#東京都知事選

☆「ワード・ポリティクス」の女帝、2期目の難題

☆「ワード・ポリティクス」の女帝、2期目の難題

   選挙の争点は何だったのか。自身は都民ではないが、今回の東京都知事選をメディアを通して観察していて不思議を感じる。何しろ現職、小池百合子氏の得票率は59.7%である。小池氏の場合は2期目なので1期目で掲げた「セーフ・シティ」「ダイバー・シティ」「スマート・シティ」で掲げた27個の公約をどれだけ実行できたか、その評価が選挙の争点だろう。 

   「スマート・シティ」の公約にある「東京をアジアナンバーワン1の国際金融市場として復活。国際金融特区や税優遇を活用し、世界から企業や高度人材を呼び込む。英語による諸手続きが可能な環境を整備」は評価が高い。とくに、中国の国家安全法で揺れる香港の金融機関の移転先として国際的にも注目されている。先見の明があるのかもしれない。一方で、同じ「スマート・シティ」の公約にある「老朽廃棄物処理場の集約」は都議会で議論されたことがあるのだろうか。少なくともネットの検索ではその様子が出てこない。2016年7月の前回は得票率は44.4%だった。今回は15ポイントも増やしているので、総じて前回の公約は信任されたということだろう。

   得票率を15ポイント上げた、もう一つの要因が新型コロナウイルスの感染拡大にともなう数々の記者会見ではなかっただろうか。「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」、そして「東京アラート」などのカタカタ用語が会見で次々飛び出した。あえて報道陣の前でお披露目して、メディアが読者・視聴者向けに分かりやすく解説する。それが、都民だけでなく全国の注目を集めた。こうした言葉によって政治を動かすことを「ワード・ポリティクス」、テレビを意識した言葉の政治を「テレ・ポリティクス」と称したりするが、まさにメディアを巧みに利用する政治手腕ではある。

   1期目の当選では「ジャンヌ・ダルク」と自称したが、2期目で「女帝」を座を揺るぎないものにした。問題はこれからだろう。コロナ禍の休業補償に都の貯金とも言える財政調整基金9345億円のほとんどを使い、残りは807億円と言われる。都民の命と健康を守る新型コロナウイルスの感染症対策、築地市場の跡地問題、そして、オリンピック・パラリンピックの縮小開催か、パンデミックの影響でひょっとして返上か中止か、世界の耳目が集まる。これらの難題をどう乗り切るのか。(※写真は「小池百合子公式ホームページ」より)

⇒6日(月)午前・金沢の天気     あめ

★コロナ禍と東京都知事選

★コロナ禍と東京都知事選

   きょうは東京都知事選挙の投開票日だ。立候補者は過去最多の22人。きょう午後3時現在の投票率は23.9%、前回2016年の選挙より3.7ポイント低いとメディア各社が報じている。今回関心があるのは、誰が当選するかというより、開票をどのようにするか、だ。というのも、開票作業は「3密」そのものだ。しかも、このところ連日100人超えの感染者が出ている東京都だ。開票作業も慎重に行われる分、かなり遅れるのではないだろうか。

   開票作業が遅れる原因は3つある。一つは3密を避けるため、作業を行う都の職員は立ち位置の間隔を空ける。1人4平方㍍を確保するとして、職員はこれまで3分の2ほどではないだろうか。もう一つが、ゴム手袋を着用しての作業となるだろう。手袋は紙を扱う作業には向いていない。投票用紙そのものも特殊な素材ですべすべしているので、かなり手間取るのではないだろうか。

   3つ目が「疑問票」の処理だ。投票用紙に書かれた名前が読めなかったり、間違っていたり、関係のないことが記載されていることがある。この疑問票についてはチェックに時間がかかる。とくに、候補者陣営からのいわゆる「開票立会人」が意見を述べることができる仕組みとなっているので、今回のように22人の立候補者がいると立会人の数も多くさまざまな意見を言うことも想定されるので、票の確定まで相当な時間がかかるのではないだろうか。

   話は「当選確実」の報道に移る。おそらく午後8時00分にテレビ各社は一斉に「当確」の選挙速報をテロップで出すだろう。新聞のテレビ欄では、NHK総合は午後7時59分から「都知事選開票速報」として1時間の特番を組んでいる。「出口調査の結果は?夜8時ちょうどに速報」とわざわざ手の内を明かしている。

   それにしても、この表現では適切でないかもしれないが、現職の小池知事=写真は東京都公式ホームページ、3月25日の会見=は波乗りが上手だ。コロナ禍が収束するかに思えたが、東京を中心に第2波が来ている。現状で新人候補に投票する有権者は多くはないだろう。争点は一つ。この事態をはやく収束させてほしい、が都民の願いだろう。仮に投票率が過去最低であったとしても責められることもない。

   小池氏は前回公約として「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」を掲げ、元総務大臣の増田寛也氏=自民、公明など推薦=、鳥越俊太郎氏=民進、共産、社民など推薦=と戦って破った。孤軍奮闘のまさに、自ら称した「ジャンヌ・ダルク」のようだった。

⇒5日(日)午後6時00分・金沢の天気     くもり

★コロナが変える東京都知事選

★コロナが変える東京都知事選

         きょうの夕方のメディア各社のニュースが、「れいわ新選組」の山本太郎代表が記者会見し、今月18日告示、7月5日投開票の東京都知事選に立候補することを表明したと伝えている。気になったのがその公約だ。東京オリンピック・パラリンピックを中止する。新型コロナウイルス感染拡大の見舞金として全都民へ10万円を給付するという内容だった。俳優の経験もあり、参院議員の経験もあり堂々とした表情だった。すでに立候補を表明している小池知事の有力な対抗馬の一人だろう。

   山本氏が掲げた公約の一つ、東京オリンピック・パラリンピックの中止は争点の一つとしてありだろう。では、10万円給付を公約に掲げるのはあり、だろうか。つまり現金給付を公約に掲げることはありのか。調べてみると、昨年7月の参院選選の公約で、自民党は「低収入の年金生活者に年最大6万円の福祉給付金を支給する」と掲げている。この場合、「低収入の年金生活者」という貧困対策だが、山本氏は「すべての都民」を対象としているので、すべての有権者ということになる。

   選挙運動として現金10万円を有権者に配れば、明らかな公職選挙法違反だが、これはあくまでも公約なので、公職選挙法に問われることはないだろう。現金給付を公約に掲げてはならないという規定もない。これはコロナ禍が産み出した新たな選挙公約かもしれない。では、同じく見舞金という名目を掲げ1人20万円を給付するという候補者が出てくるかもしれない。そうなると、有権者は政策の多様性より、金額の多さに惑わされるかもしれない。後出しじゃんけんのような公約だ。

   小池知事は今月12日に立候補を表明している。前回選挙の出馬で用いたスローガン「東京大改革宣言」受けて、新たに「東京大改革2.0」を掲げた。面白いのは「ポストコロナの選挙」と位置づけ、街頭演説は「3密」を避けるためオンライン中心の選挙戦を展開し、街頭演説の予定は立ていない(12日付・共同通信)。コロナ禍で選挙の在り方も大きく変わるだろう。(※写真は「小池ゆりこ」公式ホームページより)

⇒15日(月)夜・金沢の天気   はれ