#日本海

☆やっかいな黄砂 めぐみの黄砂

☆やっかいな黄砂 めぐみの黄砂

    黄砂の季節だ。気象庁公式サイトの「黄砂情報」をチェックすると、あす27日午前中から日本海に黄砂が張り出して、午後3時ごろには北陸などが覆われる=写真=。日本から4000㌔も離れた中国大陸のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠で、風で砂が舞い上がり、偏西風に乗って極東アジアにやってくる。黄砂と同時に大陸の工場などから排出されたPM2.5(微小粒子状物質)も飛散してくるからやっかいだ。

   この時季、野外の駐車場に車を停めておくと、フロントガラスが白くなり、ガソリンスタンドで列について洗車をする。洗濯物も部屋干し。そして、外出してしばらくすると目がかゆくなることがある。黄砂そのものはアレルギー物質になりにくいとされているが、黄砂に付着した微生物や大気汚染物質がアレルギーの原因となり、鼻炎など引き起こすとされる。さらに、黄砂の粒子が鼻や口から体の奥の方まで入り、気管支喘息を起こす人もいる。

   黄砂はやっかいだが、こんな側面もある。黄砂に乗って浮遊する微生物、花粉、有機粉塵などは「黄砂バイオエアロゾル」と呼ばれる。金沢大学のある研究者は発酵に関連する微生物がいることに気づき、採取したバチルス菌で実際に納豆をつくり、商品化した。この納豆の試食会に参加させてもらったが、日本の納豆文化はひょっとして黄砂が運んできたのではないかとの解説に妙に納得したものだ。

   また、大量の黄砂が日本海に注ぐことになる。3月、4月に「ブルーミング」と呼ばれる、海一面が白くなるほど植物プランクトンが大発生する。黄砂の成分といえるケイ酸が海水表面で溶出し、植物プランクトンの発生が促されるのだ。それを動物プランクトンが食べ、さらに魚が食べるという食物連鎖があるとの研究もある。地球規模から見れば、「小さな生け簀(す)」のような日本海になぜブリやサバ、フグ、イカ、カニなど魚介類が豊富に獲れるのか、いろいろ要因もあるが、黄砂もその役割を担っているのかもしれない。

⇒26日(火)夜・金沢の天気     あめ

★日本海で日米共同訓練 地政学的リスクはないのか

★日本海で日米共同訓練 地政学的リスクはないのか

   防衛省・自衛隊の公式ツイッターによると、ことし1月17日から5日間、沖縄南方の海空域でアメリカ軍の原子力空母などを交えて日米共同訓練を展開していた。2021年度で8回の共同訓練のようだ。では、この共同訓練は今年度初めてとなるのだろうか。

   きょう13日付のNHKニュースWeb版によると、NHKはアメリカ海軍の原子力空母「エイブラハム・リンカーン」が11日正午ごろ、対馬海峡を東の方向に通過する様子を上空のヘリコプターから確認した。空母周辺では、アメリカの駆逐艦「スプルーアンス」や自衛隊の護衛艦「いなづま」が航行していた。アメリカ海軍の空母が日本海に展開したことが明らかになったのは、北朝鮮が核実験やICBMの発射を繰り返した2017年11月以来のこと(同)。

   日本海側に住む一人として、このようなニュースに接するとそれなりに緊張する。北朝鮮は先月3月24日に新型のICBMを発射し、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下させている。全長23㍍と推測されるこの大型化したICBMを「モンスター・ミサイル」とメディア各社は報じた。このとき、岸防衛大臣は記者会見で「アメリカの東海岸を含む全土が射程内ではないか」「我が国、そして国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威だ」と語った。ホワイトハウスの報道官も国連決議に反する「brazen violation」(恥知らずな違反)と不快感をあらわにした(3月25日付・BBCニュースWeb版)。

   日米のこの憤りが北朝鮮に対する強いメッセージとして、日本海での共同訓練になったことは想像に難くない。さらに、北朝鮮にとって今月15日は「建国の父」である金日成主席の生誕110周年の節目にあたることから、国威発揚を目指してのICBMの発射や、7回目となる核実験につながる可能性も想定されるのだ。日米の軍事情報筋は衛星画像などを解析して北朝鮮の軍事的な動きを読み取ったのかもしれない。

   今回の日本海での日米の共同訓練は北朝鮮への牽制となりうるのかどうか、突発的な紛争は起こらないだろうか。対岸のことなので気にかかる。自身のこの妙な緊張感は地政学的なリスク感覚なのかもしれない。

(※写真は空母「エイブラハム・リンカーン」、Wikipedia「エイブラハム・リンカーン(空母)」より)

⇒13日(水)午後・金沢の天気     くもり

☆五輪後に漂うキナ臭さ

☆五輪後に漂うキナ臭さ

   日増しにキナ臭さが漂う世界の動きだ。時事通信Web版(2月15日付)によると、防衛省は15日、ロシア海軍の艦艇24隻が今月1日以降、日本海とオホーツク海南部で活動しているのを確認したと発表した。さらに、岸防衛大臣は次のように述べている。

   「(ロシア海軍は)オホーツク海および太平洋に広大な訓練海域を設定して演習を実施するとともに、2月12日には、演習に参加するロシア海軍の艦艇が、アメリカ海軍の原潜のロシア『領海』への進入に対応した旨、主張しています。こうしたことを踏まえれば、少なくとも昨今のウクライナ周辺におけるロシアの動きと呼応する形で、ロシア軍が東西双方で同時に活動し得る能力を誇示するため、ロシアの戦略原潜の活動領域であるオホーツク海においても、その活動を活発化させていると考えられます」(2月15日付・防衛省公式ホームページ「防衛大臣記者会見」)

   BBCニュースWeb版日本語(15日付)は「ロシアはウクライナ国境付近に約13万人規模の軍部隊を配置している。戦車、大砲、医療施設、後方支援態勢など、すべてがそろっている」と報じている。また、20日付では、イギリスのジョンソン首相がウクライナ問題について、「ロシアは1945年以来、ヨーロッパで最大の戦争を計画している」と語ったと報じている=写真=。その一方で、東側の日本海とオホーツク海南部にロシアは艦艇24隻を配備している。なぜロシアはこのような西と東の2正面展開を行っているのか。

   以下はあくまで憶測である。中国の習近平国家主席は今月4日、北京オリンピックの開幕に合わせて北京を訪問したロシアのプーチン大統領と会談を行っている。このときの確認事項は、中国はロシアのウクライナ併合を支援し、ロシアは中国の台湾併合を支援することではなかったか。そう考えると、ロシアの艦艇24隻が今後日本海を南下して台湾を囲んで、アメリカ海軍と対峙するのではないかと想像する。中国海軍とロシア海軍が合同でアメリカ海軍と向かう。同時に尖閣諸島を取り囲み、日本と対峙する、そのようなシナリオではないのか。

   CNNニュースWeb版日本語(20日付)によると、オーストラリア国防軍は19日、空軍の哨戒機が飛行中に中国軍艦からレーザー照射を受けたとして、「命を危険にさらす恐れのある行為」を非難する声明を出した。 声明によると、哨戒機は17日、豪州北部とインドネシア東部ニューギニア島の間に位置するアラフラ海の上空で、東進中の中国軍艦2隻のうち一方からレーザーを照射された。レーザーを照射された操縦士は方向感覚を失ったり、痛みやけいれん、視界の異常を起こしたりすることが知られている。

           中国軍の挑発的とも読めるこの行為は何を意味しているのか。北京オリンピックの後、何が始まるのか。軍事力による一方的な現状変更が西と東で起きるのか。

⇒20日(日)夜・金沢の天気     くもり

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

   正気の沙汰ではない。また、きのう(14日)北朝鮮が弾道ミサイルを打ち上げた。ことしに入って3回目だ。防衛省公式ホームページには、「北朝鮮は、本日(14日)14時50分頃、北朝鮮北西部から弾道ミサイルを少なくとも1発、東方向に発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約50km程度で、距離は通常の弾道軌道だとすれば、約400km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸付近であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」と記載されている。

   NHKニュースWeb版(15日付)は、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を引用してして以下報じている。「鉄道機動ミサイル連隊が14日、発射訓練を行い、2発の戦術誘導弾が日本海に設定された目標に命中した」と発表した。公開された写真ではミサイルが、線路上の列車からオレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していく様子が写っている。また発射訓練について、「任務の遂行能力を高めることを目的に行われた」としていて、国防科学院の幹部らが立ち会い、「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システムを整えるための課題が議論された」としている。

   当初、アメリカへの威嚇を込めた発射だと思った。北朝鮮外務省報道官はこの日午前6時、国営の朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「アメリカがわが国の合法的な自衛権行使を問題視するのは明らかな挑発であり、強盗的な論理だ」「アメリカはわが国の正当な活動を国連安保理に引き込んで非難騒動を起こせなかったので、単独制裁まで発動しながら情勢を意図的に激化させている」と述べていた(15日付・朝鮮日報Web版日本語)。

   ところが、先のNHKニュースからは、鉄道機動ミサイルを戦略兵器として着々と開発を進めていることが分かる。鉄道機動ミサイルが初めて確認されたのは、2021年9月15日に発射した弾道ミサイルだ=写真、2021年9月17日付・朝鮮中央テレビ動画から=。このときは、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾した。あれから4ヵ月で戦術誘導弾を搭載した鉄道機動ミサイルを開発したことが分かる。戦術誘導弾は弾頭の重量を2.5㌧に改良した兵器システムで、核弾頭の搭載が可能となる。これを「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システム」へと展開したらどうなるか。つまり、移動式ミサイル発射システムが完成すれば、北朝鮮のいたるところから発射が可能で、日本で議論されている「敵基地攻撃能力」そのものが意味をなさなくなってくる。

   北朝鮮の弾道ミサイル開発はすでに完成形に近いのではないか。去年9月28日発射した極超音速ミサイルはマッハ3とされていたが、今月11日に発射したものはマッハ10と推定されている(12日・岸防衛大臣の記者会見)。日本の弾道ミサイルへの防衛は、イージス艦の迎撃ミサイルで敵のミサイルを大気圏外で撃ち落とし、撃ち漏らしたものを地対空誘導弾「PAC3」で迎撃するという二段構えの防備体制といわれる。日々進化していると思われる北朝鮮の弾道ミサイルにまともに向き合えるのか。日本海側に住む一人としての懸念だ。

⇒15日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆北朝鮮のミサイルについて選挙で論戦を

☆北朝鮮のミサイルについて選挙で論戦を

    衆院総選挙の公示日の19日午前10時15分ごろ、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。最高高度50㌔程度を変則軌道で600㌔程度飛翔し、日本海に落下した。弾道ミサイルは潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)だった。これを受けて、午前10時24分、総理指示が出された。「1.情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと 2.航空機、船舶等の安全確認を徹底すること 3.不測の事態に備え、万全の態勢をとること」(19日付・総理官邸公式ホームページ)。

    北朝鮮による、日本海に向けたミサイルの発射は頻繁となっている。9月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイル、28日の極超音速ミサイルと続いている。そして今月19日の弾道ミサイルの発射だ。北朝鮮による脅威はミサイルだけではない。  

    能登半島の沖合300㌔にある大和堆はスルメイカの好漁場で、日本のEEZ(排他的経済水域)内にある。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる。EEZ内の漁場「大和堆」で、北朝鮮当局の船が航行しているのが確認されていて、ことし6月末には、そのうちの1隻が携帯型の対空ミサイルを装備していたことを海上保安庁が確認している。このような状況下で漁業者は安心して日本海で操業できるだろうか。

   衆院選で能登半島は石川3区。3区からは無所属新人の倉知昭一候補(85)、自民党前職の西田昭二候補(52)、立憲民主党前職の近藤和也候補(47)が立候補している。この北朝鮮問題を有権者に訴えている候補者をそれぞれのホームページなどでチェックする。すると、3人のうち、北朝鮮問題について触れているのは、近藤候補だけだ。公示の日の集会の動画で、「きょうも北朝鮮からミサイルが発射された。日本にスキがあるから狙われるということがあってはいけない」と述べている。NHKの取材でも、「不安定化している日本海の大和堆の違法操業問題の解決は急務」と。

   北朝鮮問題は確実に起こる。2017年3月6日、北朝鮮は「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、うちの1発を能登半島から北に200㌔の海上に着弾させた。北朝鮮が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   この能登半島の緊張感を国会でぜひ議論してほしい。北朝鮮のミサイル攻撃にどう対応するのか国会で論陣を張るべきだ。自身は監視レーダーサイトを撤去しろという議論には賛成しない。(※写真は、現職2人と新人1人の3人が立候補した石川3区の選挙ポスター掲示板。新人は23日現在ポスターを貼っていない)

⇒24日(日)夜・金沢の天気      はれ

☆いまさら「敵基地攻撃能力」とは、日本海側の憂い

☆いまさら「敵基地攻撃能力」とは、日本海側の憂い

   まるで衆院選挙のスタートを告げる「号砲」のようなタイミングだ。公示の日のきのう19日午前10時15分ごろ、北朝鮮は朝鮮半島東部の新浦付近から、弾道ミサイルを東方向に発射した。うち1発は最高高度50㌔程度を変則軌道で600㌔程度飛翔し、日本海に落下した。落下地点は日本のEEZ外と推定される。弾道ミサイルは潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の可能性がある。もう1発の飛翔距離等については、引き続き分析中(19日付・防衛省公式ホームページ)。

   これを受けて、午前10時24分、総理指示が出された。「1.情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと 2.航空機、船舶等の安全確認を徹底すること 3.不測の事態に備え、万全の態勢をとること」(同・総理官邸公式ホームページ)。そのとき岸田総理は何をしていたのか。同日午前9時45分にJR福島駅に到着。同10時20分に福島市の「土湯温泉観光案内所」で街頭演説。11時15分にJR福島駅で報道各社のインタビューに答えている(20日付・朝日新聞「首相動静」)。10時24分に総理指示を出した以降も仙台市で街頭演説。官邸に戻ったの午後3時3分だ。本来ならば総理指示を出した時点で即刻、官邸に引き返すべきではなかったか。一国の総理の危機感というものを感じることができるだろうか。

   朝鮮労働党機関紙の労働新聞(20日付)をチェックすると、「조선민주주의인민공화국 국방과학원 신형잠수함발사탄도탄 시험발사 진행」(国防科学研究所が新型潜水艦発射弾道ミサイルを試験打ち上げ)の見出しで写真付きの記事を掲載している=写真・上=。炎を吹き出しながら海上を上昇していく弾道ミサイルの様子や、海面に浮上した潜水艦など、写真は計5枚=写真・下=。記事では、5年前にSLBMを初めて発射した潜水艦から再び新型SLBMの発射に成功し、国防技術の高度化や水中での作戦能力の向上に寄与すると書いている。

   岸田総理は官邸に帰り、午後4時05分から国家安全保障会議に出席。同31分からの記者団のインタビューに対し、「わが国と地域の安全保障にとって見過ごすことができないものだ。すでに国家安全保障戦略などの改定を指示しており、いわゆる『敵基地攻撃能力』の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するよう改めて確認した」と述べた(19日付・NHKニュースWeb版)。

   敵基地攻撃能力は、ミサイル発射基地に対する攻撃能力を備えることで、発射を思いとどまらせる抑止力を強化する狙いがある。しかし、今回のようなSLBMの場合、あるいはことし9月15日の鉄道を利用した移動式ミサイル発射台からの弾道ミサイルの場合、どのように「発射基地」を特定し攻撃能力を備えるのか。さらに、変則軌道型の弾道ミサイルに日本のミサイル防衛システムが対応できるのか。すでに、北朝鮮の「国防技術の高度化」の方が勝っているのではないか。日本海側に住み、海の向こうの北朝鮮と向き合う一人としての憂いだ。

⇒20日(水)午前・金沢の天気    あめ

☆ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ

☆ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ

   近所のガソリンスタンドに行き、「レギュラー161円」の表示看板=写真・上=を横目に見ながら給油した。先月までは「158円」だったのが一気に3円値上がり。ニュースでは、石油関連施設が集中するアメリカ南部をハリケーンが直撃して原油の先物価格が上昇している。また、OPECやロシアなど産油国が生産量を据え置いたこと、そして、ヨーロッパでは冬の燃料在庫を積み増する動きもあって、ガソリンの需給がひっ迫しているようだ(10月6日付・NHKニュースWeb版)。年内に1㍑170円を超えるのだろうか。石油価格の高騰は1970年代のオイルショックを思い出し、なんともキナ臭い。

   日本海にもキナ臭さが漂う。能登半島沖のEEZ内の漁場「大和堆」で、北朝鮮当局の船が航行しているのが確認されていて、ことし6月末には、そのうちの1隻が携帯型の対空ミサイルを装備していたことを海上保安庁が確認した。ミサイルは旧ソビエトが開発した「SA-16」と同じタイプで、射程は4.5㌔に及ぶ。海上保安庁は、現場海域で操業する日本の漁船の安全確保に向け、警戒レベルを上げて対応している(同)。地元紙も一面などで大きく報じている=写真・下=。

   対空ミサイルを装備してこの海域に出ているということは、海洋権益を主張する手段、つまり、他国の哨戒艇や漁船などを追い出すためではないかと想像してしまう。1984年7月、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。

   さらにキナ臭いのが中国だ。BBCニュースWeb版日本語(10月5日付)によると、台湾当局は4日、中国軍のJ-16戦闘機34機、核攻撃能力のあるH-6爆撃機12機などが台湾が実効支配する東沙諸島の近くを飛行したと発表した。その後、さらに戦闘機4機が確認されるなど、この日に台湾付近を飛行した中国軍機は計56機にも上った。中国は今月1日以降、延べ150機以上の軍機を、台湾が設定した防空識別圏内で飛行させている。アナリストらは、台湾の国慶日(10月10日)を前に、中国が台湾の蔡英文総統に警告を発した可能性があると分析している。

   BloombergニュースWeb版日本語(10月7日付)によると、ここ数週間で中国恒大集団の危機が一段と深まっているが、危機は中国の不動産業界全体に波及している。初のドル建て債デフォルト(債務不履行)が起きた。高級マンションや都市再開発プロジェクトを手掛ける花様年控股集団は、4日が期限だった社債2億570万㌦相当を償還できなかった。5日には同社を「一部デフォルト」に格下げする動きが相次いだ。緊張感の高まる中国不動産業界で次にトラブルを起こすのはどこか。

   ガソリン高騰、日本海、そして隣国のキナ臭さ。ブログを書きながら周囲を見渡すと、嗅覚がすこぶる敏感になる。

⇒7日(木)夜・金沢の天気    はれ

★能登沖での異常震域と弾道ミサイルで読めること

★能登沖での異常震域と弾道ミサイルで読めること

   日本海側が震源なのに太平洋側が揺れる「異常震域」という言葉を初めて知った。きのう29日午後5時37分ごろ、能登半島の沖の日本海中部で震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震があった。この地震で、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した=写真・上=。今回の地震は大陸のユーラシアプレートに沈み込む海洋の太平洋プレートの内部深くで起きたとみられている。震源が深かったため、近くよりも遠くが大きく揺れる現象のようだ(29日付・朝日新聞Web版)。

   それにしても、日本海側に住む一人として不気味に思うのは、今回の地震の位置と弾道ミサイルの落下地点の関係性だ。北朝鮮が今月15日正午過ぎに弾道ミサイル2発を発射、能登半島沖の舳倉島の北約300㌔のEEZに落下している(15日午後9時・防衛大臣臨時会見「北朝鮮による弾道ミサイル発射事案」)。防衛省公式ホームページには会見での落下地点の地図などは掲載されていない。

   メディア各社がその位置をイメージ(予想図)として掲載している。毎日新聞Web版(15日付)で掲載されたものと比較すると=写真・下=、震源地と弾道ミサイルの落下地点は近いと感じる。弾道ミサイルと地震の関係性はないのだろうか。ふと、そのようなことを考えてしまう。

   人為的な原因によって誘発される地震を「誘発地震」と言ったりする。北朝鮮が2017年9月3日に行った核実験の影響で、核実験場付近で同月23日に2回、10月13日に1回、12月2日に1回、マグニチュード5.6などの地震が観測されている(Wikipedia「人工地震」など)。

   このところ北朝鮮のミサイル発射は頻繁だ。今月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイル、28日の極超音速ミサイルと続いている。政府は北朝鮮が発射したミサイルが日本の領土・領海に落下する、あるいは通過する可能性がある場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)を鳴らして国民に避難など注意を呼びかける。ただ、EEZ内に落下する可能性がある場合にはJアラートは鳴らない (内閣官房国民保護ポータルサイト)。あさから憂鬱な話になってしまった。

⇒30日(木)午前・金沢の天気   くもり

☆「あたりめ」がほろ苦く感じるとき

☆「あたりめ」がほろ苦く感じるとき

   先日金沢市内のス-パーで酒のつまみにと思い、「あたりめ」を買った。パッケージには「この商品はするめいかを原料にしています」と書かれてあり、丁寧な商品づくりをしているとの印象だった。ところが、裏面を見ると、「原産国名」が「中国」とある=写真・上=。複雑な思いを抱きながら、あたりめを噛みしめた。

   日本海のスルメイカの漁場は大和堆だ。日本のEEZ(排他的経済水域)なのだが、中国漁船が大挙押しかけ、能登半島などから出漁する日本漁船に打撃を与えている。日本側はスルメイカのイカ釣り漁の漁期を6月から12月と定めているが、日本の漁船に先回りして、中国漁船は4月から大和堆などに入り込んで漁場を荒らしているのだ。

   この中国漁船による違法操業での漁獲は15万㌧(2020年)と国立研究開発法人水産研究・教育機構は推測している。これは、日本漁船による2019年の漁獲量の10倍以上に当たる(2020年10月15日付・日刊水産経済新聞Web版)。日本のイカ釣り漁とは違って、中国漁船は大きな網を2隻の船が対になって引っ張る「二艘曳き」と一網打尽の漁法だ。

   では、どのくらいの数の中国漁船が日本海に入ってきているのか。衛星データで漁船の動きを調査するグローバル海洋保護非営利団体「Global Fishing Watch」(GFW、ワシントン)は、2019年で800隻が北朝鮮海域に入っていると分析している。中国の漁船は集魚灯を使うので、中国からの海洋での照明の動きを追うと、次第に北朝鮮の漁業海域に集まって来る様子が画像で分かる。

   北朝鮮海域に中国漁船が集まるのは、中国の漁業者が北朝鮮から漁業許可証を購入しているからだと言われる。これまで北朝鮮は国連海洋法条約の締約国ではないことをタテにEEZ内で違法操業を繰り返してきた。中国漁船はその「権利」も購入したとの勝手解釈なのだろう、北に取って代わってEEZでの違法操業を行っている。そもそも、北の核実験に対応した2017年の国連制裁決議には漁業権の取引も含まれ、買い取りそものが違反なのだが。

   水産庁の漁業取締船と海上保安庁の巡視船が大和堆を中心に見回りを行っているが、水産庁が中国漁船に対して行った2020年の退去警告数は延べ4393隻と発表している。仮に中国漁船を800隻とカウントすれば、1隻当たり5回以上も警告を発していることになる。中国漁船がこれ以上増えれば、水産庁と海上保安庁の対応能力が追い付かなくなるのではないだろうか。(※写真・下はEEZ内の違法操業船に放水措置を行う水産庁漁業取締船=水産庁公式ホームページより)

   スルメイカを中国から輸入して製造した「あたりめ」だ。そう考えながら噛みしめるとほろ苦さを感じる。中国産のスルメイカがすべて違法と言っているわけではない。

 
⇒17日(土)夜・金沢の天気      はれ

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

   また、日本海で難題だ。きのう6日午前、岸防衛大臣は記者会見で、ロシア海軍が日本海のEEZ内にある大和堆=写真・上=の周辺でミサイル発射訓練を行うことに関して述べた。以下は、防衛省公式ホームページに掲載されている会見内容。

「大和堆の事ですけれども、7日から9日にかけて、ロシア海軍が日本海海域でミサイル発射訓練を実施予定であることを受けて、3日に海上保安庁から日本海海域に航行警報を発出しております。また、これに先立ち、2日、ロシア海軍によるミサイル発射訓練の実施海域の一部にわが国のEEZが含まれていることを踏まえ、外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行うとともに、わが国周辺におけるロシア軍の活動を関心を持って注視していることを伝達をいたしました。わが国周辺において、演習や訓練を含めたロシア軍の活動が活発化する傾向にあります」

   日本のEEZにある大和堆はスルメイカの好漁場で、先月6日に能登半島の能登町小木漁港からイカ釣り船団8隻が出航し操業を行っている。このブログを書いているときにも、ミサイル発射訓練が行われるかもしれない。それにしても、日本の漁船が危険にさらされようとしているのに、はっきり発言するタイプの岸大臣にしては、「外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行う」とは、言いようがどこか生ぬるい。じつは、国際法では他国の排他的経済水域で軍事演習を行うことは明確に禁じられていない。「抗議をする」などとは言えないのだ。

   ミサイルを発射するのはロシアだけではない。北朝鮮は3月25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した(日本政府が同日発表)。北朝鮮東部の宣徳付近から発射し、いずれも約450㌔飛行。日本の領海域には到達せず、EEZの外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来だった。事前通告なしに発射が繰り返されている。

   さらに、日本のイカ釣り漁船団が大和堆で警戒するのは中国漁船の違法操業だ。その無法ぶりは深刻だ。日本側のスルメイカのイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、4月から多数の中国漁船が大和堆などに入り込んでいて、水産庁は320隻に退去警告を発し、うち91隻に放水措置を行っている(5月27日現在)=写真・下、水産庁公式ホームページより=。つまり、日本の漁船に先回りして、イカ漁場を荒らしているのだ。空からミサイル、海では違法操業。日本の排他的経済水域であるものの、日本の漁船は安心安全な漁ができないでいる。これが日本海の現実だ。

⇒7日(水)午後・金沢の天気       くもり