#賭けマージャン

★「賭けマージャン」略式起訴と首里城「あうん」竜

★「賭けマージャン」略式起訴と首里城「あうん」竜

   きょう気になったニュースから。昨年の新型コロナウイルスの緊急事態宣言の中、東京高検検事長と新聞記者らによる賭けマージャン問題はこのブログでも何度か取り上げた。NHKニュースWeb版(3月14日付)によると、民間団体から刑事告発され、起訴猶予になった東京高検の黒川弘務元検事長について、東京地検は検察審査会の「起訴すべきだ」との議決を受けて再捜査し、一転して賭博の罪で略式起訴する方針を固めた。新聞記者ら3人については改めて不起訴とする見通し。

   略式起訴は検察が簡裁に書面だけの審理で罰金などを求める手続きで、今後、簡裁が検察の請求が妥当だと判断し、元検事長が罰金を納付すれば、正式な裁判は開かれず審理は終わることになる(同)。事件が発覚したきっかけは「文春オンラン」(2020年5月20日付)と週刊文春の記事だった=写真・上=。賭けマージャンは月1、2回の頻度で、賭け金は1千点を100円に換算する「点ピン」と呼ばれるレートで、1回で1万円から2万円程度の現金のやり取りをしていた。

   昨年7月、東京検察は「1日に動いた金額が多いとは言えない」「娯楽の延長線上にある」などとして起訴猶予にしていた。その後、12月に検察審査会は黒川氏に対して「違法行為を抑止する立場にあった元検事長が漫然と継続的に賭けマージャンを行っていたことが社会に与えた影響は大きい」と起訴相当を議決。また、記者ら3人については捜査が不十分として「不起訴は不当」と判断していた。きょうのニュースを見て、ようやく「けじめ」がついたとの印象だ。

   沖縄・那覇市の首里城は戦前、正殿などが国宝に指定されていた。戦時中、日本軍が首里城の下に地下壕を築いて司令部を置いたことから、1945年にアメリカの砲撃にさらされた。戦後に大学施設の建設が進み、城壁や建物の基礎がわずかに残っていた。大学の移転で1980年代から正殿などの復元工事が始まり、1992年に完成した。そして、2019年10月31日未明に出火し、無残な姿となった=写真・中=。政府は沖縄の本土復帰50年にあたる2022年に復元工事に着手し、2026年に正殿の完成を目指している。

   復元に向けての明るいニュースがあった。朝日新聞Web版(3月12日付)によると、正殿の彫刻に使われた下絵が、金沢市の彫刻作家・今英男(いまひでお)氏(1937-2014)の自宅で約30年ぶりに見つかった。下絵は縦約60㌢、横約4.5㍍。向き合う2頭の「あうん」の竜と、その間に宝の玉「宝珠(ほうじゅ)」が描かれている。「宝珠双龍文様」と呼ばれる図柄の彫刻で、正殿の玉座の背後にある「内法額木(うちのりがくぎ)」と呼ばれる部分に施してあった。下絵には「全体的に少し上げる」など、手書きの修正点や注意点が複数書き込まれている。

   自身は2009年5月に首里城を訪れ、正殿の玉座などつぶさに見学した。内法額木の2頭の「あうん」の竜の精細な彫りと金色の塗りに目を奪われ、カメラに収めた=写真・下=。当時、金沢の彫刻作家の手によるものだとは知らなかった。今回のニュースで、彫りは今英男氏、そして塗りは琉球漆器の職人たちの合作ではないかと憶測する。「あうん」の竜が蘇ることを期待したい。

⇒14日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆「賭けマージャン」不起訴 「ネズミ」の気持ち

☆「賭けマージャン」不起訴 「ネズミ」の気持ち

    もう8年も前の話だが、「ネズミ捕り」にひっかかったことがある。66㌔で走っていて安全運転のつもりだったが、交通警察から「ここは制限速度50㌔です」と言われ、16㌔オーバーの違反切符を切られた。66㌔で走っていてスピード違反は納得できなかった。かといって、拒否して裁判にでもなれば罰金という刑事罰を食らうことにもなりかねない。警察権力は国民に対して建前を強要して、国家の秩序を維持しているのだ、と自分を納得させ抵抗をあきらめた。後日、1万2000円の反則金を払った。   

   このブログでも何度か取り上げた事件。新型コロナウイルスの緊急事態宣言の中で賭けマージャンをしていたとして刑事告発されていた東京高検の黒川前検事長と新聞記者ら4人について東京高検は10日、4人の不起訴処分(起訴猶予など)を発表したとメディア各社が報じている。黒川氏は5月1日と13日の夜、都内にある産経新聞の記者の自宅マンションを訪れ、同社社会部の次長と記者、朝日新聞の記者だった社員1人と4人で賭けマージャンをしていた。この日だけではなく、3年ほど前から月に1、2回の頻度だった。賭け金は1千点を100円に換算する「点ピン」と呼ばれるレートで、1回で1万円から2万円程度の現金のやり取りだった。

   事件が発覚したきっかけは「文春オンラン」(Web版・5月20日付)と週刊文春の記事だった=写真=。「黒川弘務検事長 は接待賭けマージャン常習犯」。その後、市民団体から賭博の疑いで刑事告発が相次ぎ、東京地検が捜査を進めていた。高検は起訴猶予の理由として、4人が旧知の間柄で、動いた金額も多額ではなく、賭博性を高める特殊ルールを採用していないため「娯楽の延長線上にある」とした上で、4人が辞職や停職処分で社会的制裁を受け、いずれも事実を認め反省していることを挙げた(7月11日付・朝日新聞)。

   冒頭で述べた、50㌔規制の道路を66㌔で走行したスピード違反は、警察に「今後絶対に違反はしません。交通ルールを守ります」と反省の気持ちを込めて土下座したとして、許しを得ることはできただろうか。許されるはずがない。では、法の番人である検察最高幹部による刑法の「賭博」に抵触する行為が、「社会的制裁」「事実を認め反省していること」をもってなぜ不起訴となるのだろうか。

   令和元年(平成31年)のスピード違反の検挙件数は113万7255件(警察庁「交通関係法令違反の検挙状況」)だ。交通警察はそれを実績として誇るかもしれないが、「ネズミ捕り」への恨みはけっこう根深い。ましてや、今回の「賭博 不起訴」のニュースで「また、上級国民への配慮か」と格差感を抱いてしまう。検察の不起訴処分が妥当だったかどうかをチェックする検察審査会の判断に注目したい。

⇒12日(日)午後・金沢の天気   くもり

☆賭けマージャンなのか取材なのか

☆賭けマージャンなのか取材なのか

    東京高検の黒川検事長がきのう夜、安倍総理あてに辞表を提出したとメディアが各社が報じている。緊急事態宣言の中で産経と朝日の新聞記者らと興じた賭けマージャンのニュース(20日付・文春オンライン)が急浮上し、辞表提出につながった。

   「安倍(総理)はうまくすり抜けたな」と直感した人も多いのではないだろうか。黒川氏は63歳で、ことし2月に定年を迎えるところだった。総理官邸の信任が厚く、さらに半年間(8月7日まで)の勤務延長が国家公務員法の規定で閣議決定し、さらにそれを後付けするように検察庁法改正案を国会に提出した。ことし7月に勇退予定の検事総長の後任になるのではないかとも取り沙汰され、「三権分立の原則を壊す不当な人事介入」との批判が沸き起こった。今月18日に政府は法案成立を見送ったが、国会での追及は止まらなかった。このタイミングでのいわゆる「文春砲」だった。

   この問題はさまざまに波及するだろう。賭けマージャンの事実認定だ。当事者である朝日新聞は賭けマージャンに加わった社員(元検察担当記者)から事情を聴き、詳細を以下公表している。「13日は産経新聞記者と社員が数千円勝ち、産経の別の記者と黒川氏がそれぞれ負けた。1日は社員が負けた。4人は、5年ほど前に黒川氏を介して付き合いが始まった。この3年間に月2、3回程度の頻度でマージャンをしており、集まったときに翌月の日程を決めていた。1回のマージャンで、勝ち負けは1人あたり数千円から2万円ほどだったという」「2017年に編集部門を離れ、翌年から管理職を務めていた。黒川氏の定年延長、検察庁法改正案など、一連の問題の取材・報道には全くかかわっていない」(21日付・朝日新聞Web版)

   もう一方の当事者である産経新聞もコメントを発表した。「東京本社に勤務する社会部記者2人が取材対象者を交え数年前から複数回にわたって賭けマージャンをしていたことがわかりました。賭けマージャンは許されることではなく、また、緊急事態宣言が出されている中での極めて不適切な行為でもあり、深くおわびいたします。厳正に対処します」としている(22日付・NHKニュースWeb版)

   賭けマージャンは刑法の賭博罪(50万円以下の罰金)となる。飲食代など「一時的な娯楽に供するもの」を賭けた場合だと処罰されないという例外規定もある。今回、朝日新聞は賭けた金額も発表しているので事実関係は明らかだろう。黒川氏がいちやはく辞表を提出したのも、はやめに法務省から処分(訓告)を受けた方が、今後、刑事告発などを受けたとしても、罪は軽微で済むとの判断ではなかった。

   ここからは憶測だが、これが記者たちによる「接待マージャン」だとしたらどうなるだろう。事実、黒川氏の帰りのタクシー代を産経の記者が負担している。話の場を持たせるために、賭けマージャンという接待をしていたのだと記者たちが主張したら、賭博罪に問えるだろうか。むしろ贈収賄罪かもしれない。この場合、その対価は検察の内部情報だが、これは記事を検証すれば証明できる。黒川氏は「マージャンを通じて、メディアの知りたい情報とは何かを確認したかった」と主張するかもしれない。単なる賭けマージャンなのか、あるいは接待マージャンという取材なのか、そこが問題だ。

   朝日側は「一連の問題の取材・報道には全くかかわっていない」とコメントを発表している。卓を囲んだ社員は確かに記事は書いてはいなかっただろう、しかし、担当記者に黒川氏からの情報を流していたと考える方が自然ではないだろうか。

⇒22日(金)午前・金沢の天気    はれ

★文春が突いた「虎穴」取材の盲点

★文春が突いた「虎穴」取材の盲点

   「虎穴(こけつ)に入らずんば、虎子(こじ)を得ず」という諺(ことわざ)がテレビ・新聞メディアの記者たちの間で今でも使われている。権力の内部を知るには、権力の内部の人間と意思疎通できる関係性をつくらならなければならない。そこには取材する側とされる側のプロフェッショナルな仕事の論理が成り立っている。その気構えがなければ記者はつとまらない、という意味だ。

   「文春オンラン」(Web版・20日付)が報じた記事にメディア関係者は戸惑ったことだろう。「黒川弘務東京高検検事長 ステイホーム週間中に記者宅で“3密”『接待賭けマージャン』」。東京高検の黒川氏が緊急事態宣言によって不要不急の外出自粛が要請されているさなかの今月1日と13日夜、産経新聞社会部記者の自宅マンションを訪れ、産経のもう一人の記者と朝日新聞社員で元検察担記者の4人で賭けマージャンに興じた。黒川氏の帰りのハイヤーは産経記者が手配した。

   この記事で気になる一文がある。「産経関係者の証言によれば、黒川氏は昔から、複数のメディアの記者と賭けマージャンに興じており、最近も続けていたという。その際には各社がハイヤーを用意するのが通例だった」。「産経関係者の証言」と記述しているので、この記事のソースは産経新聞社の関係者と言っているに等しい。うがった見方かもしれないが、記者は取材源を秘匿するが、あえて「産経関係者」と出したところに何か隠された意味がありそうだ。   

   けさ新聞をコンビニで購入し、賭けマージャンの記事を各紙がどのように掲載しているかチェックした。読売新聞と中日新聞は関連記事を一面、中面、社会面の3ヵ所で記載している。これに比べ、当事者は扱いが小さい。朝日新聞は第2社会面、産経新聞は3面で報じている。

   文春の記事の論点は、ジャン卓を囲む3密と賭けマージャンの賭博罪の2点である。ただ、これは記事の本流ではない。政府がことし1月に黒川氏の定年を延長し、さらに4月に今国会で検察庁法改正案を提出。これが、黒川氏の定年延長を後付けで正当化するものではないかと議論になった。今月18日に政府は成立を見送り、議論は収束した。が、文春は3密と賭けマージャンで追撃をかけた。

   テレビ・新聞メディアは、当事者の産経と朝日以外も黒川氏の3密と賭けマージャンを知っていたはずだ。では、なぜ報じなかったのか。それは、冒頭の「虎穴」の論理だ。産経と朝日の記者は、法案に対する黒川氏の本音を知りたいとの思いを持って卓を囲んだ。3密の状態で賭けマージャンをすることで、黒川氏からさりげなく言葉を引き出すことにある。おそらく、読売や毎日の記者も賭けマージャンをともに行っていただろうと憶測する。こうした取材の一環として行った賭けマージャンについて、メディア各社はお互いに知る手の内なので記事にはあえてしない。文春はこの虎穴の取材の論理を上手に横から突いた。

   ここからはあくまでも憶測だ。黒川氏との賭けマージャン仲間である記者たちはお互いに卓を囲むスケジュールを把握していたはずだ。その記者の1人がうっかりと、あるいは意識的に1日と13日の予定を文春の記者にばらした。文春もばらした記者の社名を伏せるため、あえて「産経関係者の証言」と記述したのではないか。

   記者すべてが虎穴を肝に銘じているわけではない。躊躇する記者もいる。「権力を監視する立場の記者があえて権力の懐(ふところ)に飛び込んでよいものか」と問うている。

   黒川氏はきょう法務省の調査に対し、事実関係を認め、辞職の意向を示した。法務・検察関係者が明らかにした。森法務大臣は報道陣に「21日中に調査を終わらせ、夕方までに公表し、厳正な処分も発表したい」と述べた(21日付・共同通信Web版)。

⇒21日(木)午後・金沢の天気    くもり