#災害関連死

★能登の被災現場で両陛下が気遣いされた過酷な復旧現場と関連死のこと

★能登の被災現場で両陛下が気遣いされた過酷な復旧現場と関連死のこと

  きょう金沢は冷え込んだ。最高気温が4度、最低が1度なので真冬並みの寒さだった。午後に出向いた能登は最低が0度だった。冷え込みで懸念するのは仮設住宅や避難所で暮らしている人たちのことだ。被災地では疲労に寒さが加わり低体温症などで体調を崩す人が出ているのではないだろうか。

  前回ブログで天皇・皇后両陛下が元日の能登半島地震、そして9月の記録的な大雨の被災者を見舞われるため、今月17日に輪島市を訪れたと述べた。その様子を新聞メディア各社(18、19日付)が詳細に報じている=写真=。

  両陛下は9月の豪雨について、輪島市と珠洲市、能登町の3人の首長から説明を受けた。被災者がこれまで見たこともないような大粒の雨だったこと、震災と豪雨の二重被災に心が折れそうになっている人も多いこと、そうした中でも生活の立て直しに懸命に取り組んでいる人たちもいるとの内容だった。首長の説明に対し、両陛下は「建物を解体する作業員や屋根瓦の職人、あるいはボランティアの確保は難しくないでしょうか」と案じ、災害関連死が多いことについては「災害関連死された方はどのような状況でお亡くなりになったんでしょうか」と尋ねるなど、個々の状況について心配されていたという。

  両陛下が3月に輪島市を訪問した際は、移動はヘリコプターだったが、今回はマイクロバスによる移動だった。そのことで両陛下は、バスからより近い距離で災害現場を目の当たりにされた。このため、屋根に上り危険を伴う復旧作業に当たる人々を案じられていた。 また、両陛下は被災した人々と話す中、涙を流す人が多かったことから、二重被災を受けて心が深く傷つけられていると感じられたようだ(19日付・メディア各社の報道)。

  両陛下が気遣っておられた災害関連死の新たな情報が入ってきた。地元テレビメディアの報道(19日付)によると、きょう災害関連死を判断する行政の審査会が開かれ、新たに15人を認定すると決めた。関連死の認定は新潟と富山両県の6人を合せ276人となり、直接死228人を合せ犠牲者は504人となる。

⇒19日(木)夜・金沢の天気    あめ

☆長びく避難所生活 懸念されるエコノミークラス症候群

☆長びく避難所生活 懸念されるエコノミークラス症候群

  能登半島地震の被災地をこの目で確かめようと思い、元日からこれまで17回、能登をめぐっている。そのとき、道路でよくすれちがったのは救急車だった=写真、1月5日撮影=。とくに、1月と2月はよく目にした。きょうのメディア各社の報道によると、元日から4月末までの4ヵ月間で、能登各地の避難所から病院などに救急搬送された人は771人に上ること分かった。能登の9市町の地元消防署への取材を基に共同通信が集計した(5月16日付・北陸中日新聞)。

  記事では4月24日に輪島市内の避難所から救急搬送された74歳の男性の事例を取り上げている。就寝中に呼吸の苦しさを訴えて病院に緊急搬送されたが、数時間後に病院で死亡した。死因は「塞栓症の疑い」とされた。関係者は「エコノミークラス症候群の疑いがある」と指摘しているという。長時間同じ姿勢を取ることで血栓ができて死亡するケースだ。

  前回ブログでも述べた「災害関連死」が今後、急増するのではないかと懸念している。地震による建物の倒壊や津波などが原因で亡くなる「直接死」とは別に、避難生活の疲労や環境変化のストレスなどから体調が悪化して亡くなるケースだ。先のエコノミークラス症候群のほか、自殺も含まれる。被災した市町の学校の体育館や公民館、集会所などの避難所でいまも1967人が暮らしている。長期化する避難生活で体調を悪化させる人も今後増えるのではないだろうか。

  避難所や仮設住宅についての不満やストレスとはどういうものなのか。少々古いデータになるが、2007年3月25日の能登半島地震で行った金沢大学能登半島地震学術調査部会の報告の中に被害がもっとも大きかった輪島市門前町で住民から聞いたアンケートが調査がある。同地区は当時、65歳以上が47%を占める高齢化が進む地区で、ほとんどが持ち家だった。

 <避難所について>
・畳一畳分のスペースは狭い。
・狭くて、よく眠れなかった。人にぶつかる。踏まれる。
・配られた毛布はかぶるに重く、暖かくなかった。
 <仮設住宅での生活について>
・エアコンが嫌いだから暑くて困る。
・浴槽のまたぎの部分の高さが高く、高齢者には不便。風呂の湯船が深すぎる。風呂の床が滑りやすい。お湯と水の調整が難しい。タクシーで風呂に入りに行く人もいる。
・内側から鍵をかけてしまうと外から誰も入れなくなってしまう。一人暮らしの人など心配。
・買わなくちゃいけないから野菜不足。

  避難所や仮設住宅ならではの事情でいろいろとストレスがたまる。能登の人たちは一軒家で暮らしてきたのでなおさらだ。

⇒16日(木)夜・金沢の天気     くもり

★災害関連死めぐる戸惑い 認定には慎重さとスピード感を

★災害関連死めぐる戸惑い 認定には慎重さとスピード感を

  能登半島地震でいわゆる「災害関連死」について発表される行政のデータやメディアの報道に、少し戸惑いを感じている石川県民が少なからずいるのではないだろうか。自身もその一人だ。メディア各社の報道によると、きのう14日、地震後に亡くなった人を災害関連死とするかどうかを判断する県と3市町(輪島市、珠洲市、能登町)の合同審査会が開かれ、3市町に遺族から申請のあった35人のうち30人を災害関連死として認定した。審査会は非公開で行われ、委員は弁護士3人、医師2人の5人。今後は月1回のペースで開催する。

  戸惑いがいくつかある。審査が行われたのは3市町の35人(珠洲19人、輪島9人、能登7人)だった。認定されたのは30人(珠洲14人、輪島9人、能登7人)。珠洲の5人ついては、委員が追加資料の提出を求めたため次回以降に再審査となる。戸惑いというのも、今回審査された人数が少ないのではと感じるからだ。遺族からの申請数は輪島市だけでも53人に上っている。ところが、今回は9人しか審査されていない。このペースだと輪島市の申請数の審査を終えるのにあと5ヵ月はかかることになる。もちろん、数をこなす単純な作業ではなく、ある意味で「書面上の検死」なので時間がかかるのは分かる。

  ただ今後、申請数がさらに増える可能性も十分にあるだろう。なので、審査会の委員を増やす、開催回数を月1回より増やすことが必要なのでは、と素人ながらに考えたりする。

  さらに戸惑ったこと。県危機対策課がこれまで発表してきた地震の人的被害は「死者245人(うち災害関連死15人)」と公表してきた。なので、この「15人」は確定の人数と認識していた。ところが、市町が独自に判断した人数を県に報告していたもので、確定ではなくあくまでも「関連死疑い」の数字だった。それを確定数のように公表していたことになる。県では遺族からの申請があれば15人についても審査を行うとしている。

  災害関連死の認定基準については全国統一のものがなく、石川県では初めての対応であり、2016年4月の熊本地震で熊本県が独自に定めた認定基準などを参考にしたようだ。ちなみに、熊本地震では犠牲者273人のうち、80%以上の218人が災害関連死だった。その認定については去年12月現在で遺族から申請があった722人が審査されて、認定は218人、認定率は30%となっている(5月15日付・北陸中日新聞)。

  関連死について政府は「災害による負傷の悪化、または避難生活などにおける身体的負担による疾病」での死亡と定義している。関連死の認定数について多い少ないを問うているのではない。遺族の気持ちを察してスピード感を持って行政は対応してほしい。もちろん審査会での審議は慎重に。

⇒15日(水)夜・金沢の天気   くもり

☆被災地も五月晴れ 木造長屋の仮設住宅に入居始まる

☆被災地も五月晴れ 木造長屋の仮設住宅に入居始まる

  きょうは石川県全域で晴れの天気。能登の被災地でも晴天の下で、木造家屋の仮設住宅への入居が始まったようだ。県による仮設住宅の建設はこれまで5800戸が着工されていて、そのうち1385戸が木造長屋型。スギや能登ヒバなどの県産の木材を使い周辺の景観に配慮した木造長屋型の仮設住宅だ。

  輪島市里町で完成した木造長屋の仮設住宅は周囲の里山とマッチしていて景観的にも合っている=写真、5月3日撮影=。27棟・100戸が建てられ、コンパクトな1DKや車椅子の利用を考慮した部屋、さらに和室のあるタイプもあり、入居者に配慮した仮設住宅だ。配慮はこれだではない。従来のプレハブ型は取り壊すことを前提に原則2年で退去しなければならないのに対し、木造長屋型は2年が経過した後は輪島市営住宅に転用され、被災者が長く住み続けることができるようだ。

  1月22日以降滞っていた災害関連死の認定審査会がきょう再開された。審査会はそれぞれの自治体ごとに行われていたが、医師や弁護士の手配などに支障をきたしたことから、自治体が合同で審査会を設けることで再開した。メディア各社の報道によると、きょうの合同審査は輪島市・珠洲市・能登町に寄せられた遺族からの申請が対象。医師や弁護師ら委員5人による審査が行われ、1週間をめどに認定が進む見込みという。

  災害関連死に認定されると、遺族には最大500万円の弔慰金が支給される。災害関連死の申請は今月9日時点で輪島市で53人、能登町で16人、七尾市で14人など少なくとも100件に上っている。県では震災による死者245人のうち15人を関連死として発表している。審査が進めば大幅に増加することになる。

⇒14日(火)午後・金沢の天気     はれ

☆能登半島地震 氷点下の被災地で「低体温症」が気がかり

☆能登半島地震 氷点下の被災地で「低体温症」が気がかり

   能登半島地震が発生してからきょうで1週間、朝は冷え込んでいる。天気予報によると、金沢の最高気温は4度、最低気温は1度、能登はさらに冷え込みが強く、輪島は最高気温は3度、最低気温はマイナス1度だ。雪も積もっている。金沢の自宅周辺は5㌢ほどだが、能登の珠洲市で12㌢、七尾市で11㌢、輪島市で9㌢などとなっている(8日午前5時現在・日本気象協会「tenki.jp」より)。今後さらに積雪が予想されるという。(※写真は、8日午前7時35分ごろの金沢市内の積雪の様子)

   積雪は去年12月22日、気象庁が北陸に「顕著な大雪」を呼びかけて以来だ。ここで気になるのは、雪の重みだ。北陸の雪はパウダースノーではなく、湿気を含んで重く、庭木の枝などがよく折れる。北陸の家々で雪吊りを施すのはこのためだ。被災地でこの重い雪がさらに積もると、どのような影響を及ぼすのか。屋根瓦が崩れた家に雪が積もると重圧となり、倒壊するのではないかと思ったりする。

   これまで確認された死者は128人に上る(7日午後2時現在)。そして石川県のまとめによると、県内15市町の約400の避難所に2万8000人が身を寄せているという。これは行政が把握している避難者の数で、孤立した集落などではビニールハウスや民家、神社・寺院などに自主的に退避している人も相当いると見込まれる。また、被害が大きい輪島、珠洲、能登、穴水の2市2町で2300人が孤立状態で、連絡の取れない安否不明者が195人に上っている。

   そのような中で断水と停電がいまも続き、さらに気温がマイナスとなった。そこで懸念するのが、いわゆる「災害関連死」だ。ネット上で公開されている内閣府政策統括官リポート「災害関連死について」によると、2016年4月の熊本地震の犠牲者270人のうち、生き埋めになるなどして死亡した人は50人、災害と関連して亡くなったのは220人だった。関連死の事例として、「83歳女性が慣れない避難所生活から肺炎状態となり入院先の病院で死亡」「78歳男性が地震後の疲労等による心不全で死亡」「避難中の車内で74歳女性が疲労による心疾患で死亡」「32歳男性が地震による疲労が原因と思われる交通事故による死亡」「43歳女性がエコノミー症候群の疑いで死亡」など。

   被災地では疲労に寒さが加わり低体温症などで体調を崩す人が続出するのではないかと心配になる。

⇒8日(月・祝)午前・金沢の天気    くもり