修正を求めることはおそらくしなかった、できなかった。しかし、女性には「テラハから出てけ」「反吐が出そう」「ゴミ女」「出ていけクソブス女」「てか死ねやくそが」「花死ね」といった容赦ない誹謗中傷(BPO見解)が降り注がれた。耐えきれなかったのだろう。プロの自覚と誹謗中傷、このジレンマは相当なものであったことは想像に難くない。しかし、このジレンマの辛さは、現場任せの制作責任者とは共有されることはなかった。

   女子プロレスラーをツイッターで中傷したとして東京区検は30日、大阪府の20代の男を侮辱罪で略式起訴した。東京簡裁は同日、男に科料9000円の略式命令を出し、即日納付された(3月31日付・朝日新聞)。女性の自死問題の件はこれで決着したのだろうか。3月を期して収束したのだろうか。テレビ局の禍根は残したままではないだろうかか。(※写真は2020年5月23日付のイギリスBBCニュースWeb版で掲載された女子プロレスラーの死をめぐる記事から)

⇒31日(水)午後・金沢の天気     はれ

☆放送倫理と人権問題、テレビが問われること

☆放送倫理と人権問題、テレビが問われること

   まるで不祥事のデパ-ト、そんな印象を抱いた。このブログでも何度か事例を引用しているBPO(放送倫理・番組向上機構)の公式ホーページをチェックすると、フジテレビの案件が目白押しになっている=写真=。BPOは、放送の言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を守るため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対応するNHKと民放による独自の組織だ。

   BPOがトップで掲載している項目は、フジテレビが実施した世論調査で架空の回答が入力され、報道番組で伝えていた問題が結審したとの内容だ。フジは2019年5月から2020年5月まで14回にわたり実施した世論調査で、調査会社の社員が電話をしていないにもかかわらず「電話をした」として架空の調査データが入力されていた。調査を委託した会社が再委託した、いわゆる「孫請け」の会社だった。問題の発覚を受け、同局は架空の調査をもとに報じたニュース(18回分)を取り消した。この問題を審議してきた放送倫理検証委員会はきのう10日に結審した。

   意見書によると、NHKと民放が定めた放送倫理基本綱領などに照らし合わせ、「世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査結果を1年余りにわたり報じたもので、市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めない」として、この件は重大な放送倫理違反に当たると判断した。SNSを主舞台とする、いわゆる「ネット世論」が拡大するなど、多種多様な情報が錯綜している。世論調査の信頼性を確保するためには「世論調査の外部への発注から納品、データの分析、ニュース原稿作成に至るプロセスは、それ自体が取材活動であり、担当者にはジャーナリストとしての目線が欠かせない」と述べ、調査の現場に行く、数字をチェックする、緊張感のある対応を求めている。

   同じく放送倫理違反があったと結論づけられた審議案件。同局のクイズバラエティー番組『超逆境クイズバトル!!99人の壁』は、100人の参加者から選ばれた解答者1人が、残る99人を相手にクイズで競う番組コンセプト。だが、参加者が不足した際、エキストラを出演させて補い、クイズへの解答もさせていなかった。コンセプトを逸脱した状態は2018年7月から1年余り続き、告発を受けて2020年4月に同局は番組ホームページ上で事実関係を公表するとともに謝罪していた。放送倫理検証委員会の審議はことし1月18日に結審した。

   意見書によると、番組制作にあたってプロデューサーが6人配置されていたにもかかわらず、お互いが「見合う」カタチになっていて、エキストラによる補充の常態化に警鐘を鳴らすスタッフがいなかった。欠員は想定外でなく想定内として番組制作の数日前にエキストラの補充を手配業者に発注していた。「視聴者との約束を裏切るものであった」と放送倫理違反を結論づけている。

   3つ目が、女子プロレスラーの自死が問題となったリアリティ番組『テラスハウス』(放送:2020年5月19日未明)についての審理だ。問題となったシーンは、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面だ。放送より先に3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNSコメントで批判が殺到した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。フジの番組スタッフがこのSNSを見つけ、本人に電話連絡をとっていた。ところが、フジは5月19日未明の放送で、SNSで批判された問題のシーンをカットすることなく、そのまま流した。女子プロレスラーは5月23日に自ら命を絶った。 女性の母親は娘の死は番組内の「過剰な演出」による人権侵害としてBPOに申し立てた。

   放送人権委員会はことし1月19日までに3回の審理を重ねている。これまでの関係者のヒアリングで、母親はSNS上で誹謗中傷が集中したあと娘が自傷行為を行ったことは、「SOSを出していたのであり、フジテレビが適切に対応していれば娘が命を落とすことはなかった」などと訴えた。また、女子プロレスラーの知人は当時の様子について、女性とのやり取りから制作スタッフに不信を抱いていたようだと感じたなどと述べた。一方、フジテレビ側は、社内調査を行った結果から、番組に過剰な演出はなく女性を暴力的に描いたことはないとして主張した。

   審理が始まって新たな展開があった。警視庁は12月17日、女子プロレスラーを中傷する投稿をSNSで行ったとして、侮辱容疑で大阪府の20代の男を書類送検した。ツイッターアカウントに「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと投稿し繰り返し、公の場で侮辱した疑い(2020年12月17日付・時事通信Web版)。

   フジに限らず、番組の不祥事は制作スタッフの緩みやスキを突いて出てくる。放送倫理と人権問題として放送する側が問われる。緊張感を持って制作しなければ、番組は立たない。

⇒11日(祝)午後・金沢の天気     はれ    

☆テレビメディアに厳しい菅氏、ある事件

☆テレビメディアに厳しい菅氏、ある事件

    菅総理の印象について地味で忠実というイメージを持っている人が周囲に多い。かつてテレビ局に在籍した自身の目線で言えば、「テレビメディアに厳しい」というイメージがある。印象に残る事件がある。       

    2007年1月7日放送の関西テレビ番組『発掘!あるある大事典Ⅱ』の「納豆でヤセる黄金法則」について、週刊朝日が11項目のデータについて関西テレビに質問状を送ったのがきっかけで、捏造事件が発覚した。緊急記者会見を行った関テレの社長は当初、「納豆のダイエット効果の有無は学説で裏付けられている」として、「番組全体は捏造ではない」と主張したが、捏造データの多さを記者から追及されて「捏造」と認めた。高視聴率を誇った番組は中止となった。

   その後、2月7日に関テレ社長は総務省近畿総合通信局を訪れ、捏造についてまとめた報告書を提出した。ところが、近畿総合通信局側は納得しなかった。疑惑が次々と出て、520回すべてを調査し報告するよう近畿総合通信局側は求めた。電波法では「総務相は無線局の適正な運用を確保するため必要があると認めるときには、免許人などに対し、無線局に関し報告を求めることができる」(81条)と記されている。そして、3月30日、総務省は総務大臣名の行政指導としては最も重い「警告」を行った。そのときの総務大臣が菅氏だった。テレビ業界を驚かせた言葉が、「今後、放送法違反が繰り返さた場合は電波停止もありうる」だった。

   伏線があった。菅総務大臣は2月9日の国会審議で、再発防止に向けて放送法の改正が必要だと発言していた。テレビ局に捏造事件があり、テレビ局側が認めた場合、総務大臣はテレビ局に対して再発防止計画を要求する。再び繰り返された場合は停波・免許取り消しの行政処分を行うという内容だった。このとき、テレビ業界は戦々恐々としていた。日本民間放送連盟は(民放連)は自浄的な措置として4月19日付で関西テレビを除名処分にした。

   この年の12月21日、放送法の改正案が参院本会議で可決・成立した。ただ、このときの改正案では菅氏が述べていた「再発防止計画の提出義務化」は削除されていた。その前の7月29日の参院選で与野党の勢力が逆転。今国会では番組等の不祥事については、あくまでも世論の批判とテレビ業界の自浄努力に委ねるべきであって、国家権力が安易に介入すべきではないとする野党の主張を与党がくみ入れ、この「再発防止計画の提出義務化」の改正案は見送っていた。菅氏も8月27日に総務大臣を退任していた。

   NHKと民放の両者が共同でつくる「放送倫理・番組向上機構」(略称=BPO、放送倫理機構)に放送倫理検証委員会を設け、やらせや捏造が発覚した番組を外部委員にチェックしてもらい、問題があった局に再発防止策を提出させるという自主的な解決システムをつくっている。しかし、やらせや捏造は後を絶たない。フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーがことし5月23日に自死した問題で、BPO放送人権委員会は遺族からの申し立てを受け、審理入りを決定した(9月15日付・BPO公式ホームページ)。

   BPO人権委員会が、番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けたことが自死の原因として、人格権の侵害を認定。さらに、それが裁判にも持ち込まれた場合、菅内閣はどう反応するだろうか。「再発防止計画の提出義務化」の法改正を改めて持ち出してくるのではないか。13年経ってもテレビが変らなければ、これしかない、と。

⇒7日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★テレビ局は追い詰められた出演者とどう向き合ったのか

★テレビ局は追い詰められた出演者とどう向き合ったのか

          先ほどニュースを見て、「これは警察の忖度か」と思わず考え込んだ。多額の負債を抱えて倒産した磁気治療器販売「ジャパンライフ」が、顧客に虚偽の説明をして現金をだまし取ったとして、警視庁の捜査本部は18日朝、元会長ら14人を詐欺容疑で逮捕した。「ジャパンライフ」は2015年に元会長に届いた安倍総理主催の「桜を見る会」の招待状を顧客勧誘セミナーで見せびらかして参加者を信用させていたと、去年12月の参院本会議でも問題になっていた。安倍退陣と菅政権発足を見計らった絶妙なタイミングなのだ。

   ようやくこの問題が動き出した。フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーがことし5月23日に自死した問題で、BPO放送人権委員会は遺族からの申し立てを受け、審理入りを決定した(9月15日付・BPO公式ホームページ)。番組で女子プロレスラーが演じた、同居人男性の帽子をはたくシーンは番組制作側の「やらせ」だったのかどうかが問われる。委員会は遺族とフジテレビが提出する書面と、双方へのヒアリングをもとに審理を行い、その結果を「勧告」または「見解」としてまとめ、双方に通知した後に記者会見で公表する予定だ(同)。

   問題のシーンは『テラスハウス』(38話)で、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面だ。この38話は3月31 日に動画配信サービス「Netflix」で流され、SNSコメントが批判が殺到した。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。番組スタッフがこのSNSを見つけ、本人に電話連絡をとっている。5月18日の地上波放送では、SNSで批判された問題のシーンをカットすることなく、そのまま流された。女子プロレスラーが自死したのは5月23日だった。

   BPOに対し女性の母親は7月15日に申し立てを行い、番組でプロレスのヒール(悪役)のキャラクターを演じるよう指示され、「番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けた」として、人格権の侵害を訴えていた。また、「全ての演出指示に従うなど言動を制限する」などの条項を含む「誓約書兼同意書」によって自己決定権が侵害され、人権侵害に相当すると訴えていた。

   これに対し、フジテレビ側は7月31日付で内部調査の検証報告を公式ホームページで掲載した。聞き取りを番組のプロデューサー、ディレクター、制作現場のスタッフ、出演者、女子プロレスラーの所属事務所の関係者ら27人に対して行った。番組について「予め創作した台本は存在せず、番組内のすべての言動は、基本的に出演者の意思に任せることを前提として制作されていた」としたうえで、調査では「制作者が出演者に対して、言動、感情表現、人間関係等について指示、強要したことは確認されなかった」としている。

   また、同意書兼誓約書に関しては、出演契約であり労働契約のように「指揮命令関係に置くものではない」としている。動画配信サービス後の自傷行為から放送後にいたる間は、番組スタッフが本人と連絡を取り、ケアにより、「精神状況が比較的安定していることを確認している」とも主張している。

   BPO放送人権委員会の審議のポイントはいくつかあると推測する。一つは、フジテレビ側はなぜ内部調査だったのか、第三者委員会を設置して客観的視点から調査を行うべきではなかったか。もう一つは、「Netflix」での配信をきっかけにSNSによる批判が殺到し女子プロレスラーが自傷行為に及んだ。地上波の放送でもSNS炎上が予想されたにもかかわらず、なぜ動画修正の措置などを講じなかったのか。テレビ局として追い詰められた出演者とどう向き合ったのか、問われるところだろう。BPOの審理に注目したい。

(※写真は5月23日付のイギリスBBCニュースWeb版で掲載された女子プロレスラーの死をめぐる記事)

⇒18日(金)朝・金沢の天気    あめ

☆検証報告「確認されず」で済むのか

☆検証報告「確認されず」で済むのか

   フジテレビの番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーがことし5月23日に自死した問題で、フジテレビは7月31日付で検証報告を公式ホームページで掲載している。それによると、調査は社内の関係部門を横断する メンバーによる内部調査で、一部に弁護士も加わった。聞き取り調査の対象者は番組のプロデューサー、ディレクター、制作現場のスタッフ、出演者、女子プロレスラーの所属事務所の関係者ら27人におよんだ。

   問題となった38話は、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面だ。この場面のいきさつについて検証報告では以下のように記載されている。「一部の報道等では、制作側が木村花さんに対して、プロレスのヒール(悪役)のキャラクターを演じるよう指示しており、木村花さんのSNSを炎上させる意図があったと伝えられています。しかし、制作側からそのようなキャラクター設定を求めるような指示をしたことは確認されませんでした」。いわゆる「やらせ」はなかったとしている。

   むしろ、この検証報告で注目したのは、SNSでの炎上と自傷行為を制作側はどのようにとらえていたのか、という点だ。以下報告を要約する。動画配信サービス「Netflix」で38 話が配信された3月31 日は、SNSコメントは2万2421件を記録した。それまで番組へのコメントは配信後1日で6千から8千だったので38話の場合は異常に多かった。さらに、ネガティブなコメントの割合は配信直後の1時間は40%だった。この日、女子プロレスラーは自傷行為に及び、それをSNSに書き込んだ。番組スタッフがこのことをSNSで知り、本人と連絡して無事であることを確認している。

   この時点で5月18日の地上波の放送が決まっていた。本来ならば、SNS炎上の第2波を防ぐために問題の一部シーンをカットするなどの配慮があってもよかったのではないだろうか。そうした救済措置もないまま予定通り放送される。「5月18日に地上波で38話が放送された際にも、同じスタッフが木村花さんと連絡をしており、SNSにネガティブなコメントがあるとの話を聞きましたが、この場のやり取りでは、猫を飼い始めたなどの話を聞いており、木村花さんが元気で、深刻に悩んでいる様子は無いものと認識しました。」(検証報告)。その5日後に自死にいたる。

   問題シーンのカットもせずそのまま地上波で放送したのは、番組スタッフとすれば「ネット配信で事前に視聴者の話題を煽り、本命の地上波放送で視聴率を上げる」という狙いがあったのではないかと勘繰らざるを得ない。これに関して以下の説明がある。

   「制作スタッフが出演者のSNSを炎上させる意図を持つ要素があるかについても調査しましたが、そのようなことは確認されませんでした。例えば、視聴率および配信数を向上させることを目的とし得るかどうかについても確認しましたが、出演者のSNSの状況と地上波放送の視聴率 、フジテレビが行うインターネット配信の視聴数の間には、過去のエピソードを含む一連のデータを検証しても、何ら相関が見いだされず、そのような動機を持つことはないと考えます。また地上波放送については、放送時間帯が深夜0時以降であり、視聴率の主要な評価基準の一つである全日時間帯(6時から24時)に含まれておりません 」(同)

   検証報告では契約書についても触れている。「出演者および所属事務所と、上記『同意書兼誓約書』を締結しておりますが、これは一般に出演契約と言われるものであり、労働契約ではないとのことでした。損害賠償に関する規定についても、契約違反しただけでなく、それによって番組の放送、配信が中止された場合について定めたものです。これは、現実的には、出演者による犯罪が起きるなどの重大な事態しか想定され得ず、制作側としては、そのような事が起きないようにするための抑止力として捉えていました」

   この文面を読んでふと思った。以下憶測である。本人は5月18日の地上波放送を中止してほしかったに違いない。それを番組スタッフ、あるいは所属事務所の関係者に頼み込んだ。しかし、「番組の放送を中止した場合、損害賠償が請求される」と聞かされ、諦めざるを得なかった。そして放送後、SNSにネガティブコメントが届き、自らをさらに追い詰めることになった。

   遺族はBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に人権侵害の審査を申し立てている(7月15日付・共同通信Web版)。フジテレビ側とすると、審査入りの決定を前に、検証報告を公表しておきたかったのだろう。BPOの審査が決定し、審議が始まれば、おそらく真っ先にフジテレビ側が問われるのは、なぜ内部調査だったのか、第三者委員会を設置して客観的視点から調査を行うべきではなかったか、と。

(※写真はイギリスのBBCニュースWeb版が報じた女子プロレスラーの死=5月23日付)

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☆リアリティ番組、いよいよ「BPO沙汰」に

☆リアリティ番組、いよいよ「BPO沙汰」に

   台本のない共同生活を描いたリアリティ番は実話、損害賠償金つきの誓約書兼同意書によって、出演者たちが制作者側の意図に沿って演じていた番組だった、のか。フジテレビの番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーが自死した問題で、遺族がBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に人権侵害を申し立てる書類を提出した(7月15日付・共同通信Web版)。

   番組の中で、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面が流れ、視聴者から誹謗中傷のSNSなどが集中し、本人が追い込まれた。母親によると、このシーンについて、スタッフの指示があったと本人がかつて話していて、「暴力的な女性のように演出・編集され、過呼吸になっても撮影を止めてくれなかった。人格や人権が侵害された」と訴えている(同)。

   BPOがこの問題を審議することになれば、リアリティ番組の中で、女子プロレスラーが凶暴な悪役を演じさせられたのか、それが誰の指示によるものだったのか、損害賠償金つきの誓約書兼同意書の意図はどこにあったのか議論になるだろう。台本のないリアリティさを売りにしていた番組だったので、映像に描き出される彼女の言動そのものが、人格・個性と視聴者に受け止められた。これが、娯楽バラエティー番組であれば役者による演技と受け止められ、視聴者からのSNSによる誹謗中傷もそれほどではなかったのではないか。リアリティ番組で過剰な演技が要求されていたとすれば、まさに「人権侵害」といえるだろう。

   フジテレビの社長は7月3日の記者会見で、「現在、検証作業中であり、事実関係の精査などを行っている」と前置きし、「一部報道にスタッフが“ビンタ”を指示したと書かれているが、そのような事実は出てきていない。一方で、『テラスハウス』という番組は性質上、出演者とスタッフが多くの時間を過ごしており、多くの会話をしている中で、撮影では、出演者へのお願い・提案などはある。 」と述べている(フジテレビ公式ホームページ)

   この問題は「BPO沙汰」にすべきだと考えている。5月にこの問題が発覚し、女子プロレスラーの自死はSNSでの誹謗中傷が招いたと社会問題となった。自民党はインターネット上での誹謗中傷対策を検討するプロジェクトチームを立ち上げ、匿名による中傷を抑制する法規制などを検討を始めている。ところが、この問題の根本はテレビ局側が出演者に過剰な演技を要請したことが原因ということになれば、別次元の問題だ。視聴者もテレビ局側にある意味で騙され、煽られたことになる。

   BPOは放送や番組に対して政治や総務省が介入することを防ぐ目的で、NHKと民放が自主的に問題を解決する姿勢を示すために設けた第三者機関である。「人権侵害」と認定されれば、テレビ局側もそれ相当の自己改革が迫られる。この際、リアリティ番組の放送基準を明確にすべきだろう。このままうやむやにしてはならない事案だと考える。

(※写真はイギリスのBBCニュースWeb版が報じた女子プロレスラーの死=5月23日付)

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