#東京オリンピック・パラリンピック

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

   この判決からはオリンピック組織委員会そものが機能不全の状態だったことが浮かび上がってくる。東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲被告が大会組織委員会の高橋治之元理事に大会スポンサー契約をめぐり、2800万円を提供したとして贈賄罪が問われていた裁判。東京地裁はきのう21日、懲役二年六月、執行猶予四年(求刑懲役二年六月)の判決を言い渡した。青木被告以外には元副会長ら2人も有罪判決が下された。まさに、「紳士服の青木」に泥を塗ったカタチだ。

   一連の汚職事件では、「みなし公務員」だった高橋元理事に対する賄賂の総額はAOKIホールディングスや出版社「KADOKAWA」、広告会社など5ルートから1億9800円に及んでいる。収賄側は高橋被告を含む3人、贈賄側は12人が起訴されていて、今回は初めて判決。

   メディア各社の報道によれば、電通元専務の高橋元理事はスポンサー選定にかなりの権限を持っていた。逆に言えば、ほかにスポンサー集めのプロがおらず、大会組織委としては、実績がある高橋元理事に「お任せ」だったのだろう。マーケティング担当として任命したのは大会組織委の会長だった森喜朗元総理だった。

   今回の判決文でも高橋元理事の「強権ぶり」が述べられている。「当時、組織委員会の森会長を交えた会食の場などで、高橋理事の影響力の強さを認識し、その影響力を頼って犯行に及んだ。高橋被告の影響力を利用し、自社の利益を追求しようとした」。AOKI側は高橋元理事にスポンサーの選定や日本選手団の公式服装の優先供給権などを依頼した。コンサルタント料として「みなし公務員」である高橋元理事の会社を経由して5100万円を供与を受けた。ただ、AOKI側から5100万円を受領したと起訴されたものの、贈賄罪の公訴時効は三年で、それ以前の提供分は立件されていない。

   比較するのはお門違いかもしれないが、青木被告は大会組織委の会長だった森元総理に「現金200万円を手渡した」と供述(2022年9月1日付・産経新聞Web版)。これに対し、高橋元理事には5100万円なので、ケタ違いだ。とてつもない「影響力」のある権限を高橋元理事はなぜ振るうことができたのか。その一つには、東京オリ・パラそのものを誘致するロビイストだったという背景がある。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦(8億9000万円)の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。

   「何をどう言われようが、東京五輪を誘致したのはオレさまだ」、そして「スポンサー集めは電通専務だったオレしかできない」との強烈な自負心があったのだろう。大会組織委は高橋元理事の独壇場だったに違いない。

⇒22日(土)夜・金沢の天気    はれ 

★五輪めぐる汚職事件は「個人的な問題」なのか

★五輪めぐる汚職事件は「個人的な問題」なのか

   電通の元専務もある高橋容疑者はオリンピックそのものを誘致するロビイストだった。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、五輪招致をめぐり高橋容疑者が招致委員会から820万㌦の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じた。IOC委員に対するロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていて、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長は2019年6月に退任している。

★「暑っつい」「ダサい」「いらいら」

★「暑っつい」「ダサい」「いらいら」

   きょう31日は午前中にもかかわらず強烈な暑さだ。金沢地方気象台は日中の金沢の最高気温を35度と予想しているが、体感ではもう超えているのではないだろうか。気象庁は石川県内に「熱中症警戒アラート」を出していて熱中症への対応を呼びかけている。29日から3日連続だ。6月29、30日にも発表されていたので通算5日となる。

  テレビ各社の気象予報士が解説している。世界的に異常気象をもたらすとされる「ラニーニャ現象」が去年秋から太平洋で続いていて、日本列島には来月から9月にかけても猛暑がもたらされるとのこと。それにしても「暑っつい」。 

   おそらく多くの人はこのニュースを見て、こう思っている。「ダサい」。東京オリンピック・パラリンピックをめぐって、組織委員会の78歳の元理事(「電通」元専務)が、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」側からコンサルタント料として受け取った4500万円が賄賂だった疑いがあるとして、東京地検特捜部が受託収賄などの疑いで捜査を進めていると報道されている。悪い意味でアナログ、昔ながらの汚職のスタイルではないか。電通マンとあろう者が愚かな行為を。

   組織委員会は最初からケチがついていた。去年2月、組織委員会会長の森喜朗氏が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと女性蔑視と取れる発言の責任を取って辞任した。組織委員会のメンバーではないが、3月にはオリ・パラの開閉会式の統括責任者を務めるクリエーティブディレクター(「電通」元局長)が、演出チームとのSNS上のやり取りで、出演予定だったタレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような豚に見立てた、「いじり」の演出案を提案したことが発覚して辞任に追い込まれている。

   そして、7月には開会式のセレモニー楽曲を担当する作曲家グループの1人が急きょ辞任するというハプニングもあった。過去に雑誌のインタビューで、高校生のころまでの知的障がい者に対する「いじめ」を自慢するように語っていたことが指摘された。オリンピック・パラリンピックの理念から完全にNGであり、辞任は本人からの申し出だった。差別、いじり、いじめ・・・実にダサい。

   さきほどまで、TBS番組「サンデーモンーニング」を視聴していた。テーマは世界平和統一家族連合(旧「統一教会」)と自民党など政治家との関わりについてだった。コメンテーターの指摘が的確だった。統一教会の創設者の文鮮明は、日本がかつて韓国を植民地支配をしたのは罪であり、日本から金を取るのは当然ということが教義に盛り込まれている、と。

   なるほど、霊感商法や献金強要によって巨額の金を集めているのは日本の統一教会だけと報じられていたが、その理由がこのコメントから理解できた。教祖の理屈により、日本の統一教会にとって霊感商法や献金強要を何十年も続けることは与えられた使命なのだ。真面目な日本人の贖罪意識を実に巧みに利用し、教団そのものを「集金システム」に仕立てている。

   日本人が食い物にされている現実にもかかわらず、自民党など政治家の一部が選挙支援などに恩義を感じて統一教会にシンパシ-を寄せてきた。いま日本に漂っている閉塞感は、まさにこの政治と宗教の矛盾に満ちた関係性だろう。「いらいら」感が募る。この閉塞感をどう打ち破るのか。

⇒31日(日)午前・金沢の天気    はれ

☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

☆皇室は国内最後の養蚕家になるのか

   前回のブログの続き。「人呼んで上滑り長官」ではないのか。報道によると、宮内庁の西村長官は、24日の定例の記者会見で、「オリンピックをめぐる情勢につきまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を、大変ご心配されておられます」と述べた。そのうえで、「国民の間で不安の声があるなかで、ご自身が名誉総裁をおつとめになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないかご懸念されている、ご心配であると拝察をいたします」と話した(6月24日付・NHKニュースWeb版)。

   これについて菅総理は、官邸で記者団に対し「長官ご本人の見解を述べたと理解をしている」と話した(6月25日付・同)。西村長官が陛下の気持ちを案じて述べたコメントなのか、あるいは長官本人の見解なのか、正直どちらでもよい。陛下がオリンピック・パラリンピックを案じられる気持ちは、国民も理解できる。それもさることながら、長官がもう一つコメントすべきは、皇室の威厳にかかわる問題として浮上している、眞子さまの婚約内定問題についてだろう。長官は陛下の今のお気持ちをなぜ述べなかったのか。

   オリ・パラより難題で、宮内庁長官といえどもコメントできないのは理解できる。皇室がお二人の結婚に反対していると発言すれば、国際世論が沸騰する。相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、旧態依然とした日本の姿をさらす出来事だ、と。問題は婚約内定中の小室圭氏側にあったとしても、この批判は日本にとって不名誉なことになる。逆に、結婚を認めれば国民の皇室への求心力がガタ落ちすることは想像に難くない。

   冒頭の「人呼んで上滑り長官」は、4月8日に小室氏が母親の金銭トラブルに関して説明した28㌻文書について、西村氏が同日の記者会見で「非常に丁寧に説明されている印象だ」と述べていたが、その4日後に小室氏側が解決金を渡す意向があると方針転換したことで、長官発言は軽々しいとSNSなどで批判されたことを指す。

   話は変わるが、宮内庁の公式ホームページをチェックしていて、「給桑(きゅうそう)」という言葉が目に留まった。蚕(かいこ)に桑(くわ)を与えること。大きく育った蚕に、枝付きの桑を与えることを「条桑育(じょうそういく)」と説明している。5月25日に皇后が皇居内の紅葉山御養蚕所で給桑をほどこされる様子を掲載している=写真=。この画像を見て、皇室は相当長い歴史と技術を有する養蚕家でもあるのだと気付かされた。

   日本文化のシンボルの一つは和装、その素材は絹織物だ。蚕が産み出す繭(まゆ)から生糸をつくり、生糸を繊維に加工して絹織物をつくる。ところが、農水省の公式ホームページに掲載されている「新蚕業プロジェクト」によると、平成元年度(1989)に養蚕農家は全国で5万7230戸だったが、同30年度には293戸と激減している。さらに、養蚕農家の主たる従事者は現在も70歳以上が6割を占める。絶滅が危惧される業種なのだ。世界では中国が圧倒的なシェアを占め、インド、ウズベキスタンと続く(JETRO公式ホームページ「ビジネス短信」)。ひょっとして、10年後、20年後には皇室が国内最後の養蚕家になるのか。

⇒26日(土)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

★花咲けど、コロナ禍で「無常」の響き

★花咲けど、コロナ禍で「無常」の響き

   いまの時代にはふさわしくない表現かもしれいないが、「花にも格」というものがある。たとえば、古くからボタンは「花王」、シャクヤクは花の宰相、「花相」と呼ばれてきた。高貴な美しさを周囲に漂わせ、人は相応な愛で方をする。きのう玄関に庭のシャクヤクを飾った=写真=。敷板の上に唐銅の花入だ。花の姿は人の姿にもたとえられる。「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」と。花は精気を放ち、心を和ませてくれる。

   しかし、残念なことに人の世の精気が感じられない。東京オリンピック・パラリンピックは一体どのような展開になるのか。NHKニュースWeb版(5月12日付)によると、IOCは理事会後に広報責任者がオンラインで会見を行い、ファイザーなどから提供を受ける新型コロナウイルスのワクチンについて、「東京オリンピックの選手村に入る人の大多数が接種すると見通している」と述べた。また、各競技の予選について「全体の7割にあたる7800人以上の出場枠がこれまでに固まり、2割は世界ランキングをもとに決まる」と述べた。ところが、オンライン会見では質疑応答の最後に指名され、ヤフーの記者と紹介された男性が画面に向かって突然、英語で「東京オリンピックはない」と書かれた黒い布を掲げながら「オリンピックはいらない」などと繰り返し声を上げる一幕があり、映像はすぐに切り替わり会見は終了した。

   混沌とした東京オリンピックの状況を象徴するような出来事ではある。オリンピックだけではなく、「人の流れ」をともなうイベントや会議など催事が混迷を深めている。きょう届いたメールで能登半島で9月に予定しているイベントの担当者の苦悩が書かれてあった。

   「コロナ、なかなか収まりませんね。GW中に、ついに当市でも感染者が発生し、石川県が独自の緊急事態宣言を発出したことで、現在の市民感情は、イベントを開催することに不安を抱えている状態です。事務局サイドでも、今月末に企画発表会の開催を予定しておりましたが、コロナの状況を見極めて判断するということで延期することになりました。準備がちょっと進んだかなぁと思うと、スタート地点に引き戻される感じがしています」

   医療従事者480万人のうちワクチン2回接種を終えたのは139万人、65歳以上の高齢者3600万人のうち2回接種を終えたのはわずか3万人だ(5月12日現在・総理官邸公式ホームページより)。コロナ禍の収束はまだ先が見えていない。菅総理は7月末までに希望するすべての高齢者への2回接種を終えたいと述べているのだが。

   自然の中で花は毎年変わらず咲くが、人の世は変わってしまうものだ。先人たちはこれを「無常」と称した。「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」(平家物語)

⇒13日(木)午前・金沢の天気    くもり

★オリンピック「いじり」

★オリンピック「いじり」

   テレビ業界では「いじる」「いじり」という言葉がある。タレントが少々意地悪な目線で、同じタレントや素人を相手にちょっと痛いところを突くことで笑いを取る。もちろん、「いじる」側は「いじり」と「いじめ」のボーダーラインを心得ている。最初に相手を褒めたたえて、「ところで」と突っ込んでいく。視聴者側にとってはその言葉の展開が面白い。

   これもテレビ的な「いじり」の発想だったのかもしれない。以下、NHKニュースWeb版(3月18日付)から。東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式の統括責任者を務める佐々木宏クリエーティブディレクターが、去年3月、大会の演出チームのSNS上のやり取りで、女性タレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような豚に見立てた演出案を提案し、メンバーの反対で撤回していたことを明らかになった。

   大会組織委員会の橋本会長は18日正午すぎから記者会見し、本人から事実関係の説明を受けたとしたうえで「容姿を侮辱するような発言は大変、不適切。絶対にあってはならない」と述べ、本人からの辞意を了承し、佐々木氏が辞任したことを明らかにした。佐々木氏は18日、報道各社に対し「私のアイデアおよび発言内容に非常に不適切な表現がありました。大変な侮辱となる私の発案、発言は取り返しのつかないことで心から反省し、おわび申し上げます」との謝罪文を出した。

   佐々木氏はサントリー缶コーヒー「BOSS」などのCMで知られる電通出身のクリエーター。2016年リオデジャネイロ五輪の閉会式では、当時の安倍総理が「スーパーマリオブラザーズ」のキャラクターに扮して登場する演出で世界を沸かせた(同)。発想がもともとテレビ的なのだ。

   渡辺直美氏が所属する吉本興業の公式ホームページでは、本人のコメントが発表されている。

「オリンピックの件ですが、去年、会社を通じて内々に開会式への出演依頼をいただいておりましたが、コロナの影響で オリンピックも延期となり、依頼も一度白紙になったと聞いておりました。それ以降は何も知らされておらず、最初に聞いていた演出とは違うこの様な報道を受けて、私自身正直驚いております。

表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われる事も事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております。

実際、私自身はこの体型で幸せです。なので今まで通り、太っている事だけにこだわらず『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます。しかし、ひとりの人間として思うのは、それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております。

私自身まだまだ未熟な部分もありますので、周りの方にご指導いただきながら、これからも皆様に、楽しんでいただけるエンターテイメントを作っていけるよう精進して参りたいと思います。」

   上記の本人コメントは英語と中国語でも発表されている。おそらく吉本興業とすれば、本人がネットフリックスの「Queer Eye: We’re In Japan!」やCMなどで国外でも人気があり、東京オリ・パラ関連という国際ニュースを意識してあえて翻訳文も掲載したのだろう。しかもスピード感を持って対応していることに、ある意味で感じ入る。佐々木氏が辞任したので、いっそうのこと東京オリ・パラの閉会・開会の総合演出を吉本興業に委ねるのも一案ではないかと、ふと思った。

⇒18日(木)夜・金沢の天気      はれ