#金正恩

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

   北朝鮮がきのう5日に打ち上げた弾道ミサイルは「極超音速ミサイル」だったとメディア各社が報じている。この型のミサイルは去年9月28日にも日本海に向けて撃ち込んでいる。再録になるが、このブログで当時のことをこう記した。

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   労働新聞Web版(2021年9月29日付)によると、打ち上げたのは新開発の極超音速ミサイルだと写真付きで掲載している。「국방과학원 새로 개발한 극초음속미싸일 《화성-8》형 시험발사 진행」の見出しの記事=写真=によると、極超音速ミサイルの名称は「火星-8」。北部のチャガン(慈江)道から発射した。金正恩党総書記の側近のパク・チョンチョン党政治局常務委員らが立ち会った。

   記事では極超音速ミサイルについての詳細な記載はない。「令和2年版防衛白書」によると、アメリカや中国、ロシアはすでに開発していて、弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達するとされる。弾道ミサイルとは異なる低い軌道を、マッハ5を超える極超音速で長時間飛翔すること、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になると指摘されている。

   また、記事では極超音速ミサイルの開発について、2021年1月5-12日で開催した朝鮮労働党第8回党大会で提案された戦略兵器開発(5ヵ年計画)におけるトップ5の主要なタスクの一部と位置付けている。確かに、この8回党大会で金総書記は、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及していた(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   北朝鮮は各地の代表からなる党最高人民会議を9月28日からピョンヤンで開催している。ということば、打ち上げた極超音速ミサイルは、同月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイルの発射と合わせて、戦略兵器開発は順調に進んでいるとの党幹部向けのアピールの狙いもあるのかもしれない。

   それにしても、日本の防衛システムは北朝鮮が次々と開発を進める戦術兵器に対応できるのか。弾道ミサイルは楕円軌道を描きながら標的の上に落ちてくるので迎撃が可能とされている。が、極超音速ミサイルは上下左右に飛び方を変えながら標的に向かうので迎撃が困難とされる。極超音速ミサイルの実用化までには時間がかかるとしても、日本の防衛システムが翻弄されることだけは間違いない。

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   今回の極超音速ミサイルは音速の5倍の速さで飛行したと報じられている。去年9月の火星-8は音速3倍だったとされるので、技術を高めているとも言える。国連食糧農業機関(FAO)と国連児童基金(UNICEF)がまとめた報告書「2021アジア・太平洋地域の食糧安保と栄養概観」によると、北朝鮮は住民の42.4%が栄養不足と集計されている。極超音速ミサイルはどこに向けているのか。

⇒6日(木)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

☆トランプ大統領、冥土の道連れ

☆トランプ大統領、冥土の道連れ

   CNNニュースWeb版日本語(10日付)をチェックしていると、驚きのニュースがあった。アメリカ民主党のペロシ下院議長は、トランプ大統領による核攻撃命令などが起きる事態を懸念し、軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長と協議したことを明らかにした。ベロシ議長は、行動などが不安定な大統領が軍事的な敵対行動に踏み切ったり、(核ミサイルの)発射コードへのアクセスや核攻撃を命令したりするのを阻む予防措置をミリー氏と話し合ったと語った。

   上記のCNNニュースに自身が注目したのは、別のニュースとの連鎖反応だった。BloombergニュースWeb版日本語(9日付)を読んでいて、北朝鮮の金正恩委員長が5-7日に開催した党大会への報告で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した。

   3年前のあの時に時代は戻ったと連想した。2017年7月28日、北朝鮮が打ち上げたICBMはアメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入るものだった。北は同年9月3日に6回目の核実験を実施し、同15日には弾道ミサイルを日本上空に飛ばした。それをトランプ大統領が国連総会の演説(同19日)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説した。それ以前には、アメリカ太平洋軍のハリス司令官は同じ年の4月26日、アメリカ下院軍事委員会公聴会で、北朝鮮に関して「アメリカは先制攻撃の様々な選択肢がある」と述べ、原子力空母カールビンソン率いる空母打撃群が北朝鮮を攻撃できる射程内に入ったことも明らかにした(2017年4月27日付・朝日新聞ニュースWEB版)。

   その後、トランプ氏と金氏による米朝首脳会談は2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月28日(ハノイ)、同年6月30日(板門店)で3回行われたが、北の非核化の交渉は進まなかった。トランプ氏にとっては外交の失敗事例でもある。そして、本人は「この交渉でロケットマンがさらにつけあがった」と悔いているのではないだろうか。

   トランプ氏の大統領任期は1月20日正午までとされる。冥土の道連れに、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼んだ金氏に核攻撃を仕掛けるのではないかとペロス氏は懸念しているのではないだろうか。以下憶測だ。仮に、トランプ氏が軍に核攻撃を命令したとして、それが軍によって阻まれた場合、金氏へのピンポイント攻撃、つまり「斬首作戦」を命令する可能性がある。斬首作戦が実行されるとして、作戦に使用されるのはステルスヘリコプター「ブラックホーク」だろう。この機を使うのは新月で夜が真っ暗闇となる日。直近の新月の日は今月13日だ。

   この機を使った斬首作戦で知られるのがオバマ政権下で実行された、オサマ・ビン・ラディンに対して行った2011年5月2日のバキスタンでの攻撃だ。この日は新月の前夜だった。以上は連想ゲームのような話だ。

⇒11日(月)朝・金沢の天気   

☆金正恩氏「ナゾの20日間」を解く

☆金正恩氏「ナゾの20日間」を解く

   北朝鮮の金正恩党委員長の健康状態がニュースになった。4月12日の最高人民会議を欠席し、祖父・金日成主席の誕生日である15日に安置所がある太陽宮殿への参拝がなかったことから一気に騒がしく動静が報じられるようになった。CNNが危篤説を報道(21日)、その後元山(ウォンサン)の別荘に停車している特別列車の衛星画像が公開された(29日)。死亡説まで取り沙汰された。5月2日に20日ぶりに金委員長の動静が国営メディアが伝えられ、一応騒ぎは収まった

   きょう(4日)韓国の朝鮮日報Web版が金委員長の健康状態に関するニュースを写真付きで報じている。記事の主見出しは「전문의 “오른손목 흉터, 주삿바늘 가능성” 靑 “수술도 시술도 안받았다”」(専門医「右手首のあざは注射跡か」、青瓦台「手術も施術も受けていない」)=写真=。注目したのこの写真で、左の写真の右手首に丸い褐色のあざがある。右の写真の4月11日に労働党政治局会議での金氏の手首にはあざはない。記事では、心臓専門医の「動脈を通じた心血管造影術を行った可能性が80%程度ある」のコメントを紹介している。

   この写真を見て、ひょっとして褐色のあざは「経皮的冠動脈ステント留置術」、簡単に言うとカテーテル手術の痕ではないのか、と察した。さらによく見ると、褐色のあざのまわりに赤みがある。これは血止めバンドの痕ではないか。あくまで自分自身の経験から憶測しての話だ。

   自身もかつて人間ドックで心臓の右の冠動脈が狭くなっていて、狭心症が疑われた。長い階段を上ったり、急ぎ足で歩くと胸苦しさを感じていた。このため2018年3月にカテーテル検査を受け、「労作性狭心症」と診断された。心臓の仕事量が増えると、それに見合う酸素量が心筋に運ばれず、虚血が起こり胸痛に襲われるという症状だった。4月にカテーテル手術をした。右手首の血管から バルーンカテーテルを入れて冠動脈に挿入し、その先端にあるバルーン(風船)を膨らませ、狭くなった冠動脈を元の血管の太さに戻す。さらにステント(直径3㍉×長さ18㍉、筒状の金属網)をその箇所に留め置いてカテーテルを抜き取る手術だった。体を開くバイパス手術だと入院から退院まで24日かかると言われているが、カテーテル手術だと検査と手術で正味7日だった。

   自らが体験した検査と手術の日程を金委員長の謎の空白期間(20日間)にパズルのように組み込んでみる。4月11日の労働党政治局会議の後、胸苦しさが襲ってきた。翌日12日は最高人民会議を欠席し、平壌市内の病院で冠動脈CT(心臓CT)の検査を受けた。すると、冠動脈の狭窄や閉塞など心臓疾患が進行していることが分かった。さらに詳しく調べるため、13日に造影剤など使って患部のカテーテル検査が行われ、狭心症と診断された。バイパス手術かカテーテル手術かを主治医と相談し、痛みが比較的柔らかいカテーテル手術を選んだ。ところが、北にはカテーテル手術で十分な経験を積んだ医療チームがいない。そこで、金委員長は15日に電話で中国の習近平主席に太陽節の祝電のお礼とあわせて、医療チーム派遣の依頼をした。中国の医療チームが平壌に到着したのは23日だった。25日に手術が無事に行われた。しばらく静養するため26日に医療施設もある元山の別荘に特別列車で出向いた。

   手術後、中国の医師から右手首の血止めバンドは1週間は装着してくださいと念を押された。公の場に出ると右手を振って挨拶をするが、そのときに血止めバンドが見えると、人民はあれは何だと大騒ぎになる。そこでバンドを外すまでは公の場に出ないことにした。そして20日ぶり、5月1日に順川(スンチョン)にあるリン酸肥料工場の完成式で顔見世をすることができた。そのとき、右手を振り手術痕がさりげなく見えた。あくまで空想の話である。

⇒4日(みどりの日)夜・金沢の天気   くもり