#閉会式

☆オリンピック打ち上げ宴会 テレ朝が問われること

☆オリンピック打ち上げ宴会 テレ朝が問われること

         オリンピックは強かった。ビデオリサーチ社Webサイト(10日付)の「オリンピック関連番組 視聴率・視聴人数」(関東地区)によると、7月23日の開会式は56.4%(NHK総合)、今月8日の閉会式は46.7%(同)だった。そして競技では、侍ジャパンが優勝した今月7日の野球、対アメリカ戦は37.0%(同)だった。はやり東京オリピック番組は視聴率を稼ぐのだと実感した。

   その視聴率と向き合い、オリンピックの番組制作に苦心したのがテレビ局の制作スタッフであることは言うまでもない。おそらく、オリンピックが終了し、一気に解放感が包まれたのだろう。気が緩んだようだ。テレビ朝日は10日付の公式ホームページで「当社社員の緊急搬送事案について」と題して、プレスリリースを掲載している。

   「今月8日夜、東京オリンピックの当社番組担当スタッフ 10 名が緊急事態宣言下における東京都の要請及び社内ルールを無視して打ち上げ名目の飲酒を伴う宴席を飲食店で開き、翌 9 日未明退店する際に当社スポーツ局社員1 名が誤って店の外に転落し、負傷して緊急搬送されました。当該社員は現在入院中で、事案の詳細は確認中です。」

   この事案はメディア各社もニュースとして大々的に報じている。NHKニュースWeb版(10日付)によると、東京オリンピック関連の番組を担当したテレビ朝日の社員6人と外部スタッフ4人の合わせて10人は、閉会式が行われた8月8日の夜から翌日の明け方にかけて、東京 渋谷区の飲食店で打ち上げの名目で飲酒をともなう宴会を開いていた。10人のうち社員1人が途中で帰ろうとした際、飲食店が入るビルの非常階段から誤って路上に転落して足の骨を折る大けがをし、救急搬送された。

   では、テレビ朝日のオリンピック番組を担当スタッフはどのような番組づくりをしていたのか。オリンピック映像の基本はOBS(Open Broadcaster Software)という国際組織が撮影を担当し、放映権を持つ各国の放送局へフィードバックしていた。つまり、映像は基本的に配信されていた。それを各放送局は独自の番組として報道をするためにアナウンサーやキャスターのほかにコメンテーターをスタジオに配置。また、試合の展開をある程度予想しながら過去の映像や関係者のインタビィーなどを行い番組を構成する役割を担っていた。多局との違いを出しながら、情報を抜かれないように、少なくとも五輪期間中の17日間は相当の緊張感を強いられていたことは想像に難くない。

   しかし、このような事態に陥った場合、テレビ朝日には当然容赦ない批判が浴びせられる。これまで同類の事案があった厚労省に向けて、テレビ朝日の「報道ステーション」や「羽鳥慎一モーニングショー」といった番組では痛烈な批判を展開していた。ところが逆の立場に追い込まれた。今回の社員の不祥事では、テレビ朝日の社長がまず釈明の会見を行い経緯の説明をすることが先決だろう。

⇒10日(火)夜・金沢の天気  くもり

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

           最後はビジョンに「ARIGATO」の文字が映し出された=写真・上=。この東京の暑い最中に選手たちはよく耐えた。「ARIGATO、よく頑張って、スポーツの醍醐味で見せてくれた」と国民の一人として思うことだ。新型コロナウイルスのパンデミックが広がる中での東京オリンピックの閉会式は静かに幕を下ろした。

   午後8時からテレビで閉会式の模様を視聴していた。注目していたことが一つあった。それは、広島市の松井市長がIOCのバッハ会長に書簡を送り、(原爆が投下された8月6日午前8時15分に)選手村などで黙とうを呼びかけてほしいと求めていた。これに対し、今月2日午後、IOCから、黙とうを呼びかけるなどの対応はとらないといった返答が広島市にあった。その理由についてIOCは「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラムを8日の閉会式の中に盛り込んでおり、広島市のみなさんの思いもこの場で共有したい」と説明していた(8月2日付・NHKニュースWeb版)。それは閉会式でどのようなプログラムなのか。

   このことかと思ったのが、新型コロナウイルスで亡くなった世界の死者への葬送のパフォーマンスと日本各地の盆踊りだった。アイヌ古式踊や、沖縄県の琉球エイサー、岐阜県の郡上踊りなどの映像が新国立競技場のスクリーンで流された。確かに、旧盆に全国各地で催される盆踊りは亡くなった人々への供養や弔いの踊りである。しかし、普通に考えても、「ヒロシマの祈り」とは意義付けが異なる。

   そこで、今度はバッハ氏の閉会宣言に「祈り」の言葉が込められるのか、7分間のスピーチを最後まで聞いていた。「パンデミック以来初めて、全世界が一つになった。何十億の人が心を一つにし、喜びと感動の瞬間を共有した。これが希望をもたらし、未来を信じる気持ちを与えてくれた」との言葉には自身も心が動いたが、「祈り」「ヒロシマ」についてのワードは宣言になかった。結論、広島市長への回答は「葬送のパフォーマンスと盆踊りプログラム」だった。

   東京オリンピックの17日間はテレビを堪能した。スケートボード女子で13歳の西矢椛選手の日本史上最年少の金メダリストに=写真・下=、卓球の混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手が「チャイナの壁」を突破して日本の卓球界に初の金メダル、地元びいきかもしれないが、レスリング女子で川井梨沙子・友香子の姉妹選手がそろって金メダルを獲得した。そして、野球の日本とアメリカの決勝戦。この17日間は十分に楽しませてもらった。

   ほとんどの競技場が無観客での開催だったので、魂の抜けたようなひっそりとした大会ではないかと想像してもいたが、テレビの映像技術が臨場感を湧き立たせ、そして世界の選手たちがオリンピックに魂を吹き込んだ。あすからコロナ禍のニュースばかりに日々に戻り、「五輪ロス」が始まるかもしれない。

⇒8日(日)夜・金沢の天気       くもり