★取材手法の転換期なのか
このブログでも書いてきた、東京高検の黒川・前検事長と産経新聞記者と朝日新聞社員(元記者)の賭けマージャン問題(今月21日付、22日付)。朝日新聞社はきょう、経営企画室に勤務していた管理職の社員50歳に対し停職1ヵ月の処分を記事として発表した。「定年延長や検察庁法改正案が国会などで問題となっており、渦中の人物と賭けマージャンをする行為は、報道の独立性や公正性に疑念を抱かせるものだった」(29日付・朝日新聞Web版)と処分理由を述べている。
記事では、同社執行役員編集担当兼ゼネラルマネジャーの話として、「読者の皆様から『権力との癒着ではないか』といった厳しいご批判を多くいただいています」「社員は黒川氏とは社会部の司法担当記者時代に取材先として知り合っており、記者活動の延長線上に起きたことでした。報道倫理が問われる重い問題と受け止めており、取材先との距離の取り方などについて整理し、改めてご報告いたします」と。この問題についての検証記事などを予定しているようだ。
一方の産経新聞社は「主張」で「新聞倫理綱領は、すべての新聞人に『自らを厳しく律し、品格を重んじなくてはならない』と求めている。本紙記者2人が、取材対象者を交えて、賭けマージャンをしていたことが社内調査で判明し、謝罪した。取材過程に不適切な行為があれば、社内規定にのっとり、厳正に処分する。取材のためと称する、不正や不当な手段は決して許されない。」(22日付・産経新聞Web版)と自覚を欠いた行動だったとの論調だが、記者の処分などの発表はホームページを見る限り見当たらない。
新聞やテレビの記者は「夜討ち朝駆け」でネタを取る。ネタを取るのにもスピード感が必要で、相手方(ライバル紙)に先んじればスクープとなり、同着ならばデスクにしかられることはない。先を越されれば、「抜かれた」と叱責をくらう。新人記者は警察取材(サツ回り)を通じて、そうトレーニングされて育つ。また、「虎穴(こけつ)に入らずんば、虎子(こじ)を得ず」と教え込まれる。権力の内部を知るには、権力の内部の人間と意思疎通できる関係性をつくらならなければならない、と。権力を監視する立場の記者があえて権力の懐(ふところ)に飛び込む。日本の報道独特のプロフェッショナル感覚ではある。
今回の一件で、こうした記者による警察・司法の関係者との接触が自主規制され、取材手法そのものが変化していく可能性もある。日本の報道、あるいはジャーナリズムの有り様そのものが変革期を迎えたのかもしれない。
⇒29日(金)夜・金沢の天気 はれ