#-金メダル

★「そだねー」が聞きたいカーリング女子決勝

★「そだねー」が聞きたいカーリング女子決勝

   昨夜は北京オリンピックのカーリング女子の日本代表「ロコ・ソラーレ」の準決勝の中継をNHK総合で視聴していた。相手のスイスには17日の予選リーグ最終戦で敗れていて、2日連続の対戦。見せ場は第5エンド。スキップ藤沢選手が相手のストーン2つを一気にはじき出すダブルテイクアウトを決め=写真=、日本側に試合の流れを引き寄せる。これが4点を奪うビッグエンドとなり、逆転の5対2に。その後も第6、第8、最終第10エンドにそれぞれ1点を加えて8対6で逃げ切った。

   カーリングにはまったく興味はなかったが、2018年の平昌オリンピックでロコ・ソラーレのメンバーたちが競技中に「そだねー」と声をかけ合っていたのが印象的で何度か見た。今回も競技よりもむしろ、「そだねー」が聞きたかったので、新聞のテレビ欄を見てチャンネルを合わせた。ところが、きのうの試合では「そだねー」が聞こえなかった。「ナイッスー」に変わっていた。なぜだろう。

   標準語だと「そうだね」だが、「そだねー」は「う」が抜けて、語尾が下がらない独特なイントネーションだ。北海道の北見市出身の選手が多く、北海道地方の独自の言い回しなのだろう。アスリートたちが自然に発した意思疎通のための地の言葉だが、初めて聴く視聴者にとっては新鮮で心が和み、ほっとする光景でもあった。

   ここからは憶測だ。北海道に住む人とそうでない人で、言葉で受ける印象に違いがあるのかもしれない。北海道の人たちが「そだねー」を聞けば、普段聞き慣れているだけに、「ウザイ」と感じた人がいたかもしれない。ましてそれが、テレビ中継されて全国に広まったことで、恥ずかしと感じた人もいたかもしれない。金沢でも似た意味の言葉で「そうながや」「そうしまっし」という方言がある。もし、金沢のアスリートたちが使い、テレビで全国に広まったとしたら、観光のキャッチで使えると喜ぶ人もいるかもしれないが、競技では別の言葉でモチベーションを上げてほしいとモノ申す人もいて、金沢で意見は2分するかもしれない。

   そう考えると、今回は「そだねー」は北海道の人たちの気持ちや、言葉の賞味期限ということを考えてチームとして使わないことにしたのだろうか。また、逆なことも憶測してみた。「そだねー」は世相を反映した言葉を選ぶ「2018ユーキャン新語・流行語大賞」で年間大賞に選ばれた。そこでチームとして2022流行語大賞を狙うため、あえて「ナイッスー」を使っているのかもしれない。

   金メダルをかけた決勝はあす20日、イギリスとの対戦だ。「ナイッスー」も悪くはないが、「そだねー」をもう一度聞きたいものだ。

(※写真は、民放テレビ局オリンピック公式競技動画配信サイト「gorin.jp」のカーリング 女子準決勝・日本×スイス戦 ハイライトより)

⇒19日(土)午前・金沢の天気      くもり

★ニュース悲喜こもごも

★ニュース悲喜こもごも

   残念なこと。今月2日付のブログ「☆現場を行く~海上の空で消えたF-15戦闘機~」の続報。先月31日、航空自衛隊小松基地のF15戦闘機1機が訓練のために基地を離陸したあとにレーダーから機影が消え、小松市沖の日本海に墜落した。この事故で戦闘機に乗っていた飛行教導群司令の田中公司1等空佐52歳と飛行教導隊隊員の植田竜生1等空尉33歳の2人が行方不明になっていた。田中1佐が前席、植田1尉が後席に乗っていた。捜索できょう14日までに2人の遺体が発見された。

   地元紙の報道によると、11日午前11時50分ごろ、海上自衛隊の隊員が潜水して捜索していたところ、機体がレーダーから消えた基地からおよそ5㌔の海域で一人の遺体を発見。そしてきのう13日午前9時10分ごろ、現場海域で海自の隊員が新たに一人遺体を見つけ、それぞれ身元を特定した。航空自衛隊のこれまでの捜索で、水平尾翼やエンジン排気口、燃料配管などの一部がそれぞれ見つかっている。空自が委託した民間のサルベージ船が近く機体を引き揚げ、原因究明を進める。

   あっぱれ。北京オリンピックのあのダイナミックな演技は冬季五輪の歴史に輝くだろう。平野歩夢選手が11日にスノーボード男子ハーフパイプで金メダルを獲得した。テレビで協議の中継を見ていた。言葉も初めてだった。「トリプルコーク」。最高難度の大技で「1440(斜め軸に縦3回転、横4回転)」を決めた。2回目で2位の91.75点は物議を醸したが、3回目に96.00点をマークして逆転で金メダルを獲得した。このトリプルコーク1440というのが人類初めての公式戦で演技だったというので納得した。

   危うい。紛争は2014年からあったが、今もっとも緊張が高まっている。ロシアがウクライナを侵攻すれば、エネルギーの需給がひっ迫するとの見方から原油価格も上昇している。アメリカの政府高官が11日に、「ロシアの侵攻が北京オリンピックの期間中にもありうる」と発言したあたりから世界に緊張感が高まった。日本の外務省はウクライナの危機情報を最高度の「レベル4」(退避勧告)に引き上げ、滞在する日本人にただちに退避するよう指示している。

⇒14日(月)夜・金沢の天気       くもり

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

☆オリンピックにARIGATO、あすから「五輪ロス」が

           最後はビジョンに「ARIGATO」の文字が映し出された=写真・上=。この東京の暑い最中に選手たちはよく耐えた。「ARIGATO、よく頑張って、スポーツの醍醐味で見せてくれた」と国民の一人として思うことだ。新型コロナウイルスのパンデミックが広がる中での東京オリンピックの閉会式は静かに幕を下ろした。

   午後8時からテレビで閉会式の模様を視聴していた。注目していたことが一つあった。それは、広島市の松井市長がIOCのバッハ会長に書簡を送り、(原爆が投下された8月6日午前8時15分に)選手村などで黙とうを呼びかけてほしいと求めていた。これに対し、今月2日午後、IOCから、黙とうを呼びかけるなどの対応はとらないといった返答が広島市にあった。その理由についてIOCは「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラムを8日の閉会式の中に盛り込んでおり、広島市のみなさんの思いもこの場で共有したい」と説明していた(8月2日付・NHKニュースWeb版)。それは閉会式でどのようなプログラムなのか。

   このことかと思ったのが、新型コロナウイルスで亡くなった世界の死者への葬送のパフォーマンスと日本各地の盆踊りだった。アイヌ古式踊や、沖縄県の琉球エイサー、岐阜県の郡上踊りなどの映像が新国立競技場のスクリーンで流された。確かに、旧盆に全国各地で催される盆踊りは亡くなった人々への供養や弔いの踊りである。しかし、普通に考えても、「ヒロシマの祈り」とは意義付けが異なる。

   そこで、今度はバッハ氏の閉会宣言に「祈り」の言葉が込められるのか、7分間のスピーチを最後まで聞いていた。「パンデミック以来初めて、全世界が一つになった。何十億の人が心を一つにし、喜びと感動の瞬間を共有した。これが希望をもたらし、未来を信じる気持ちを与えてくれた」との言葉には自身も心が動いたが、「祈り」「ヒロシマ」についてのワードは宣言になかった。結論、広島市長への回答は「葬送のパフォーマンスと盆踊りプログラム」だった。

   東京オリンピックの17日間はテレビを堪能した。スケートボード女子で13歳の西矢椛選手の日本史上最年少の金メダリストに=写真・下=、卓球の混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手が「チャイナの壁」を突破して日本の卓球界に初の金メダル、地元びいきかもしれないが、レスリング女子で川井梨沙子・友香子の姉妹選手がそろって金メダルを獲得した。そして、野球の日本とアメリカの決勝戦。この17日間は十分に楽しませてもらった。

   ほとんどの競技場が無観客での開催だったので、魂の抜けたようなひっそりとした大会ではないかと想像してもいたが、テレビの映像技術が臨場感を湧き立たせ、そして世界の選手たちがオリンピックに魂を吹き込んだ。あすからコロナ禍のニュースばかりに日々に戻り、「五輪ロス」が始まるかもしれない。

⇒8日(日)夜・金沢の天気       くもり

★メダルラッシュに沸く そしてあの論調はどこへ

★メダルラッシュに沸く そしてあの論調はどこへ

    金メダルのラッシュだ。きのう夜、民放テレビでレスリング女子フリースタイル62㌔級の決勝を見ていた。日本の川井友香子選手がキルギスの選手を4‐3で下し、金メダルを獲得した。川井選手の姉の梨沙子選手も前回のリオデジャネイロ大会の63㌔級で「金」を獲得していて、きょう夜は57㌔級で決勝戦に臨む。姉妹で金メダリストなのだ。そして姉妹は、石川県津幡町出身ということもあって、当地ではかなりテレビの視聴率は高かったのではないだろうか。

   オリンピックの地ダネだけに、地元紙の朝刊は派手に報じている=写真=。「友香子 金 井川姉妹でメダル」(8月4日付・北國新聞)、「川井友『金』 姉・梨沙子連覇に王手」(同・北陸中日新聞)とどれも一面トップだ。北國は両面見開きの裏表で「2人の夢 たどり着いた妹」と特別紙面を組んでいる。。

   話はそれるが、1ヵ月前、オリンピックの開催については反対意見が盛り上がっていた。東京五輪の中止を求めるオンライン署名サイト「Change.org」の署名は45万筆を超えていた。署名の発信者は弁護士の宇都宮健児氏で、相手はIOCのバッハ会長らだった。そして、もっとも強烈なメッセ-ジを発したのはトヨタだろう。7月19日、トヨタは東京オリンピックの大口スポンサーでもあるが、新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中での開催の是非について世論が割れていることを理由に、オリンピック関連のテレビCMをいっさい見送ると発表した。CMはすでに完成していて、流すだけになっていた。確かに五輪番組をテレビを見ていてもトヨタのCMは見ない。

   東京オリンピックの開催に疑念を呈していたテレビメディアも新聞メディアもまるで「手のひら返し」をしたかのように、連日オリンピックの競技を報じている。NHKや民放のテレビのアナウンサーの大声は特に響く。

   いま思えば、コロナ禍でのオリンピックは是か非かという単純な論調、あるいは読者や視聴者に分かりやすかった。ただ、どのような工夫を凝らせばオリンピックの開催は可能かという論調はあったのかもしれないが、印象に残るメディアの論調はない。トヨタのCM見送りは当時の世論を見極めた上での判断だったのだろう。ただ、いまどう思っているのだろうか。

⇒5日(木)午後・金沢の天気     くもり一時あめ

☆自転車競技の大番狂わせ金メダリストは数学の研究者

☆自転車競技の大番狂わせ金メダリストは数学の研究者

   暑い中では外出を極力避け、テレビでオリンピック観戦をするのが一番だ。ついでにきょうの朝刊に目を通すと、東京での新型コロナウイルスの感染者が新たに2848人となり、1月7日の2520人を超えて過去最高となったと報じている。そして、石川県内でも新たに70人が感染し、これで3日連続で70人台となった(7月28日付・北陸中日新聞)。こうなると、ますます外に出づらくなる。

            きのうのソフトは実にスーパープレーだった。アメリカとの決勝戦。6回の1アウトで一、二塁のピンチ。相手打者のサードへの痛烈なライナーを三塁の山本優選手がはじいてしまったが、その打球を遊撃・渥美万奈選手がノーバウンドでキャッチし2アウト。すぐさま二塁に転送し併殺打とした。まるで忍者のようだった。

   CNNニュースWeb版(27日付)も「スーパースター」の存在を伝えている=写真=。「Anna Kiesenhofer is a math genius who just pulled off one of the biggest shocks in Olympics history」(意訳:金メダリストのアンナ・キーゼンホファー選手は数学の天才、オリンピック史上最大級の大番狂わせを演じた)

   以下、記事の要約。自転車女子個人ロードレースのキーゼンホファー選手(オーストリア)は世界ランキングは94位のアマチュア。その彼女が高温多湿と戦いながら137㌔のコースを疾走し、オーストリアに初めて自転車競技に金メダルをもたらした。30歳。

   キーゼンホファー選手のもう一つの顔は数学の研究者だ。イギリスのケンブリッジ大で数学の修士号、スペインのカタルーニャ工科大学で応用数学の博士号を取得し、現職はスイス連邦工科大ローザンヌ校の博士研究員。自分のトレーニングプラン、栄養、レースの戦略について綿密な計算で計画を練る。彼女の信念は「I dare to be different. I have a different approach and this means that I’m also unpredictable」(意訳:私はあえて違う。私は別のアプローチを持っており、これは私も予測不可能であることを意味する)。

   彼女が考えた競技の最適解は「最初から一人逃げ切り」のレース展開だった。名だたる優勝候補たちは彼女が途中でバテて脱落すると思ったに違いない。しかし、彼女は追撃を許さず、スタートからフィニッシュまで逃げ切った。予測不可能な大番狂わせを演じたのだ。

   上記の記事を読んで、金沢大学の大学院で流体力学を学び、能登で定置網の会社の漁師になっている人物を思い出した。潮の流れと力学に裏打ちされた理論に基づいて、糸を選び、編み目を調節して漁網を仕上げる。その網を海底に張り、魚を網に誘い込む。数年前、会社を訪れ話を聞いたことがある。「学んだ理論と実践が一致することこそ面白い」の言葉が印象に残っている。

            キーゼンホファー選手も同様に、自ら学んだ理論をどう体現していくかが研究者としての醍醐味なのだろう。勝負ではなく、最適解を追い求める知の世界がそこにある。

⇒28日(水)午後・金沢の天気       くもり時々あめ