#黄砂

☆黄砂がもたらすもの

☆黄砂がもたらすもの

   きのう野外の駐車場に停めておいた自家用車のフロントガラスが一夜で白くなった。きょう日中も金沢を囲む山々がかすんで見えた=写真=。黄砂だ。ソメイヨシノは満開なのだが、空がこのようにかすんでいては見栄えがしない。

   日本から4000㌔も離れた中国大陸のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠から偏西風に乗って黄砂はやってくる。最近では、黄砂の飛散と同時にPM2.5(微小粒子状物質)の日本での濃度が高くなったりと環境問題としてもクローズアップされている。外出してしばらくすると目がかゆくなってきた。黄砂そのものはアレルギー物質になりにくいとされているが、黄砂に付着した微生物や大気汚染物質がアレルギーの原因となり、鼻炎など引き起こすようだ。さらに、黄砂の粒子が鼻や口から体の奥の方まで入り、気管支喘息を起こす人もいる。

   黄砂は「厄介者」とのイメージがあるが、意外な側面もある。黄砂といっしょにやってくる微生物を「黄砂バイオエアロゾル」と呼ぶ。金沢大学のある研究者は、食品発酵に関連する微生物が多いこと気づき、大気中で採取したバチルス菌で実際に納豆を商品化した。その納豆の試食会に参加したことがある。日本の納豆文化はひょっとして黄砂が運んできたのではないかとのその研究者の解説に妙に納得したものだ。

   生態系の中ではたとえば、魚のエサを増やす役割もある。黄砂にはミネラル成分が含まれ、それが海に落ちて植物性プランクトンの発生を促し、それを動物性プランクトンが食べ、さらに魚が食べるという食物連鎖があるとの研究もある。地球規模から見れば、「小さな生け簀(す)」のような日本海になぜブリやサバ、フグ、イカ、カニなど魚介類が豊富に獲れるのか、黄砂のおかげかもしれない。

⇒30日(火)夜・金沢の天気        くもり

★黄砂から見える能登半島

★黄砂から見える能登半島

   強烈な黄砂がやって来る。気象庁公式ホームページ「黄砂情報」(3月16日付)によると、きょう午後3時で日本海から能登半島の尖端に近いづてき=写真・上=、午後9時ごろには山陰、北陸、新潟をすっぽりと覆うことになる。NHKニュースWeb版(3月15日付)は「中国の気象当局は、今回の黄砂について中国北部では、過去10年で最大の規模だとして、なるべく外出を控えるよう呼びかけています」と伝えている。

   西日本新聞Web版(3月16日付)によると、今回の黄砂で北京市内では粒子状物質「PM10」の濃度が一時、WHO基準値の約160倍となる1立方メートル当たり8千マイクログラムに達した。モンゴル国営放送によると、同国では草原地帯の広い範囲で強風や突風が発生し、遊牧民の住居が吹き飛ばされるなどして死傷者や行方不明者が出た。

     黄砂はタクラマカン砂漠やゴビ砂漠など中国の乾燥地域で巻き上げられ、偏西風に乗ってやってくる。わずか数マイクロメートル(1マイクロメートルは千分の1ミリ)の大きさの砂が、日本に飛来するまでに、まさざまに変化する。「汚染物質の運び屋」もその一つ。日本の上空3キロで採取した黄砂の表面には、硫黄酸化物が多くついていて、中国の工業地帯の上空で亜硫酸ガスが付着すると考えられる。

   黄砂に乗った微生物もやってくる。敦煌上空で採取した黄砂のおよそ1割にDNAが付着していて、DNA解析でカビや胞子であることが分かった(岩坂泰信・元金沢大学教授らの調査)。黄砂は「厄介者」とのイメージがあるが、生態系の中ではたとえば、魚のエサを増やす役割もある。日本海などでは、黄砂がプランクトンに鉄分などミネラルを供給しているとの研究などがある。地球規模から見れば、「小さな生け簀」のような日本海になぜブリやサバ、フグ、イカなど魚介類が豊富に取れるのか、黄砂のおかげかもしれない。

    その黄砂をキャッチするには、日本海に突き出た能登半島がよい。偏西風に乗って日本に飛んできた黄砂をいち早く観測・採取できるからだ=写真・下=。この地の利を生かして、「大気観測・能登スーパー・サイト」という調査フィールドが岩坂氏らの発案で2008年に形成された。能登半島は日本海を挟んで、中国と韓国、ロシアと向き合う。これらの国々の黄砂研究者との連携も進んでいる。東アジアにおける能登半島のポジションが、黄砂研究の視点から見えてくる。

⇒16日(火)午後・金沢の天気     あめ