☆10ヵ月ぶり出漁で活気づく輪島の漁港 ノドグロやズワイガニが並ぶ
この時季の漁港は、ズワイガニや寒ブリなどで港が活気づく。元日の能登地震で漁港に海底隆起が起きて漁船が港から出れなくなっていた輪島漁港では、海底の土砂をすくい取る浚渫工事が進み10ヵ月ぶりに出漁ができるようになった。きのう(15日)現場を見に行った。午前11時ごろに漁港に行くと、刺し網漁船が水揚げをしていた。氷の入ったカゴにごっそりと入っていたのはノドグロだった=写真・上=。
ノドグロは金沢ではもともとアカムツと呼んでいて、庶民の魚だった。ところが、2014年のテニスの全米オープンで準優勝した錦織圭選手が記者会見で、「ノドグロが食べたい」と答えたことがきっかけで、焼き魚と言えばノドグロが一気に「出世魚」となった。さらにブームに拍車をかけたのが、翌2015年3月の北陸新幹線の金沢開業だった。観光客が急激に増え、金沢での食べ歩きや土産の需要として、ノドグロ人気が一気に高まった。関東からの観光客にとっては、北陸と山陰は同じロケーションで、金沢に行けばノドグロが食えると思われたに違いない。当時、知人らと「あのアカムツがノドグロに化けて、えらい人気やな」と笑っていた。ところが、値段も高騰して、いつの間にか「超高級魚」の様相になって、笑えなくなった。ちなみに金沢の居酒屋で焼き物一匹は4000円ほどだ。「錦織以前」は確か600円ほどだったと記憶している。
話が逸れた。さらに漁協の荷捌き場に入ると、ズワイガニのメスの香箱ガニが発砲スチロールの箱に段積みになっていた=写真・中=。これを見て、いよいよ「かに面」の季節だと心が騒いだ。かに面は、これも有名な「金沢おでん」の季節限定のメニューだ。香箱ガニの身と内子、外子などを一度甲羅から外して詰め直したものを蒸し上げておでんのだし汁で味付けするという、かなり手の込んだもの=写真・下=。香箱ガニの漁期は資源保護政策で11月6日から12月29日までと限られている。なので、金沢のおでん屋でかに面を食することができる期間は2ヵ月ほど。期限が限定されたメニューとあって、この時季には金沢おでんの店には行列ができる。これがすっかり金沢の繁華街の季節の風物詩になっている。
香箱ガニの話に集中したが、オスの加能ガニも人気だ。地元メディア各社の報道(15日付)によると、加能ガニの中でも重さ1.5㌔以上、甲羅幅14.5㌢など基準をクリアしたものは「輝(かがやき)」の最高級ブランド名が与えられ、きのう今季初めて1匹が認定され、金沢港かなざわ総合市場での競りで18万円の値がついた。メスの香箱ガニの最高級ブランド名は「輝姫」でこれは4万円。能登の漁業の再起に向けた第一歩となってほしいと願う。
⇒16日(土)夜・金沢の天気 くもり
行ってみると港には刺し網漁船や底引き網漁船などが肩を寄せ合うように停泊していた=写真・上=。冬場はタラやブリ、ズワイガニなどの水揚げでにぎわうのだが、静まり返っている。漁港の様子を見にきていた近くの輪島前町の漁師がいたので聞くと、海底が隆起して水深が足りないので船が出せないのだという。実際、港内で漁船2隻が座礁していた。
県農林水産部などの調査によると、漁港の海底の隆起は1㍍から1.5㍍ほど。もともと日本海側は満潮干潮の潮位の変動は少なく、1年を通じても50㌢から60㌢ほど。なので、日本海側の漁港では干潮を見込んでの深めの水深を設定しておらず、3㍍から4㍍のところが多い。そこに1㍍から1.5㍍ほどの海底の隆起となると船底がつかえる漁船が出てしまう。