#記録的な大雨

☆能登の震災から10ヵ月、豪雨から40日 泥出しボランティア集めに躍起

☆能登の震災から10ヵ月、豪雨から40日 泥出しボランティア集めに躍起

  きょうから11月、元日に能登半島で起きた震度7の強烈な地震から10ヵ月が経った。復旧・復興の途上の9月21日に奥能登が48時間で498㍉の記録的な豪雨に見舞われた。これまで金沢と能登を自家用車で何度も往復して、二重被害の現地の様子を見てきた。この目で見た能登の現状をまとめてみたい。

  半島を縦断する自動車専用道路「のと里山海道」を走ると、救急車とすれ違うことがある。1月や2月ほど頻繁ではないが、いまもある。金沢市や七尾市の病院への救急搬送だろうと推測する。石川県危機対策課がまとめた10月29日時点での地震による死者は408人で、そのうち、家屋の下敷きになるなどして亡くなった直接死は227人、災害による負傷の悪化や避難生活での身体的負担による疾病で亡くなった関連死は181人だった。県は10月23日と31日に関連死の審査会(医師、弁護士5人で構成)を開き、新たに33人の認定を決め、各市町が近く正式に認定することになる。これにより、犠牲者は441人に増えることになる。また、能登豪雨で亡くなった人は15人になる。

  二重被害が集中した地域の一つが輪島市だった。震災による火災で中心部の朝市通りの店舗や住宅など200棟が焼けて、焦土と化した。大通りでは輪島塗の製造販売会社の7階建てのビルが転倒した。そして豪雨では、中心部に近い久手川町を流れる塚田川に架かる橋に流木が大量に引っかかり、せき止められた泥水があふれて、住宅地に流れ込んだ=写真=。このため、住宅4棟が流され、14歳の少女ら4人が犠牲となった。同市町野町では震災と洪水で中心部の街並み全体が倒壊した状態になっている。輪島市では地震による仮設住宅が2900戸あるが、うち205戸で床上浸水となった(11月1日付・北國新聞)。県では年内をメドに被災者の再入居のため泥の除去など改修工事を進めている。

  二重被害のあった輪島市や珠洲市など奥能登をめぐると、場所にもよるが、全半壊した家屋が並ぶ街の光景がこの10ヵ月まったく変わっていないところが多い。輪島市の町野町などはその典型かもしれない。石川県の「被災建物の公費解体の進捗状況」によると、公費解体の申請があった3万1613棟ののうち、10月28日時点で解体が完了したのは全体の23%、7251棟となっている。作業は4月下旬から本格的に始まっていて、半年余りでこのペースだとあと2年ほどかかるのではないか。冬季には積雪もある。そして、豪雨での全半壊は55棟(10月18日時点)あり、政府は半壊した家屋も全壊と同様に公費解体を認めている。

  さらに難題がある。石川県の試算では輪島と珠洲、能登3市町で泥出しが必要な宅地は2600棟におよんでいて、家の中の泥出しは各自が行う。このうちボランティアの協力が必要なほど泥が堆積しているのは1500棟と想定していて、県など行政は泥出しボランティアを集めるのに躍起になっている。

⇒1日(金)午後・金沢の天気    あめ

☆能登の二重被災と総選挙~ウグイス嬢のマイク叫びは控えめ~

☆能登の二重被災と総選挙~ウグイス嬢のマイク叫びは控えめ~

  衆院総選挙の期間中に見るいつもながらの光景は「ウグイス嬢」「桃太郎」「ドブ板」の3つではないだろうか。ウグイス嬢は選挙カーに乗って、「〇〇をよろしくお願いします」とマイクで叫びながら街を流すが、終盤ともなると「最後最後のお願いです。どうぞどうぞよろしくお願いします」と泣きが入った声になる。「桃太郎」はたすきをかけた候補者が、のぼりを持った運動員たちとともに街のメイン通りや商店街を練り歩き、支持を訴える。このシーンは、桃太郎がキジやサル、イヌたちとのぼりを立てて鬼退治に向かう昔話からそう名付けられている。「ドブ板」は候補者が裏路地まで入って地域の有権者にあいさつする光景だ。

  では、石川3区ではどのような選挙の光景が繰り広げられているのか。きのう(18日)午後、自民前職の西田昭二氏は輪島市町野町の仮設住宅で遊説を行っていた=写真=。町野地区では元日の地震で、さらに9月の記録的な大雨で山から土砂が流れ多くの家屋が全半壊する二重被災に見舞われた。倒壊した家屋がいまも野ざらしになっている場所も少なくない。

  ここでマイクを握った防災服姿の西田氏は自らも被災して家族は仮設住宅で暮らしていると話し、「あまりにも被害が大きく、復旧復興には時間がかかる。どれだけ環境が変化しても、能登に住む方にとってここは大切な場所。安心してふるさとで暮らせるよう、住宅の再建や生業(なりわい)の再生に、『出来ることは全てやる』『やらなければならないことは必ずやる』との強い思いをもって全力で取り組む」と述べていた。

  冒頭で述べた「桃太郎」「ドブ板」の光景は仮設住宅ということもあり遠慮したのだろうか、支援者と握手を交わす以外は見ることはなかった。西田氏はその後、別の仮設住宅へと向かった。選挙カーの「ウグイス嬢」はマイクのボリュームを低めに「よろしくお願いします」と叫んではいたものの、「被災されお亡くなりになられましたご遺族の皆様へ心よりお悔やみを申し上げます」とのフレーズも何度か入れていた。被災地に気配りをした選挙活動だった。

  石川3区の3候補はどのような能登の将来ビジョンを訴えているのだろうか。地元の新聞メディアが3氏に、「能登の復旧・復興、将来のグランドデザインをどう描くか」とのアンケートを行っている。これに対し、西田氏は「移住定住の促進とコミュニティーの再生、交通インフラの改善、関係人口の増加など施策を組み合わせ一歩一歩進めることが必要」、立憲民主の前職の近藤和也氏は「能登の農林水産業の活性化を図る。浮体式の洋上風力発電は成長産業の軸にもなり、能登のその候補地となりうる」、共産の新人の南章治氏は「被災地の医療・介護事業、施設の経営を国と自治体が支え、高齢者の人権と尊厳が守られる年金、介護、医療制度の改革を進める」と述べている(19日付・北陸中日新聞)。

  3氏のビジョンはどれも能登の復興には欠かせない。一つにまとめて復興計画に組み込めないものだろうか。

⇒19日(土)夕・金沢の天気    あめ 

☆能登の二重被災と総選挙~仮設住宅の入り口にポスター掲示板~

☆能登の二重被災と総選挙~仮設住宅の入り口にポスター掲示板~

  読売新聞と日経新聞が協力して実施した総選挙序盤における世論調査(1選挙区500人以上、計16万5820人の有効回答、15ー16日実施)によると、自民は全289選挙区のうち議席獲得が「有力」だったのは3割ほどにとどまった。全国11ブロックで争う定数176の比例代表も前回2021年に獲得した72議席を下回る見通しとなった。このため、自民は定数465の衆院の過半数にあたる233議席に届かない可能性がある。自民の単独過半数割れとなれば民主党に政権交代した2009年衆院選以来となる。派閥を巡る政治資金問題など政治不信の強さが浮き彫りになった(16日付・日経新聞Web版)。

  また、共同通信の調査(15万6993人の有効回答、15ー16日実施)によると、小選挙区のうち自民がリードしているのは140程度にとどまり、比例代表も前回を下回るのは避けられない情勢。単独過半数は「予断を許さない」としている。両調査とも立憲民主に勢いがあると分析している(17日付・新聞メディア各社)。

  きのう(16日)石川3区(能登地区などの12市町)の輪島市に行ってきた。漁港では海底が隆起して港から漁船が出れなくなっていて、いまも海底の土砂をさらう浚渫(しゅんせつ)作業が行われている。漁協の荷捌き場も改修工事中だった。近くの漁師町も公費解体が進んでいないように見受けられた。漁港近くの通ると、元日の地震と9月の記録的な大雨に見舞われた奥能登での選挙を象徴するような光景が見えた。仮設住宅街の入り口に選挙の候補者ポスターの掲示板があった=写真=。

  ポスター掲示板を眺めている地元の人が数人いた。その横を通ると、「なんで選挙なんかするんや、ダラくさい」の声が聞こえた。「ダラくさい」は能登の方言でばかばかしいという意味だ。誰のために、何のために選挙をするのかと問うているようにも聞こえた。このひと言が能登の被災地の人たちの率直な気持ちを言い表しているのかもしれない。

  そして、輪島市内では選挙の雰囲気が感じられない。ポスター掲示板そのものがほとんど見当たらないのだ。同市は前回選で159ヵ所にポスターの掲示板を設置したが、土地の所有者と連絡が取れないケースが相次ぎ、今回は60ヵ所にしたようだ(15日付・読売新聞Web版)。市内には2時間半ほど滞在したが、石川3区で3人が立候補しているにもかかわらず、選挙カーを一度も見かけなかった。被災地での選挙遊説を遠慮しているのか。

⇒17日(木)午前・金沢の天気     はれ

☆記録的な大雨から6日目 小中学校で授業再開 不明者の捜索続く

☆記録的な大雨から6日目 小中学校で授業再開 不明者の捜索続く

  今月21日から22日にかけて能登半島の北部で降った記録的な大雨で輪島市内の小中学校12校は臨時休校となっていたが、そのうち10校はきょうから授業を再開した。床上浸水など被害が大きかった同市町野町の小中2校の授業再開は来月1日以降となる見通しという(26日付・地元メディア各社のニュース)。

  記録的な大雨による死者は輪島市9人、珠洲市2人の合わせて11人となった。行方や安否が分からない人が4人いる。このうち川が氾濫して4軒の住宅が流された輪島市久手川町の塚田川周辺では14歳の女子生徒が流され、連日、警察や消防、自衛隊がおよそ430人の態勢で捜索を行っている=写真=。

  大雨で大きな被害が発生していることから、天皇、皇后両陛下の長女愛子さまが今月28、29日に能登半島地震の復興状況を視察される予定だったが取りやめとなった。地元メディア各社が伝えている。愛子さまは仮設商店街や和倉温泉など視察し、復興に向けて取り組む住民と交流する予定だった。愛子さま単独での地方公務は能登が初めてとなると地元メディア各社は注目していたが、大雨で流れた。

  そんな中、石川県の馳知事のひと言がまた物議をかもしている。今月24日に開催された県の災害対策本部会議で、馳知事が「1日も早い復旧のためには、ボランティアのみなさんのお力が不可欠」と訴え、「泥かきなどのボランティアを大規模で投入する必要があると痛感した」と述べた。この「投入」という言葉は不適切ではないか、ボランティア軽視ではないか、と。

  馳知事とボランティアは相性が悪い。ことし1月10日の記者会見で「個人的なボランティアは2次被害に直結するので控えてほしい」と訴えた。知事は被災地へ向かう道路事情が悪く、個人的なボランティアで自家用車で現地に行くと渋滞に巻き込まれ、救急車や消防車の往来にも支障をきたすのでしばらく控えてほしいという意味で述べたのだが、いつの間にか「ボランティアは自粛」「行かないことが支援」の言葉が独り歩きを始めた経緯もある。

  馳知事にはボランティア軽視の気持ちはないかもしれないが、「投入」という言葉は自らの指揮命令で人を動員するときに使う言葉なので、ボランティアをコマのように扱っているとみられるだろう。

⇒26日(木)夜・金沢の天気  はれ

☆「能登の再難」元日地震と記録的な大雨合わせ避難者1356人に

☆「能登の再難」元日地震と記録的な大雨合わせ避難者1356人に

  大雨に見舞われた輪島市の被災地を見て回り、痛ましく感じたことがいくつかある。その一つが、元日の地震で自宅が全半壊したため仮設住宅に入り、さらに今回の大雨で床上浸水の災害を被り、再び避難所生活に戻る被災者の人たちの心情だ。輪島市門前町浦上地区の仮設住宅を訪れた。仮設住宅の住人に話を聞いた。山でがけ崩れが起き倒木が大量に発生した。近くの浦上川が決壊し、流木が次々と流れ着き、集落近くの橋梁にぶつかってたまり、まるで「土砂ダム」と化した。

  仮設住宅は河川の近くにあり、床上浸水の状態となった=写真・上=。ただ、橋の下流にあるので、流木が流れてきて仮設住宅を直撃するということは免れた。話をしてくれたシニアの男性は「仮設住宅は助かった方だ。この橋の上流はひどいことになっている」と。その話を聞いて少し上流に上がると、流木が押し寄せていた。流木が民家にぶつかり、壁などがゆがんでいた。軽トラック2台も流されてきたのだろうか。電柱が倒れ、一帯では広範囲に流木や泥があふれていた=写真・下=。

  男性は震災で仮設住宅に入った。今回の水害では周囲は泥であふれた。避難所から通って仮設住宅の泥を除去することが「当面の仕事だ」と話した。泥のにおいが一帯に立ちこめていた。

  最大震度7の地震、そして記録的な大雨。能登半島は「災難」、そして「再難」に見舞われた。石川県まとめによると、大雨による死者は23日現在で輪島市6人、珠洲市1人の計7人。避難者は計1088人(輪島市730、珠洲市243、能登町102、ほか13=22日午後4時時点)に上っている。能登半島地震での避難生活(地元での1次避難)も続いていて、計268人(輪島市72人、珠洲市145人、志賀町51人=9月17日時点)が避難所に身を寄せている。地震と水害を合わせ1356人となる。

⇒23日(月・振休)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

☆気象情報 言葉が複雑化している

☆気象情報 言葉が複雑化している

   「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったものだ。きょうの金沢の最高気温は27度で夏日だったものの、夕方からは涼しさを感じるようになった。と言うと、「随分のんきなことを」としかられるかもしれない。九州北部や中国地方を中心に記録的な大雨となっている。11日からの降り始めの雨量は佐賀県嬉野市で1000㍉を超え、8月の平年の雨量(277㍉)の3倍以上の雨量となった(15日付・気象庁公式ホームページ)。石川県内でも宝達志水町では12日午前2時の降り始めから15日午前5時までに降水量が311㍉となり、8月の平年の雨量を上回り、観測史上最大となった(同・金沢地方気象台公式ホームページ)。

         この記録的な大雨で、堤防の決壊や越水など9県の36河川で氾濫が発生。鉄道や道路も被害が相次いでいる。土砂災害は15府県で44件が発生していて、都道府県別件数(15日正午現在)では、長崎11、広島7、熊本5、佐賀4、富山、福岡各3、石川、鹿児島各2、福島、長野、岐阜、静岡、滋賀、京都、大阪各1などとなっている。さらに増える見通し(国土交通省公式ホームページ「プレスリリース」)。

             これまでの雨のイメージとはまったく異なる強い雨や雨量、そして、「線状降水帯」といった帯状に連なる積乱雲など、気象庁から発表される気象情報のレベルが一気にアップしている。その分、国民や視聴者にはとても分かりにくくなっている。たとえば、きょう午前中に民放テレビが報じていた。「気象庁は午前10時7分、神奈川県山北町に記録的短時間大雨情報を発表しました。この情報が発表された地域では、災害の発生に結びつくような猛烈な雨が降っています。ただちに身の安全を確保してください」(15日付・TBSニュース)。「記録的短時間大雨情報」とあるが、「顕著な大雨に関する情報」や「大雨警報」はどう違うのか。

    これだけではない「警報」と「特別警報」の違いや、「氾濫危険情報」と「氾濫警戒情報」の違いを国民、視聴者はどれほど理解しているだろうか。単なる気象情報ではなく、防災情報を含めているので、言葉の複雑化が生じているのだろう。ただ、情報は流せばよいというものではない。言葉の分かりやすさが人々にいち早く訴える。「大雨洪水警報」、これで十分伝わるのではないか。(※写真は日本気象協会の天気予報専門サイト「tenki.jp」より)

⇒15日(日)夜・金沢の天気      くもり時々はれ