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★選挙は人流を招く コロナ禍の懸念

★選挙は人流を招く コロナ禍の懸念

    能登半島の輪島市に本校がある日本航空高校石川の野球部はこれまで甲子園大会に4回(夏2回、春1回、交流試合1回)出場している。その強みは、選手のほとんどが寮生活で意思疎通を図ることができるからとされてきた。しかし、新型コロナウイルスで感染拡大が続く中、寮生活は裏目に出てきたようだ。

   石川県が25日に発表した新型コロナウイルスの新たな感染者はこれまで過去最多の101人で、このうち53人が日本航空高校石川の関係者だった。49人は高校の男子生徒、残りの4人は併設されている大学校の学生や感染した生徒の同居者だった。日本航空高校石川の感染者は24日に9人、25日に53人、26日に1人で累計63人となる。感染者は軽症か無症状という。

   地元紙などの報道によると、高校生と大学校生、教職員合わせて1229人のうち882人が寮生活をしている。寮は2段ベッドの2人部屋と4人部屋、女子寮と男子寮があるが、食堂は一つだ。寮生活はまさに濃密で、一人でも感染者が出るとクラスター化しやすい環境にあった。県の25日発表では239人へのPCR検査で53人の陽性だったので、陽性率は22%と実に高い。28日までに学校関係者全員の検査を実施するという。陽性者はさらに増える可能性がある。

   コロナ禍で注視されるのは、上記の寮生活のような「3密」、そして「人流」だ。人流は観光地やデーパート、駅などへの人のが流れを指したりするが、選挙もその一つではないだろうか。投票行動や候補者の演説、支援者を集めた集会などまさに人流をつくる。7月4日投票の東京都議選は一体どうなるのか。東京オリンピックどころではないのではないか、と気がかりだ。

   大阪市が昨年11月1日に「大阪都構想」の是非をめぐる住民投票を実施。同月10日に吉村大阪府知事は府の対策本部会議で「第3波に入っているという認識だ」と述べていた。大阪市民からは、「コロナ禍にも関わらず、なぜ住民投票を実施するのか。都構想のメリット・デメリットはなにか」(大阪市公式ホームページ「市民の声」)などと住民投票そのものに疑念の声が上がっていた。もちろん、「コロナ感染をもって、民主主義に踏み込んでよいものか、投票とコロナは別だ」との意見もあるだろう。

   ワクチン接種も十分ではないのに、6月25日告示の東京都議選は可能なのだろうか。時事通信Web版(5月27日付)によると、自民と立憲民主は今国会で、ホテルや自宅で療養するコロナウイルス感染者が国政や地方選挙の際に郵便投票を利用できるようにする法案整備に合意し、東京都議選からの導入を目指すと報じている。

          聞こえはよいが、これは対処療法にすぎない。本筋で言えば、コロナ禍ではなく超高齢化社会などを見据えて、希望する有権者が利用できるようにすべきだろう。さらに、郵便投票だけでなく、選挙のデジタル投票化を進めてほしいものだ。9月のデジタル庁設置を契機に。

⇒27日(木)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

☆「とんでもにゃあ」選挙モンスター

☆「とんでもにゃあ」選挙モンスター

   きょうの朝刊一面は「自民全敗」の見出しが躍っている。菅政権になって初めての国政選挙となった衆院北海道2区、参院長野、同広島できのう25日投開票が行われた。与野党対決となった長野と広島で自民候補が敗れ、北海道は候補者擁立を見送った、いわゆる自民の不戦敗だった。北海道は贈収賄事件、広島は公職選挙法違反事件の「政治スキャンダル」があり、野党有利の風が吹いた。長野は新型コロナウイルス感染による現職急逝の「弔い合戦」だった。衆参の3つの選挙は、それらしい結果だろう。

   むしろ選挙の醍醐味を感じるのは名古屋市長選だ。愛知県知事のリコール運動をめぐり大量の署名偽造が発覚するスキャンダルがあり、そのリコール運動の推進役だった現職の河村たかし氏が、出直し選を含め5回目の当選を果たした。自らは無所属だが、相手は自民、立憲民主、公明、国民民主が推薦する「相乗り候補」だった。選挙で問われる年齢は河村氏が72歳、相乗り候補は59歳。さらに、名古屋市長として初の4期目を賭けた選挙だった。本来ならば逆風となる「スキャンダル、支持政党なし、高齢・多選批判」を見事に乗り越えた「選挙モンスター」だ。

   名古屋の有権者は河村氏のどこに共感したのか。本人のツイッターをチェックしてみる=写真=。当選後の日付のものはないが、4月23日付でツイートしている。「ナゴヤ市長選挙。市民(河村たかし)対 超高給職業議員(自民・民主・公明・共産)生活協同組合。とんでもにゃあ。 日本1ナゴヤコロナ対策『感染防止』『くらし・経済』両立。保健所の地を這う調査 しっかり続けて 感染拡大抑え込みます。 動画是非見てちょうよ。」

   名古屋市長選は「市民(河村たかし)対 超高給職業議員(自民・民主・公明・共産)生活協同組合」そのものだと表現している。つまり、河村氏は主要政党と全面対決という実に分かりやすい選挙の構図を描いた。その上で、「日本で1番給料の安い市長(人口比圧倒的、年収800万円)」や「日本でただ1つの減税都市ナゴヤ市長になってから10年で1,000億円減税」(同ツイッター)と具体的な数字で訴えた。

   ただ、知事リコール運動をめぐるスキャンダル問題は選挙戦でかなり響いた。今回、河村氏は39万票を獲得し得票率は51%、相乗り候補は35万票で同45%だった。前回2017年選挙では河村氏は45万票で得票率67%だった。単純な計算だが、「河村離れ」が6万票、16ポイント、それぞれ減という数字で表れた。

   それにしても河村氏のキャラは超絶だ。選挙運動の最終日の演説を終えてのツイッター(24日付)が面白い。「河村たかし72才 政治目指し28年付き合ってくれた古女房自転車とさゅあご(最後)speech。よう不肖河村たかし 皆さん応援してちょうた。サンキューベリマッチ。ほんなら風呂ひゃあて寝るは ばいばい」

          気取らずモノを言うこのキャラは日常空間に人を引き込んで飽きさせない。選挙モンスターたるゆえんかもしれない。

⇒26日(月)午前・金沢の天気      はれ