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★ドキュメント3・13「石川県知事選」「金沢市長選」

★ドキュメント3・13「石川県知事選」「金沢市長選」

   きょうは石川県知事選ならびに金沢市長選、そして同市議補選のいわゆる「トリプル選挙」の投開票日。午後2時すぎ、一票を投じるため出かけた。くもり空だったが、外は暖かさを感じた。自家用車で外気温を見ると20度だ。投票場は小中学校の体育館=写真・上=。ひっきりなしに人が行き交っていた。投票率は高いのではないかと想像した。知事と市長という首長ダブル選挙の相乗効果もあるだろう。何しろ、前回の知事選(2018年3月)では金沢市の投票率は30.6%、金沢市長選は(2018年11月)は24.9%とそれぞれ最低を記録していた。投票を終えて再び外に出る。心地よい風が吹いている。この陽気が人々を投票に誘っているのかもしれないとふと思った。

   午後8時00分、NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の冒頭で速報が流れた。「金沢市長選 新人・村山卓氏 当選確実」=写真・中上=。投票が終わった途端に当確の速報を流すということは、NHKの出口調査でトップと2番目の差が少なくとも10ポイント以上ついていたということだ。NHKは「選挙のNHK」と呼ばれるほど、出口調査や開披台調査などを独自で実施して「当確」を出している。なので、候補者は民放の当確ではななく、NHKの当確を確認して初めて万歳をするのが習わしになっているほどだ。それにしても、投票終了直後での当確はちょっと速すぎる。本人も選挙事務所に現れてはいないだろう。

   一方の知事選は激戦が予想されている。開票作業を見学するため、金沢市営中央市民体育館(同市長町3丁目)に出かけた。市内のすべての投票箱が集められ、開票作業が行われる。午後8時40分に到着したがまだ始まってはいなかった。トリプル選挙の開票だけに体育館のフロアはほぼ埋まった状態だ。開票台の一列の机に30数人が並んでいる。それが、12列ある。その脇にはサポートするスタッフが控えている。ざっと500人の市職員がいるのではと推測した。

   その開票作業を取材するために、メディア各社の記者やカメラマンがすでに集まっていた。同時に開披台調査をするスタッフも集まっていた。開披台調査は開票作業をする職員の手元を双眼鏡で覗き込んで、投票に書いてある候補者の名前を読んで発声する。この声が口元のマイクから無線でメディア各社の選挙報道フロアに届き、受信したスタッフが数値化していく。金沢の開票場のほかに県内の主な自治体の開票場にスタッフを張り付けているだろう。

   午後9時30分、開票作業が始まった=写真・中下=。28年ぶりに新人同士の争いとなった知事選には、元文部科学大臣の馳浩氏と、元参院議員の山田修路氏、元金沢市長の山野之義氏の3人が競り合っている。メディアの開披台調査スタッフは、開披台で開票作業をする職員の手元を双眼鏡で覗き込んで、「ヤマノ、ヤマノ、ハセ、ハセ、ヤマダ、ヤマダ」と名前を発している=写真・下=。数分経つと、場所を移り別人の手元をのぞく。こうすることで、市内の地域の偏りがなくなる。NHKの腕章をした開披台調査スタッフを数えると10数人いた。

   自身は双眼鏡を持たない。調査スタッフの横にさりげなく立って、名前を聞く。すると、おおむね見当がつく。「山野4割、馳3割、山田2割」かと。間もなくして、市の選管が投票率を掲示板に貼り出した。知事選「58.48%」、市長選「55.95%」。前回より知事選で28ポイント、市長選で31ポイントもアップしている。

   ベンチでひと休みしていると、隣にいた民放の調査スタッフの女性が声をかけてきた。初めて開票場に来たと言い、「選挙番組の裏側を知ることができて、勉強になります」と。そして、「でも、とてもアナログな現場ですよね」とも。同感だった。デジタル投票に移行すれば、おそらく開票作業は瞬時に終わるだろう。

   午後11時ごろに帰宅した。能登地区と加賀地区のそれぞれの候補の得票率はどうなっているのかとテレビやネットをチェックしたが、知事選の当確は流れていない。相当な接戦なのだろ。アルコールを入れたせいか、うとうととそのまま寝込んでしまった。

⇒13日(日)夜・金沢の天気      くもり

☆アメリカ大統領選から見えたメディアの有り様

☆アメリカ大統領選から見えたメディアの有り様

    それにしても「長い長い戦い」とはこのことを言うのだろう。アメリカ大統領選挙は、投票日(今月3日)から10日が経ちようやく、トランプ氏とバイデン氏の選挙人の獲得数が確定した。50州と首都ワシントンでの選挙人538人のうち獲得したのはバイデン氏が306人、トランプ氏が232人だったとメディア各社が報じている。

   フロリダ大学「選挙プロジェクト」サイトでの推計によると、今回の大統領選の投票数は1億5883万票で、アメリカの18歳以上の有権者数2億3925万人に対する投票率は66.4%だった。二者択一の投票率は高いものだが、たとえば、大阪市を廃止して4つの特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票(今月1日)は今回62.4%だった。大阪より熱いアメリカだったとも言える。

   アメリカ大統領選について動画やサイトをチェックしていたが、アメリカのメディア、とくにテレビは日本の選挙報道と少し趣(おもむき)が異なる。現地時間12日付のCNNは「Trump fails to address election loss」(トランプ氏、選挙敗北への対応に失敗)とトランプ氏に対しては皮肉たっぷりに伝えている=写真=。選挙期間中を問わず、CNNはいつもトランプ氏には対して厳しい論調だ。

   日本では新聞やテレビに選挙報道の公正さを求める(公選法148-1)、テレビ放送に政治的な公平性を求める(放送法4)、テレビ放送に候補者の平等条件での放送を求める(放送法13)などだ。この法律に従って、マスメディアの選挙報道は公示・告示の日から投票時終了まで、候補者の公平的な扱いを原則守っている。

   アメリカでもかつてテレビ局に「The Fairness Doctrine」(フェアネスネドクトリン)、つまり選挙報道などでの政治的公平が課せられ、連邦通信委員会(FCC)が監督していた。ところが、CATV(ケーブルテレビ)などマルチメディアの広がりで言論の多様性こそが確保されなければならないと世論の流れが変わる。1987年、連邦最高裁は「フェアネス性を義務づけることの方がむしろ言論の自由に反する」と判決を下し、フェアネスドクトリンは撤廃された。このころから、テレビ局に政治色がつき始め、たとえば、FOXは共和党系、CNN、NBCは民主党系として知られるようになった。

   アメリカではむしろこの傾向が「テレビ離れ」に拍車をかけているのかもしれない。確かに、アメリカでは、ヘイトスピーチもフェイクニュースも表現の自由であり、むしろ、誰かが言う権利を否定することこそが忌まわしいという風潮は今もある。ただ、メディアの公平性というのは、フェイクやヘイトがネットで蔓延する社会だからこそ求められる報道スタンスであり、それが今、信頼性として評価される時代ではないだいろうか。FOXもCNNも脱共和、脱民主を追求してみてはどうか。

⇒14日(土)朝・金沢の天気     はれ