#輪島の海女

☆輪島の海女漁が再開 130人が朝の海に潜りモズクを2㌧収穫

☆輪島の海女漁が再開 130人が朝の海に潜りモズクを2㌧収穫

   能登の海岸では海藻がよく採れる。冬場の岩ノリは有名だが、ほかにもこの地で「カジメ」と称されるツルアラメやモズク、ワカメ、ウスバアオノリ(あおさ)、ハバノリ、アカモク(ぎばさ)、ウミゾウメン、マクサ(てんぐさ)、ホンダワラなど。そして海藻ごとにそれぞれ料理があり、海藻は能登の食文化でもある。こうした海藻を近場の海で採ることもできるが、海に潜って生業(なりわい)として採取しているのが輪島の海女たちだ。

  地元メディア各社の報道によると、きょう130人の海女たちが午前6時半ごろから漁船15隻で輪島港を出て、8㌔沖合で素潜りでモズク漁に励んだようだ。例年だと7月1日が「解禁」のなのだが、しけ続きできょうになった。例年ならば海女一人で200㌔採ることもあるが、きょうは1人15㌔に制限されていて、今回の全体の水揚げは2㌧だった。荷捌き場がある輪島漁港は地震で2㍍も隆起していて、船からモズクを運ぶのにも大変だったようだ。(※写真は、文化庁「国指定文化財等データベース」サイトより)

  報道によると、海女たちの3分の1は輪島市外で避難生活を送っていて、この日のために各地から輪島に入った。7月はアワビやサザエの解禁でもあるのだが、海底の地形の変化などで素潜り漁の見通しは立っていないという。

  冒頭で述べたように、海女たちは魚介類や海藻を専門とするプロの漁業者だ。アワビやサザエのほか25種類も採取している。アワビは貝殻つきで浜値で1㌔1万円ほどする。よく働き、よく稼ぐ。新聞記者時代に取材に訪れたとき、海女さんたちから「亭主の一人や二人養えんようでは一人前の海女ではない」という言葉を何度か聞いた。自活する気概のある女性たちの自信にあふれた言葉だった。「輪島の海女漁の技術」は国の重要無形民俗文化財に指定されている(2018年)。

  地震で海底の地形が一変しているとすれば、今後は魚介類や海藻が繁殖する場所探しが肝心だ。きょうは試験操業の意味合いがある。海底隆起が海の生態にどのような影響を与えているのか。海の経験知が高い輪島の海女漁はそのような意味からも注目されるのではないだろうか。

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☆能登半島地震 ワカメ漁は大丈夫か、輪島海女に一大転機

☆能登半島地震 ワカメ漁は大丈夫か、輪島海女に一大転機

  冬に荒れる能登の海も、3月に入ると徐々に穏やかになる。中旬になるとワカメ漁が始まる。新聞記者時代に輪島市から49㌔沖にある舳倉(へぐら)島=写真・上=でのワカメ漁を取材したことがある。漁師の夫婦が船で輪島漁港から舳倉島に来ていた。妻の海女が4、5㍍の海に潜る。岩礁に生えているワカメを鎌で刈り取る。潜って40、50秒すると刈ったワカメを肩で担いで浮上してくる。海面に顔を出して息を吐くとピュッーと磯笛(いそぶえ)が響く。そのワカメを船上の夫が取り上げると、海女は深呼吸してまた海に潜る。これを何度か繰り返す。舳倉島のワカメは1㍍から1.5㍍の長さのビッグサイズで、塩漬けワカメとして料理で重宝される。

  島の岸に上がると夫婦はワカメを石ころが広がる斜面地に天日干しする。夫が船を操り、妻が潜る、こうした協業のことを「夫婦船(めおとぶね)」とこの土地では言うそうだ。先日、輪島漁港を訪れたとき、そんなことを思い出していた。同時に地震が起きた今年はワカメ漁が可能なのかと案じた。(※写真・下は、文化庁「国指定文化財等データベース」サイトより)

  地震による地盤の隆起で輪島漁港の水深が浅くなり、座礁の危険があるため200隻の出漁できない状態が続いている。港では先月から海底の土砂をさらう浚渫(しゅんせつ)作業が始まっている。工期は3月28日とされているが、さらに延長される見通しもある。

   輪島から舳倉島へ船を出せれないだけでなく、ワカメ漁でもう一つ案じることがある。それは、舳倉沖の岩礁の変化だ。海女たちはワカメがよく採れる水域や岩礁の位置を経験則で把握している。ところが、地震で海底の地形が一変しているとすれば、ワカメが生育する場所探しから始めなければならない。

  これはワカメだけの話ではない。7月1日からはアワビ漁が解禁となる。どこの海にもアワビが生息するわけではない。海底の地形が一変しているとすれば、アワビが繁殖する場所探しが肝心だ。そもそも海底隆起がアワビの生息にどのような影響を与えているのだろうか。素潜りでアワビなどを採る「輪島の海女漁の技術」は国の重要無形民俗文化財に指定されている(2018年)。輪島の海女漁が一大転機を迎えたと言える。

⇒3日(日)夜・金沢の天気   くもり