#河野太郎

☆マイナンバーカードの利用価値とは何なのか

☆マイナンバーカードの利用価値とは何なのか

   「突破力の政治家」と称される河野太郎氏なのだが、いつの間にか「旗振り役」を演じているようだ。改正マイナンバー法が今月2日の参院本会議で可決成立した。紙の健康保険証を2024年秋に廃止して、マイナンバーカードに一本化するほか、給付金などを個人に迅速に配布するため、口座の登録を広げる措置なども盛り込んだ。法案の推進役となった河野氏には、いろいろな機能をマイナンバーカードに付加することで利用価値を高め、普及を徹底させる狙いがあるようだ。

   さらに、カード取得者らに最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント」の申し込み期限をことし9月末に延長するなど、あの手この手だ。こうした取り組みの甲斐あって、ことし4月末現在の人口に対する交付率は69.8%(総務省公式サイト「マイナンバーカード交付状況について」より)となっている。2021年4月1日時点の交付率は28.2%、2022年4月1日時点の交付率は43.3%だったので、ことしの伸び率は高まっている。さらに、これまでのマイナンバーカードの申請の受付率だと77.1%(6月4日現在・同)となっていて、今年度内の交付率はかなり高まりそうだ。

   この背景には、岸田総理がマイナンバーカード普及を「デジタル社会の基盤」と位置づけ、去年8月10日に発足した第2改造内閣で河野氏を旗振り役のデジタル大臣に任命したことが功を奏したのかもしれない。ただ、ここにきて取り組みの「ずさんさ」が露呈している。メディア各社のニュースによると、河野氏は7日の記者会見で、マイナンバーカードにひもづけされた公金受取口座で、本人以外の家族名義の口座が13万件あったと明らかにした。会見では詳しく述べられていなかったが、子どもの受取口座として親が自分の口座を登録したケースが多かったのではないだろうか。小さな子を持つ親なら考えそうなことだ。

   問題は、河野氏も会見で述べていたように、デジタル庁が2月にこの「家族口座」の問題を把握していながら、問題を明らかにせず対策もとらなかった、という点だろう。十分予想できたことなので、事前に周知を徹底して本人名義以外は登録できない仕組みにすべきだったのではないか。

   そもそも論ではあるが、マイナンバーカードは市区町村長が交付するもので、取得は義務ではなく任意である。なので、普及のポイントはマイナンバーカードに国民が便利性や利用価値を感じるかどうか、だ。加えて、カードを紛失した場合の簡単便利な対応マニュアルを周知させることだろう。デジタル庁は2026年中にも偽造防止のため、暗号技術などを採用する新たなマイナンバーカードの導入を目指す方針を示している。この際、河野大臣に提案したいのは、指紋あるいは顔認証だけでも受付がOKな仕組みにしてはどうだろうか。もちろん、顔認証で個人情報が盗み取られないようなセキュリティ-対策は必要だ。

⇒9日(金)夜・金沢の天気     はれ

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

   二十四節季でいう寒露のころ。秋も深まり、床の間の掛け物を替えた。「壺中日月長」(こちゅうじつげつながし)。禅語で、壺の中という別世界で、時間に追われることなく悠々と人生を送る、悟りの境地と解釈している。掛け軸を眺めていて、ふと、ニュースの中で壺中の境地にいる人々の姿が浮かんできた。

   河野太郎デジタル大臣は記者会見(13日)で、2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表した。また、24年度末としているマイナンバーカードと運転免許証の一体化時期の前倒しを検討することも明らかにした(13日付・毎日新聞Web版)。ことし8月10日の改造内閣でデジタル大臣に就任、河野氏らしい「突破力」を見せたようだ。

   河野氏の突破力でイメージするのは、防衛大臣だった2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回するとの唐突な表明だ。ミサイルのブースターと呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切った。防衛大臣らしからぬ発言のように思えたが、基地周辺住民の将来不安を想定しての「突破発言」だった。他の政治家とは別の価値観を有する「壺中の政治家」ではある。

   この人の場合は、「ドツボにはまる」という表現がふさわしいのかもしれない。金正恩総書記。北朝鮮は14日午前1時47分、平壌近郊から、1発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。最高高度は約50㌔で、650㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下した。弾道ミサイルは変則軌道で飛翔した可能性がある(防衛省公式サイト)。弾道ミサイルの発射はことしに入って24回だ。9月25日以降は頻発していて8回(13発)になる。北朝鮮の労働新聞Web版(11日付)は、これまでの弾道ミサイルの発射について、「金総書記は人民軍の戦術核作戦部隊の軍事訓練を指揮した」との見出しで特集を組み、戦術核の搭載を想定したミサイルの発射であることを示唆した。

   2017年9月の国連総会で、当時のアメリカ大統領のトランプ氏が「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説したが、まさにドツボにはまり込んでいる。

⇒15日(土)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

☆「Shame on you」渦巻くロシア非難

☆「Shame on you」渦巻くロシア非難

   きょうお昼に金沢市内の回転寿し店に入った。杖を突いて店に入って来たシニアの男性と付き添いの女性2人が横の席に座った。話し声が聞こえた。「ウクライナに攻め込んで好き放題に街を壊しとる。プーチンは許せん。この杖で叩いてやりたい」と。女性は「あまり感情的になると、また咳き込むから」となだめている。もう一人の女性も「ロシアに好き勝手させて、アメリカも国連も止められんのやね」と憤っていた。ロシアのウクライナへの侵攻への市民の怒りにも似た感情に気づかされた。

   メディアで連日報道されているこの侵攻は激しさを増している。ロシア軍の車列は首都キエフまで27㌔に迫り、きのう1日は同市内にあるテレビ塔などを攻撃したと報じている。テレビ塔の狙い撃ちは市民への情報通信を遮断することが目的だったのだろう。逃げ惑う市民の姿も映し出されていて、侵攻以降でウクライナから隣国ポーランドに避難した人々は41万人にものぼるという(2日付・NHKニュースWeb版)。イギリスのジョンソン首相は「ロシアは1945年以来、ヨーロッパで最大の戦争を計画している」と語った(2月20日付・BBCニュースWeb版日本語)。まさにその様相を呈している。

   キエフにある日本の大使館も一時閉鎖に追い込まれている。朝日新聞Web版(2日付)によると、外務省は大使館をウクライナ西部の都市リビウに移転すると発表し、「ロシアによる侵略が拡大し、首都キエフの情勢が極度かつ急速に緊迫化した」と説明した。在留邦人は先月27日時点で120人、その多くがキエフに在住している、

   ロシアがむき出しの軍事行動の理由にあげているのが、ウクライナ政府によるロシア系住民に対する「ジェノサイド(集団殺害)」から守るために国連憲章第51条が定める自衛権を行使するとの主張だ。駐日ロシア大使館のTwitterを読むと、あからさまな表現で日本とウクライナを非難している。27日に岸田総理がロシアへの追加制裁としてプーチン大統領の資産凍結について発表した。すると、28日の駐日ロシア大使館のTwitterでは、ウクライナ政府を「ナチス」にたとえ、支援している日本政府を非難している。「日本は100年も経たぬ間に二度もナチス政権を支持する挙に出ました。かつてはヒトラー政権を、そして今回はウクライナ政権を支持したのです」と=写真・上=。

   このTwitterには政治家も参戦している。ロシア大使館が同じく28日に「ソーシャルメディア上でロシアに対して情報戦が繰り広げられています。・・・ウクライナの民族主義者の犯罪を記録した映像や動画が、ロシアによるものであるかのように紹介されているのです」と。これに対し、河野太郎氏(元外務大臣、自民党広報本部長)は「Shame on you」(恥を知れ)と真っ向から非難のリツイートを行っている=写真・下=。庶民も政治家もロシアへの激しい怒りだ。

⇒2日(水)夜・金沢の天気  くもり

★弾道ミサイルに対応できる自民新総裁は誰なのか

★弾道ミサイルに対応できる自民新総裁は誰なのか

   次の日本の総理を決める予備選でもある自民党総裁選(今月29日)。メディア各社が世論調査を実施している。共同通信社は17、18の両日、電話調査に投票資格があると答えた党員・党友に対し、新総裁にふさわしい人を尋ねたところ、河野行政改革担当大臣が48.6%で最多、岸田前政調会長が18.5%、高市前総務大臣が15.7%、野田幹事長代行は3.3%だった(9月18日付・共同通信Web版)。

   読売新聞は自民党所属国会議員の支持動向調査を今月6日から16日にかけて実施し、衆参両院の議長を除く同党国会議員383人のうち、95%にあたる363人の意向を確認した。岸田氏と河野氏がそれぞれ約2割、高市氏は約15%の支持、16日に出馬を表明した野田氏は約10人の支持をそれぞれ集めている(9月17日付・読売新聞Web版)。毎日新聞が実施した全国世論調査(18日)では河野氏43%、高市氏15%、岸田氏13%、野田氏6%だった(9月18日付・毎日新聞Web版)。

   河野氏は党所属議員の支持は岸田氏と並んで2割と高くはないが、党員・党友、そして全国世論調査ではそれぞれ40%台の高い支持を集めている。自民党総裁選が衆院任期満了の10月21日以降にも実施される総選挙の「党の顔」を決める選挙であるとすれば、河野氏で決まりということか。

   きのう18日午後2時から行われた自民党総裁選の立候補者4人による公開討論会(日本記者クラブ主催)をNHKの生番組で視聴していた=写真・上=。前半の候補者同士のディスカッションでは河野氏に質問が集中していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つではなかったか。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。

   討論会で注目していたのは、北朝鮮が日本海めがけて発射している弾道ミサイルについての議論だった。直近で今月15日、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾している。主催者側からの「北朝鮮問題にどう対応するのか」の問いに、岸田氏は「ミサイル防衛体制は十分なのか考える必要がある。敵基地攻撃能力についても選択肢としてある」、河野氏は「情報収集能力、そして北朝鮮に対する抑止力を高めてメッセージとして伝えることが必要だ」と答えた。

   正直言って、河野氏の答えには少々失望した。2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回したのは当時防衛大臣だった河野氏だ。その後、当時の安倍総理はミサイル発射基地を自衛権に基づいて無力化する「敵基地攻撃能力」の保有の検討を表明したが、9月に就任した菅総理は議論を棚上げしていた。
   
   なぜ、河野氏は敵基地攻撃能力の保有について触れなかったのか。それは、今回の北の弾道ミサイルは鉄道を利用して発射された=写真・下、9月17日付・朝鮮中央テレビ動画=と報じられているように、新たに移動式ミサイル発射台が開発され、その位置を検知して破壊することが難しくなっている。つまり、敵基地攻撃能力そのものが意味をなさなくなっている。

            河野氏は上記のことについては精通しているはずだ。ではどうすべきなのかを元防衛大臣の見識から具体的な防衛ビジョンについて語ってほしかった。また、北の弾道ミサイルに一家言を持っている高市氏の見解も聞きたかったが、この質問に関しては元外務大臣の経験がある岸田、河野の両氏にのみ質問がなされたようだ。もどかしさが残った討論会だった。

⇒19日(日)夜・金沢の天気       はれ

★河野太郎氏と「ブースター」の因縁

★河野太郎氏と「ブースター」の因縁

   「ブースター(booster)」という言葉をこのブログで何度か使っている。英語のboostは「押し上げる」や「強化する」といった意味合いで幅広く使う。日本でのブースターはアンテナや機械の増幅装置を指す言葉として使っている。このブログでキーワードになったこともある。2020年6月26日付「☆北の弾道ミサイル、能登沖200㌔落下から3年」の記述は以下。

「今月15日に河野防衛大臣が地上配備型迎撃ミサイルシステム『イージス・アショア』の配備計画を撤回すると表明してから10日余りが経った。その理由は最初よく理解できなかったが、ミサイルの『ブースター』と呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切ったと報道各社が報じている。」

   北朝鮮のミサイルが日本海めがけて発射されていて、山口県の自衛隊演習場にイージス・アショアの配備計画が進んでいた。しかし、防衛大臣だった河野太郎氏はミサイルのブースターが演習場外に落ちる可能性があり、周辺住民に被害が出る可能性もあり、導入を断念せざるをえなかった。その河野氏は菅内閣では行政改革担当大臣、ならびに「新型コロナウイルス感染症ワクチン接種推進担当大臣」に任命されている。そして、河野氏は再び「ブースター」を口にすることになる。

   すでにイスラエルなど始まっている新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種。アメリカではバイデン大統領が2回目の接種を終えてから8ヵ月経った人に対し、9月20日から3回目の接種を行う方針を明らかにした(8月19日付・NHKニュースWeb版)。アメリカでは3回目接種を「booster shot」と称している。追加接種の意味だ。

   そして、河野大臣も19日開かれた参議院内閣委員会で「ブースター接種が必要かどうかは厚生労働省の判断を待たなければならないが」と述べて、新型コロナの治療に当たる医療従事者に必要となれば対応できるよう準備している答弁した(同・TBSニュースWeb版)。ブースター接種を日本でも始めることを示唆している。

 
   ただ、追加接種には異論が起きている。WHOのテドロス事務局長は今月18日の記者会見でブースター接種を批判している。「The divide between the haves and have nots will only grow larger if manufacturers and leaders prioritise booster shots over supply to low- and middle-income countries.」。ワクチン接種を国民の75%に施した国は10ヵ国で、低所得国はかろうじて2%の接種に過ぎない。メーカーとリーダーが低所得国と中所得国への供給よりもブースターショットを優先すれば、持っている人と持っていない人の間の格差はさらに大きくなる、と。

   テドロス氏は、ブースター接種に有効性について、これまで得られているデータでは科学的な根拠はないとの認識を示している。また、相互接続された世界に住んでいる人類にとって、「ワクチンナショナリズム」にとらわれることは無意味だとも述べている。WHOは途上国でのワクチン接種を進めるため、9月末までは追加接種を行わないよう各国に呼びかけている。

   河野氏は「3回目の接種が必要かどうかは厚生労働省の判断を待つ」としながらも、国内で2回接種は全体の39%とまだ半数に満たない(8月19日公表・総理官邸公式ホームページ)。さらに、「多様性と調和」をテーマに東京オリンピック・パラリンピックを開催している日本が「ワクチンナショナリズム」と名指しされるのも不本意だろう。では、どの段階で、ブースター接種を打ち出せばよいのか。場面は異なるが、2度「ブースター」という言葉を発することになった河野氏の心境を聞いてみたいものだ。(※写真はワクチン接種を受ける河野太郎氏=同氏ツイッターより) 

⇒20日(金)午前・金沢の天気      はれ後くもり

☆記者会見は「戦いの場」

☆記者会見は「戦いの場」

   きのうのブログの続き。24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見=写真、外務省公式ホームページ=で、茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と、堂々と会見で述べていた。視聴した多くの視聴者が「日本はなめられている」との印象を受けた。もう一つ、茂木大臣が黙認していたことも納得できなかった。

   王氏の発言は、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと、中国としてはやむを得ず対応をしていると、まるで日本側に責任を転嫁する内容だった。これに対し、茂木氏が共同記者会見の場にいたにもかかわらず、王氏の発言に何らの反論もしなければ、批判もしなかった。つまり、王氏の一方的な主張だけをアピールする場となった。この映像を海外の視聴者が見れば、日本は中国の主張を認めたと理解だろう。中国の視聴者が見れば、「大勝利」と叫ぶだろう。日本側のだらしなさが露呈したカタチだ。これほど後味の悪い記者会見は見たことががない。

    おそらく茂木氏は記者会見は「戦いの場」との認識がない。「成果報告の場」くらいの感覚だったのではないか。中国では記者会見という場の設定はないが、カメラは人民に向けたメッセージの手段という認識だろう。なので、メッセージ性の高い、抑揚を効かせた言葉を発することに慣れている。この違いがまともに表れた会見の場だった。

   外交で「戦いの場」となった事例はある。河野太郎氏が外務大臣だった2019年7月、いわゆる「徴用」をめぐる問題で、日本が求めてきた仲裁委員会の開催に韓国政府が応じなかったことから、河野氏が韓国の駐日大使を呼び抗議した。これに対し、大使が「徴用」の問題の解決に向け、韓国政府が提案した案を説明しようとすると、河野氏は発言をさえぎり、「その提案は以前、国際法違反の状況を是正するものではないと伝えている。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」と強い口調で述べた(2019年7月19日付・NHKニュースWeb版)。この場はメディアの取材が入っていたので、相互がそれを意識した発言だった。ここで河野氏が反論しなければ、韓国大使の勝利だった。

⇒26日(木)夜・金沢の天気     くもり  

☆これは、解散・総選挙への「地ならし」か

☆これは、解散・総選挙への「地ならし」か

   「物議をかもす」という言葉がある。このブログでも時折使う。世の人々の議論を引き起こす、という意味で使っている。このごろの「物議をかもす」ニュースをいくつか。

   麻生副総理兼財務大臣がきょう13日、自民党総裁選を巡り、次期総理の下ですぐに衆院解散・総選挙が行われる可能性があるとの認識を示したと報じられた(9月13日付・共同通信Web版)。新潟県での講演で、次期政権は国民の審判を経ていないと批判されるだろうと指摘した。自身も2008年9月の総理就任後、時を置かずに解散したかったが、リーマン・ショックのためにできなかったと説明し、「タイミングは極めて大事だ」と強調した(同)。

   新型コロナウイルスの感染拡大の中で、自民党の総裁選では政治的な空白が起きないように全国の党員票は割愛して、国会議員票と各県連の票のみで総裁を決めるとの党の方針が決まっている。なのに、党の総裁選で選ばれ就任する次期総理は早々に衆院解散・総選挙に打って出るだろうか。新型コロナウイルスの感染拡が治まらない中で、国民の審判を仰ぐ以前に、国民の納得が得られないだろう。麻生氏の発言は総理経験者として自らの体験を話したまでと言えばそうかもしれないが。

   次期総理の下での衆院解散・総選挙については、河野防衛大臣も今月9日、アメリカのシンクタンク主催のオンライン形式の講演会で、「10月中にはおそらく行われると思う」と述べた(9月10日付・NHKニュースWeb版)。解散権は総理の権限であり、現職閣僚の立場にある人物の発言が物議をかもした。その2日後、河野氏は記者会見で「今後、口を慎むところは慎んでいきたい。言うべき人が言うべきものだと思う」と述べた(9月11日付・同)。

   ところが、政府関係者による衆院解散・総選挙の発言が相次ぐと、雰囲気づくりが意図的に行われているようにも思える。それをさらに裏付けするようなニュースもあった。

   政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会(今月11日)が、11月末までの期限付きで、必要に応じて主催者らが参加者にマスクを配布して全員に着用させるなどの感染防止策を取れば、参加者らが大声を出さない環境が確保できる施設では収容人数いっぱいまでの入場を認めることを了承した(9月12日付・朝日新聞)。これは、うがった見方かもしれないが、全員がマスクをすれば立候補者による選挙集会も可能で、集会場も確保できるとの解釈もできる。

   次期総理の下での総選挙の「地ならし」が着々と進んでいるのか。

⇒13日(日)夜・金沢の天気    くもり時々あめ