#日本海

☆静かなる年末年始(3)「略奪の方程式」

☆静かなる年末年始(3)「略奪の方程式」

   それにしても不思議だ。映画『劇場版 鬼滅の刃』の大ヒットで興行収入が歴代2位などとメディア各社が報じているが、これと新型コロナウイルスの関連性を取り上げているメディアを見たことがない。20代の感染がまん延しているのに、「上映を禁止すべき」といった論調が見当たらないのはなぜだろう。素朴な疑問だ。

   このブログで何度も中国漁船による日本海のEEZ(排他的経済水域)の大和堆での違法操業によるスルメイカの乱獲問題を取り上げてきた。その数量は、国立研究開発法人水産研究・教育機構によると、中国漁船が15万㌧を漁獲していると推計している。これは、日本漁船による昨年度の漁獲量の10倍以上に当たる(10月15日付・日刊水産経済新聞Web版)。中国側の漁船団は、漁業権は北朝鮮から購入したもので、その中には大和堆も含まれていると北朝鮮の主張をタテに取り、違法操業を続けるだろう。これが中国による、スルメイカの「略奪」の方程式ではないだろうか。

   中国に「略奪」される資源はこれだけではない。大手繊維メーカー「東レ」の子会社が中国に輸出していた炭素繊維が、長年にわたって許可なく中国国内のほかの企業に流出していたことがわかり、経済産業省は外国為替法に基づいて警告し、再発防止と輸出管理の徹底を求めた。炭素繊維は鉄よりも軽くて丈夫で、航空機や自動車などに幅広く使われていて、高性能な製品は軍事転用も可能なため輸出の際には国の許可を取り輸出先や使いみちを厳しく管理する必要がある。経済産業省は、東レの子会社に対して行政指導の中で最も重い警告を行い、再発防止と輸出管理の徹底を求めた(12月22日付・NHKニュースWeb版)。

   そして、日本の領土も「略奪」のターゲットだ。11月24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見=写真、外務省公式ホームページ=で、茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と。つまり、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと堂々と会見で述べたのだ。   

   中国は南シナ海の南沙諸島で「九段線」と称して広大な海域の領有権を主張し、人工島の建設を進めその主張を既成事実化しようとしている。王氏の発言は、同じ論法を今度は尖閣諸島で展開する布石だろう。日米安保条約第5条(アメリカの対日防衛義務)の尖閣諸島への適用をにらんで、「漁業基地化」するというのが中国側のシナリオではないだろうか。

   日本の首都・東京で堂々と尖閣の領有権を主張したのだから、中国側としては粛々と次なる一手を打つだけだ。日本は新型コロナウイルスと東京オリ・パラの対応に追われている。今が先手を打つチャンスと読んでいるのだろう。

⇒26日(土)朝・金沢の天気    あめ

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

   まもなく冬将軍が到来する季節。海も荒れると必ずニュースになっていた日本海沿岸への北朝鮮からの漂着船の記事を今季はまだ見ていない。今年は何かが起きているのか。上の写真は2018年1月16日に金沢市下安原町の海岸に打ち上げられた北の木造船だ。この目で確かめようと、現場に赴いたのは同17日午前。現場は防風林を抜けて100㍍ほど歩くと砂浜が広がり、警察の捜査で青いビニールシートが覆いかぶさっていたので、現物と分かった。

   全長16㍍、幅3㍍ほど。このような小さな船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、違法操業をしてたのか。船内をのぞくことができた。ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。警察発表によると、この船の中から7人の遺体が見つかり、さらに漂着船から15㍍ほど離れたところにさらに1人の遺体があった。もし、同じ乗組員なら計8人となる。冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでして漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか、など当時は思った。

   今季はどうか。第九管区海上保安本部の公式ホームページをチェックしても、北の漂着船はゼロだ。なぜ今年は木造船が漂着しないのか。単純な話で、能登半島沖のEEZ(排他的経済水域)で違法操業を行っているのは北朝鮮の漁船ではなく、中国の漁船なのだ。海上保安庁が監視活動を継続しているが、ことしに入り11月4日時点で、延べ4137隻の中国漁船に退去勧告を発している(11月5日付・NHKニュースWeb版)。

   10月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆周辺で大量の中国漁船が違法操業を行っている=写真・下=。去年までは北の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増している。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZというわけだ。中国の漁船は北の小型と違って大型の鋼船で、釣りではなく、底引き網で漁獲する。そして、北朝鮮から漁業権を買って同国のEEZで操業していると称して、日本のEEZで違法操業をしている(11月24日付・時事通信Web版)。

   違法操業の主役が交代し、これから何が起きるのか。水産庁が大和堆西部の特定の海域に入るのを当面、自粛するようイカ釣り漁船側に要請して、「日本のEEZなのになぜだ」と漁業者の反発を買った(10月20日付・朝日新聞Web版)。日本海の荒波が激しくなってきた。

⇒9日(水)夜・金沢の天気   くもり 

☆日本海のスルメイカ漁 今そこにある外交問題

☆日本海のスルメイカ漁 今そこにある外交問題

   中国の王毅外相がきょう24日に来日、茂木外務大臣と会談を行うほか、あす25日は菅総理大臣と会談すると報じられている。だったら、ぜひこの問題を取り上げてほしい。中国漁船が大挙して日本海の能登半島の沖にある日本のEEZ(排他的経済水域)の大和堆に入り込んで違法な乱獲を繰り返している。このため、日本海に生息するスルメイカの資源量が急減しているのだ。

   問題は、日本海に独自のEEZを持たない中国漁船は漁ができないが、北朝鮮から漁業権を買って同国のEEZで操業していると称して、日本のEEZで密漁しているのだ(11月24日付・時事通信Web版)。 水産庁が9月末までに退去警告をした船の数は延べ2586隻に上っている。去年までは北朝鮮の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増している。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZだろうか。

   以下は憶測だが、中国の狙いはもう一つある。地元紙は中国漁船の違法操業について、「EEZ内に中国の公船が現れているとの情報もある」と伝えている(10月6日付・北國新聞)。漁船の違法操業に紛れて、公船が海底調査を行っている。これは「大和堆の中国所有論」の布石ではないだろうか。中国は今年8月に東シナ海の海底地形50ヵ所について命名リストを公表した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域のほか、沖縄本島沖の日本のEEZも含まれる。その前、4月には南シナ海でも海底地形55ヵ所や島嶼(とうしょ)や暗礁25ヵ所について命名リストを公表している。

   中国は北朝鮮と共同戦線を組んで、関連海域と海底に主権と管理権があると主張することで、大和堆周辺の海洋管理を主張する。そして、公船を繰り出し、日本の漁船を追い払うつもりだろう。尖閣で行われているパターンである。このことを中国の王毅外相に直接問うべきだ。スルメイカ漁問題こそ、今そこにある日本の外交の危機ではないだろうか。

⇒24日(火)午後・金沢の天気     はれ   

☆日本海、スルメイカ漁の危機

☆日本海、スルメイカ漁の危機

   自身はワイン党でもあり日本酒党でもある。食前酒はワイン、食事は日本酒とともに味わう。最近の傾向で、ワインはシャンパン、あるいはスパークリングワインが多くなってきた。そのつまみに「あたりめ」がよく合う。とくに、スルメイカが絶品で、マヨネーズをちょっとつける。スパ-クリングの泡立ちと、ほどよい固さのあたりめが口の中で妙に混じり合って、独特の食感になる。この「マリアージュ」は発見だった。

   このスルメイカが危機に陥っている。今月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆(EEZ=日本の排他的経済水域)で大量の中国漁船が違法操業を行っているのだ。地元紙は以前からこの問題を取り上げているが=写真=、きょうは全国紙の朝日新聞が掲載している。

   水産庁が9月末までに退去警告をした船の数は延べ2586隻に上っている。去年までは北朝鮮の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増しているのだ。

   記事によると、8月中旬から大和堆周辺で中国の大型底引き網船の違法操業が活発に動き始めた。水産庁の取締船はこれまで違法警告したにもかかわらず退去しなかった漁船に対し放水で警告を発した漁船は329隻に上った。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っていた。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZではないだろうか。

   憶測だが、中国の狙いはもう一つある。地元紙は中国漁船の違法操業について、「EEZ内に中国の公船が現れているとの情報もある」と伝えている(10月6日付・北國新聞)。漁船の違法操業に紛れて、公船が海底調査を行っている。これは「大和堆の中国所有論」の布石だろう。中国は今年8月に東シナ海の海底地形50ヵ所について命名リストを公表した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域のほか、沖縄本島沖の日本のEEZも含まれる。その前、4月には南シナ海でも海底地形55ヵ所や島嶼(とうしょ)や暗礁25ヵ所について命名リストを公表している。

   おそらく、中国は北朝鮮と共同戦線を組んで、関連海域と海底に主権と管理権があると主張することで、大和堆周辺の海洋管理を主張する。そして、公船を繰り出し、日本の漁船を追い払う。尖閣で行われているパターンである。スルメイカ漁の危機に、日本の外交が問われている。   

⇒21日(水)朝・金沢の天気    はれ 

☆北の非核化、泡と消ゆ

☆北の非核化、泡と消ゆ

        北朝鮮は核を手放さないとついに公言した。金正恩党委員長は27日に開かれた朝鮮戦争休戦67年の記念行事での演説で、核保有を正当化し一方的な核放棄に応じない立場を強調した(7月28日付・共同通信Web版)。朝鮮戦争に従軍した退役軍人らを平壌に招いた「老兵大会」での異例の演説。核抑止力によって国の安全が「永遠に保証される」と強調した(同)。

   2018年4月27日、板門店で開催された南北首脳会談では韓国の文在寅大統領と金氏との間では「完全な非核化」が明記された=写真・上=。さらに同6月12日の第1回の米朝首脳会談では、共同声明で「Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.(2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む)」の文言を入れていた。

   ところが、2019年2月28日、ハノイでの第2回米朝首脳会談では、北の非核化に妥協しなかったトランプ大統領が先に席を立って会談は決裂した。おそらく金氏にとってこの会談は屈辱的だったのだろう。そしてついに今回、非核化を完全に反古する声明を出した。おそらく、南北首脳会談も、米朝首脳会談も今後開かれることはないだろう。そして、日本への脅威はさらに高まった。

   では、日本国内では北からの核ミサイル攻撃に向けての防衛体制は進んでいるのだろうか。6月15日に河野防衛大臣が地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回すると表明してから40日余り経った。配備断念を受けて、自民党のミサイル防衛の在り方を検討するチームがきのう28日に続いてきょうも会合を開いた。政府に対する提言案が示された。相手の領域内でも弾道ミサイルの発射などを阻止する能力の保有も含め、政府として早急に検討して結論を出すよう求めつつ、攻撃的な兵器を保有しないという、これまでの政府方針を維持すべきだとしている。会合は非公開で、結局、提言案はまとまらなかった(7月29日付・NHKニュースWeb版)。

   日本海側に住めば北の脅威が実感できる。2017年3月6日、北朝鮮が「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に着弾した=写真・下=。北が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれたのだ。

   これまで、南北首脳会談と米朝首脳会談に期待したが、北の非核化は泡と消えた。北からの核弾道ミサイルはいつでも飛んでくる。もちろん、監視レーダーサイトを能登半島から撤去せよという話ではない。

⇒29日(水)夜・金沢の天気     くもり   

★北の漂着船、グローバル問題に

★北の漂着船、グローバル問題に

   これはショッキングな見出しだ。「The deadly secret of China’s invisible armada Desperate North Korean fishermen are washing ashore as skeletons because of the world’s largest illegal fleet.」(意訳:中国の見えざる艦隊の秘密 世界最大規模の不法船団のため、北朝鮮の漁民たちが骨のように海に投げ出されている)。アメリカのNBCテレビのWebニュースの特集で、日本海でのイカ漁のすさまじい現状をリポートしている=写真=。その見出しだ。

   2019年12月27日に新潟県佐渡市の素浜海岸に打ち上げられた北朝鮮の漂着船から7遺体が見つかった。このほか、2019年に確認された北の漂着船は158件、この3年間で487件だ(第9管区海上保安本部報道資料)。

  「The battered wooden “ghost boats” drift through the Sea of Japan for months」(打ち砕かれた木の「幽霊船」が何ヵ月も日本海を漂っていた)で始まるこのリポートを読んでみる。以下、要約。何年もの間、この恐ろしい現象に日本の警察は当惑してきた。気候変動によってイカの個体数が北朝鮮近海で減り、漁師たちは命からがら危険な距離の海に出て、そこで立ち往生して死にさらされれてきたと推測されていた。

   ところが、衛星データで漁船の動きを調査するグローバル海洋保護非営利団体「Global Fishing Watch」(GFW、ワシントン)の分析で、北朝鮮海域に中国からの漁船が大量に入っていることを突き止めた(2019年で800隻)。中国のイカ釣り漁船は集魚灯を使うので、中国からの海洋での照明の動きを追うと、次第に北朝鮮の漁業海域に集まって来る様子が画像で分かる。

   中国が北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、小型の北のイカ網漁船を追い払っている。漁場を奪われた北の漁船は、遠海に出て無理な操業をして、エンジン故障などで漂流し、日本の海岸に漂着するケースが増えてきたと解説している

 
   もう一つ。NBCはGFWの研究者のコメントを引用して、問題提起をしている。中国は、北朝鮮海域での外国漁を禁じる国連の制裁決議に違反しているのではないか、と。の核実験に対応した2017年の国連制裁決議には、漁業権の取引も含まれる。3月の国連会議では、北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視された。これに対し、中国は「一貫してかつ誠実に北朝鮮に関する安全保障理事会の決議を執行した」と述べたが、北朝鮮海域に関してはは認めも否定もしていない。GFWは、この制裁決議違反の中国船団は中国の遠洋漁船全体の3分の1にもなると見ている。

   このNBCのリポートを心強く感じた。というのも、日本海での漂着船問題や、EEZ内での北の違法操業は、日本でも全国ニュースになりにくい。ローカルニュースなのである。NBCがこのように衛星データをもとに国連制裁決議を絡めて漂着船問題を報道することで、一気に国際問題になったのではないだろうか。

⇒27日(月)朝・金沢の天気    くもり

☆波高し 日本海のイカ釣り漁

☆波高し 日本海のイカ釣り漁

   日本海のイカ釣り漁が始まった。能登半島の尖端、能登町の小木漁港からはきのう8日、中型イカ釣り漁船が4隻が出港したと報じられている。目指すは能登半島の沖300㌔のEEZ(排他的経済水域)にある大和堆(やまとたい)、スルメイカの漁場だ。ただ、EEZであったとしても、違法に北朝鮮や中国の漁船も入り乱れ、一触即発の状況がここ数年続いている。

   昨年不穏な動きがいくつかった。8月23日、不審船2隻を水産庁の取締船が見つけ、EEZを離れるよう伝達した。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船の2隻で、高速艇には小銃を持った船員がいた。海上保安庁の巡視船が駆け付け警戒監視を続けたところ、不審船2隻は去った。毎年のようにEEZには北の木造漁船が数百隻も押し寄せているが、武装船となるとただ事ではない。

   10月7日にはEEZで、水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突する事故があった。取締船が北の漁船に放水して退去するよう警告したところ、漁船が急旋回して取締船の左側から衝突してきた。通常、船同士がぶつかりそうな場合、左側の船が衝突をよけるルールとなっているが、避けることなく衝突し沈没した。さらに、日本海の沿岸には北の木造船の漂流や漂着が相次ぐ。2019年は全国で158件(18年225件)、生存者は6人、遺体は5体だった(第9管区海上保安本部まとめ)。

   悲惨な事件もかつて起きた。小木の漁業関係者では「八千代丸銃撃事件」が忘れられないだろう。1984年7月27日、小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕されるた。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。

   当時私は新聞記者で船長の遺族や漁業関係者に取材した。関係者は無防備の漁船を銃撃したこの事件に憤りと恐怖心を抱いていた。「イカ釣りは続けられないですね」と言うと、ある漁師は「板子(いたご)一枚 下は地獄だよ」と反応した。漁師という職業は船に乗るので常に危険と隣り合わせにいる。初めて知った言葉だった。確かに日本海で漁をする危険はあるものの小木はいまでもイカ漁の日本海側の拠点の一つである。

   日本側のイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、すでに北の漁船はEEZに入り漁を始めている。5月中頃から取り締まりに入っている水産庁の退去警告は延べ54隻(うち放⽔措置4隻)の上っている(6月1日現在・水産庁公式ホームページ)。日本漁船の漁の安全と、豊漁を祈る。(※写真は、日本のEEZで違法操業する北朝鮮の漁船=海上保安庁の動画から)

⇒7日(火)午前・金沢の天気     はれ