#終戦宣言

★弾道ミサイル発射 文大統領への揺さぶりメッセージか

★弾道ミサイル発射 文大統領への揺さぶりメッセージか

   また、北朝鮮の脅威だ。けさ北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表した(防衛省公式ホームページ)。NHKニュースWeb版(28日付)によると、政府高官は「発射は1発と見られるが、落下した場所も含めて現在確認を進めている」と述べた。また、政府関係者は、日本のEEZ(排他的経済水域)の内側に落下した可能性は低いという認識を示した。

   北朝鮮は今月15日にも日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射している。落下地点は、能登半島の舳倉島の北方約300㌔の海域と推測される(同・読売新聞Web版)。舳倉島から輪島市は約49㌔の距離。つまり、能登半島の約350㌔先のEEZ内だった。

   前回の発射でさらに脅威を感じさせることが報道された。北朝鮮の朝鮮中央テレビ(9月17日付)は、弾道ミサイルは鉄道を利用した移動式ミサイル発射台から発射されたもので、その動画を公開した=写真=。安倍政権時代に北朝鮮の弾道ミサイルの発射予測を検知して事前に破壊する「敵基地攻撃能力」の保持が議論されていた。15日の弾道ミサイルは敵基地攻撃の意味がなさなくなったことを示すものだった。けさ発射された弾道ミサイルは1発だが、移動式ミサイル発射台をさらに進化させたものだったのか、どうか。

   北朝鮮はきょう28日、各地の代表を集めて最高人民会議を開催すると予告している(9月28日付・NHKニュースWeb版)。韓国の文在寅大統領は22日の国連総会での演説で、「終戦宣言こそ朝鮮半島に『和解と協力』の新しい秩序を作る重要な出発点だ」と述べ、休戦状態となっている朝鮮戦争の終戦宣言を、南北とアメリカの3者か、中国を加えた4者で行うことを提案した(9月22日付・同)。これに対し、北朝鮮の金正恩党総書記の妹、金与正党副部長は24日、「終戦宣言は悪くない」として、「長期間続いている朝鮮半島の不安定な停戦状態を物理的に終わらせ、相手に対する敵対視を撤回する意味での終戦宣言は興味深い提案であり良い発想」とする談話を出した(9月24日付・聯合ニュースWeb版日本語)。

   以下、憶測の話になる。開催される最高人民会議で金党総書記が「文大統領からの終戦宣言の提案を喜んで受ける」と表明したら、今後朝鮮半島の情勢はどのように変化していくだろうか。休戦協定の当事者であるアメリカは「先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言」が原則だ。逆に、文大統領は非核化交渉の入口として、先に終戦宣言をすることを提示している。金党総書記の狙いは、弾道ミサイルを発射したぞ、それでも終戦宣言をするんだなと文大統領に揺さぶりをかけたのではないか。アメリカと韓国の亀裂も狙ってのことだ。弾道ミサイルのきょうの発射は、文大統領に対する強烈なメッセージではないのか。

⇒28日(火)午前・金沢の天気      くもり

☆「終戦宣言は悪くない」 北の思惑

☆「終戦宣言は悪くない」 北の思惑

   前回のブログの続き。韓国の聯合ニュースWeb版日本語(24日付)よると、北朝鮮の金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)の妹、金与正党副部長は24日、韓国の文在寅大統領が国連総会演説で朝鮮戦争の終戦宣言を提案したことについて、「終戦宣言は悪くない」として、「長期間続いている朝鮮半島の不安定な停戦状態を物理的に終わらせ、相手に対する敵対視を撤回する意味での終戦宣言は興味深い提案であり良い発想」とする談話を出した。朝鮮中央通信が伝えた。

   このニュースの見て、「アフガニスタン」の二の舞を想像した。2001年9月月11日の同時多発テロで、アメリカは「テロとの戦い(War on Terrorism)」を錦の御旗に掲げ、当時のブッシュ大統領はアフガニスタンで政権を握っていたタリバンがテロ事件の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンをかくまっていると非難。アメリカ主導の有志連合軍がアフガンへの空爆を始め、タリバン政権は崩壊する。しかし、ビン・ラディンを捕捉できなかった。テロとの戦いはオバマ大統領に引き継がれ、2011年5月、パキスタンのビン・ラディンの潜伏先を奇襲し殺害。オバマ氏は緊急声明で「Justice has been done」と発した。

   バイデン大統領は今年4月、同時多発テロ事件から20年の節目にあたる「9月11日」までにアフガンから完全撤退すると表明した。その後、8月に入り、アメリカ軍の撤退を見越して、タリバンが首都カブールに進攻、日本時間の16日に勝利宣言をした。一方、2014年から政権を担ってきたガニ大統領はまさに「敵前逃亡」で出国し、政権は事実上、崩壊した。

   朝鮮戦争の休戦協定が成立したのは1953年7月27日だ。「最終的な平和解決」、つまり平和協定を締結するまでは戦争行為と武力行使を停止すると規定した書面への書名だった。協定に署名したのは国連軍を代表したアメリカと、中国、北朝鮮だった。韓国側は当時の李承晩大統領があくまでも朝鮮半島の統一を主張して休戦に反対して署名に加わらなかった。しかし、署名しなかったことが後々平和的解決への足かせとなる。

   しかし、冒頭の金与正氏の談話はこれまでの北朝鮮の方針転換ではないかと自身は読んでいる。前回のブログでも述べたが、2018年と2019年に行われた延べ3回の米朝首脳会談で、アメリカ側は「先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言」との原則だった。一方、2018年4月に行われた初の南北首脳会談で、文大統領は非核化交渉の入口として、先に終戦宣言をすることを提示していた。北朝鮮とすれば、アメリカと直接交渉するより、韓国と共同で終戦宣言を出して「平和的統一」を世界にアピールする方が在韓米軍を撤退させる近道だと考えた。

   そうなると、アメリカ世論もアフガンのケースと同様にいつまで韓国に軍隊を駐在させる必要があるのかと撤退の声が高まる。北朝鮮の狙いはそこにあるのではないだろうか。

(※写真は、2018年5月26日に行われた韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長の2度目の首脳会談を伝える聯合ニュースWeb版)

⇒24日(金)夜・金沢の天気       はれ

★朝鮮戦争の終戦宣言は「核あり統一」の布石か

★朝鮮戦争の終戦宣言は「核あり統一」の布石か

   韓国の文在寅大統領の国連総会での演説には正直、「また同じことを繰り返すのか。くどい」という印象がぬぐえない。NHKニュースWeb版(9月22日付)によると、文大統領は「終戦宣言こそ朝鮮半島に『和解と協力』の新しい秩序を作る重要な出発点だ」と述べ、70年近く休戦状態が続いている朝鮮戦争の終戦宣言を、南北とアメリカの3者か、中国を加えた4者で行うことを改めて提案した。ことしは韓国と北朝鮮が国連に同時に加盟してからちょうど30年で、文大統領としては来年5月までの任期中に朝鮮半島の平和と安定に向けて成果を出そうと各国に支持を求めた形だ。

   文氏が国連総会で「終戦宣言」を持ち出すのは3度目だ。文氏は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と2018年4月に板門店で初の南北首脳会談で「完全な非核化」の約束を取り付けた=写真=。6月にはシンガポールで初の米朝首脳会談が開かれ、共同声明で板門店宣言を再確認し、北朝鮮は完全な非核化に向け取り組むと記された。会談後に当時のトランプ大統領は米韓合同軍事演習を凍結すると発言した。その年の9月の国連総会で文氏は「非核化のための果敢な措置が実行され、終戦宣言につながることを期待する」と述べた。

   その後に原則論が違いが浮き彫りになる。トランプ氏の原則は先に非核化、その後に経済制裁解除と終戦宣言だった。ところが、板門店で文氏は金氏に対して、非核化交渉の入口として、先に終戦宣言を提示していた。金氏もその提案に同意した。亀裂が生じたのは2019年2月、ハノイでの2回目の米朝首脳会談だった。会見でトランプ氏は、金氏が非核化の前に経済制裁の解除を求めたので、それは無理だと先に席を立ったと述べた。同じ年の6月には板門店で3回目が持たれたが、成果には至らなかった。

   そして、2020年6月、南北首脳会談の板門店宣言の合意で建設した南北連絡事務所を北朝鮮が爆破した。それでも、文氏は、その年の9月、オンラインでの国連総会演説で「終戦宣言こそ、朝鮮半島での非核化とともに恒久的な平和への道を開く扉になる」と繰り返した。そして3度目が冒頭の演説だった。文氏の演説の後、アメリカのバイデン大統領が就任後初めての国連演説に臨み、北朝鮮とイランの非核化を引き続き追求すると明らかにした。文氏が提案した終戦宣言には言及していない。

   北朝鮮は9月に入り、長距離巡航ミサイルや移動式弾道ミサイルなどの発射実験を相次いで行っている。韓国も、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の発射実験を文氏の立ち合いのもとで行っている。両国の軍事競争が不可解だ。「核なき統一」は日本もアメリカも国際社会も望むところだ。ところが、文氏の演説は統一が最優先であって、核は後回し、つまり「核ありの統一」のように聞こえる。油断ならない。

⇒23日(祝)午後・金沢の天気      はれ