#黎智英

☆ノーベル平和賞を隠す「不都合な真実」

☆ノーベル平和賞を隠す「不都合な真実」

   ノーベル平和賞を隠すということはどのような意味があるのだろうか。9日付のこのブログでノーベル平和賞について記した。ノルウェーのノーベル平和賞選考委員会は、ことしのノーベル平和賞にフィリピンのインターネットメディア「Rappler(ラップラー)」代表マリア・レッサ氏と、ロシアの独立系新聞「Novaja Gazeta(ノヴァジャ・ガゼータ)」の編集長ドミトリー・ムラトフ氏の2人を選んだと発表した(「ノーベル平和賞2021」プレスリリースWeb版)。

   やはりそうかと感じたことがあった。中国では今回のノーベル平和賞の受賞について、国営の新華社通信などの主要メディアは報じていない。独裁的な政権に立ち向かうジャーナリストの受賞決定に、中国政府が報道を規制した可能性がある(10月8日付・NNNニュースWeb版)。では、なぜ中国政府は今回のノーベル平和賞受賞を隠すのか。いわく因縁がある。

   中国政府に民主化を求めたことが国家転覆罪にあたるとして有罪判決を受けた、作家で人権活動家の劉暁波氏は服役中の2010年にノーベル平和賞を受賞した。肝臓を患っていたが、国外での治療を認められず2017年7月に死亡した。中国在住の中国人として初のノーベル賞受賞者だったが、劉氏は「この受賞は天安門事件(19896月)で犠牲になった人々の魂に贈られたものだ」と語ったことでも知られる。その遺体は火葬にされ、遺骨は海にまかれた。中国当局とすれば、「劉暁波」を人民の記憶から消し去ろうとしたのだろう。反骨のジャーナリストがノーベル平和賞を受賞したことを人民が知ると「劉暁波」が想起される。そこで報道をいっさい認めないのではないか。

   あるいはこの問題も避けたかったのかもしれない。ことし6月、中国政府への批判を続けてきた香港の新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」が発行停止に追い込まれ、紙面の主筆や中国問題を担当する論説委員も逮捕された。蘋果日報が狙い撃ちされたのは昨年8月だった。創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が香港国家安全維持法(国安法)と詐欺の容疑で逮捕され、ことし2月、禁固1年2月の実刑判決を受けている。中国政府とすれば、この点からも体制に批判的なジャーナリストのノーベル平和賞受賞は好ましくないと判断した可能性もある。

  いずれの理由にしても、中国政府にとってはジャーナリストのノーベル平和賞受賞は「不都合な真実」なのだろう。

⇒11日(月)夜・金沢の天気     くもり

★静かなる年末年始(2)「高くつくXmasプレゼント」

★静かなる年末年始(2)「高くつくXmasプレゼント」

          12月25日は「クリスマス」というイメ-ジが日本だけでなく世界で定着していて、いまや宗派を超えてキリストの生誕日の祝いの日なのだと思っていた。ところが、きょう届いたメールマガジンを読んでいて、「12月25日はキリストの誕生を祝う日であって、誕生日ではありません」(月刊ニューメディア)と。新約聖書では、キリストの生まれた日を特定しておらず、「Christmas」はChristがキリスト、masはミサ(礼拝)のこと。世界のキリスト教国ではキリストの降誕を祝う日で、ミサで静かに迎えるのが本来だそうだ。

   これはクリスマスのプレゼントなのだろうか。BBCニュースWeb版(12月24日付)=写真・上=によると、アメリカのトランプ大統領は23日、元選対本部長のポール・マナフォート受刑者ら側近29人に恩赦や刑の減免を与えた。前日にはイラクで民間人十数人を殺害し有罪となった軍事請負業者にも恩赦を与え、国連などから批判されている。 トランプ氏はマナフォート受刑者(資金洗浄罪などで有罪)のほか、すでに禁錮刑の執行を免除した盟友ロジャー・ストーン元被告(連邦議会への偽証罪で有罪)、娘婿ジャレド・クシュナー氏の父親など26人に対して、恩赦を与えた。そのほか、3人について刑の執行を免除した。刑の執行免除は有罪判決の取り消しを意味しない。    

   中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏は今月2日に詐欺罪で逮捕・起訴され、11日には外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えたとして香港国家安全維持法(国安法)に違反した罪で起訴され、裁判が始まっていた。香港の高裁は23日、黎氏が申請していた保釈を認めた。保釈金は1千万香港㌦、日本円で1億3000万円で、保釈中は自宅からの外出のほか、メディアの取材を受けたりSNSで発信したりすることが禁じられる(12月23日付・NHKニュースWeb版)。高額な保釈金、クリスマスプレゼントにしては高くついた。

   安倍前総理の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填問題で、東京地検特捜部は24日、政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴処分とした=写真・下、25日付朝刊各紙=。一方、政治資金収支報告書に計約3022万円を記載しなかったとして、同法違反罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴とし、一連の捜査を終結した(12月24日付・共同通信Web版)。安倍氏はきょう25日午後、衆院議院運営委員会の公開の場でいきさつを説明する。不起訴処分と国会での釈明の場、これは安倍氏にとって最高の「クリスマスプレゼント」ではないだろうか。

⇒25日(金)朝・金沢の天気    あめ

☆相次ぐジャーナリストの受難

☆相次ぐジャーナリストの受難

       ジャーナリストの受難が続く。イギリスBBCのWeb版(12月12日付)は「Ruhollah Zam: Iran executes journalist accused of fanning unrest」と、イランは不安を扇動したとして、ジャーナリストのルホラー・ザム氏を処刑したと報じている=写真・上=。ことし6月にザム氏はデモを扇動したとしたとして、ことし6月に死刑判決を言い渡されていた。

   BBCの記事によると、2017年12月に起きたイランの反政府デモは、物価高騰に市民による抗議活動だった。ザム氏はフランスのパリを拠点にして、通信アプリ「テレグラム」のニュースサイトを運営し、フォロワー140万人に向けて、抗議活動の映像などを情報発信していた。去年10月、いわゆる「ハニートラップ」でフランスからイラン入国したところを逮捕された。人権団体アムネスティ・インターナショナルは「抑圧の武器として、死刑が使われている」とイランを非難し、死刑の執行を取りやめるよう訴えていた。

   香港では、中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に対する詐欺罪での初公判が開かれ、保釈申請を却下して収監を命じた。黎氏は即日収監された。黎氏はことし8月に香港国家安全維持法(国安法)違反と詐欺などの疑いで香港警察に逮捕された後、保釈されていた。今回は逃亡や再犯の恐れを理由に保釈申請が認められず、収監された(12月3日付・BBCニュースWeb版)=写真・下=。

   詐欺罪はどのような内容だったのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社があるビルで、不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われてた。「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。香港の転貸に関する法律を理解してはいないが、日本ならば、無断転貸の場合、ビルのオーナーは賃貸借契約を解除することになるだろう(民法612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」)。民事をあえて刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

⇒13日(日)朝・金沢の天気   くもり時々あめ   

★香港の民主活動「根絶やし」作戦か

★香港の民主活動「根絶やし」作戦か

    ついに「根絶やし」作戦に転じた。イギリスBBCWeb版(12月3日付)は「Hong Kong pro-democracy tycoon Jimmy Lai detained for fraud」(香港の民主化の大物、ジミー・ライが詐欺で拘束された)と大きく伝えている=写真=。日本のメディアも、香港の裁判所はきょう3日、中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に対する詐欺罪での初公判を開き、保釈申請を却下して収監を命じた。黎氏は即日収監された(12月3日付・読売新聞WEB版)。

   黎氏の勾留は、来年4月16日の第2回公判まで続くとみられる。黎氏はこし8月に香港国家安全維持法(国安法)違反と詐欺などの疑いで香港警察に逮捕された後、保釈されていた。今回は、逃亡や再犯の恐れを理由に保釈申請が認められず、収監された(同)。

   では、今回の詐欺罪はどのような内容なのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社がある不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われている(同)。つまり、「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。香港の転貸に関する法律を理解してはいないが、日本ならば、無断転貸の場合、ビルのオーナーは賃貸借契約を解除することになるだろう(民法612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」)。民事をあえて刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

   新聞メディアを経営する黎氏は一貫して民主活動を支持している。香港政府とバックの中国政府は、黎氏の収監により、中国に批判的な報道の萎縮を狙ったのだろう。きのう2日には、民主活動家の周庭氏や黄之鋒氏らが無許可集会を扇動したなどとして実刑判決を受けたばかりで、香港当局による民主派への締め付けは強まる一方だ。

   BBCの解説(3日付)によると、ことし6月に施行された国安法では、裁判は陪審員なしで秘密裏に行われ、裁判は本土当局に引き継がれる。本土の治安要員は、免責されたまま香港で合法的に活動することができる。この法律が導入された後、多くの民主化運動グループが安全性を恐れて解散した。中国政府は、この法律は民主化運動で揺らいだ領土の安定を取り戻し、中国本土との整合性を高めるのに役立つと主張している。
 
⇒3日(木)夜・金沢の天気    あめ