#視聴率

☆WBCの高視聴率 TBSの緊急再放送の裏読み

☆WBCの高視聴率 TBSの緊急再放送の裏読み

   TBSはテレビの常識をひっくり返して視聴者のニーズをうまくつかんだ。テレビ視聴率の調査会社「ビデオリサーチ」がメディア向けに発表した速報値によると、テレビ朝日が22日に中継したWBC決勝戦・対アメリカ戦(放送枠・午前8時25分-午後0時8分)は平均世帯視聴率が42.4%(関東地区)だった。毎分ごとの世帯視聴率で最も高かったのは午前11時43分の46.0%(同)で、9回表で大谷翔平投手がマイク・トラウト外野手を空振り三振で仕留め、優勝を決めた場面だった=写真=。

   決勝戦の平日の午前ということもあり、「もう一度視聴したい」や「見逃し」「録画し忘れ」などさまざまな視聴者ニーズを読んで、TBSは同日午後7時からのゴールデンタイムで「緊急再放送」を行った。この平均世帯視聴率が22.2%を取った。前日21日の準決勝・対メキシコ戦も急きょ午後7時から再放送し、平均世帯視聴率を19・8%(同)を稼いだ。2夜連続の緊急再放送はテレビ業界では異例のことだ。WBCの放映権を地上波で得ていたのはTBSとテレビ朝日の民放2社。映像はWBCのオシフャル映像だったので、緊急再放送も可能だったのだろう。

   ただ、TBSの中継で難点を一つ言えば、21日午前の準決勝・メキシコ戦だった。映像と音声のズレに違和感を感じた。実況の音声が映像よりも早く、たとえば初回で佐々木朗希投手が投球すると、ほぼ同時に「空振り」と実況が。ということは、オフィシャルの映像が衛星回線かデジタル回線でダイレクトにTBSに送られていて、実況の音声はTBSが用意した別の回線で送信していたのだろう。マイアミの現地では違和感のない実況中継であっても、映像は日本に届くまでには数秒遅れる。音声はそれほどの遅れはない。この誤差が視聴者の違和感を招いた。

  ただ後半はほどんど違和感はなかった。おそらく、途中から現地で映像と音声を合成して日本に送ったのではないだろうか。以上はあくまで推測だ。TBSが同日午後7時から緊急再放送をするとのニュースを見て、映像と音声のズレたことで視聴者へのお詫びの意味かとも思った。それはそれで視聴率を稼いだのだから、けがの功名ではないだろうか。

⇒24日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆FIFAワールドカップ日本惜敗 メディア報道あれこれ

☆FIFAワールドカップ日本惜敗 メディア報道あれこれ

   FIFAワールドカップ・カタール大会トーナメント戦での日本戦の報道を見ていて、一番悔しい思いをしたのは新聞メディアではないだろうかと憶測した。何しろ、クロアチア戦は日本時間の6日深夜の戦いだったが、締め切りを延長すればなんとか6日付の朝刊に対戦結果を掲載できた。しかし、PK戦にまでもつれ込んだために締め切り時間に間に合わず、ひと晩明けたけさの朝刊で各社が一斉に報じることなった=写真=。

   もちろん、きのうは夕刊での記事掲載もあったが、夕刊の購読世帯数は少なく、大手紙の場合は夕刊を発行していない地域エリアもある。そのため、きょうの朝刊で本編掲載のような紙面づくりをせざるを得なかった。

   スペイン戦は日本時間で今月2日午前4時にキックオフ、終了は午前5時53分だった。この時間は朝刊配達の時間でもあり、最初から結果の掲載は見送ったのだろう。そしてクロアチア戦は6日午前0時にキックオフ。通常の試合ならば、前後半それぞれ45分、ハーフタイムの15分を含めて午前1時45分には試合は終わる。これだったら紙面に間に合う。

   ところが、トーナメント戦では必ず勝敗をつけるルールがある。今回は延長戦で前後半各15分の試合が行われ、それでも決着がつかずPK戦で勝敗をつけことになった。6日付の地元紙の朝刊は「日本1-1で延長へ」と伝えている。逆算すれば、午前1時50分ごろまで締め切りを待ったが、延長戦となってはこれ以上は待てないと判断したのだろう。結局、クロアチア戦の終了は午前2時43分だった。新聞社の周辺のごく一部地域でしか結果を朝刊に掲載できなかったのではないか。新聞メディアの限界がここにある。 

   一方で、数字を稼いだのはテレビ局だった。ロイター通信Web版(6日付)によると、6日未明にフジテレビが中継したクロアチア戦の平均世帯視聴率は関東地区で34.6%、関西地区で33.1%だったことが、ビデオリサーチの調査(速報値)で分かった。瞬間最高視聴率は関東が38.3%、関西が36.8%だった。2日早朝に同じくフジテレビが生中継したスペイン戦は、午前5時から午前6時10分までの日本が逆転した試合後半中心の平均世帯視聴率は28.7%だった。

   ネット中継も数字を稼いだ。全64試合を日本で無料生中継しているテレビ朝日系のABEMAでは、ドイツ戦の視聴者数が1000万人、コスタリカ戦は1400万人、スペイン戦は1700万人、そしてクロアチア戦は延長前半時点で2000万人を突破した(6日付・日刊スポーツWeb版)。

   新聞、テレビ、ネットの特性がFIFAワールドカップを通じて浮き出た。新聞メディアが時代遅れと言っている訳ではない。新聞は試合の多様な解説記事を掲載している。テレビにもネットにも追随できないコンテンツではある。

⇒7日(水)夜・金沢の天気    くもり

★パラリンピックで際立つNHKと民放の違い

★パラリンピックで際立つNHKと民放の違い

           前回のブログの続き。これまでパラリンピックの番組をテレビで観戦したことは、正直なかった。今回パラリンピックでは、国別のメダル数など気にせず、むしろ、迫力ある車いすラグビーや、エジプトの卓球選手イブラヒム・ハマト氏らのような「凄技」を見たいと思いテレビを視聴している。

   NHKはBS放送などを含め500時間の番組を組んでいる。ところが、新聞紙面のテレビ欄を広げても、民放によるパラリンピックの中継や特番がほとんど見当たらない。きょう28日付の紙面では、TBSによる午後2時30分からの車いすバスケットボール男子・日本対カナダ戦だけだ=写真・上=。民放の公式ホームページをチェックすると、テレビ朝日が競泳の中継(29日午前10時)、車いすテニスのハイライト番組(9月5日午後0時55分)、フジテレビは車いすバスケットボール男子5-6位決定戦(9月4日午後4時)など予定している。各局とも決まったように、競技の中継が1つ、ハイライト番組が1つか2つ、それも土日の日中の時間だ。いわゆるゴールデン・プライム帯ではない。

   オリンピックでは、NHKに負けじと生中継をしていたのに、パラリンピックは気が抜けた感じだ。なぜ、民放はパラリンピックを積極的に放送しないのか。単純な話、放映権料を払っていない。オリンピックについては、NHKと民放はコンソ-シアムを組んでIOCに対し平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字で5億9400万㌦を払っている。しかし、これにはパラリンピックの放映権料は含まれていない。国際パラリンピック委員会(IPC)は独立組織なので、IOCとは別途払いなのだ。

   IPCと契約しているのはNHKのみ。2015年6月25日付のNHK広報のプレスリリースによると、平昌大会から2024年パリ夏季大会までの4大会の日本国内での放送権についてIPCと合意したと発表している=写真・下=。ただ、金額については記していない。

   以下はかつて民放局に携わった自身の憶測だ。2015年6月でのIPCとの契約に民放が参加しなかったのは、パラリンピックはスポーツ観戦としてのニーズが低いので視聴率が取れないと判断してのことだろう。スポンサーも付くかどうか分からない。ところが、視聴者の目線はこの数年で変化した。スポーツ観戦という意味合いだけでなく、障がいや逆境、限界を超えてスポーツに挑むパラアスリートたちから感動を得たいというニーズがある。そして企業側も、SDGs(国連の持続可能な開発目標)の主旨に沿った番組にスポンサー提供をしたいというニーズが起きている。

   民放自体もパラリンピック番組を無視できない状況になってきた。そこで、すでにIPCと合意しているNHKに依頼して「おすそ分け」をしてもらうカタチでパラリンピック番組を放送することになったのだろう。あくまでも憶測だが、NHK側の条件はおそらく、2026年ミラノ冬季大会以降のIPCとの契約はコンソーシアムを組むということではないだろうか。

⇒28日(土)午前・金沢の天気    はれ

★台風の波に乗り、卓球の壁破る、スケボー13歳は見事に金

★台風の波に乗り、卓球の壁破る、スケボー13歳は見事に金

   オリンピックの醍醐味はある意味で、新たなスポーツとスーパ-スターの発掘ではないだろうか。競技映像を見ることはできなかったが、スケートボード女子ストリートで、13歳の西矢椛(もみじ)選手が優勝し、日本史上最年少の五輪メダリストになった。2位のブラジル選手も13歳、3位の中山楓奈選手は16歳、表彰台に10代の選手が並んだことになる。スケートボードがオリンピック競技になっていることも知らなかった。そして、五輪競技には珍しく参加選手への年齢制限がないようだ。オリンピックのトレンドになってほしいものだ。

   オリンピック競技で卓球と言えば中国というイメージだが、混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手がその「チャイナの壁」を突破して、日本の卓球界に初の金メダルをもたらした。新聞各紙は、「ついに王国、中国の壁を超えた」(7月27日付・朝日新聞)、「ついに、卓球王国・中国の牙城を崩した」(同・読売新聞)などと掲載している。

   フタをあければアッという数字だった。視聴率調査会社「ビデオリサーチ」のプレスリリース(7月26日付)によると、23日に行われた東京オリンピック開会式はNHK総合で生中継され、またハイライトはフジテレビ系列とNHKBS1で放送され、それら3番組を集計対象とし、リアルタイムで視聴した人は日本全国で推計7326万8千人になると発表している。また、NHK総合の開会式は平均視聴率は56.4%(関東地区)だった。開催への批判も渦巻いたが、前回の1964年の東京五輪の61.2%に迫る高い数字だった。

   競技では、冒頭のスケートボー女子ストリートの決勝と表彰式を放送したNHK総合(26日、午後0時20分から)の視聴率は9.8%だった。スケートボードという新参の競技でこの数字は見方によっては高い数字だ。また、中国に勝った卓球の混合ダブルスの決勝と表彰式を放送したフジテレビ(26日、午後10時20分から)の視聴率は24.6%だった。

            台風8号が関東と東北に接近している。この台風をうまく利用する競技もある。国際サーフィン連盟は、千葉県一宮町にある東京オリンピックのサーフィン会場の波の高さや風向きなど気象状況を検討した結果、決勝を当初の日程より1日早め、27日中に準々決勝から決勝までを行うと発表した。大会の運営にも関わっている地元のサーフィンの経験者は「台風の影響で高くていい波がきている。また風向きもよく、サーフィンに適した波の崩れ方をしている。日程を1日早めて正解だ」と話している(7月27日付・NHKニュースWeb版)。台風が来れば波に乗る。サーファーの意気込みに迫力を感じる。

   先ほどまでNHK-Eテレで、テニスの女子シングルス3回戦、大坂なおみ選手とチェコのマルケタ・ボンドロウソバ選手との対戦を見ていた。大坂選手はストレート負けでベスト8進出を逃した。開会式では聖火台に火をともす大役を担っただけに、金メダルへの強い思いもあったろう。スポーツの世界は厳しい。オリンピックは悲喜こもごものドラマの連続だ。

⇒27日(火)午後・金沢の天気      くもり時々あめ