#葬儀

☆身近で、不可解、パラダイムシフトとは

☆身近で、不可解、パラダイムシフトとは

   社会全体の価値観が劇的に変化するという意味で使う「パラダイムシフト」は日常の言葉として発することがある。自身の記憶では、パラダイムシフト(paradigm shift)の言葉を初めて 交わしたのは、インターネットが劇的に広がった1999年だった。

   自宅を新築する際、光ファイバーケーブルを引き込み、リビングや書斎に光コンセントを設置してほしいと建築士にお願いした。すると、建築士は「光ファイバーがあれば、お部屋がオフィスに様変わりしますよ。パラダイムシフトですね」と。初めて聞いた言葉だった。確かに、完成後に自宅書斎のパソコンを会社(当時、テレビ局)のPCとつないでメールや動画をやり取りして仕事ができるようになった。画期的なことだった。それ以来、書斎を「オフィス」と呼び、パラダイムシフトという言葉を自らも使うようになった。

   もちろん、パラダイムシフトは個別の話ではなく社会全体の価値観の変化のことだが、今のIoT化やSociety5.0、リモートワークといったトレンドを考えると、当時建築士が話したように、パラダイムシフトの先駆けだったかもしれない。パラダイムシフトはIT化だけでなく、新型コロナウイルスなどに揺さぶられ、さまざまな場面で起きている。

   身近にある大きな変化では、葬儀もその一つだ。故人をしのび弔うセレモニ-は近年、会葬の規模が縮小し「家族葬」と言われるまでに少人数化した。さらにコロナ禍にあって、「廻(まわり)り焼香」と呼ばれる簡素化がトレンドになっている。廻り焼香は、通夜や葬儀・告別式に参列するが、焼香を終えた人は席に就かずにそのまま帰る。もともとは、多くの弔問客が滞りなく焼香を済ませるための会葬の流儀だったが、最近ではコロナ禍で「三密」を避ける工夫として用いられている。ドライブスルーでの焼香も可能な葬儀場もある。葬儀の小規模化と簡略化という流れは儀式のパラダイムシフトを象徴している。

   戸惑うパライダイムシフトもある。大学キャンパスで大麻をめぐるニュースが相次いだ。昨年は、日本大学ラグビー部や近畿大学サッカー部、そして東海大学硬式野球部、さらに長崎大学でも不法所持や売買などが発覚し、逮捕者も出ている。一方、アメリカでは民主党政権の復権にともない、ニュージャージー、アリゾナ、サウスダコタ、モンタナなどの各州で新たに合法化された。大麻を合法的に使えるアメリカ人は1億900万人に上り、総人口の3人に1人に相当する。ニューヨーク州でも知事が、州政府の財政を再建するため、オンラインのスポーツ賭博と娯楽用大麻を合法化する意向と報じられている(1月7日付・ロイター通信Web版日本語)。

   この背景には、国連が大麻と大麻樹脂を最も危険な麻薬に分類していたリストから外すことを承認し、大麻の医療的価値を認めたことによる(2020年12月3日付・CNNニュースWeb版日本語)。だからと言って、税収の確保のため大麻を合法化するというアメリカの動きは日本人にとっては不可解だ。アメリカでこの動きが全土に広まれば、日本の学生たちにアメリカへの留学を勧められなくなる。

⇒26日(火)夜・金沢の天気    あめ

☆ウィズコロナの光景 クマと廻り焼香

☆ウィズコロナの光景 クマと廻り焼香

   きょう朝、大学からの一斉メールで「クマ出没注意」があった。午前5時19分、角間キャンパスの入り口の交差点付近での目撃情報が寄せられた。今月1日にも今回目撃されたところの近くで出没している。このため大学では学生たちに「鈴など音が出るものを携行しましょう」「集団での登下校などに努めましょう」「クマを引き寄せる残飯等のゴミは所定の場所に捨てる、または持ち帰りましょう」と日頃の注意行動を呼びかけている。

   キャンパスはかつて里山といわれた中山間地だが、山奥から人里まで切れ目なく森林が続く。この時節はキャンパスを流れる川の沢沿いを伝って新芽や新葉、果実類など求めて出没する。クマは人気(ひとけ)のないところを徘徊する。懸念するのは、この新型コロナウイルスの影響で、クマの出没が増えるのではないか、と。今月19日から対面授業は再開されたものの、51人を超える講義などは在宅での遠隔授業(オンデマンド)となる。登学してくる学生は4分の1ほどではないだろうか。クマにとって静かな、心地よいキャンパスなのである。

   話は変わるが、このブログでは前日どのページが何回検索されたかが表示される。最近目立って検索が増えているのが「廻り焼香」(2015年2月27日付)だ。通夜や葬儀・告別式の弔問客が焼香のみ行い、そのまま帰るという風習について述べた。もともと福井にある葬儀の風習で、多くの弔問客が滞りなく焼香を済ませるための知恵だったが、葬儀が小規模化した今でも廻(まわ)り焼香の風習は生きている。

   この廻り焼香はウィズコロナの時世にマッチする。あえて言葉を交わさず、祭壇に向かって合掌し焼香のみで帰る。すでに一部で「ドライブスルー焼香」や「オンライン葬儀」といった新たなカタチの葬式に取り組んでいる葬儀会社があると報道(6月22日付・NHKニュースWeb版)もあった。これまでの慣習が覆され、新しい生活様式が模索される中で、葬式の有り様も変わるかもしれない。ウィズコロナの光景ではないだろうか。

⇒24日(水)午前・金沢の天気    はれ時々くもり