#雑草

★セイタカアワダチソウは「厄介な雑草」なのか

★セイタカアワダチソウは「厄介な雑草」なのか

   きょうは秋晴れのすがすがしい一日になりそうだ。庭にはセイタカアワダチソウが黄色の花を咲かせ、時折そよぐ風に身を揺らしている=写真=。ただ、この植物は植えた覚えはなく、いつの間にか庭に生えていた、いわゆる外来種の雑草ではある。

   なのに、春と夏の草むしり(除草)の際は、数本だけ残している。観賞用でもないのだが、「雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」(昭和天皇のお言葉)という有名なフレーズを妙に覚えていて、根こそぎの除草はしていない。ところが、この季節に休耕田や河原、空き地に一面に群生している様子を見るとその勢いに圧倒されそうになり、複雑な思いに駆られることもある。

           そうした見た目のよくない印象もあるのだろう、セイタカアワダチソウは花粉症の元凶と誤解されたこともかつてあった。今でもそう思っている人も多いかもしれない。風に揺れる様子を見ていても分かるように、花粉がほとんど飛ばない。花粉は量が少なく、比較的重いためとされる。いわゆる「風媒花」ではなく、花に寄って来た虫によって受粉する「虫媒花」なのだ。

   以前、植物研究者から聞いた話だが、セイタカアワダチソウは生命力が強い植物であり、さまざま薬効もあるようだ。葉にはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸などが含まれていて、煎じて飲めば、血糖値や血圧の上昇を抑える効果がある。また、フラボノイドも含まれていて、ヨーロッパなどでは葉を潰して虫刺されや外傷の止血剤としても用いられている。入浴剤としても使われている、とか。今では見かけないが、日本では、草丈が1㍍から2㍍と長いことから、かついては簾(すだれ)の材料として活用されていた。

   さまざまに活用方法があるものの、人々の暮らし方の変化にともない、厄介な雑草としか見られない植物になった。こう考えると、才能がある人物を活かしきれず、厄介者扱いにする人間社会も同じ、かと思ってしまう。

⇒13日(木)午前中・金沢の天気    はれ

★「芝生」の「雑草」に除草剤 是か非か

★「芝生」の「雑草」に除草剤 是か非か

   午後に晴れていれば、庭の草むしり(雑草取り)を日課としている。草取りをすると作業の成果が見えるだけに、気持ちがすっきりとする。しかし、いくら抜いても取ってもすっきりしない雑草がある。チドメグサだ。漢字では「血止め草」と書き、学名は「Hydrocotyle sibthorpioides」。すっきりしない理由は、数日するとまた茎を張りめぐらして生えてくるからだ。

   チドメグサはどこにも適応できる多年草で、匍匐茎(ほふくけい)といい、地中深くに茎を伸ばしながら繁殖する。茎を途中でちぎっても、残った茎から繁殖し、あっという間に広がってしまう。すさまじい繁殖力だ。こうなると、雑草とはいえ、敵意がむき出しになる。

   とくに、芝生に入ったチドメグサは許せない=写真=。まるで、「隠れ蓑」戦術だ。目立たないように勢力を拡大している。そこで戦いを挑む。まず、芝刈り機で刈り込む。チドメグサの葉や茎も刈ることができるが、問題は芝生の根にチドメグサの茎が絡まって離れようとしない。そこで、一本一本を無心に外すことになる。芝生専用の除草剤もあるのが、除草剤は使いたくないので手作業だ。

   先日この作業をしていて、ふと、いま霊感商法や献金強制で問題となっている旧統一教会と仕組みが似ていると思い浮かんだ。自民党など政治家を芝生に例えれば分かりやすい。そこに、選挙応援などと称して入り込み、いつの間にか自民党の国会議員全体の半数近くの179人が何らかの関係を持っていた。中には秘書となり、しっかりと根を張った者もいる。

   そこで自民党は今後、統一教会や関連団体と一切関係を持たないことを基本方針とし、党所属の国会議員との関係を点検して公表したが、それだけでは教団との関係性を絶ち切れない。そこで、立憲民主党など野党は今月20日、旧統一教会の問題に取り組む弁護士や2世信者を招いてヒアリングを実施し、宗教法人法に基づく解散命令の請求を文化庁に求めた。この解散命令を除草剤と言い換えれば、分かりやすい。

   しかし、文化庁宗務担当者は「安易な解散命令請求することはできない。確実に(裁判で)勝てるだろうという状況がなければ解散命令請求すべきでない」との見解を繰り返した。つまり、除草剤の効果が分からないのにまくべきではないとの主張だ。これに対し、野党側は「解散命令を出す十分な要件がある。裁判で勝つ可能性が極めて高い」と述べていた。除草剤をまいてみないことにはその効果は分からないでしょう、と。

   それぞれに一理はある。個人的には庭に除草剤をまきたくはないが、反社会的な問題を起こしている宗教法人に対して、政治サイドがきっぱりとけじめをつけない限り、また時間とともに茎を生やし芝生を覆うようになる。

⇒23日(金)午後・金沢の天気     あめ

☆雑草をめぐる人々の価値観

☆雑草をめぐる人々の価値観

   冬の季節の話題としてはふさわしくはないが、趣味の一つが「草むしり」である。庭にはスギナ、ヨモギ、ヤブカラシ、ドクダミ、チドメグサなどが顔を出す。こうした雑草を無心で抜き取る。草むしりはまるで雑念を払う修行のようなものだ。きょう19日午後、石川県立自然史資料館で開催されたシンポジウム「石川県の雑草」を聴講してきた。雑草についていろいろ考えさせられた。

   昭和天皇のお言葉に「雑草という草はない。どんな植物でもみな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる」という有名なフレーズがある。その雑草の定義は何だろうか。話題提供の一人、本多郁夫氏(県地域植物研究会)がこう述べていた。「雑草は許可なく生える草と定義されることがあり、迷惑な草と思われがちですが、食料になったり、薬草になるなど有用なものが多くあります」と語り、コナギ、ミズオアイ、ホテイアアオイ、スギナ、セイタカアワダチソウを題材にその有用性について説明した。植物研究者の古池博氏(同)の話は哲学的だった。人間の都合で道路雑草、農耕雑草、すき間雑草などと呼ばれ、人々の暮らし方の変化にともない、雑草と呼ばれるようになった。反対に作物として利用されていたのに雑草になったものもある。雑草は人の価値観にもとづく定義である。

   確かに雑草であるか、花であるかは人の価値観でもある。5月に花咲く、シランはラン科の多年草で紫紅色の花が目をひきつける。このころになると、茶花としてシライトウやシマススキとともに床の間に飾ったりもする=写真=。でも、切り花として出回るような植物ではない。ヒメリュウキンカ(キンポウゲ科)は園芸用として国内に持ち込まれた外来種といわれる。春に黄色い花をつけ、そのあざやかさは50年ほど前まで金沢ではこの時節のあこがれの花だったと説明されていた。湿潤な土地を好み、繁殖力が強いのが特徴で金沢城公園の二の丸広場では駆除作業も行われているとのこと。あこがれの花が雑草化した事例ではある。

   マメ科のクズは「秋の七草」の一つ。なじみのある植物だが、樹木をすっぽり覆うほどのたくましさに驚かされることもある。当初、土砂崩れ防止の目的でアメリカに渡ったクズは、いまでは「モンスターKudzu(カズ)」と増えすぎが現地でも嫌がれているという。前述の古池氏は雑草の定義をこう述べていた。「人類とともに進化してきた植物のうち、人の統制・管理に従順には従わない一群」と。言い得て妙。まさにモンスター植物だ。

⇒19日(日)夜・金沢の天気      はれ