#施政方針演説

★一縷の望み託すゼレンスキー、世論調査で高評価、これは「トランプ効果」なのか

★一縷の望み託すゼレンスキー、世論調査で高評価、これは「トランプ効果」なのか

  これは「トランプ効果」なのか。きょう6日の外国為替市場で対ドルの円相場が一時1㌦が147円台に上昇した。2024年10月上旬以来で、5ヵ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。日銀の追加利上げ観測が高まっていて、日米金利差の縮小を見込んだ円買いが加速したようだ。トランプ大統領は3日にカナダとメキシコに対して25%の関税を予定通り発動すると述べた会見で日本の為替についても言及し、「日本の指導者に電話して『自国通貨の切り下げを続けてはならない』と伝えた」と話していた。現在の円安・ドル高に非常に懸念を抱いていて、「われわれは関税で埋め合わせをする」と意味深なことを発言していた。トランプ発言があった日の終値は1㌦=149円台だったが、その後徐々に円高にぶれていた。

  世論調査にもトランプ効果が見える。あの施政方針演説は、辛口で言えば「自画自賛」の演説だったが、アメリカ国民には好反応だった。アメリカのCNNが演説終了後に実施した緊急世論調査では、演説を「とても前向き」と評価する人が44%、「どちらかといえば前向き」とした人は25%となり、7割近くが内容を支持。また、CBSテレビの調査では、演説に対する評価は「強く支持」が58%で、「どちらかといえば支持」が18%だった。「強く反対」は16%、「どちらかといえば反対」が7%だった。 演説を見た視聴者の割合は共和党支持層が51%、無党派層が27%。民主党支持層は20%だった。トランプ氏が示した政策分野別では、「国境・移民対策」「政府支出の無駄削減」に対して77%が支持。「ウクライナとロシアの紛争」は73%、「関税」は65%が賛成した(6日付・産経新聞Web版)。(※写真は、NHK-BSで中継されたアメリカのトランプ大統領の施政方針演説)

  それにしても、意外だったのは施政方針演説の中で語られたゼレンスキー大統領からの書簡だった。トランプ氏とゼレンスキー氏による首脳会談は口論の末に決裂、その後、アメリカはウクライナへの軍事支援を一時停止という事態に陥っていた。トランプ氏は演説の中で、ゼレンスキー氏から書簡を受け取ったことを明らかにし、「恒久的な平和に近づくためにできるだけ早く交渉の場に着く用意がある」「平和を手に入れるためにトランプ大統領の強い指導力の下で協力する用意がある」と書かれてあったと述べた。さらに、首脳会談の後で署名する予定だった鉱物資源の共同開発をめぐる協定については「いつでも署名する用意がある」と表明があったと語った。

  ゼレンスキー氏からの書簡に対し、トランプ氏は「彼がこの書簡を送ってくれたことに感謝する」と述べていた。現在、実務者レベルで首脳会談を再度設定することで動ているようだ。仲直りはうまくいくのか。この一件で少々辛口の論評もある。イギリス国営放送BBCは「Perhaps Zelensky has run out of political road」とゼレンスキー氏に皮肉を込めている。彼は政治的な選択肢を使い果たしてしまったようだ、と。なので、一縷(いちる)の望みを託してトランプ氏にすがるしかないのでは、と。

⇒6日(木)夜・金沢の天気    あめ

☆巧みな演出で「America is back」 トランプ流1時間40分の施政方針演説

☆巧みな演出で「America is back」 トランプ流1時間40分の施政方針演説

  さきほどまでNHK-BSでアメリカのトランプ大統領の施政方針演説を生放送で視聴していた。冒頭で「America is back(アメリカは復活した)」と宣言し、2期目の大統領就任から43日間までの成果を強調していた。チカラを込めて語っていたのが、やはり「アメリカ第一主義」だった。「この数週間で1兆7000億㌦もの新たな投資がアメリカにもたらされた」と述べ、「ソフトバンク」など社名をあげて、オープンAIなどに巨額の投資がなされるなどと説明した。

  さらに「近い将来、この24年間、誰も成し遂げられなかったことをしたい。連邦予算をバランスさせることだ」と述べ、巨額な財政赤字の解消に意欲を示した。その中でトランプ氏は、イーロン・マスク氏が率いる政府支出の削減策を検討する組織「DOGE(政府効率化省)」がムダな政府支出について18の事業を確認したと指摘した。「(ムダな財政支出が)世にさらされ、迅速に停止されている。われわれは数千億㌦を発見し、インフレなどとたたかうために金を取り戻し、借金を減らす。これは始まりに過ぎない」と述べた。

  前任のバイデン氏を「アメリカ史上最悪の大統領」と名指しながら指摘した事柄の一つが、犯罪歴のある不法移民を強制送還させなかったことだっと述べた。議会の傍聴席にいる、不応移民者に娘が殺害された母親と姉妹を紹介しながら「悲劇を繰り返してはならない」と話し、その上で「わが国への侵略を撃退するためにアメリカ軍と国境警備隊を配備した。その結果、先月の違法な国境越えは、これまでで最も低い水準だった」と語った。政策をアピールするなかなか凝った演出だった。

  意外なことも語られた。つい先日、ウクライナのゼレンスキー大統領と口論となりホワイトハウスでの首脳会談は決裂、そしてアメリカはウクライナへの軍事支援を一時停止とした。これについてトランプ氏は施政方針演説のこの日、ゼレンスキー氏から手紙を受け取ったことを明らかにした。 手紙には「恒久的な平和に近づくためにできるだけ早く交渉の場に着く用意がある」「平和を手に入れるためにトランプ大統領の強い指導力の下で協力する用意がある」と書かれてあったと述べた。さらに、首脳会談の後で署名する予定だった鉱物資源の共同開発をめぐる協定については「いつでも署名する用意がある」と表明があったと語った。

  ゼレンスキー氏からの手紙に対し、トランプ氏は「彼がこの手紙を送ってくれたことに感謝する」と述べた。さらりとした語り口調だったが、この一件ではトランプ氏の外交姿勢も問われていただけに、本人も次なるロシアのプーチン大統領との交渉の道が拓けたのではないだろうか。

  施政方針演説が終わったのは日本時間で午後1時少し前。およそ1時間40分におよんだ。辛口で言えば「自画自賛」の演説だったが、傍聴席にいる関係者や政策担当者を次々と紹介しながら演説の内容にリアル感を持たせる、とても凝ったストーリー仕立てになっていた。

⇒5日(水)午後・金沢の天気    あめ

☆バイデン大統領 就任100日目の演説

☆バイデン大統領 就任100日目の演説

   テレビニュース(4月29日)がアメリカ、バイデン大統領の施政方針演説の様子を報じていた。演説のキーワードは何かと思い、ホワイトハウスの公式ホームページをチェックする。「Remarks by President Biden in Address to a Joint Session of Congress」(バイデン大統領の上下両院合同会議での演説)と題するページに演説の全文が掲載されていた。

   「アメリカらしい」と感じさせたのが冒頭での言葉だ。「Madam Speaker, Madam Vice President — (applause) — no President has ever said those words from this podium.  No President has ever said those words, and it’s about time.  (Applause.) 」

   演壇に立ったバイデン氏はまず自分の後ろに並ぶナンシー・ペロシ下院議長と上院議長でもあるカマラ・ハリス副大統領にあいさつした。確かに、大統領の議会演説で後ろの上下院両議長がともに女性という光景はアメリカ史上初めてのこと。「Madam Speaker, Madam Vice President」で議場内は拍手や歓声で沸いたに違いない。

   演説で最初に触れたのは、「100年で最悪のパンデミックだ。大恐慌以来最悪の経済危機。南北戦争以来最悪の民主主義への攻撃だ」と表現したコロナ禍への対策だった。演説は就任100日目の日でもあった。「就任100日以内に1億回のワクチンを注射すると約束したのに、100日間で2億2000万回以上のワクチンを接種したことになる」と実績を。そして、アメリカの世帯の85%に1400㌦の救済小切手を送り約束を守ったと強調している。

   次に述べたのが経済の取り組みについての実績だ。「経済はこの100日間で130万人以上の雇用を生み出した。100日でこの数字は史上最多の雇用を創出だ」。そして、産業の内製化の方針を打ち出している。「考えてみてほしい。風力タービンのブレードを北京ではなくピッツバーグで製造できない理由はない」「だから皆さん、アメリカの労働者が電気自動車やバッテリーの生産で世界をリードできない理由はない。私たちの国には世界で最も聡明で訓練された人々がいます」と。産業の内製化はトランプ前大統領も強調していたが、主語を労働者に置いているところが民主党のバイデン氏らしい表現だ。

   中国との関係については、習近平国家主席のことを「autocrats」(独裁者)と称して、習氏との電話会談の印象をこう述べている。「彼をはじめとする独裁者たちは、民主主義が21世紀には独裁国家と競争することはできないと考えている。なぜなら、コンセンサスを得るのに時間がかかりすぎるからだ」と。

   富裕層への課税の話も具体的な数字で述べている。「私は時々、民主党の友達と口論する。あなたは億万長者にも百万長者にもなれるが、相応の分け前は払うべきです、と。昨年、アメリカの大手企業の55社が連邦税を納めなかった。これら55社の利益は400億㌦を超えた。スイスやバミューダ、ケイマン諸島のタックスヘイブンを通じて脱税する企業も多い。利益の海外移転に対する税金の抜け穴や控除の恩恵も受けている。それは正しくない」「2000万人のアメリカ人がパンデミックで職を失った。一方、アメリカの650人のビリオネアは純資産を1兆㌦以上増やした。今その増やした資産は4兆㌦以上の価値になっている」

   後半になって、中国への警戒感をあらわにしている。習氏との電話会談を再度持ちだす。「私は『われわれは、中国との競争を歓迎します。私たちは対立を求めているのではない』と述べ、アメリカの利益を全面的に守ることを明確にした。中国が行っている国有企業への補助金、技術や知的財産の盗用など、アメリカの労働者や産業を弱体化させる中国の不公正貿易の慣行に立ち向かう」「また、私は習氏に欧州におけるNATOと同じように、インド太平洋地域でも強力な軍事的プレゼンスを維持し、紛争を開始するのではなく予防するつもりだと伝えた」

   さらに、安全保障面での言及。「私たちは世界史上最大の戦闘部隊を持っている。私は、息子を戦争地帯で働かせることの意味を知っている40年ぶりの大統領だ」と。国内問題では、「銃暴力の蔓延からアメリカ国民を守るために私は全力を尽くすが、議会も行動を起こす時だ」と強調した。

  「We can do whatever we set our mind to do if we do it together.」(みんなが心を一つにして取り組めば、アメリカにできないことなど何もない)と述べて、66分の演説を終えた。バイデン氏の演説は数字を駆使して、具体的で実に分かりやすい内容だった。性格そのものが演説に表れているのかもしれない。ただ、アメリカ大統領の演説として、刺激的な言葉で国民に訴えてもよいのではないか。たとえば、ジョン・F・ケネディが「Ask not what your country can do for you―ask what you can do for your country.」と語ったように。(※写真は「The White House」公式ホームページより)

⇒30日(金)朝・金沢の天気     はれ時々くもり