#能登創造的復興タスクフォース

★能登地震から半年の風景~➃ 復興タスクフォース動き出す

★能登地震から半年の風景~➃ 復興タスクフォース動き出す

        震災から半年がたつものの、能登の被災地では青いビニールシートで覆われた屋根があちらこちらで見える。屋根の一番上にある棟瓦の一部がはがれるなど屋根瓦に被害が出ているようだ。能登の知人から話を聞くと、屋根の修繕をする業者とコンタクトを取っても、2ヵ月や3ヵ月先の待ちとなるという。屋根瓦の被害など一部損壊は石川県全体で5万9700棟にもおよぶ(7月1日現在・石川県危機対策課まとめ)。きょうは特に暑い。金沢の最高気温は35度と猛暑日=写真・上、午後3時30分ごろ撮影=、輪島は33度の真夏日だった。屋根に上って修繕をする業者にとっては、過酷な一日だったのではないだろうか。

  岸田総理は発災からちょうど半年の今月1日、輪島市の能登空港で、復興支援にあたる政府の専門組織「能登創造的復興タスクフォース」の発足式を開いた。関係省庁から派遣された職員150人余りが能登に常駐し、復興作業を加速させる。メディア各社の報道によると、岸田総理は「復興の隘路(あいろ)となる課題を霞が関一体となって解決する」と述べ、政府が一丸となり復興を迅速化させること強調した。(※写真・下は、総理官邸公式サイトより)

  総理の被災地入りは2月24日以来の3度目で、6月21日の記者会見でタスクフォースの設置を表明していた。今後、被災者の生活再建、家屋の公費解体の迅速化、上下水道の宅内配管の修繕、漁港の復旧、液状化対策といった幅広い分野で、各省庁と県、市町の職員が関係機関と連携して対応していくことになる。

  ところで、総理が述べた「復興の隘路」とは何か。単純に解釈すれば、復興を進めるうえでの妨げを意味する。たとえば、予算措置だろう。漁港の護岸の復旧となると水産庁の漁港漁場整備事業予算からの支出となるが、漁港内で道路と一体化した護岸もある。この場合は国土交通省の港湾関係災害復旧事業の予算枠ではないだろうか。このような2つのケースが同じ漁港であった場合、水産庁と国交省のスタッフが現地で調整することでに護岸の復旧費用が迅速に賄うことができるのかもしれない。

  タスクフォース発足式の後、岸田総理は観光名所でもある七尾市の和倉温泉の現状を視察した。海に面した旅館が多くあり、護岸が崩れたため大半が今も休業を余儀なくされている。護岸の復旧工事を国が主導していく考えを示した総理は「日本有数の温泉地である和倉温泉の再生は、能登地域のなりわい再建の象徴だ。あらゆる手段を活用して進めたい」と語った(7月1日付・NHKニュースWeb版)。そして、この後、能登地域を対象に観光客の宿泊代の7割を補助する「復興応援割」を実施する意向を明らかにした。時期は示されなかったが、現地で観光客の受け入れが可能になり次第始まる見通し。

  岸田総理は「増税メガネ」などと揶揄されているが、被災地に向けたメッセージは的を得ていて、能登の人々の心をつかんでいる。総理がいつ辞するのか注目されているが、能登に常駐する150人の復興タスクフォースの面々には総理の志(こころざし)をしっかり継いでほしい。

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★「ニューヨーク」の復旧が未来志向の能登復興につながるか

★「ニューヨーク」の復旧が未来志向の能登復興につながるか

  能登半島の尖端をめぐる国道は「249号」、地元では数字をもじって「ニューヨーク」と呼ぶ人もいる。それほど地域に密着し、生活に欠かせない道路なのだ。そして観光ルートでもある。輪島市の白米千枚田を縦貫し、名所の窓岩がある曽々木海岸を通り、珠洲市の揚げ浜式塩田へとつながる。それが、元日の地震でニューヨークがズタズタになった。千枚田などがある北部海岸は「外浦」と称され、リアス式海岸で海と山々を通る249号は奥能登の大動脈でもあるが、土砂崩れなどで5ヵ所が寸断となった。

  そのうちの1ヵ所は千枚田の近くあった。山が崩れ、海岸にまで土砂が落ちた。国土交通省が陣頭指揮を執って、地震で隆起した海岸沿いに迂回路(幅5㍍の1車線、長さ430㍍)を新設し、先月5月2日に通行が可能になった。もう1ヵ所、珠洲市街と外浦を結ぶ249号の大谷トンネルが崩れたため、県道などを迂回路として確保した。

  249号の寸断箇所は残り3ヵ所。そのうちの一つ、勇壮な太鼓で知られる御陣乗太鼓の発祥の地の輪島市名舟町から曽々木海岸に行く途中の道の崩壊がすさまじい。ネット上で掲載されている国交省の「能登半島地震 国道249号 道路啓開5工区の状況」によると、道路そのものが大規模に崩落している=写真=。地元メディア各社の報道によると、国交省はこの現場で年内に1車線を確保するとしている。

  ほかの2ヵ所について、輪島市中心部から同市門前町をつなぐ中屋トンネルの崩落では、ことし9月末までに1車線を、年内に2車線を確保する。また、珠洲市の逢坂トンネル付近の土砂崩れについては年内に1車線を確保する。 

  報道によると、政府は28日、能登半島地震の復旧・復興に向け、2024年度予算の予備費から1396億円を支出することを閣議決定した。道路などのインフラ復旧に充てる。予備費からの支出は5回目で総額で5500億円に上る。また、来月7月1日には各省庁による「能登創造的復興タスクフォース」が発足する。150人規模のスタッフが省庁横断で能登復興に取り組む。未来志向のさまざまなアイデアの実現に期待したい。

⇒29日(土)夜・金沢の天気    くもり