#毒菜

☆アサリ、ウナギ産地偽装は日本版「毒菜」「下水油」

☆アサリ、ウナギ産地偽装は日本版「毒菜」「下水油」

            中国産の食品を避けるようになったのは、中国人の言葉からだった。金沢大学にきていた中国人留学生が「毒菜」の話をしてくれた。「毒菜」は姿やカタチはよいが、使用が禁止されている毒性の強い農薬(有機リン系殺虫剤など)を使って栽培された野菜だ。さらに、「下水油」の話も。残飯や汚水に浮かぶ油をくみ取って精製した油、あるいは劣化した油を処理して見栄えをよくした油のこと。「同年代の若い人たちは屋台の食堂には行かなくなりましたよ。なんだか怖くて」と。11年も前の話だが、それ以来「毒菜」と「下水油」が頭から離れない。

   先月のTBS番組『報道特集』(1月22日放送)で「輸入アサリが国産に アサリ産地偽装の実態は」を視聴した。3年をかけた調査報道で、中国産アサリが巧妙に産地偽装され、国産として全国に広く流通している実態をカメラが追いかけた。夜の熊本の干潟にばら撒かれる中国産のアサリ。1週間ほど寝かせて国産に化けさせる。そして、スーパーの店頭では熊本産という国産品で並んでいく。

   業界内部の闇も浮かび上がる。かつて、この干潟で産地偽装をして脱税の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた元業者は現在は偽装をなくすための活動をしている。しかし、現地では相手にされなくなった。その背後にある「同調圧力」はすさまじい。業者の一人一人は「いけないことと理解はするが、仕方なく」に陥っている。その負のスパイラルをカメラは丁寧に追っていた。この報道の後、農水省は、熊本産として販売されているアサリの97%に「外国産が混入している可能性が高い」と調査結果を発表した。

   見かけはブランドもの、そして得体の知れないものを売る。この報道を見て、この産地偽装は日本版の「毒菜」「下水油」だと感じた。ウナギの産地偽装も問題になった。うなぎ料理専門店を経営する奈良県大和高田市の食品販売会社「うな源」は中国産ウナギを国産と偽って、ネット通販やふるさと納税の返礼品として2020年4月1日から同11月30日の間に15万8873個を販売していた。近畿農政局により、食品表示法に基づく立入検査が行われていた。うな源はことし1月下旬から各店舗を閉店・休業していたが、信用も失墜。事業再開のめどが立たず、今月8日までに破産手続きに入った(9日付・東京商工リサーチWeb版)。

   今回明るみになった一連の産地偽装問題は氷山の一角ではないだろうか。産地偽装と合わせて、監督官庁には中国の汚染水で育ったであろうアサリやウナギの安全性も追及してほしい。

(※写真は、アサリの産地偽装問題を受けて2月1日に緊急記者を行った熊本県知事=熊本県庁公式ホームページより)

⇒10日(木)夜・金沢の天気    くもり

★見かけは「翆玉白菜」、中身は「毒菜」

★見かけは「翆玉白菜」、中身は「毒菜」

   台湾の国立故宮博物院(台北市士林区)を訪れたことがある。2011年11月だった。第二次世界大戦後、国共内戦が激化し、中華民国政府が台湾へと撤退する際に北京の故宮博物院から収蔵品を精選して運び出した。その数は3000箱、61万点にも及び、所蔵品数で世界四大博物館の一つに数えられる。ガイド役を引き受けてくれた国立台北護理健康大学の教員スタッフが真っ先に案内してくれたのが、清朝時代の「翆玉白菜」=写真・国立故宮博物院のホームページから=。長さ19㌢、幅10㌢ほどの造形ながら、本物の白菜より白菜らしい。清く白い部分と緑の葉。その葉の上にキリギリスとイナゴがとまっている。
  

   ヒスイの原石を彫刻して作ったというから、おそらく工芸職人はまずこの色合いからイメージを膨らませ、白菜を彫ったのではないか。これが逆で、白菜を彫れと言われて原石を探したのであれば大変な作業だったに違いない。日本人にとっても身近な野菜だけに、その色合いが和ませてくれた。以来、故宮博物院と聞いて、思い出すのは「翆玉白菜」だ。

   台湾から帰国して1ヵ月余りたって、金沢大学の授業のTA(テーチィング・アシスタント)をしてくれた中国人留学生の院生2人を誘って、金沢の居酒屋で忘年会を開いた。席上で、「翆玉白菜」の話をすると、「ワタシも台湾で見たことがある」と話が盛り上がった。紹興酒が進むと、一人が「でも残念なことに今の中国は『毒菜』が多いです」と語り出し、本国の食の事情を嘆いた。このとき初めて聞いた言葉だった。「毒菜」は姿やカタチはよいが、使用が禁止されている毒性の強い農薬(有機リン系殺虫剤など)を使って栽培された野菜のことを言うそうだ。

   10年も前の話なので、いくらなんでも中国では毒菜はもう栽培されてないだろう思っていたがそうではないらしい。週刊文春(6月17日号)に記載されている「あなたが食べている中国『汚染野菜』」の記事を読むと、日本は消費される野菜の2割を輸入に頼っているが、その輸入量(2019年)1800万㌧のうち実に998万㌧、53%が中国からで圧倒的なシェアだ。輸入の場合は食品衛生法に基づいて検疫検査が行われるが、過去3年間で中国産は232件の摘発を受けている。

   摘発が多い野菜は玉ねぎ。違反理由は「チアメトキサム」という殺虫剤だ。この殺虫剤を玉ねぎの皮に散布すると変色しない。つまり、新鮮な野菜と見せかけ、出荷量を増やすためにあえて散布している。チアメトキサムは玉ねぎだけでなく、ショウガやニンニクの茎でも見つかっている。また、摘発件数が多いのがピーナッツ類で3年間で50件。「アフラトキシン」というカビ毒の付着。このカビは発がん物質でもある。上記の記事を読んで大量の毒菜が日本に入ってきていると考えると他人事ではない。

   2008年に中国から輸入した冷凍ギョーザを食べて中毒症状が起きた、有名な「毒ギョウーザ事件」だ。それ以来、中国製の加工品はイメージがよくない。しかし、加工前の野菜そのものが「毒菜」「汚染野菜」となると、国内で加工されれば防ぎようがない。安心、安全がモノの価値として生産者の間で定着していないのであれば、記事にもあるように、水際で検疫体制を強化するしかない。

⇒12日(土)午前・金沢の天気     はれ