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☆「オミクロン株」がやって来る

☆「オミクロン株」がやって来る

   民族の生き残りをかけて戦ってきた歴史のある国はパンデミック下の対応も的確だと感心させられる。イスラエルのことだ。報道によると、南アフリカで確認された新たな変異ウイルス「オミクロン株」はイギリスやドイツなどヨーロッパでも感染の確認が相次いでいる。こうした中でイスラエルは水際対策を強化するため、今後14日間は特別な許可がない限りすべての外国人の入国を禁止、また、帰国者はワクチン接種を終えていても3日間の自宅隔離を義務付けることを決めた(11月28日付・NHKニュース)。

   イスラエルは世界に先駆けてワクチン接種(ファイザー社製)を開始したことでも知られる。そして、3回目のワクチン、いわゆる「ブースター接種」にいち早く着手したのもスラエルだった。ワクチン接種の効果でことし5月から6月にかけては、感染者数がゼロに近づいた=写真・上、11月28日付・ジョンズ・ホプキンス大学「コロナダッシュボード」より=。ところが、7月以降は変異ウイルス「デルタ株」による感染再拡大に見舞われる。そこでワクチン接種後の時間経過とともに効果が減少することを問題視し、7月末からは60歳以上を対象にブースター接種を開始する。それでも、9月をピークに第4波が訪れた。現在は収まってはいるが、そこにオミクロン株が登場した。なかなか収束しない中で今回、外国人の入国制限を決断したのだろう。

   日本の現状はどうか。現在はイスラエルの5月から6月かけての状況と似ている=写真・中、同=。が、時間が経過すればワクチン効果が薄れる。その間隙をぬって第6波がやってくるだろう。日本の水際対策は大丈夫なのか。政府は今月8日から、ビジネス目的の入国規制緩和や、新規留学生および技能実習生の受け入れ再開が実施している。これまで、ワクチン接種を終えたビジネス来訪者には入国後10日間の待機を求めていたが、3日間に短縮。留学生や技能実習生を対しても、受け入れの大学や企業や団体による入国者の行動管理を条件に認めた。インバウンド観光客の入国は現在も認めていない。

   新たなオミクロン株の感染拡大によって、政府は新たな措置として今月27日から南アフリカのほか8ヵ国(エスワティニ、ジンバブエ、ナミビア、ボツワナ、レソト、モザンビーク、マラウイ、ザンビア)からの邦人帰国者や在留資格を持つ外国人入国者に対して、指定宿泊施設での10日間の待機を義務付けた。はたしてこれで十分なのか。

    日本と同じ島国のイギリスでは感染拡大の勢いが現在も増している=写真・下、同=。さらに、国内でオミクロン株の感染が確認された。BBCニュースWeb版日本語(11月28日付)によると、ジョンソン首相は緊急記者会見で、国民には店舗や公共交通機関でのマスクの着用の義務化、さらに入国する人すべてを対象に2日以内にPCRの検査を受けて陰性だと確認されるまでは隔離を義務づけるなどの新たな対策を打ち出した。

   イギリスは昨年12月に感染拡大が急増し、クリスマスの直前になって規制緩和を中止するという事態に陥った。ことしはクリスマスの前までにはオミクロン株によるさらなる感染拡大を何とか収めたいと必死なのではないか。

⇒29日(月)午後・金沢の天気     はれ

★数字の裏読み、深読み、独り歩き

★数字の裏読み、深読み、独り歩き

    数字には納得できるものと納得できないものがある。さらに納得できたとしても、「さらに裏の潜むもっと大きな数字もあるだろう」と思わせるものもある。日本と中国の相互意識を探る第16回日中共同世論調査(実施=言論NPO、中国国際出版集団)の結果だった。17日付のNHKニュースWeb版の記事を引用しながら数字を読んでみる。

    調査は9月と10月に18歳以上を対象に行われ、日本は全国で1000人、中国は北京や上海など10都市で1571人からの回答をもとにしている。記事によると、中国に「良くない」という印象を持つ日本人は前回に比べ5ポイント増の89.7%に上った。その理由として、中国公船などによる「尖閣諸島周辺の日本領海や領空の侵犯」が同6ポイント増の57.4%で最も多く、以下、「国際的なルールと異なる行動」49.2%、「南シナ海などで行動が強引・違和感」47.3%で、中国による一方的な海洋活動が対中感情を悪化させている。設問はメディアで報道される内容に沿っている。

   一方、中国人で日本に対する印象が「良くない」と答えたのは52.9%で前回と横ばいだった。「良くない」理由は、「侵略の歴史 きちんと謝罪・反省せず」74.1%、「魚釣島・周辺諸島『国有化』で対立」53.3%、「米国と連携し包囲しようとしている」19.7%となっている。良くない印象の理由の設問はおそらく中国側が独自に作成したものだろう。その設問の内容は国内での反日教育をベ-スにしたものや、2012年9月に日本が尖閣諸島を国有化したこと、経済圏構想「一帯一路」のシーレーンをめぐる動きなど、いわゆる国策をベースにしたものだ。

   以下は深読み、裏読み、憶測である。「89.7%」をどう読むか。率直に中国で独り歩きをする危険な数字ではないだろうか。その大前提には中国人と日本人ではまったく情報は共有されないという事情がある。たとえば、日本人が「良くない」とする一番の理由である中国公船の尖閣周辺での航行について、日本で大きな問題となっていることは中国では報じられていないだろう。つまり、なぜ「良くない」のか理解されない。

   今回のアンケート調査の数字は中国でどのように報じられるのだろうか。憶測だが、「中国嫌いの日本人は89.7%」「日本嫌いの中国人は52.9%」の表現だろか。すると、「なぜ中国嫌いの日本人が多いのだ」と、今度は数字が独り歩きをして、逆に中国での反日感情を煽る可能性も出てくる。あるいは、数字は政治的に利用されることもあるだろう。

   折しも、「自由で開かれたインド太平洋」のもと日本、アメリカ、インド、オーストラリアの4ヵ国の海軍と海上自衛隊がインド近海での共同訓練を行っている。中国とすれば、格好の「口撃」材料だろう。「中国嫌いの日本人89.7%が敵に回っている」とプロバガンダにされる、かもしれない。

⇒18日(水)朝・金沢の天気     はれ