#震度5強

☆震度6強から1ヵ月 揺れ止まぬ能登は日本の縮図なのか

☆震度6強から1ヵ月 揺れ止まぬ能登は日本の縮図なのか

   能登半島の尖端を震源とするマグニチュード6.5、震度6強の地震が発生してきょう5日で1ヵ月が経った。地震は断続的に続いていて、きのう4日朝にもマグニチュード3.0、震度2の揺れがあった。震度1以上の揺れはことしに入って171回目となった(金沢地方気象台「震度1以上の日別震度回数・積算震度回数」より)。被災地では再建に向けて動き出しているが、課題も浮かんでいる。

   震度6強の揺れから10日目の15日に被害が大きかった珠洲市を訪れた。同市の全壊家屋は28棟、半壊103棟、一部損壊が564棟となった(5月30日現在・石川県庁調べ)。市内でもとくに被害が大きかった正院地区では、「危険」と書かれた赤い紙があちらこちらの家や店舗の正面に貼られてあった。貼り紙をよく見ると、「応急危険度判定」とある。   

   危険度判定は自治体が行う調査で、被災した建築物がその後の余震などによる倒壊の危険性や、外壁や窓ガラスの落下、設備の転倒などの危険性を判定し、人命に関わる二次的被害を防止するのが目的。判定結果は緑(調査済み)・黄(要注意)・赤(危険)の3段階で区分する。ただ、法的な拘束力はない。現地を訪れたときも、赤い紙が貼られている家だったが、買い物袋を持った住人らしき人たちが出入りしていた。危険と分かりながらも住んでおられるのかと思うと、自身も複雑な気持ちになった。

   地域経済にも深刻な被害をもたらしている。西村康稔経済産業大臣が今月3日に珠洲市を視察し、焼酎の製造会社で仕込み用タンクの損害や、「かめ」や「たる」が壊れて中身が流れ出たことについて説明を受けた。また、地元の伝統工芸品である珠洲焼の窯が壊れた状況を視察した。その様子を当日のNHKニュースが報じ、西村大臣は「事業を再開、再建できる支援をしていきたい。さまざまな補助金などがあるのでニーズに合わせて対応していく」と述べていた。また、同行した同市の泉谷満寿裕市長は「500以上の事業者が被害を受けた。事業者が再建をあきらめないように国の支援をお願いした」とインタビューに答えていた。

   能登半島では過疎高齢化が進み、空き家も目立っている。そこに追い打ちをかけるようにして、今度は震災に見舞われた。インタビューに答えていた泉谷市長は切実な表情だった。いつ揺れが止むか見通しが立たない。少子高齢化と地震多発の日本の縮図がここにある。災害復興のモデル地区として再生して欲しい、そう願わずにはいられない。

⇒5日(月)午前・金沢の天気    はれ

☆秋の夜長3題~聴く、見る、読む~

☆秋の夜長3題~聴く、見る、読む~

   秋の夜長とはよく言ったものだ。たまにはゆったりと月を眺めて過ごしてみたいと思う気持ちは古今変わらない。昨夜は「ソナタの夕べ」と題したリサイタル=写真・上=を聴きに出かけた。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の第一バイオリンで活躍する原田智子さん、そして、原田さんが敬愛するというピアニスト小林道夫氏を招いて、ピアノとバイオリンのソナタの魅力を披露した。

   モーツァルトのピアノとバイオリンのためのソナタ(K379)、シューベルトのソナチネ第2番、ベートーベンのソナタ第10番の3曲。心に響いたのはベートーベンだった。森の中にいることを思わせる響きで、日光が差したかと思えば、暗闇になり、嵐になり、そして月影が現れ、また日光が差してくる。まるで、ドラマのような流れだった。アンコール曲は同じくベートーベンの「スプリング・ソナタ」。コロナ禍で席は一つ空けての着席。この方がむしろ、演奏者と空間を分け合い、そして音楽を聴きながら自分と対話しているような感覚になって、十分楽しむことができた。

    次の秋の夜長は、まるでベートーベンの「運命」をテレビで見るような感覚だった。10日に放送されたTBSの日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」(午後9時)の初回=写真・中=。1973年の小松左京のSF小説が原作。2023年の東京を舞台に内閣府や環境省の官僚、東大の地震学者らが、天才肌の地震学者が唱える巨大地震説を伏せようと画策する。環境省の官僚が海に潜ると、海底の地下からガスが噴き出して空洞に吸い込まれそうになるシーンはリアル感があった。ラストシーンは実際に島が沈むというニュース速報が流れ、騒然となる。

   これまで小説も読み、映画も観たので既視感はあった。さらに、7日夜に首都圏で震度5強の地震があった直後だけに、関東の人たちはこの番組をどのような思いで視聴しているのだろうかなど案じながら見ていた。ビデオリサーチ社によると、初回の世帯平均視聴率は15.8%だった。ドラマを楽しむというより、自分たちの運命はどうなるのだろうという不安心理などがない交ぜになった高視聴率ではなかったか。

   月刊誌「文藝春秋」(11月号)の「財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」=写真・下=を秋の夜長に読んだ。「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。」との出だし。現職の財務事務次官による、強烈な政治家批判だ。「数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ」は岸田総理の自民党総裁選での主張のこと。また、「財政収支黒字化の凍結」は総裁選での高市早苗氏の政策だった。「さらには消費税率の引き下げまでが提案されている」は立憲民主党の枝野代表の公約だ。

 
   読んだ感想だが。財務事務次官の立場からすれば当然だろう。国庫には無尽蔵にお金があるはずがない。財政規律を唱えて当然だ。政治家は選挙を前に必死に財政出動を訴えるものだ。今月31日の衆院選を前に多様な議論があっていいのではないか。
 
⇒13日(水)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★首都圏で震度5強、ドラマ『日本沈没』のリアル

★首都圏で震度5強、ドラマ『日本沈没』のリアル

   昨夜寝がけにスマホでニュースを見ると、「首都圏で震度5強の地震」とあり、関連ニュースを見ていると寝付けなかった。東京、群馬、埼玉、千葉、神奈川の5都県で計32人が重軽傷を負い、埼玉県草加市では建物火災があり、千葉県の富士石油袖ケ浦製油所では未明に火災が発生したと報じられている。東京都足立区では、緊急停止した日暮里・舎人ライナーの列車(6両編成)が脱輪。高架上で止まった列車から乗客100人が降り、駅員らの誘導で最寄りのまで歩いて移動した。午後10時41分の発生なので、夜中の停電でパニック状態、そして多くの人は「次は首都直下型」が頭をよぎったことは想像がつく。

   けさ気象庁公式ホームページをチェックすると、震源の深さは75㌔、地震の規模を示すマグニチュードは5.9と推定される。東京23区内で震度5強を記録したのは東日本大震災が発生した2011年3月11日以来10年ぶりとのこと。気象庁は、今後1週間ほどは最大震度5強程度の地震に注意するよう呼びかけている。

   能登半島でも先月、9月16日にマグニチュード5.1、震度5弱の地震があった。そして、29日には日本海側が震源なのに太平洋側が揺れる「異常震域」という地震があった。震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震に、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した。このところの頻発する地震に不気味さを感じる。

   あさって10日から、TBS系の番組、日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』(午後9時)が始まる=写真、TBS公式ホームページより=。小松左京のSF小説『日本沈没』が原作。かつて映画で見たことがある。日本を襲う巨大地震という未曽有の事態に立ち向かう人々の姿を描くドラマではあるものの、今回首都圏を襲った震度5強という現実があるだけに、いくらドラマとは言え、視聴する気にはなれない。金沢に住んでいてもそう感じる。ましてや、首都圏の人々は恐怖心を呼び起こすことになりはしないか。リアルすぎる。

   さらに気になるのは、このドラマが30言語に字幕翻訳され、動画配信サービス「Netflix」で世界配信される。おそらく世界の人たちは現実に日本で地震が頻発していることを知れば、ドラマというより、ドキュメンタリー、あるいは現実的な未来予測というふうに思い込んで視聴するだろう。「日本沈没」というワードが独り歩きして、経済や政治、外交などさまざまなカタチで影響を与えるかもしれない。

   TBSがあさってから予定通り放送をスタートさせるのか、あるいは、首都圏だけでなく東日本大震災の被災地の人々のことを考えてしばらく延期するのか注目したい。

⇒8日(金)朝・金沢の天気      はれ