#衆院総選挙

☆与党は過半数割れ「宙づり」状態をどう乗り切るのか

☆与党は過半数割れ「宙づり」状態をどう乗り切るのか

  内閣支持率は「危険水域」に近づいている。読売新聞の衆院選の結果を受けた緊急世論調査(28、29日)によると、石破内閣の支持率は34%で、内閣発足後の前回調査(今月1、2日)の51%から急落した。内閣不支持率は51%(前回32%)で、内閣発足から1ヵ月足らずで不支持が支持を上回った(29日付・読売新聞オンラン)。読売の調査で内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。ちなみに、岸田内閣が退陣を表明した8月の読売調査は支持率が24%、不支持率が63%だった。

  急降下した内閣支持率を見て、石破政権はいつまで持つのかと考えてしまう。政策の実効性を確保するために「議会を解散して民意を問う」と石破政権は選挙に打って出たものの、与党の過半数割れとなった。このままでは何も決められない、いわゆる「宙づり議会」、ハング・パーラメント(hung parliament)の状態だ。この言葉は議会制民主主義の歴史が長いイギリスが発祥で、直近では2017年の総選挙で保守党が第1党を維持しながらも過半数割れとなり、宙づり状態に陥った。この時は、北アイルランドの地域政党の閣外協力を得て、何とか政権を維持し、その後2019年の総選挙で保守党が単独過半数を獲得した。日本の自民党もハング・パーラメントを乗り切るために、部分連合や閣外協力に躍起になっているようだ。

  メディア各社の報道によると、自民と国民民主の幹事長と国会対策委員長があす(31日)国会内で会談する。政府が11月中のとりまとめをめざす経済対策で、国民民主が掲げる政策の一部を反映させる検討に入るとみられる。自民とすれば、2024年度補正予算案や25年度予算案について編成段階から国民民主に配慮することを持ち掛け、部分連合あるいは閣外協力を打診するのだろう。

  一方の国民民主の玉木代表は記者団に対し、自公との部分連立について改めて否定し、「政策本位でいい政策であれば協力するし、ダメなものはダメと言っていく」と語っている(28日付・メディア各社の報道)。また、閣僚を出さずに政権に協力する閣外協力の可能性についても、同様に「政策ごとにいいものには協力するし、ダメなものはダメと貫いていく」と述べるにとどめている(29日付・同)。

  与党は過半数割れのハング・パーラメント状態をどう乗り切るのか。衆院選後30日以内(11月26日まで)に特別国会を開き、新総理を選出することが憲法に定められている。

⇒30日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆与党過半数割れが今後もたらす「政治空白」と「経済空白」のWショック

☆与党過半数割れが今後もたらす「政治空白」と「経済空白」のWショック

  与党が過半数割れに陥った背景には有権者の信頼低下があることは言うまでもない。自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、選挙では「政治とカネ」の問題に有権者の関心が高まっていた。それに輪をかけたのが、選挙期間中の「非公認2000万円問題」。自民党が非公認候補側に2000万円の活動費を支給した問題だ。これが致命傷になったのだろう。そもそも、石破総理就任から最短の「8日間」での解散も、有権者には理解されなかったのではないか。

  「なんで選挙なんかするんや、ダラくさい」。このブログで何度か取り上げたが、震度7の地震と記録的な大雨に見舞われた能登の有権者の雰囲気は、このひと言に象徴される。能登で何度も耳にした言葉だ。「ダラくさい」は能登の方言でばかばかしいという意味だ。誰のために、何のために選挙をするのかと問うているのだ。能登の被災地の人たちの率直な気持ちなのだろう。その気持ちが投票行動でも表れている。

  能登の人々の性格は律儀さもあり、「選挙に行かねば」は当たり前で、金沢市など都市部に比べて投票率が高い。ところが、今回、石川3区の投票率は62.5%と、前回2021年より3.5ポイント減少した。中でも、地震と豪雨の二重被害となった奥能登の輪島市では11.9ポイント減の58.9%、珠洲市では9.5ポイント減って62.0%だった。避難者が現地から離れていて、投票に行けなかったというケースもあったろう。それにしても、この減少率の高さは「ダラくさい」の気持ちがにじみ出ているように思えてならない。それでも都市部より投票率は高い。ちなみに、金沢市は49.5%だった。

  そして、能登は「自民王国」とも称されてきたが、今回、立憲民主が逆転した。前回(2021年)の衆院選では、自民の西田昭二氏が8万692票、立民の近藤和也氏は7万6747票で、その差は3945票だった。今回は近藤氏が7万7247票、西田氏は6万1308票と、その差1万5939票で近藤氏が挽回したのだ。近藤氏が小選挙区で勝つのは2009年以来15年ぶり。西田氏は比例で復活当選した。

  話は冒頭に戻る。石破政権は窮地に陥るのではないか。与党が過半数を割り、自民執行部の責任論が浮上するのは必至だ。懸念されるのは、選挙後に待ったなしで行われる予定の補正予算の編成だ。石破総理は去年の13兆円を上回る予算規模を選挙戦などでも明言していたが、政治空白が生じれば補正の成立時期が後ずれする。自民は国民民主などと政策ごとに協力する「部分的な連合」で政権運営を乗り切らざるを得ないだろう。ただ、野党側との協議は難航するのが常である。懸念されるのは国民全体に影響が降りかかる「経済政策の空白」ではないだろうか。

⇒28日(月)夜・金沢の天気     あめ時々くもり

★地震と豪雨の能登・石川3区で立民の近藤氏が勝利、与党過半数割れで政局突入か

★地震と豪雨の能登・石川3区で立民の近藤氏が勝利、与党過半数割れで政局突入か

  きょうは衆院総選挙の投票日。元日の震災と9月の記録的な大雨に見舞われた輪島市町野町の現場を見に行った。現地で農業を営む従兄(いとこ)の案内で被害に遭った自宅を見せてもらった。裏山が大規模に崩れ、この集落は土砂に埋まるなど壊滅的な状態になっていた=写真・上=。いまは仮設住宅で家族と暮らしている。農地は3分の2ほどが残り、耕運機なども無事だったことから、来春の作付けに意欲的な様子だった。復旧・復興が遅い能登を政治はどう導いていくのか。

  地震と豪雨で大きな被害を受けた能登の輪島市と珠洲市では、投票時間が短縮されて午後6時で投票が締め切られた。NHKの開票速報によると、輪島市と珠洲市を含む石川3区では立憲民主の前職・近藤和也氏が自民・前職の西田昭二氏を破り、4回目の当選を果たした。近藤氏は2009年の衆院選で小選挙区で初当選。その後、2017年、2021年には選挙区で敗れたものの、比例で復活していた。  

  近藤氏の選挙活動はじつにユニークだった。立ち姿はまったく候補者らしくない。防災服姿で、名前入りのたすき掛けもしていないのだ=写真・下=。近藤氏は七尾市での出陣式(今月15日)で「与党も野党も関係なく、助け合わなければならない時期。選挙なんてやっている場合か。それが能登の総意だと思う」と憤りの声を上げた。選挙実施への反発の意味を込め、選挙期間中は防災服姿で、たすき掛けをしないことを宣言していた。ただ、選挙活動は実にアクティブだった。元日の地震後、これまで選挙区内で整備された6000戸余りにもなる仮設住宅を足しげく回り、被災者の声を国会論戦などで反映させてきた。地震と豪雨の二重被災の奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)へは選挙期間中にそれぞれの自治体を2回ずつ回った。「まだ能登は大変なんだと全国に訴えていきたい」と述べていた。  

  「自民党王国」と称されていた石川3区で2009年以来、15年ぶり2度目の勝利を果たした立憲民主の近藤氏。今回の選挙も2009年と同様、政局に異変をもたらしそうな様相だ。メディア各社の開票速報によると、与党が勝敗ライン「自公で過半数(233議席)」を下回る見通しとなったと報じている。自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、選挙戦では「政治とカネ」の問題に関心が高まった。有権者は自公政権に対し、厳しい審判を下したようだ。そして永田町は今後、波乱含みの政局に突入しそうだ。ただ、政局がどうであろうと能登のことを忘れてほしくない。

⇒27日(日)夜・金沢の天気   あめ

☆能登の二重被災と総選挙~仮設住宅で期日前投票、出口で聞き取り~

☆能登の二重被災と総選挙~仮設住宅で期日前投票、出口で聞き取り~

  きょう21日は奥能登の「記録的な大雨」から1ヵ月となる。石川県のまとめによると、住宅の床上浸水などの被害は1487棟に上る。これにより、輪島市と珠洲市、能登町の3市町で合せて434人が避難生活を続けている(今月18日時点)。豪雨の影響で輪島市と珠洲市で断水が起きていて、両市で合せて1000戸余りにおよぶ。今回の能登豪雨ではこれまでに14人が死亡、1人の行方が未だ分かっていない。地元メディアによると、輪島市役所ではきょう午前9時30分、市長や職員が犠牲者に黙とうを捧げた。先月21日の午前9時22分までの1時間に降った雨の量が輪島市で観測史上最大の121㍉に達し、犠牲者が出たことからこの時間での黙とうを設定した。

  話は衆院選に。輪島市町野町の仮設住宅「町野町第2団地」(268戸)できょう期日前投票所が設けられた。現地を見に行った。町野町ではこれまで、市役所の支所で期日前投票が行われていたが、今回の豪雨で床上浸水となり使えなくなり、仮設住宅の集会所に期日前投票所が設けられた。訪れた人たちはこれまでとは少々狭い場所ながら1票を投じ=写真=、出口で知り合いと出会うとあいさつを交わしていた。投票所には仮設住宅だけでなく地域の有権者も訪れている。

  現地に出向いた動機に「出口調査」を試みたいとの思惑があった。仮設住宅に住む人たちはこの選挙をどう思い、誰に投票したのか、そんなことが知りたかった。そこで、投票を終えた人に声かけし、石川3区の候補者のポスター掲示板を撮影し画像をプリントしたものを見せて、投票した候補者を指差ししてもらった。何人にも断れたが、男女それぞれ5人に応じてもらった。立候補しているのは、3選を目指す自民前職の西田昭二氏(55)、4選を目指す立憲民主前職の近藤和也氏(50)、共産新人の南章治氏の3氏(69)。近藤氏は2回連続で西田氏に敗れたたものの、比例代表で復活当選している。

  「出口調査」と述べたが、対象はわずか10人なので調査としてはデータ不足でもあるので、「出口聞き取り」との表現が適切だ。その結果は、近藤6票、西田4票だった。女性5人は全員、近藤氏を指差した。男性は4人が西田氏を、1人が近藤氏を指さした。その理由も尋ねた。女性は「地震と大雨の能登を任せるのはなるべく若い人がいい」「近藤さんは仮設住宅を訪れ、私たちの不満などに耳を傾けてくれている」「(地震と豪雨の二重被害では)立民と自民が協力してほしい。自民にハッパをかける意味であえて近藤さんに入れた」と話してくれた。一方、西田氏に入れた男性は「(能登の二重被災には)自民がしっかりしてもらわないと困る」「復興復旧をはやく進めるために自民の国会議員にはがんばってほしい」「国への要望などパイプ役を西田氏は担っている」と述べた。

  仮設住宅のある地域に住民票を移していない人も多いことから有権者であれば誰でも投票できる期日前投票所を仮設住宅に設けた。ここでの期日前投票はあす22日も午前9時から午後4時まで行われる。23日以降は輪島市町野小学校に場所を移す。

⇒21日(月)夜・金沢の天気   はれ

★能登の二重被災と総選挙~防災服姿でたすき掛けはせず~

★能登の二重被災と総選挙~防災服姿でたすき掛けはせず~

  能登地方を含む石川3区で立候補している、立憲民主の前職の近藤和也氏の選挙活動を金沢市と隣接する内灘町で見てきた。その立ち姿はまったく選挙らしくない。防災服姿で、たすき掛けもしていないのだ=写真=。地元メディアで何度も報じられているが、近藤氏は七尾市での出陣式で「与党も野党も関係なく、助け合わなければならない時期。選挙なんてやっている場合か。それが能登の総意だと思う」と憤りの声を上げた。選挙実施への反発を込め、選挙期間中は防災服姿で、たすき掛けをしないことを宣言したのだ。その主張はいまも一貫している。

  元日の地震後、これまで選挙区内で整備された6000戸余りにもなる仮設住宅を足しげく回り、被災者の声を国会論戦などで反映させてきた。地震と豪雨の二重被災の奥能登(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)へは選挙期間中にそれぞれの自治体を2回ずつ回るという。「まだ能登は大変なんだと全国に訴えていきたい」と述べていた。

  選挙戦はあすから後半戦に入る。メディア各社は世論調査による選挙情勢を伝えている。石川3区の情勢はある意味で全国が注目する選挙でもある。自民前職の西田昭二氏、そして近藤氏、共産新人の南章治氏の3氏が立候補しているが、注目されているのが西田氏と近藤氏の競り合いだ。3選を目指す西田氏の前回(2021年10月31日投開票)の得票数は8万692票、4選を目指す近藤氏の前回は7万6747票だった。その差は3945票。近藤氏は2回連続で比例代表で復活当選していて、選挙区での議席獲得を目指す。

  選挙序盤の情勢を日経新聞(18日付)は「近藤先行、西田が猛追」との見出しで「近藤が立民支持層の9割、無党派層の5割をおさえて先行する。西田は自民支持層の7割をまとめ激しく追う」と記している。共同通信の情勢調査では、「近藤氏やや先行、西田氏追う」の見出しで、「西田、近藤両氏の3度目の対決となる3区では、近藤氏が立民支持層の9割以上を固め、共産支持層の3割近くにも浸透している。無党派層は6割が近藤氏を支持している。西田氏は公明の7割超、自民の6割近くを押さえた」とある(17日付・北國新聞)。

  「選挙なんてやっている場合か、これは能登の総意だ」と解散を批判してきた近藤氏に風は吹くのか。復興に向け国とのパイプ役を訴える西田氏が後半戦を突破するのか。

⇒20日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆能登の二重被災と総選挙~ウグイス嬢のマイク叫びは控えめ~

☆能登の二重被災と総選挙~ウグイス嬢のマイク叫びは控えめ~

  衆院総選挙の期間中に見るいつもながらの光景は「ウグイス嬢」「桃太郎」「ドブ板」の3つではないだろうか。ウグイス嬢は選挙カーに乗って、「〇〇をよろしくお願いします」とマイクで叫びながら街を流すが、終盤ともなると「最後最後のお願いです。どうぞどうぞよろしくお願いします」と泣きが入った声になる。「桃太郎」はたすきをかけた候補者が、のぼりを持った運動員たちとともに街のメイン通りや商店街を練り歩き、支持を訴える。このシーンは、桃太郎がキジやサル、イヌたちとのぼりを立てて鬼退治に向かう昔話からそう名付けられている。「ドブ板」は候補者が裏路地まで入って地域の有権者にあいさつする光景だ。

  では、石川3区ではどのような選挙の光景が繰り広げられているのか。きのう(18日)午後、自民前職の西田昭二氏は輪島市町野町の仮設住宅で遊説を行っていた=写真=。町野地区では元日の地震で、さらに9月の記録的な大雨で山から土砂が流れ多くの家屋が全半壊する二重被災に見舞われた。倒壊した家屋がいまも野ざらしになっている場所も少なくない。

  ここでマイクを握った防災服姿の西田氏は自らも被災して家族は仮設住宅で暮らしていると話し、「あまりにも被害が大きく、復旧復興には時間がかかる。どれだけ環境が変化しても、能登に住む方にとってここは大切な場所。安心してふるさとで暮らせるよう、住宅の再建や生業(なりわい)の再生に、『出来ることは全てやる』『やらなければならないことは必ずやる』との強い思いをもって全力で取り組む」と述べていた。

  冒頭で述べた「桃太郎」「ドブ板」の光景は仮設住宅ということもあり遠慮したのだろうか、支援者と握手を交わす以外は見ることはなかった。西田氏はその後、別の仮設住宅へと向かった。選挙カーの「ウグイス嬢」はマイクのボリュームを低めに「よろしくお願いします」と叫んではいたものの、「被災されお亡くなりになられましたご遺族の皆様へ心よりお悔やみを申し上げます」とのフレーズも何度か入れていた。被災地に気配りをした選挙活動だった。

  石川3区の3候補はどのような能登の将来ビジョンを訴えているのだろうか。地元の新聞メディアが3氏に、「能登の復旧・復興、将来のグランドデザインをどう描くか」とのアンケートを行っている。これに対し、西田氏は「移住定住の促進とコミュニティーの再生、交通インフラの改善、関係人口の増加など施策を組み合わせ一歩一歩進めることが必要」、立憲民主の前職の近藤和也氏は「能登の農林水産業の活性化を図る。浮体式の洋上風力発電は成長産業の軸にもなり、能登のその候補地となりうる」、共産の新人の南章治氏は「被災地の医療・介護事業、施設の経営を国と自治体が支え、高齢者の人権と尊厳が守られる年金、介護、医療制度の改革を進める」と述べている(19日付・北陸中日新聞)。

  3氏のビジョンはどれも能登の復興には欠かせない。一つにまとめて復興計画に組み込めないものだろうか。

⇒19日(土)夕・金沢の天気    あめ 

☆能登の二重被災と総選挙~仮設住宅の入り口にポスター掲示板~

☆能登の二重被災と総選挙~仮設住宅の入り口にポスター掲示板~

  読売新聞と日経新聞が協力して実施した総選挙序盤における世論調査(1選挙区500人以上、計16万5820人の有効回答、15ー16日実施)によると、自民は全289選挙区のうち議席獲得が「有力」だったのは3割ほどにとどまった。全国11ブロックで争う定数176の比例代表も前回2021年に獲得した72議席を下回る見通しとなった。このため、自民は定数465の衆院の過半数にあたる233議席に届かない可能性がある。自民の単独過半数割れとなれば民主党に政権交代した2009年衆院選以来となる。派閥を巡る政治資金問題など政治不信の強さが浮き彫りになった(16日付・日経新聞Web版)。

  また、共同通信の調査(15万6993人の有効回答、15ー16日実施)によると、小選挙区のうち自民がリードしているのは140程度にとどまり、比例代表も前回を下回るのは避けられない情勢。単独過半数は「予断を許さない」としている。両調査とも立憲民主に勢いがあると分析している(17日付・新聞メディア各社)。

  きのう(16日)石川3区(能登地区などの12市町)の輪島市に行ってきた。漁港では海底が隆起して港から漁船が出れなくなっていて、いまも海底の土砂をさらう浚渫(しゅんせつ)作業が行われている。漁協の荷捌き場も改修工事中だった。近くの漁師町も公費解体が進んでいないように見受けられた。漁港近くの通ると、元日の地震と9月の記録的な大雨に見舞われた奥能登での選挙を象徴するような光景が見えた。仮設住宅街の入り口に選挙の候補者ポスターの掲示板があった=写真=。

  ポスター掲示板を眺めている地元の人が数人いた。その横を通ると、「なんで選挙なんかするんや、ダラくさい」の声が聞こえた。「ダラくさい」は能登の方言でばかばかしいという意味だ。誰のために、何のために選挙をするのかと問うているようにも聞こえた。このひと言が能登の被災地の人たちの率直な気持ちを言い表しているのかもしれない。

  そして、輪島市内では選挙の雰囲気が感じられない。ポスター掲示板そのものがほとんど見当たらないのだ。同市は前回選で159ヵ所にポスターの掲示板を設置したが、土地の所有者と連絡が取れないケースが相次ぎ、今回は60ヵ所にしたようだ(15日付・読売新聞Web版)。市内には2時間半ほど滞在したが、石川3区で3人が立候補しているにもかかわらず、選挙カーを一度も見かけなかった。被災地での選挙遊説を遠慮しているのか。

⇒17日(木)午前・金沢の天気     はれ

★「エアハイタッチ」な静かな総選挙

★「エアハイタッチ」な静かな総選挙

    衆院総選挙の期間中に見るいつもながらの光景は「ウグイス嬢」「桃太郎」「ドブ板」の3つではないだろうか。ウグイス嬢は選挙カーに乗って、「〇〇をよろしくお願いします」とマイクで叫びながら街を流すが、終盤ともなると「最後最後のお願いです。どうぞどうぞよろしくお願いします」と泣きが入った声になる。このウグイス嬢の泣きの声を聞くと、「そろそろ投票日だ」との実感もわいてくるものだ。

   「ドブ板」は候補者が裏路地まで入って地域の有権者にあいさつする光景だ。逆に、「桃太郎」はたすきをかけた候補者が、のぼりを持った運動員たちとともに街のメイン通りや商店街を練り歩き、支持を訴える。このシーンは昔話にある、桃太郎がキジやサル、イヌたちにきび団子を与えて子分にして、のぼりを立てて鬼退治に向かうという絵本とよく似ている。選挙では、ここ金沢市内でもよく見かけるシーンだ。

   ところが、選挙戦もそろそろ中盤に入り、今月31日が投票日だというのに、「桃太郎」「ドブ板」を街で見ない。ウグイス嬢の街流しの声も聞こえない。自宅のポストに日本共産党のチラシが2枚入っていたくらいで、街の様子は普段と変わらない。本当に総選挙はあるのかと思ってしまうくらい静かな選挙戦だ。

   各候補者は新型コロナウイルスの感染防止に気遣っているのだろうか。確かに、「桃太郎」「ドブ板」でよく見かける握手作戦は、接触を避けるために、ハイタッチのふりをする「エアハイタッチ」にならざるを得ないだろう。さらに、支持者を集めた屋内外での集会もおそらく自粛だろう。

   それにしても、候補者の顔が見えない、そして候補者にとって有権者の顔が見えない、こんな選挙でよいのだろうかと思ってしまう。そうなると気になるのが投票率だ。石川県は新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」が今月1日から解除されたものの、感染者は少数ながら日々出ていて、日常が戻ったわけではない。感染を恐れて投票所に行かない有権者もいるだろう。前回のブログでも述べたが、外出しなくても投票できるネット投票をこれを機に検討すべきではないだろうか。(※写真は、新人4人が立候補している石川1区の選挙ポスター掲示板)

⇒23日(土)朝・金沢の天気      くもり時々あめ

☆新総理初会見を視聴して記した「Good job !」メモ

☆新総理初会見を視聴して記した「Good job !」メモ

   岸田総理の就任後初めての記者会見をきのう4日午後9時からNHKが中継していたのでメモを取りながら視聴していた=写真=。そのメモを見ながら、会見内容で再度チェックする。「早すぎる」と書いたメモが、今月14日に衆院を解散し、19日公示、31日投開票との選挙日程だった。それまでメディア各社が26日公示、11月7日投開票などと予想を報じていたので、「前倒し」は意外だった。それにしても、内閣発足10日で衆院解散に突入する、とは。

   4人が立候補した自民党総裁選(9月17日告示・29日開票)はNHKや民放各社がこぞって討論会の模様を報道するなど、「メディアジャック」現象ともいえるほどに注目された。直近の政党支持率では、日経新聞の世論調査で自民47%、立憲民主8%(9月23-25日調査)、テレビ朝日の調査で自民が49%、立憲民主9%(9月18、19日調査)と自民が支持率を伸ばしている。「鉄は熱いうちに打て」との選挙ポリシーなのだろうか。

   「新たな資本主義って何だ」とメモをしたのが、経済政策での「成長と分配の好循環」の説明だった。岸田氏は総裁選の論戦で「富む者と富まざる者の格差が生まれ、コロナ禍でさらに広がった。これからは富める一部の人間だけでなく、広く多くの人の所得を引き上げること」などと述べていた。中間層の所得の引き上げを通じて、GDPの半分以上を占める個人消費の活性化につなげる経済政策との意味で受け止めていたが、そのような単純明快な話ではないらしい。新たな大臣ポストとして「新しい資本主義担当」を置き、ヤル気だ。富の再配分を目指した、たとえば富裕税の創設などが頭の中にあるのだろうか。

   関連メモで「中国の共同富裕?」とも書いている。中国の習近平総書記が所得格差の是正と称して、不動産会社やIT企業、高所得の俳優などの富裕層に警告を発し、不動産大手「中国恒大集団」などはデフォルト寸前に追いやられている。岸田氏の「成長と分配の好循環」が中国の「共同富裕」のようにならないことを願う。

   「Good job !」とメモ書きしているが、人工知能など先端科学技術の研究に大規模な投資を行うとした「科学技術立国の実現」。そして、地方からデジタルの実装を進め、都市との差を縮める「デジタル田園都市国家構想」だった。本来ならばおそらく地方都市への移住政策だろう。それをあえて移住とは言わず、「デジタル田園都市国家構想」と称したところが見事、「Good job !」だ。

   これは個人的な願いだが、日本のデジタル化を本気で推進するのであれば、選挙のデジタル投票とデジタル法定通貨をぜひ実現してほしいものだ。

⇒5日(火)午前・金沢の天気    はれ