☆番組の制作意図をさらけ出した、あの一言
テレビ朝日公式サイトの「社長定例会見」のページに今月4日の会見の内容が記載されている。その中で、篠塚社長は報道局の社員3名の懲戒処分を当日付で行ったと以下述べている。報道局情報番組センター所属で『羽鳥慎一モーニングショー』のコメンテーター、玉川徹を謹慎(出勤停止10日間)とした。玉川は先月28日、番組で事実に基づかない発言を行い、その結果、番組および会社の信用を傷つけ、損害を与えたことによりと処分した。番組担当のチーフプロデューサー2名を譴(けん)責とした。
記者からの「出勤停止の後は番組に復帰するのか。また、どのような再発防止策を講じていくのか」との質問に、篠塚社長は関係者のヒアリングなども含めて、会社の規定に従って処分を決定した。出勤停止が明けた段階では番組に復帰するという予定だ。番組も本人も含めて深く反省しているので、改めて指導を徹底して、と返答している。
舌鋒鋭い玉川コメンテーターだが、今回問題となった発言はネット上のユーチューブ動画に数々上がっている。安倍元総理の国葬(9月27日)で菅元総理が友人代表として弔辞を読み上げ、感動的だったとの絶賛の声がSNSで広がっていた。これについて、翌日の番組で玉川氏は、「演出側の人間として、テレビのディレクターをやってきましたから、それはそういうふうにつくりますよ。政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」などとコメントした。
素直に聞けば、菅氏の弔辞は電通が作成したとも受け取れ、「電通黒幕」のような物言いだ。それが一転して、玉
川氏は翌日の番組で「事実ではなかった」と謝罪した。社とすれば、この事実誤認を単に番組で詫びるだけでは済まなかった。テレビ業界と密接につながる電通側に対し、社として陳謝するという意味を込めて今回の処分になったのだろう。
以下は憶測だ。経営陣にはもう一つ、憤りがあったのではないかと。玉川氏の発言の「政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ」の部分だ。思い起こすのが、あの「椿発言」だ。1993年、テレビ朝日の取締報道局長だった椿貞良氏(2015年12月死去、享年79)が日本民間放送連盟の勉強会で、総選挙報道について「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないかと報道内部で話した」などと発言した。当時、非自民政権が樹立され、細川内閣が発足していた。この内輪の会合の椿氏の発言が産経新聞=写真・下、1993年10月13日付=で報じられ、テレビ報道の公平公正さが問われた。同氏は責任をとって辞任。その後、国会に証人喚問されるという前代未聞の展開となった。
玉川氏の発言は椿発言とは真逆の立場ながら、表に出すべきでない番組制作の意図というものをさらけ出してしまった。椿発言がトラウマとなっている経営陣にとってはなおさら気に障ったのではないか、とも憶測した。
⇒12日(水)午前・金沢の天気 くもり時々あめ
そしてきのう企業ガバナンスの本丸に激しい亀裂が入った。テレビ朝日は10日、亀山慶二・代表取締役社長が辞任を申し出て、取締役会において受理されたと発表した(2月10日付・テレビ朝日公式ホームページ「ニュースリリース」)。辞任に至る経緯が記されている。去年8月以降、スポーツ局の社員・スタッフによる不祥事が連続して発覚したことから、12 月に「役職員の業務監査・検証委員会」を設置した。スポーツ局のガバナンスを中心に検証した過程で、スポーツ局統括でもある亀山氏の業務執行上の不適切な行為が明らかになった。
けさテレビ朝日の番組「羽鳥慎一モーニングショー」を視聴した。コロナ禍の緊急事態宣言下で、テレビ朝日のオリンピック番組を担当したスポーツ局の社員や外部スタッフ10人が閉会式後から9日未明まで打ち上げ宴会を行い、そのうちの社員1人が店外に転落し、救急搬送された問題。リモートで出演中だったコメンテーターの玉川徹氏が「テレビ朝日の社員として謝罪を申し上げます」と頭を下げ、調査委員会をつくって不祥事の原因を徹底的に究明すべきだと訴えていた=写真・上=。ただ、個人的には違和感があった。