#能登半島地震

★被災地にキッチンカーが真っ先に駆けつける 国の仕組みこそ災害大国の必要条件

★被災地にキッチンカーが真っ先に駆けつける 国の仕組みこそ災害大国の必要条件

  能登半島地震の被災地を巡り、仮設住宅地などに立ち寄ると意外と多く目にするのがキッチンカーだ。1ヵ月ほど前の話だが、七尾市の港近くにあり郷土料理や獲れたての魚介類が味わえることで人気がある「能登食祭市場」が震災から徐々に復旧し、仮営業が行われているというので行ってきた。店舗はまだ半数も営業していなかったが、入り口ではテント市やキッチンカーが並んでいて、土曜日ということもあってにぎわっていた。キッチンカーは10台ほど並んでいただろうか。アイスコーヒーなどのドリンクを提供する車や、韓国キチンを売りにする車などに人の列ができていた=写真・上、8月17日撮影=。車ナンバーを見るとほとんどが石川ナンバーの中小型車だったので、個人事業のキッチンカーかと推測した。

  半島先端の珠洲市ではトラックのキッチンカーも見かけた。車体には「すき屋」と描かれてあったので、牛丼や寿司、ファミリーレストランなどのチェーン店を経営する「ゼンショーホールディングス」(東京)の公式サイトをチェックする。被災者のために15日から現地で炊き出しを始め、4月27日までの72日間で3万5558食を提供した、とある。冬から春にかけての能登では厳しい冷え込みが続いていたので、避難所に身を寄せる被災者にとって、温かい食事の提供で心身も温まったのではないだろうか。このほか、カレーやうどんなどの全国チェーンの車もみかけた。

  外食事業者によるキッチンカーを活用した被災地支援の動きは、全国的な動きになりつつあるようだ。農水省公式サイト「外食事業者によるキッチンカーを活用した食事提供の取組」(3月1日付)によると、農水省では外食業界団体である一般社団法人「日本フードサービス協会」と連携し、被災地方公共団体と調整した上で、外食事業者の協力を得て被災地でキッチンカーを利用した食事提供に努めている、とある。有償提供、無償提供を問わず、ゼンショー取組1被災地にキッチンカー支援が向かう動きは、能登が先進事例になるのではないか。(※写真・下は、農水省公式サイトより)

  この動きは、自民党総裁選(今月27日投開票)に立候補した9氏が臨んだ所見発表演説会(12日・NHK生放送)でも取り上げられた。石破茂氏は能登地震の被災直後の状況について、「101年前の関東大震災のときと変わらない。体育館で雑魚寝は、先進国では日本だけだ」「被災した人たちを励ますのは温かくておいしい食事だ」と語り、発災3時間をめどに簡易トイレやベッドをはじめ、キッチンカーを被災者のもとに届ける仕組みを制度として整備すべきだと強調していた。

  確かに、被災地での炊き出しなどを地元のボランティアに委ねるだけではなく、国の仕組みとして整備する、これは災害大国ニッポンに必要不可欠だろう。

⇒14日(土)午後・金沢の天気   はれ

★能登と関わる建築家・坂茂氏に「世界文化賞」 被災家屋の能登瓦の再活用に動く

★能登と関わる建築家・坂茂氏に「世界文化賞」 被災家屋の能登瓦の再活用に動く

  能登半島地震の被災地での仮設住宅や去年秋の奥能登国際芸術祭2023の「潮騒レストラン」の設計など能登と深く関わってきた建築家の坂茂(ばん・しげる)氏が、世界の優れた芸術家に贈られる「世界文化賞」に選ばれたと報じられていた(10日付・NHKニュースWeb版)。「高松宮殿下記念世界文化賞」は日本美術協会が絵画や音楽、建築など5つの分野で世界的に活躍する優れた芸術家に毎年贈っている。

  建築部門で選ばれた坂氏は、紙でできた素材を使ったシェルターや仮設住宅を世界各地で造り、難民の救済や被災支援に取り組んでいることが高く評価された。記者会見で坂氏は「世界中で手軽に手に入るもので建築物をつうくり、社会の役に立ちたいと思った。地震で人が死ぬのではなく、建築物が崩れて人が亡くなる。だから、われわれには責任があると認識しながら、世界のために活動を続けたい」と受賞の喜びを述べた(10日付・NHKニュースWeb版)。

  坂氏の被災地支援を初めて見たのは、去年5月5日に震度6強の地震に見舞われた珠洲市での公民館だった。避難所用の「間仕切り」に工夫が凝らされていた=写真・上=。間仕切りはプラスティックではなく、ダンボール製の簡単な仕組み。ベッドなどがある個室にはカーテン布が張られているが、プライバシー保護のために透けない。環境と人権に配慮した避難所だった。間仕切りは市に寄付されたものだった。次に坂氏の作品を見たのは同市で開催された「奥能登国際芸術祭2023」(9月23日‐11月12日)だった。日本海を一望する「潮騒レストラン」は、ヒノキの木を圧縮して強度を上げ、鉄筋並みの耐震性と木目を活かして造られ、建物自体が芸術作品として話題を集めた。

  そして3度目が、能登半島地震の被災地支援で設計された木造2階建ての仮設住宅だった=写真・中=。石川県産のスギを使い、木のぬくもりが活かされた内装となっている。珠洲市の見附島近くあり、外装の色合いも周囲の松の木と妙にマッチしていて、まるで別荘地のような雰囲気を醸し出していた。木の板に棒状の木材を差し込んでつなげる「DLT材」を積み上げ、箱形のユニットとなっている。

  次なるプロジェクトも始動している。震災で倒壊した家屋=写真・下=から「能登瓦」を収集して、新築や改築、修繕の希望者に提供するほか、今後整備される災害公営住宅などにも再活用する。坂氏は現在は生産されていない「能登瓦」を耐寒性に優れた黒瓦であり、能登の景観を構成する要素だと高く評価している。家屋が倒壊したとは言え、割れてもいない能登瓦を廃棄物とすることに違和感があるのだろう。建築家の目線で「もったいない」と感じるのかもしれない。

⇒12日(木)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

★がけ地をよじ登るパワーショベル 見る人をハラハラさせる不思議な光景

★がけ地をよじ登るパワーショベル 見る人をハラハラさせる不思議な光景

  前回ブログの続き。先日(7日)輪島市で稲刈りが終わった白米千枚田と子どもたちの田んぼアートを見て、金沢に戻る途中の輪島市内の県道を走っていた。途中、元日の能登半島地震で山崩れが起きている場所が何ヵ所かある。その一つのがけ地の中腹で重機のようなものが動いているのが見えた=写真・上=。停車してよく見ると、パワーショベルが動いている。がけ地はかなりの急斜面地だ。時間は午後4時30分ごろだった。晴れてはいたものの、今月初めは台風10号の影響で能登でも雨もかなり降った。滑って落ち来ないか、パワーショベルの重みで土砂崩れが起きないだろうかと、眺めている方がハラハラ、ドキドキするような光景だった。

  そもそも、なんの目的でパワーショベルががけ地に上っているのか。車体をよく見ると、「ロッククライミングマシーン工法」(RCM工法)と書かれてあった=写真・下=。自宅に戻り、ネットで「ロッククライミングマシーン工法」を検索してみると、「高所機械施工協会」という団体の公式サイトで説明があった。以下。「急峻で複雑な地形が多く、地震など、常に災害の危険と隣り合わせであるわが国において、高所法面(のりめん)の工事は必要不可欠である。しかし、従来の主に人力に頼る工法では、1日の施工量も限られ、地盤の崩壊や落石といった危険があった。そんな高所法面の工事を、ロッククライミングマシーン(RCM)を使用して行うのが、RCMによる法面掘削工法」とある。

  さらにサイトを読み込むと、法面の上部に設けたアンカー(主に立木を使用)と、RCMを十分な強度を持つ2本のワイヤーで接続し、安全を確保してから工事を行う、とある。車体も高所の傾斜に対応し、作業体を常に水平に保つリフティング装置を搭載するなど、さまざまな工夫が施されている。

  それにしても何の目的でこの作業を行っているのか。以下はあくまでも素人の推測だ。地震で崩れた下には河川が通っており、さらに対岸には民家もある。ということは、今後がけ崩れが起きると「土砂ダム」ができたり、民家に被害が及ぶことも想定され、法面をなだらかにすることでその危険性を緩和する作業なのだろう、か。

  落下防止に最善を尽くしているのだろうが、それにしても斜面から滑り落ちるのではないか、何か間違いが起きれば大きな事故が発生するのではないか。見れば見るほどハラハラする不思議な光景ではある。

⇒10日(火)午前・金沢の天気    はれ

☆地震損壊の共同墓地や墓石を行政が支援 この際「一村一墓」の発想を

☆地震損壊の共同墓地や墓石を行政が支援 この際「一村一墓」の発想を

  旧盆には間に合わなかったが、秋の彼岸までにはなんとかならないかと思っている人たちは多いのではないか。元日の能登半島地震で倒壊した墓石のことだ。いまもブルーシートで包まれた墓石を各地でみかける。この光景を見かねたのか、被害が大きかった奥能登の穴水町では、倒壊した墓石の修復費用の半額を補助する制度を創設することにし、2024年度の補正予算案に8000万円を計上した(4日付・新聞メディア各社の報道)。

  補助金額は1世帯当たり最大で10万円で、宗教や宗派は問わない。ただ、修復に当たる石材業者の数が限られ、年度内に作業が終わらないことも考えられ、町では来年度も継続することを検討しているという。墓石の地震被害では、2018年の北海道地震で被災した自治体が見舞金を支給したケースはあったものの、墓石の復旧費用を自治体が住民に助成する制度は全国的にも珍しいようだ。

        一方、石川県は県予算で被災した集落が管理する共同墓地の復旧を支援するとし、9月補正予算に8800万円を計上した。補助はたとえば、共同墓地で共有の通路に倒れた墓石の移動や壊れたフェンス、共同墓地の敷地内の水道の普及費用など。ただ、集落の共同墓地のみが対象で、宗教法人や市町などの公共団体などが運営する墓地、個人管理の墓石などは対象にならない。  

  8月13日付のこのブログでも述べたが、能登には「一村一墓」という言葉がある。半島の尖端・珠洲市三崎町の大屋地区での言い伝えだ。江戸時代の「天保の飢饉」で人口が急減した。能登も例外ではなく、食い扶持(ぶち)を探して、大勢の若者が離村し人口が著しく減少した。大屋村のまとめ役が「この集落はもはやこれまで」と一村一墓、つまり集落の墓をすべて集め一つにした。そして、ムラの最後の一人が墓参りをすることで「村じまい」とした。その後、村は残った。江戸時代に造られた共同墓は今もあり、共同納骨堂とともに一村一墓は地域の絆(きずな)として今も続いている。(※写真は、珠洲市三崎町大屋地区の共同納骨堂。20年ほど前に建て替えられ、地域を出た人でも死後この納骨堂に入ることが多いという)

  いまは珍しくないが、共同墓の原点のような話ではある。この際、「令和の一村一墓」という構成を描いてはどうだろうか。「墓じまい」という言葉を最近よく聞くようになった。子孫が東京や大阪などで暮らし、墓だけが能登にある。菩提寺に依頼して「墓じまい」を行う。その墓じまいを知らずに親戚や縁者の人たちが新盆や旧盆、彼岸の墓参りにきて戸惑うことがある。この際、能登の集落で共同墓と共同納骨堂を広めてはどうか。そうした一村一墓に行政は補助金を出せないものだろうか。地域コミュニティの維持に必要と思うのだが。

⇒5日(木)午後・金沢の天気    はれ 

☆能登地震の復興さなか UFO伝説の街・羽咋市で激突、市長選へ

☆能登地震の復興さなか UFO伝説の街・羽咋市で激突、市長選へ

  能登半島の人口が急減している。石川県総務部統計情報室はきのう(2日)、8月1日時点での県内の人口推計を発表。それによると、元日の能登半島地震で被害が大きかった半島北部の6市町(七尾市、輪島市、珠洲市、志賀町、穴水町、能登町)の人口は1月1日時点から5266人減少し、11万4384人となった。減少数は前年同期比で2.5倍にも上る。出生者数が死者数を下回る「自然減」とともに、転出者が転入者を上回る「社会減」が加速している。(※数字は、3日付の地元新聞メディアの記事を引用)

  社会減が加速している背景には、「みなし仮設住宅」(賃貸型応急住宅)という制度があるからかもしれない。自治体が仮設住宅の代わりに、民間のアパートや一戸建て住宅を借り上げて、全半壊などで住宅に住めなくなった被災者に提供する。家賃は国と県が負担する。入居期間は2年以内。元日の震災で、県内では4300戸のみなし仮設住宅を用意された。金沢市は能登地方にアクセスしやすいということもあり、みなし仮設住宅の希望が多いとされる。金沢のみなし仮設住宅に入居し、職探しや子どもたちの転校手続きをする際に住民票を移すことになる。一時的な現象かもしれないが、能登からの転出者が増え、人口流出につながっている。一時的と言うのも、みなし仮設の人たちが能登で住宅を再建して2年以内に故郷に戻れば転入増になるのだが。

  話は変わる。能登で首長選が始まる。地元メディアによると、羽咋市長選に現職が再選を目指し立候補することを表明。同市長選にはすでに女性市議が出馬を表明しており、選挙戦は確実となった。選挙の争点は何だろうか。能登半島地震で同市では589棟が全半壊、一部損壊は3137棟の被害が出た。460棟で公費解体の申請があり、完了したのは69棟(8月19日時点)だ。現職は「未来につながる復興は私に課せられた責務」と訴え、女性市議は災害公営住宅の建設場所の選択制や住民提案型のまちづくりなど被災者に寄り添った市政運営を訴えている。まさに復興のさなか、今月29日告示、10月6日投開票となる。(※写真は、羽咋市役所の外観=8月17日撮影)

  知る人ぞ知る話だが、羽咋はUFO伝説で知られる。同市に伝わる昔話の中に「そうちぼん伝説」がある。そうちぼんとは仏具の一つで、楽器のシンバルのような形をしている。伝説はそうちぼんが同市の北部にある眉丈山(びじょうざん)の中腹を夜に怪火を発して飛んでいたという話だ。この眉丈山の辺りには、「ナベが空から降ってきて人をさらう」神隠し伝説もある。さらに、同市の正覚院という寺の『気多古縁起』という巻物にも、神力自在に飛ぶ物体が描かれているそうだ。UFOという歴史文化遺産を有する世界でも珍しい地域でもある。

⇒3日(火)夜・金沢の天気    はれ

★能登地震とジオパーク 連帯に向けた共同声明「大地の営みに学ぼう」

★能登地震とジオパーク 連帯に向けた共同声明「大地の営みに学ぼう」

  各地に「記録的雨量」をもたらした台風10号が北陸に向かってくる途中で熱帯低気圧になり、金沢ではきょう(2日)未明に強い雨が降っていた。日本気象協会では、「元台風10号」という言葉を用いて、いまも関東や近畿地方で大雨に警戒するよう呼び掛けている。が、民放各社はあれほど「台風10号」「台風10号」と繰り返し叫んでいたのに、低気圧になったとたんに静かになった。気象情報とすれば「格落ち」なのだろうか。

  話は変わる。自然公園「ジオパーク」の保全に取り組む関係自治体が開催していた日本ジオパーク全国大会(青森県むつ市)の最終日のきのう、能登半島地震の記憶継承を支援するとの共同声明を発表した。声明を出したのは糸魚川(新潟)、佐渡(新潟)、苗場山麓(新潟・長野)、立山黒部(富山)、白山手取川(石川)、恐竜渓谷ふくい勝山(福井)の6地域のジオパーク協議会。

  この共同声明を読むと、まさに地殻変動を重ねて出来たジオパークについて地形や地質の保存・活用に関する知見を有する自治体の「使命」というものを感じる。「地震で得た多くの教訓を風化させず、防災意識の向上に生かす」と強調。地震の発生要因や被害の実態を国内外へ発信することで連帯感をにじませている。また、能登地震で4㍍隆起した海岸が続いており、石川県ではジオパークに登録申請するために調整を行っている。被災地の復興と合わせてジオパーク登録へと動き出すチャンスではないだろうか。(※写真は、海底が隆起した輪島市門前町の漁港=3月4日撮影)

          「令和6年能登半島地震の記憶継承に関する共同声明」

「令和6年1月1日に発生した能登半島地震は、能登地方において地震および津波により甚大な被害をもたらしました。また、その影響は北陸地方一帯の周辺地域にも広く及び、各地で被害も発生しました。被災委された地域の皆様にお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになった方々に、心よりご冥福をお祈りいたします。甚大な被害が発生した地域では、復興への道のりはまだ遠く、未来に向けた歩みが一歩ずつ前に進むことを願ってやみません。

さて、今日までジオパーク活動を進めてきた私たちにとって、今回の地震は地球の動きと人々の暮らしの関わりについて改めて強く意識した瞬間でもありました。ユネスコ世界ジオパークである、糸魚川地域、白山手取川地域、日本ジオパークである佐渡地域、苗場山麓地域、立山黒部地域、ふくい勝山地域は、能登半島地震で得た多くの教訓を風化させることなく、さらなる防災意識の向上や災害に関する知識の定着に生かすことを使命であると感じています。そして、国内外のジオパークネットワークを活かし、防災・減災活動の普及啓発につなげていきます。

また、ジオパーク地域のみならず能登地域に関しても、大地の営みと人々の暮らしの普遍的な関係性とその価値について、大地の営みに直面した被災地域の人々が学ぶことへの支援を行っていきます」

⇒2日(火)夜・金沢の天気    あめ 

☆能登地震から244日 救援物資、人命救助、そして入浴支援・・自衛隊の任務終える

☆能登地震から244日 救援物資、人命救助、そして入浴支援・・自衛隊の任務終える

  きょう9月1日は「防災の日」。元日の能登半島地震から244日が経過した。この日の重なりは自衛隊の災害支援の日の重なりでもあった。物資輸送の自衛隊のヘリコプターが航空自衛隊小松基地を飛び立ち、金沢の上空を経由して能登へ頻繁に飛んでいた。救難物資を積んだ海上自衛隊の艦艇「せんだい」や「はやぶさ」が輪島市や珠洲市に港に入った。崩落した土砂の撤去作業や、孤立した集落への物資輸送や住民の移送などを担ったのは陸上自衛隊だった。このほかにも、給水活動や人命救助、診療、患者搬送など多様な支援に当たった。その自衛隊の支援活動がきのう8月31日で終止符が打たれた。

  自身が現地に赴いて実際に目にしたのは、珠洲市で行われていた陸上自衛隊による被災地での入浴支援だった。珠洲市では住家3700棟余りが全半壊し、さらに災害を免れた家々でも一時2320戸で断水状態となり、今でも断水が一部で続いている。給水が可能になっても、ガス供給がストップして給湯器が使えなかったりしたケースもあった。そして、現在も177人が避難所生活を余儀なくされている(8月27日時点)。そんな中で被災地の人々にとって、心の安らぎの一つが入浴だったろうと思う。同市では3ヵ所で陸上自衛隊が入浴支援を続けていた。

  その一つの宝立小中学校に設置されている仮設風呂に行った。校舎の裏手に「男湯」テントと「女湯」テントがあった=写真、6月24日撮影=。入浴は午後3時から入浴の受付が始まっていた。近くの仮設住宅に住んでいるという男性は「無料でとても助かっている」と話していた。仮設住宅にも小さな浴槽はあるものの、足の膝を痛めていて足を伸ばすことができないので、ここを利用しているとのことだった。  

  防衛省は地元の要望に基づき、同市での入浴支援を続けてきた。8月末まにで延べ49万4千人が仮設風呂を利用した。市内では2ヵ所に民間の入浴施設があり、このほど営業を再開したことなどを受けて、自衛隊の入浴支援の終了が決まったようだ。

  それにしても自衛隊がなぜここまで能登に配慮したのだろうか。石川県には3つの自衛隊の基地がある。石川県の南から加賀地区に航空自衛隊小松基地、金沢地区には陸上自衛隊金沢駐屯地、そして能登地区には半島の先端に航空自衛隊輪島分屯基地がある。輪島市の高洲山(567㍍)の山頂にあるレーダーサイトには航空警戒管制レーダーが配備され、「G空域」と呼ばれる日本海上空に侵入してくる航空機や弾道ミサイルを速く遠方でも発見するため24時間常時監視を行っている。日本海に突き出た能登半島は「守りの要(かなめ)」の地でもある。おそらく自衛隊員ならばこの認識は共有されている。「能登を守る」。地域住民のために丁寧な支援を続けることで自らの任務も自覚したのではないだろうか。

⇒1日(日)午前・金沢の天気    はれ

★震災の関連死131人に 現場対策を看護師のプロ目線で

★震災の関連死131人に 現場対策を看護師のプロ目線で

  台風10号の進路図をみると、予報円のサイズは後半になるほど大きくなっている。これを見ると、台風が北東に進むほど暴れまくるのかと思ってしまうのだが、そうではないようだ。日本気象協会「tenki.jp」の解説によると、台風の強さや大きさとは無関係で、位置の誤差が大きくなることを示しているという。ということは、予報円のサイズが大きい台風10号はどこに進むのかよく分からない、気象予報士泣かせの気まぐれな台風だ。気象庁によると、石川県ではあす31日から9月2日にかけて大雨となる恐れがあり、台風の進路や勢力、雨雲の発達によっては警報級の大雨になるとの予報だ。

  このブログで何度か取り上げている能登半島地震で亡くなった人たちの「直接死」と「関連死」について。関連死かどうか判断する石川県と被災自治体による6回目の合同審査会(医師・弁護士5人で構成)が今月26日に開かれ、輪島市や珠洲市など5市町の21人を新たに認定するよう答申することを決めた。答申を受けた各市町の首長が正式に認定する。県内の関連死はこれで131人となり、家屋の下敷きになるなどして亡くなった直接死229人と合せて、震災の犠牲者は360人となる。(※写真は、能登半島地震の被災地と金沢の病院を往復する救急車=1月5日撮影)。

  地元メディアの報道によると、今回の関連死の事例として、入所施設で被災し断水や停電で十分な介助が受けられなかったり、自宅で被災し避難先での生活でストレスがたまり体力が低下して死に至ったケースがあったという。関連死の場合は相当な肉体的、精神的な負担をともなった場合が多い。熊本地震の場合、関連死の原因として▽地震のショック、余震への恐怖による肉体的・精神的な負担▽避難所生活での肉体的・精神的な負担、が死亡の原因の69%を占めている(内閣府公式サイト「防災のページ」関連死について)。

  関連死を防ぐ対策はできないものだろうか。能登地震でこれまで問題となった、避難所における衛生的なトイレ利用や、避難者がストレスなく就寝できるスペースの確保など、高齢者が安心して暮らせる避難所の運営をプロの目線で配置できる人材が必要だろう。地元メディアの報道(30日付・北國新聞)によると、石川県は9月補正予算案に、県立看護大学が災害への対応力を備えた看護師の育成をする専門講座を開設する経費を盛り込んだ。

  看護の知識をベースに避難所運営や感染症予防や健康管理を関わるプロを養成する。関連死を防ぐ、まさに「災害看護師」だ。

⇒30日(金)午前・金沢の天気   はれ   

☆まもなく2学期 新たな「仮設校舎」で学ぶ能登の子どもたち

☆まもなく2学期 新たな「仮設校舎」で学ぶ能登の子どもたち

       「ノロノロ台風」なのか「グズグズ台風」なのか。当初の気象庁の予想では、台風10号が石川県に最接近するのは今月27日だったが、最新情報では遅れて31日から9月1日の見込みとなっている。さっさと日本列島から立ち退いてほしいものだ。

  それにしても、気が気でないのは能登半島地震の被災地の人たちではないだろうか。地盤沈下が起きた能登町宇出津港の周辺では、満潮を迎えると海面と道路の高さがほぼ同じになる状態が続いている=写真・上、7月9日撮影=。これに台風10号による高潮が発生したらどうなると地域の人たちは不安を抱えていることだろう。

  能登半島地震の復旧・復興の一つのステップとして、仮設住宅と仮設商店についてこのブログで取り上げた。被災地で必要な仮設住宅は6804戸で、うち6262戸は今月中に完成する予定。残り542戸は9月以降となる。仮設店舗は七尾市では今月、手始めに4店舗が営業を始めた。輪島市では9月をめどに3ヵ所で32店舗、珠洲市でも8店舗が開業に向け準備が進んでいる。もう一つの仮設が学校の校舎だ。

  石川県教委の調査(2月13日時点)によると、公立学校(小中高など)344校のうち、292校が地震で被害を受けた。全体の85%に相当する。地元メディア各社の報道によると、輪島市に隣接する穴水町の穴水小学校は柱が破損するなど、文科省による被災度区分判定で「半壊相当」の被害となった。このため、小学校の校庭に軽量鉄筋造り2階建ての仮設校舎の建設が進められていた。授業は直線距離で700㍍ほど離れた中学校に間借りするカタチで行われていた。

  仮設校舎は2学期に間に合わせるように今月下旬に完成した。先日(今月24日)奥能登を訪れた折に、仮設校舎に立ち寄った=写真・下=。外観はプレハブ校舎だが、入り口の戸が開いていたので入ると、玄関や教室はよく見る小学校の雰囲気だった。各クラスのほか、理科室や音楽室、保健室なども設けられていた。

  穴水小学校はきょうが登校日で、来月2日に始業式。仮設校舎とは言え、児童たちにとっては「母校」に戻った気分ではないだろうか。行政とすると、教育環境を整えると同時に新校舎の建設に向けてのスタートだろう。町では復旧・復興に向けてことし12月までに復興計画を、来年3月までに整備計画を策定する段取りだ。それまでに新校舎の立地場所などを決定することになる。

  能登地震の復旧・復興プロセスが穴水小学校のケースに凝縮されているようにも思える。

⇒29日(木)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

☆全半壊の家屋解体が正念場 見込より1万棟増え、台風の影響は

☆全半壊の家屋解体が正念場 見込より1万棟増え、台風の影響は

  前回ブログの続き。石川県庁はきのう(26日)能登半島地震で全半壊した家屋の解体を加速させる、「公費解体加速化プラン」を公表した。これまで県は解体棟数を2万2499棟と想定していたが、9911棟多い3万2410棟に見直しをしたからだ。本来ならば、来年2025年10月で解体作業を完了するとのスケジュールも同時に見直すことになるが、それはせずに「加速化」を推進することで、帳尻を合わせるようだ。

  公費解体加速化プランによると、その加速化の中心となるのが「自費解体」だ。これまでメインで進めてきたのは「公費解体」だったが、自費解体との両輪で進めることで全体の作業のピッチを上げる。自費解体は全半壊の家屋を所有者が事前に自治体に届け出を行い、独自で解体作業を行う。かかった経費(解体費、運搬費、処分費)は各市町の算定基準で後日、償還される。(※写真は、輪島市の家屋解体現場=今月24日撮影)

  今回の公費解体の見込棟数の大幅な見直しは、県では2月に空中撮影と現地調査で被害状況の確認を行い、解体見込み数を2万2499棟と算定していた。ところが、4月末から受け付けた申請件数はすでに2万6774棟(8月19日時点)と大幅に上回ったことから、県は被害状況の見直し行っていた。

  県が想定する解体棟数を9911棟上乗せしたことで、災害廃棄物の量をこれまで244万㌧と推計していたが、これも大幅に上回る見込み。このため、廃棄物を一時的に置く仮置き場は現在、12の市町で計16ヵ所あるが、暫定的に6ヵ所増設し、追加の設置も検討しているという。

  話は飛ぶが、非常に強い勢力の台風10号が29日に九州に上陸し、石川県内は30日午後から31日午前にかけて最も近づく見込みだ。このため、輪島市は30日に予定していた市内の小・中学校あわせて12校の2学期の始業式を9月2日に延期することを決めた(26日付・NHKニュース)。この台風が解体作業の現場などにどのような影響をもたらすのか。

⇒27日(火)午後・金沢の天気    はれ時々くもり