#菅総理

★権力者の孤独な幕引き

★権力者の孤独な幕引き

           菅総理が辞意を表明し、自民党総裁選(今月17日告示、29日投開票)に立候補しない意向を示した。新聞メディアは号外や夕刊紙で速報した=写真=。テレビ各社もこの日午後1時過ぎの官邸での菅総理の不出馬表明を生中継した。菅氏のコメントを聴く限り、「コロナ対策に自分のエネルギーを注ぎたい」「総裁選との両立は難しいからコロナに集中するために今回は出馬しない」との言い分で、とても分かりやすい。

          しかし、一人の国民、そして有権者として思うことは、最近の菅氏は「チカラ強さがない」という印象だ。昨年9月の就任時には携帯電話料金の値下げやデジタル庁の新設を打ち上げ、チカラ強かった。ところが、新型コロナウイルスの政府の対応が不十分だとの批判が相次ぎ、東京都議選(投票7月4日)で自民党は過去2番目に少ない33議席。総理のおひざ元である横浜市長選(同8月22日)でも、盟友と言われた小此木八郎氏(前国家公安委員長)を推しながら敗北を喫した。

   それは数字でも表れていた。読売新聞Web版(8月9日付)によると、世論調査(8月7-9日踏査)では菅内閣の支持率が昨年9月の内閣発足以降の最低を更新し、支持率35%だった。前回(7月9-11日調査)と6月調査は37%だった。不支持率は54%(前回53%)で、内閣発足以降最高だった。

   読売が世論調査を実施した8月上旬は、オリンピックで日本選手の金メダルラッシュに沸いていた。開催反対論を押し切った菅内閣に支持が集まっても当然とも思えた。本人もそう思っていたに違いない。ところが、内閣支持率は上がるどころか下落したのだ。

   政局は一気に揺らぐ可能性があった。読売の調査で支持率が下がると権力者は身震いする。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。菅内閣の支持率は9月ではおそらく「危険水域」、20%台に落ち込むだろう。数字をよく読んでいた本人もそれを悟った。その前に辞すことを表明した。それにしても、権力者の実に孤独な幕引きだった。

⇒3日(金)夜・能登の天気      あめ

☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

☆オリンピック、ワクチン「金づる」のシステム

    結局、いいように「金づる」にされているのか。時事通信Web版(6月3日付)によると、WHOが参加を呼びかけたワクチン供給の国際組織「COVAX」のサミット(オンライン会議)が2日開かれ、菅総理は新型コロナウイルスワクチンの途上国への公平な普及に向け、8億㌦の追加拠出を行うと表明した。途上国向けワクチンについては、これまで日本政府は2億㌦を拠出していて、今回の8億㌦と合わせると、拠出額はアメリカに次ぐ10億㌦となる。

   日本国内のワクチン接種は65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種は47万人(6月1日現在・総理官邸公式ホームページ)、率ではわずか1.3%だ。国内でこんな状況なのに、他国になぜ10億㌦も寄付をするのか、国内にもっと注力してほしいと誰しもいぶかるに違いない。

   金づるの仕組みはもう出来上がっている。5月15日付のこのブログでも述べたが、昨年2020年5月16日、WHOのテドロス氏とIOCのバッハ会長は「スポーツを通して健康を共同で促進していく覚書(MOU)」を交わしている。その中で、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)が示される。つまり、パンデミックの下で東京オリンピックを開催するしないの「決定権」を握っているのはWHOだ。

   テドロス氏がオリンピック参加国でもある低所得国にワクチンが行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないと言えば、バッハ会長も従わざるを得ないだろう。そこで、テドロス氏の意向を受けたバッハ氏が今度は東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本会長を通して、COVAXへの拠出を要望してきた。菅総理も日本が拠出しないと東京オリンピックのイメージダウンになると決断したのではないだろうか。

   この「COVAXストーリー」はさらに奥が深い。WHOが中心となってワクチンを共同購入することになるが、主な購入先は中国だろう。WHOは5月7日に中国国有製薬大手「中国医薬集団(シノファーム)」が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認。治験などから推定される有効性は79%。そして、きのう2日にも中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについて緊急使用を承認した。

   CNNニュースWeb版(6月2日付)=写真=によると、WHOはシノバック製ワクチンの使用認可で、供給問題に直面しているCOVAX計画が加速すると期待し、担当者は「世界全体で起きているワクチンへのアクセスの不平等さを克服するには、複数のワクチンが必要だ」と述べた。中国政府は、年末までに30億回分を生産したいとしている。

   これまで最大のワクチン供給元となっていた「インド血清研究所(SII)」は、国内の感染急拡大を受けて3月にワクチンの輸出を停止している。

   世界から集められた拠出金で中国製のワクチンを購入するシステムが出来上がる。同時に、中国としては、来年2月の北京冬季五輪はワクチンが世界に行き渡った状態で開催する。まさに「一石二鳥」と豪語しているだろう。日本はただの金づるになっているだけ。裏読みのストーリーではある。

⇒3日(木)午前・金沢の天気    はれ

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

   アメリカを訪問中の菅総理はホワイトハウスでバイデン大統領と初めて対面での会談を行った。会談後に「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」と題する共同声明を発表した。いち早くホワイトハウスの公式ホームページに共同声明が掲載されている=写真・上=。読むと、強烈に中国を意識した内容だ。以下抜粋。

「Together, we oppose any unilateral action that seeks to undermine Japan’s administration of the Senkaku Islands.」(両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する)

「We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues. We share serious concerns regarding the human rights situations in Hong Kong and the Xinjiang Uyghur Autonomous Region. 」(両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する)

「The United States and Japan recognize that digital economy and emerging technologies have the potential to transform societies and bring about tremendous economic opportunities. 」(アメリカと日本両国は、デジタル経済および新興技術が社会を変革し、とてつもない経済的機会をもたらす可能性を有していることを認識する)として、生命科学やバイオテクノロジー、AI、宇宙の分野で研究と技術開発で協力する述べている。5Gなどでは中国企業を警戒した内容になってる

「President Biden and Prime Minister Suga affirmed their commitment to the security and openness of 5th generation (5G) wireless networks and concurred that it is important to rely on trustworthy vendors. 」(バイデン大統領と菅総理は、第5世代無線ネットワーク(5G)の安全性および開放性へのコミットメントを確認し、信頼できる事業者に依拠することの重要性について一致した)。

   この共同声明に対して、アメリカのメディアの反応は。CNNのWeb版の見出し=写真・下=。「Biden uses meeting with Japanese Prime Minister to emphasize new focus on China」(バイデンは日本の首相との会談を利用して、中国への新たな焦点を強調している)。アメリカと中国の対峙に日本を巻き込むカタチで新たな争点をあぶりだしている、と好意的な論調だ。

   また、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたことは台湾にとっては画期的なことだろう。共同通信Web版(17日付)は「台湾外交部(外務省)の欧江安報道官は17日、日米首脳が共同声明にを明記したことに心からの感謝を表明した」と伝えている。

   一方の中国は穏やかではないだろう。時事通信Web版(同)は中国の在アメリカ大使館報道官が共同声明について「強烈な不満と断固とした反対を表明する」との談話を発表し、「台湾、香港、新疆ウイグル自治区に関する問題は中国の内政であり、東・南シナ海は中国の領土主権に関わり、干渉は受け入れられない」と強調した、と報じている。

   日米首脳会談ではテーブルに就いた参加者全員がマスクを、共同記者会見では記者との距離をとってマスクを外して、違和感なく臨んでいた。今回の首脳会談をテレビで視聴していて、菅氏とバイデン氏はなんとなく似た者同士との印象を受けた。前述のCNNの見出しで「use」という動詞を使っているが、まさに互いが使い合う外交スタンスが共同声明からも見えてくる。シンゾー(安倍氏)とドナルド(トランプ氏)の個性的な外交とは違った意味で強力なコンビが組めるのかもしれない。

⇒17日(土)午後・金沢の天気     あめ

★「ヨシ」「ジョー」外交の初舞台

★「ヨシ」「ジョー」外交の初舞台

   菅総理は昨夜、アメリカに向け出発した。ホワイトハウスで16日午後(日本時間17日未明)にバイデン大統領と会談する。おそくら会話の中では、男子ゴルフ「マスターズ・トーナメント」で優勝した松山英樹選手のことがホットな話題として出るだろう。「Matsuyama’s Masters win will make him ‘forever a hero’ 」(マスターズ優勝で松山は永遠のヒーローだ)などとバイデン氏は持ち上げるかもしれない。どのような言葉が交わされるのか注目したい。

   これまで日本の総理とアメリカの大統領はギブ・アンド・テイクの関係で親密さを演出してきた。最近の印象では、安倍氏が来日したオバマ氏を東京・銀座のすし店で接待した。オバマ氏は寿司が好物だった。安倍氏のお酌する姿を覚えている。また、安倍氏はトランプ氏とゴルフ外交を重ねた。面白いと思ったの この写真だ。2019年5月26日付で総理官邸のツイッターに公開された。お笑いコンビのような雰囲気で両氏が映っている。千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。

   親密さの演出は外交に欠かせない。2016年5月にオバマ氏がアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪れて慰霊し、核兵器廃絶を訴えた。同じ年の12月、今度は安倍氏がハワイのパールハーバーに赴き、日本軍の攻撃による犠牲者を祀るアリゾナ記念館を慰霊訪問した。安倍氏とトランプ氏は2019年9月、ニューヨークでの首脳会談で日米貿易協定の締結にこぎつけた。日本はアメリカの農産物の関税を撤廃、アメリカは日本製自動車などへの追加関税を当面発動しないことで合意した。外交の演出は外務省の努力や根回しもさることながら、為政者のセンスにもよるだろう。その意味で次の外務大臣に安倍氏をとの論調も時折耳にする。

   さて、菅総理とバイデン大統領の外交演出はどのような見せ方になるのか。日米同盟を強化すること、中国の台頭に連携して対処すること、気候変動の問題やサプライチェーン(供給網)など経済安全保障など課題は多々ある。そして何より、「ヨシ」「ジョー」と互いのファーストネームをうまく呼び合えるのかどうか。

⇒16日(金)午後・金沢の天気    はれ

☆数字は踊る、気になる、「一番」に弱い

☆数字は踊る、気になる、「一番」に弱い

   あさ起きると数字が踊っていた。16日のニューヨーク株式市場で、ダウ平均株価の終値が前週末比で470㌦高の2万9950㌦となり、今年2月につけた終値としての最高値2万9551㌦を更新し、初の3万㌦突破も迫っているとメディア各社が報じている。アメリカの株高を好感して、きょう17日の東京株式市場で日経平均株価が前日比100円を超える上昇、一時、2万6000円台をつけた(午前9時10分現在)。2万6000円台の回復は終値ベースで1991年5月以来29年ぶりととか。

   「一番」という数字には目が向く。理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、17日に公表された計算速度を競う世界ランキングで首位を維持した。富岳が世界一になるのは今年6月に続いて2期連続(11月17日付・日経新聞Web版)。世界ランキングは毎年6月と11月に公表され、富岳は1秒あたり44.2京(京は1兆の1万倍)回の計算速度を達成した。2位のアメリカの「サミット」(同14.8京回)をさらに引き離した(同)。「富岳」を製造している富士通ITプロダクツは石川県かほく市にあり、地元の多くの人たちが製造に関わり、地域の誇りでもある。

   ここで思い出す。2009年11月、民主党政権下に内閣府が設置した事業仕分け(行政刷新会議)で蓮舫議員が、次世代スーパーコンピューター開発の要求予算の妥当性について説明を求めた発言。「(コンピューターが)世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位じゃダメなんでしょうか」だった。科学者やスポーツ選手では当たり前と思われてきた世界一(金メダル、ノーベル賞)への道だが、政治家にはこの目標がない、正確に言えば「政治の世界ナンバー1」という尺度がないのだ。その尺度がない政治家が「世界一になる理由は何があるんでしょうか」と言う資格は本来ないだろう。ひょっとして政治家の多くは「オリンピックは参加することに意義がある」と今でも思っているのかもしれない。

   世論調査の数字も気になる。朝日新聞が今月11月14、15日に行った世論調査によると、「菅内閣を支持しますか。支持しませんか」の問いでは、「支持する」が56%で前回(10月17、18日)より3ポイントアップ。「支持しない」は20%で前回より2ポイント下げた。国会で論戦にもなった「日本学術会議」問題で、菅総理が学術会議が推薦した学者の一部を任命しなかったことについて、「あなたはこのことは妥当だと思いますか。妥当ではないと思いますか」の問い。「妥当だ」34%(前回31%)、「妥当ではない」36%(同36%)、「その他・答えない」30%(同33%)だった。三つ巴の様相だが、「菅総理の国会での説明に納得できますか。納得できませんか」の問いでは、「納得できる」が22%、「納得できない」49%となる。

    民意はどこにあるのだろうか。「菅さん、国会答弁は口下手だけど、やっていることはそう間違ってはいない。東京オリ・パラもあるのでなんとか頑張って」ということだろうか。

⇒17日(火)午前・金沢の天気    はれ

☆これは菅内閣の深謀遠慮か

☆これは菅内閣の深謀遠慮か

   日本学術会議は政府から独立して政策の提言などを行う日本の科学者を代表する機関だ。任命権は総理にある。その学術会議が菅政権ともめている。学術会議が、会員の候補として105人を推薦した学者のうち、菅氏が6人を任命しなかった。これを受けて、学術会議は任命されなかった理由の説明を求めるとともに、6人の任命を求める要望書を菅氏に宛てて提出することを決めた(10月3日付・NHKニュースWeb版)。

   学術会議のミッションは「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること」「科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること」だ(日本学術会議公式ホームページ)。菅氏が任命を拒否した理由は一体なんなのか。今回任命されなかった6人はキリスト教学者、政治学者(政治哲学、政治思想史)、法学者(行政法)、法学者(憲法)、法学者(刑法)、歴史学者(日本近代史)だ(10月2日付け・同)。

   6人の中には、3年前の共謀罪の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、参院法務委員会に共産党が推薦する参考人として出席し、「何らの組織にも属していない一般市民も含めて広く市民の内心が捜査と処罰の対象となり、市民生活の自由と安全が危機にさらされる戦後最悪の治安立法となる」と述べた学者もいた(同)。6人はこれまで何らかの政治的な発言、あるいは自民党の政策に対して政治的に行動ならびに発言を繰り返してきた。

   別な角度からこのニュースを深読みする。日本学術会議法第7条2項で「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とある。さらに、第1条の2項で「日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする」、3項で「日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする」とある。これを読み解く限り、総理に任命の拒否権があると読める。ちなみに、第2条は「日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする」とある。菅氏の理由はこの第2条にそぐわない人物ということなのだろうか。その理由を聞いてみたい。

   さらに別の視点で見てみる。日本学術会議は学者としての社会的な権威付け、つまり、日本学術会議の会員と称しただけで、社会の格付けが上がる。また、研究ファンドが取得しやすくなるランク付けではないか。この目線で言えば、日本学術会議そのものは果たして必要なのだろうか。2020年度の年間予算は10億5000万円。国家予算の規模からすれば微々たるものだ。が、行政改革の一つとして、この際だから権威付けのような機関を解散しようとの菅氏の深謀遠慮ではないだろうか。うがった見方ではある。(※写真は、首相官邸公式ホームページより)

⇒3日(土)午後・金沢の天気    はれ

★ウイズコロナ+デジタル担当大臣=ネット投票

★ウイズコロナ+デジタル担当大臣=ネット投票

   立憲民主党の小沢一郎衆議院員がきょう21日、自身の政治塾で講演し、「1年以内に必ず政権を取る」と述べ、次期衆院選での政権交代に意欲を示したと報道されている(9月21日付・時事通信Web版)。小沢氏は「11月に社民党も(立憲と)一緒になる予定だ」との見通しを示し、「野党がほぼ一つになる。これが効果的に機能すれば絶対に政権を取れる」と強調した(同)。見出しを見て記事にアクセスした。「壊し屋」の異名で政権交代の立役者だった小沢氏の発言なので、政権奪取に向けてのどのような戦略や新機軸があるのかと興味がわいた。

   ところが、記事は「野党がほぼ一つ」になればとの前提の話で、政権交代に向けての新たな戦略や論拠など詳しい記載はなかった。では、「野党がほぼ一つ」になったとして、その可能性はあるのか。朝日新聞の世論調査(9月16、17日)で「仮に今、投票するとしたら」と衆院比例投票先を質問している。回答は、自民が48%、立憲は12%だった。共産、維新、その他政党を合わせて「野党がほぼ一つ」になったとしても31%だ。自民と公明を合わせた54%には遠く及ばない。小沢氏の発言に実現性が感じられない。小沢氏の賞味期限はもう過ぎているのではないだろうかとも思った。

   読売新聞の世論調査(9月19、20日)によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は74%で、小泉内閣の発足時の87%、鳩山内閣の75%に次いで歴代3位の高さとなった。「支持しない」は14%だった(9月21日付・読売新聞)。 安倍前総理が進めてきた政策などを菅氏が引き継ぐ方針については「評価する」が63%で、「評価しない」が25%だった。また、  閣僚人事については「評価する」が62%、「評価しない」27%を大きく上回った(同)。ご祝儀相場だろうが、評価は高い。

   有権者の一人として自身も気になっている、衆院の解散・総選挙については、「任期満了まで行う必要がない」が59%、「来年前半」が21%、「ことし中」が13%の順だった。世論の6割近くが「任期満了まで行う必要がない」と答え、これは、上記の朝日新聞の世論調査も同じ傾向だ。質問内容は若干異なるが、「今年中がよい」は17%、「来年がよい」は72%だった。世論は「来年がよい」「任期満了まで行う必要がない」が主流だ。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、選挙などやってほしくないという、ある意味で世論の「拒絶反応」でもある。

   菅氏は新型コロナウイルスの収束や経済の立て直しを優先するとの考えを示している。ところが、総理の周辺では高評価の時機を逸しないようにと早期解散・総選挙の声が上がっている。ある意味で矛盾を解決するのはインターネットによる投票ではないだろうか。ネットによる選挙運動はすでに解禁されている。次はネット投票だ。総理の肝入りで新閣僚にデジタル担当大臣を任命した。マイナンバーカードの普及、そしてネット投票がセットで実現すれば、デジタル社会への大きな一歩になるだろう。ウイズコロナのこのタイミングでネット投票を実現させてほしい。

⇒21日(祝)朝・金沢の天気     はれ

☆いつまで続く「機種安く、月々料金高い」ビジネスモデル

☆いつまで続く「機種安く、月々料金高い」ビジネスモデル

   菅内閣の発足を受けて、メディア各社が世論調査を行っている。毎日新聞の調査では、内閣支持率が64%で、不支持率は27%を大幅に上回っている(9月18日付・毎日新聞Web版)。 朝日新聞社の調査は内閣支持率が65%で、不支持率は13%だった(9月17日付・朝日新聞Web版)。共同通信の調査でも支持率は66.4%、不支持率は16.2%だった(9月17日付・共同通信Web版)。3社の調査では支持率がおおむね65%とそろっている。

   菅総理はさっそく「公約実行」に動いているようだ。きょう菅氏は武田総務大臣と官邸で会談し、携帯電話料金の引き下げに向けて検討を進めるよう指示した。会談後に武田氏は「国民の生活と直結する問題なので、できるだけ早く結論を出すよう全力で臨んでいきたい」「1割とかいう程度では改革にならない」と記者に語った(9月18日付・共同通信Web版)。携帯料金の値下げについて、菅氏は官房長官時代の2018年に「4割程度下げる余地がある」と発言して注目された(同)。

   国の電波を管理しているのは総務省だ。携帯電話料金の値下げが進まなければ、おそらく電波利用料の見直しを迫るという「圧力」が携帯キャリア各社にかかるだろう。何しろ電波利用料は安価だ。携帯キャリアが国に納めている電波利用料は端末1台当たり年間140円。令和元年度でNTTドコモは184億円、ソフトバンクは150億円、KDDは114億円だった(総務省公式ホームページ「令和元年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額」)。NTTドコモは国へ電波利用料184億円を納め、携帯電話の通信料としてユーザーから3兆943億円を売り上げている(2019年度)。

   自身のスマホの利用料金は通信料で年額ざっと6万円だ。キャリアが国に納める1台当たり年間140円で、個人がキャリアに払う年6万円となる。通信インフラの整備や維持費に多少のコストがかかったとしても、菅氏の「日本は世界でも圧倒的に高い水準で、4割は下げられる」の主張には納得する。

   その背景にあるのは、「機種は安く、通信料は高い」のビジネスモデルではないだろうか。携帯電話だけにとどまらない。プリンターもそうだ。これも自身の実感だが、自宅で使うプリンターを3万5千円で買った。インクは6種あり、メーカーの純正インクでぜんぶそろえると5千円ほどかかる。さらに最近実感するのだが、減りが早い。インク量を減らしているのではないかと疑っている。そして、先日、そのプリンターが一年も経たないのに故障した。修理より買った方が安価と電気店で言われ、買った。「機種は安く、インクは高く、機種交換も早い」というビネジネスモデルかと疑っている。

   使っているスマホも、自宅のWi-Hiをセットして動画など視聴しているが、いつの間にかWi-Hiが「OFF」になっていて、料金が高くなっていることがある。携帯キャリアが勝手に操作しているのではないかと、これにも不審に思っている。グチになってしまったが、スマホの利用料が果たしてどこまで下げることができるのか。菅内閣の手腕が試される。

⇒19日(土)朝・金沢の天気     はれ

☆「自助・共助・公助、そして絆」というSDGs

☆「自助・共助・公助、そして絆」というSDGs

   菅総理大臣の初めての記者会見がきのう16日午後9時からあり、テレビで視聴した。会見で述べていた「自助、共助、公助、そして絆」はこれまで何度か耳にしていたが、改めて聴くと、これはひょっとして「菅流SDGs」ではないのかと心に刺さった。

   菅氏はこう語っていた。「まずは自分でやってみる。そして、家族、地域でお互いに助け合う。そのうえで、政府がセーフティーネットでお守りする」。SDGsの理念は「誰一人取り残さない(leave no one behind)」だ。自ら努力し、助け合い、そして公的な支援でしっかりとした絆(きずな)をつくることで、誰一人取り残さないという意味だと解釈した。

   その次のコメントがさらに鋭かった。「こうした国民から信頼される政府を目指す。そのためには、行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打ち破って、規制改革を全力で進める。国民のためになる、国民のために働く内閣を作り、期待に応えていきたい」。これまでの内閣は新しいキャッチフレーズで政治や経済や政治のクローバル化や、福祉や医療の充実といった政策を打ち出してきた。ところが、菅氏は国民という目線で行政の縦割り、悪しき前例主義を打ち破る、「国民のために働く内閣」に徹底すると強調したのだ。これまでなかったキャッチフレーズではないだろうか。

   それでは、「自助、共助、公助、そして絆」を徹底的に実行することで、どのようことが可能になるのだろうか。SDGs17のゴールと照らし合わせてみる。1・貧困をなくそう (No poverty)、2・飢餓をゼロに(Zero hunger)、3・すべての人に健康と福祉を(Good health and well-being)、4・質の高い教育をみんなに(Quality education)、5・ジェンダー平等を実現しよう(Gender equality)、10・人や国の不平等をなくそう(Reduced inequalities)、11・住み続けられるまちづくり(Sustainable cities and communities)、16・平和と公正をすべての人に (Peace, justice and strong institutions)、17・パートナーシップで目標を達成しよう( Partnerships for the goals)、の9のゴールが見えてくる。

   さらに、菅氏は、携帯電話の料金が高すぎることなどを指摘し、「当たり前ではない、いろいろなことがある。それらを見逃さず、現場の声に耳を傾けて、何が足りないのかをしっかりと見極めたうえで、大胆に実行する。これが私の信念だ」と述べていた。これを経済と働く現場の感覚を重視するという意味で考えると、8・働きがいも経済成長も(Decent work and economic growth)、12・つくる責任 つかう責任(Responsible consumption, production)が見えてくる。さらに、菅氏が掲げる行政のデジタル化に加え、産業のデジタル化を推進することで、9・産業と技術革新の基盤をつくろう(Industry, innovation, infrastructure)のゴールも想定できる。

   ただ、菅氏のコメントで見えてこなかったのは生物多様性や気候変動といった環境問題に関する政策、そして、ODA(政府開発援助)だ。ODAによって、ぜひ、6・安全な水とトイレを世界中に(Clean water and sanitation)をサポートしてほしい。環境では、7・エネルギーをみんなに そしてクリーンに(Affordable and clean energy)と13・気候変動に具体的な対策を(Climate action)を示してほしいものだ。

   そして、外交として里山里海と生物多様性の問題にも取り組んでほしい。2010年に名古屋市で開催された国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された、20項目を10年で達成する「愛知目標」が困難との報告が公表された(9月15日付・共同通信Web版)。森林の減少や種の絶滅、海洋資源の乱獲が世界各国で報告されている。そこで、14・海の豊かさを守ろう(Life below water)、そして、15・陸の豊かさも守ろう(Life on land)のSDGs目標を掲げてはどうだろう。

   日本で採択された国際目標が達成できないとすれば、逆に2030年達成に向けて国際的なイニシャティブを発揮するチャンスではないだろうか。

⇒17日(木)午前・金沢の天気     くもり