#閣議決定

★釈然としないニュースあれこれ

★釈然としないニュースあれこれ

   何だか釈然としない。報道によると、安倍元総理の「国葬」について、国費2億4940万円を支出することが閣議で決定された。内訳は、会場設営費(献花用の白菊7500本、外交団1000人分の同時通訳設備など)に2億1000万円、会場(日本武道館)とバス(105台)の借り上げ費用で3000万円などとなっている(27日付・朝日新聞)。

   銃殺事件後の国葬なので、警備は万全の体制で臨むだろう。ところが、記者発表した松野官房長官は警備費については警察庁の既存の予算で対応する、としか述べていない。

   政府は6000人規模の参列者を想定しているが、2020年10月に都内のホテルで営まれた故・中曽根元総理の内閣・自民党合同葬は1400人だったので4倍を上回る規模だ。さらに、参列する外交団は1000人を想定しているので、海外からの要人警備にも相当な費用がかかるだろう。

   国葬ならば警備費を盛り込んだ全体の予算を明示すべきではないだろうか。単純に比較はできないが、海外から来賓を招いた2019年の天皇「即位の礼」では警察庁の警備費用として38億円が計上されていた(2018年12月・皇位継承式典事務局資料)。

   そもそも、岸田総理は内閣府設置法の第4条「国の儀式」に基づいて閣議決定により、国葬を行うと表明したのだが、国葬そのものの定義や基準がない。法的根拠があいまい、予算もあいまい。釈然としない。

   もう一つ釈然としないニュース。読売新聞Web版(27日付)によると、日本主導でアフリカ開発の支援を議論する第8回アフリカ開発会議がチュニジアで開幕し、オンラインで基調講演を行った岸田総理=写真、総理官邸公式サイトより=は2023年から3年間で官民合わせて総額300億㌦規模の資金をアフリカ支援に投じると表明した。

   投資内容は、産業や保健・医療、教育分野で30万人の人材育成や、道路や電力整備などのインフラ開発がその主な柱なのだが、日本円にして実に4兆1100億円だ。この金額を国内の有権者はどう思うだろうか。ただでさえ、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で30万人もの人材育成を誰がどこでどう行うのかという実行性を問う声や、4兆円を国内のインフラや人材育成に振り向けよといぶかる声も多いのではないだろうか。

⇒27日(土)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆そもそもなぜ「国葬」、されど「国葬」

☆そもそもなぜ「国葬」、されど「国葬」

   銃弾で死去した安倍元総理を国葬とする件は、あす22日に閣議決定するようだ。戦後、総理経験者の国葬は1967年の吉田茂氏以来で戦後2例目となる。同じく国葬となる人物でも、吉田氏と安倍氏のイメージはわれわれシアニ世代では異なる。

   吉田氏は戦後の混乱のただ中で、日本国憲法の公布(1946年)やサンフランシスコ平和条約の締結(1951年)、日米安全保障条約の発効(1952年)にこぎつけた。ひとことで言うならば「戦後日本の礎を築いた政治家」、というイメージが脳裏に刷り込まれている。では、安倍氏のイメージはどうか。「アベノミクス」「憲政史上最長の通算8年8ヵ月」「日米外交の円滑化」だろうか。

   国葬には吉田氏がふさわしく、安倍氏は物足りないと言っているのではない。戦前は「国家に偉功ある者」など対象者を定めた「国葬令」があったものの、戦後は国葬の対象者などを明文化した法令はない。つまり、国葬の是非については国民はイメージで語るしかないのだ。岸田総理は国の儀式を所掌するとした内閣府設置法があり、閣議決定により国葬をすると表明した。国葬の基準もないのに、行政府だけの判断でいいのだろうか。

   NHKの世論調査(今月16-18日)よると、岸田内閣を「支持する」は59%、「支持しない」は21%だった。しかし、岸田内閣が安倍氏の国葬を行うことについては、「評価する」が49%、「評価しない」が38%だった。つまり、安倍元総理の国葬の評価については世論は分かれている。この背景にあるのは、安倍氏への政治的評価ではあることは言うまでもない。「憲政史上最長の8年8ヵ月」の重責を担ったが、一方で、長期政権の歪みも目立った。「忖度」という言葉が盛んに報じられた加計学園問題や森友問題などはその事例だろう。

   あすの閣議決定では国葬は9月27日に執り行うようだ。ただ、ここにきて新型コロナウイルス感染の第7波が襲来している。きょうは全国で18万6246人、これで2日連続で過去最多となった(21日付・NHKニュースWeb版)。地元石川県でも1628人とケタ違いの増え方だ。これに対して、政府は行動制限などを行う必要はないとしている。

   しかし、国葬となれば、弔問外交も活発化するが、コロナ禍の第7波がどのような影響をもたらすのか。かつての盟友だったアメリカのトランプ元大統領は弔問に訪れることができるのだろうか。そもそも「国葬」、されど「国葬」だ。

(※写真は2017年11月、日本を初めて訪れたトランプ大統領と安倍総理が「霞ケ関カンツリー倶楽部」でゴルフを行う様子=総理官邸ホームページ)

⇒21日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆いまだに続く総理公邸の都市伝説

☆いまだに続く総理公邸の都市伝説

   やはりこの質問かと思わず笑った。岸田総理は13日午前、東京・赤坂の衆院議員宿舎から引っ越したばかりの総理公邸で「幽霊」を見たかどうかを記者団に問われ、こう答えた。「今のところ、まだ見ておりません」(13日付・産経新聞Web版)。記者の質問も冗談めいての質問だろうが、政権交代のときに公邸に住む住まないで記者から質問される都市伝説ではある。   

   総理官邸と公邸は、同じ敷地内に建てられている。官邸は総理の仕事場で、公邸は住まいだ。現在の公邸はかつて官邸として使われた。1932年、海軍の青年将校を中心とするクーデター「5・15事件」で犬養毅総理が官邸で殺害された。その後、陸軍の皇道派青年将校らが起こした1936年の「2・26事件」では官邸で高橋是清大蔵大臣らが殺害された。その後、「犠牲者の幽霊が出る」との噂さが絶えなかった。

   有名な話がある。公邸に居を移さなかった当時の安倍総理が「公邸に住んだ森(元総理)さんが在任中に公邸で就寝直前に寝室の外から複数の軍靴が近づいてくるような足音を耳にしたとの話を聞いた」と出演したテレビ番組で明かしたことがある(2013年6月1日)。これが安倍氏が公邸に住まない理由ではないかと議員の間でも評判になった。番組でのこの話のきっかけは、ある野党議員が内閣に提出した質問主意書だった。「旧総理大臣官邸である総理大臣公邸には、二・二六事件等の幽霊が出るとの噂があるがそれは事実か。安倍総理が公邸に引っ越さないのはそのためか」(2013年5月15日)と。これに対して、政府は「お尋ねの件については、承知していない」とする答弁書を閣議決定した。

   この質問をしたのは当時の民主党の加賀谷健議員だった。質問の主旨は公費が使われている公邸が十分に活用されていないのではないかという趣旨だが、公邸と幽霊が国会の場で初めて取り上げられ、閣議決定にまで上った稀有なケースとなった。その話を安倍総理が番組で紹介してさらに広がり、すっかり都市伝説となった。岸田総理は冒頭の記者団の質問に「(公邸で)ゆっくり眠れた」と笑顔で語った(同)。公邸に入居するのは野田元総理以来9年ぶり。今のところ幽霊は登場していないようだ。(※写真は、首相官邸公式ホームページより)

⇒13日(月)夜・新潟市の天気   あめ