#近江町市場

★深まる能登の秋 においマツタケ、あじコノミタケ

★深まる能登の秋 においマツタケ、あじコノミタケ

   「金沢の台所」と称される近江町市場を散策すると、どこか懐かしいようなにおいが漂ってきた。あっ、マツタケの香りだと脳裏によみがえって来た。青果店の店頭には「能登産」と札がついた箱が10箱ほど並んでいる。カタチが大きめのマツタケの箱の値段は5本で2万5500円=写真・上=、1本当たり5100円の計算になる。さすがキノコの王者だけあって高価だ。

   そんなことを思いながらじっと眺めていると店主が声をかけてきた。「マツタケどうですか」と。「さすがマツタケ、値が張ってますね」と答えると、すかさず「2000円ほどおまけしますよ」と。店主の話によると、能登は石川県内のマツタケの産地で、ことしはよく採れていて、価格は昨年より少々下がっているという。奮発して買おうかとも思いがよぎったが、別件で用事があり途中で立ち寄った近江町市場だったので、買わずに店先を離れた。

   能登はマツタケの産地だが、その能登の人たちが「山のダイヤ」と呼ぶキノコもある。コノミタケだ=写真・下=。ホウキダケの仲間で暗がりの森の中で大きな房(ふさ)がほんのりと光って見える。見つけると、土地の人たちは目が潤むくらいにうれしいそうだ。能登では1㌔1万円ほどで取り引きされる。高値の理由は、コノミタケはマツタケとともにすき焼きの具材になるからだ。能登牛(黒毛)との相性がよく、肉汁をよく含み旨味があり香りもよい。

   能登の人たちは、マツタケとコノミタケをコケと呼び、それ以外はゾウゴケ(雑ゴケ)と呼んで区別している。能登の人たちのコケへの思い入れはそれほど強い。能登で愛されるコノミタケだが、これは能登独特の呼び名だ。金沢大学の研究員が分類学的に調査をしたところ、ホウキタケの一種でかつて薪炭林として利用されてきたコナラやミズナラ林などの二次林に多く発生していることが分かった。

   研究者は、鳥取大学附属菌類きのこ遺伝資源研究センターや石川県林業試験場と共同で調査を進め、DNA解析でコノミタケが他のホウキタケ類とは独立した種であることを確認した。そこで、「ラマリア・ノトエンシス(Ramaria notoensis、能登のホウキタケ)」という学名を付け、コノミタケを標準和名とすることを、2010年の日本菌学会で発表した。この研究者の調査によって、コノミタケが正式名称になった。

   能登の人たちは「においマツタケ、あじコノミタケ」など楽しそうに語り合いながら、マツタケとコノミタケ、能登牛のすき焼き鍋をつつく。そして来月になれば、食の話題は11月6日に漁が解禁となるカニに移っていく。深まる秋、能登の食の話題は尽きない。

⇒25日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆季節の話題 底引き初物とブランド「加賀しずく」

☆季節の話題 底引き初物とブランド「加賀しずく」

   長年金沢に住んでいると、「9月1日」はちょっと気持ちがたかぶる日だ。日本海側の底引き網漁は、資源保護のため7月と8月は禁止されていて、この日に一斉に解禁となる。きょうが初競りの日で、スーパーなどの鮮魚売り場がにぎやかになる。何しろ、地元で取れた魚なので新鮮さが違う。普段見かけることもない魚も並び、売り場では「底引き解禁だよー」と声が響く。

   きょう午後、金沢の近江町市場をのぞいた。鮮魚店売り場では、水揚げされたばかりのカレイやハタハタ、子持ちの甘エビ、メギスなどが並び、多くの客が買い求めていた。ただ、見た目だが、例年より並んでいる量が少ない=写真・上=。

   店員にさりげなく、「いつもの年より並ぶ量が少ないね」と尋ねると、「きのうは大雨だったことで漁を見合わせた漁船もあって、きょうの競りは入荷量が少なかった」と話してくれた。あす以降は天気が回復するものの、台風11号が北陸に接近すると底引き網漁にまた影響が出てくるかもしれない。

   9月は実りの秋でもある。別の店をのぞくと、「加賀しずく」というナシが並んでいた。「お一人様2個まで」と強気の表示が出ている=写真・下=。よく見ると、1個980円の値段がついていた。

   このナシは石川県が16年かけて開発したオリジナルブランドで、先月26日から出荷が始まり、初競りでは最も高級な「プレミアム」に1箱15万円の値がついたと地元テレビのニュースにもなっていた。1本の木に実らせる果実を6割ほどに制限し、1個当たりの養分を増やすことで、甘くて大きなナシに仕上げるのだという。出荷量が少ない分、限定販売となり、値段も高くなる。

   この季節、魚やフルーツなど食べ物の話題にこと欠かない。そろそろキノコも。

⇒2日(金)夜・金沢の天気   くもり時々あめ