#新型コロナウイルス

★静かなる年末年始(6)「人と社会の基礎疾患」

★静かなる年末年始(6)「人と社会の基礎疾患」

   働き盛りの50代でも高血圧症や高脂血症、糖尿病などの基礎疾患があると、午後3時ごろに呼吸が荒くなり、容体が急変し、その90分後には亡くなるものなのか。これが新型コロナウイルスの怖さなのか。今月27日に亡くなった国会議員、羽田雄一郎氏の死亡が連日メディアで報じられている。自らも高血圧症であり、他人事ではないと感じている。高血圧症の場合は急性心不全という突然死の恐怖がつきまとうが、今回、ウイルスがどのように基礎疾患に作用して人を死に至らしめたのかぜひ解明してほしい。

   話は変わる。この一年で「社会の基礎疾患」というものを感じさせたのはクマの街中での出没だった。ことしは全国的にクマの出没が多発したが、石川県だけでも目撃・痕跡情報は1077件(12月21日現在)。金沢市がもっとも多く296件、以下小松市252件、加賀市197件と続く。クマによる人身被害も10件15人に上っている。出没が多発した3市は医王山や白山麓にあり、冬眠前にクマが食べるドングリの実が凶作だったことから人里に下りてきたのが原因とみられる。県では自宅庭のカキの果実を摘んでおくなどの対策を呼び掛けている。

   山から人里に下りてきているのはクマだけではない。金沢では住宅街にサル、イノシシ、シカが頻繁に出没している。エサ不足に加え、中山間地(里山)と奥山の区別がつかないほど里山が荒れ放題になっていて、野生動物がその領域の見分けがつかず、人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。繰り返しになるが、里山の過疎化で人がいなくなり、野生動物たちは山から下りてきて作物を狙い始めた。

   過疎化だけではない。日本人の「自然離れ」もあるのではないだろうか。かつて、里山は木材や山菜などを調達する資源の場として、また、保水など環境保全の場として森を利用してきたが、その意識が薄らいでいる。また、文化資源としての利用も欠けている。川遊びや森を利用した遊びの文化が、地方でも少なくなっているのではないだろうか。子どもたちの「自然離れ」が進めば、近未来の里山はさらに奥山と化して、人里に野生動物の出没も増えることは想像に難くない。

   UNEP(国連環境計画)がこのほどまとめた報告書に「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉が出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感性病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶ。人々の生産活動が野生動物の領域であるジャングルなどの山間地に入れば、それだけ野生動物との接触度が増えて、感染リスクが高まる、という内容だ。エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIVなど、これまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   以下、少々乱暴な言い方になる。日本では今後、逆のズーノーシスが起きる可能性が高まっているのではないか。人々が自然から離れ、これまで手入れしてきた里山を放置して荒らすというのはある意味で「社会の基礎疾患」とも言える。放置が広がれば野生動物の領域がそれだけ広がり、人里や住宅街に接近することになる。切るべき樹木など伐採することで中山間地=里山を保全するなど行政の政策として「手当て」をしなければ、野生動物が新たな感染症をもたらすことになるかもしれない。

⇒29日(火)午前・金沢の天気     くもり

☆静かなる年末年始(5)「仮面浪人あれこれ」

☆静かなる年末年始(5)「仮面浪人あれこれ」

   先日、石川県内のある高校の校長と話していて、「大学でのオンライン授業に嫌気がさして別の大学に行こうと準備している学生もこのコロナ禍で相当いるのではないか」と切り出すと、校長は「仮面浪人ですね」とうなずいた。じつはこのとき初めて「仮面浪人」という言葉を耳にした。それ以降、金沢大学でこの言葉を持ち出しているが、他の大学を目指す学生がいることは知っているが仮面浪人という言葉は初耳という教員も多い。社会的にそれほど知られてはいないが、言葉としては確かに存在すると認識を改めた。

   仮面浪人は「滑り止め」の大学に在籍しながら他の大学への再受験を目指すが、これはある意味で「二重苦」にもなり相当な覚悟が必要だろう。普通の「浪人」は大学進学のために予備校に通ったり、自宅で受験勉強に専念できる。が、仮面浪人は大学に在籍しながらなので、取得単位を最小限に抑えて講義に出たりと様々な工夫をしなければならない。いっそうのこと、休学届を出すという手もある。また、大学での友人関係やサークル活動に距離を置いての生活になるので別のプレッシャーもある。

   このような状況下でさらに難易度の高い大学を目指すとなると、成功率はそれほど高くはないだろうと想像する。ただ、コロナ禍で多くの大学はオンラン授業を継続しているので、自宅や学生アパートにいる時間が多くなる。すると、滑り止めの大学にこのままいるより第一志望へ再度チャレンジと、仮面浪人への気持ちも膨らんでくるかもしれない。

   ちなみにネットで「仮面浪人」を検索しても、それほど多くは出てこない。また、年代をさかのぼっても2010年以降ばかりだ。2015年2月15日付「withnews」で「三浦奈保子、憧れの彼と東大に行きたい! 仮面浪人からの合格記 」の見出しで、タレントの三浦奈保子さんのケースを取り上げている。朝日、読売、日経、産経のマスメディア各社のホームページで検索しても2015年以上はさかのぼれない。ということは、仮面浪人という言葉はもともとあったものの、withnewsのこの記事がきっかけで広まったのかもしれない。

   産経ニュースWeb版での検索で気になる記事があった。2017年7月25日付で、この日に開かれた参院予算委で民進党の桜井充氏が加計学園問題を追及した下り。「要するに加計学園に入っても浪人して、要するにそこの中で浪人して『仮面浪人』とわれわれの時代呼んでいたが、それをして、大学受験することも可能ですよと言って集めているんですよ」。桜井氏は1956年生れ。同氏が大学生のころ「仮面浪人」と「われわれの時代呼んでいた」と発言している。1970年代にこのような言葉があったとは信じがたいのだが。

(※写真は、2018年9月に学生たちを連れての能登スタディツアーで訪問した天日陰比咩神社での能面を撮影。記事との関連性はない)

⇒28日(月)午前・金沢の天気     くもり

★静かなる年末年始(4)「水際の変異種コロナ」

★静かなる年末年始(4)「水際の変異種コロナ」

       変異種化した新型コロナウイルスがイギリスなど世界各国で確認されていることから、政府はあす28日から、外国人の新規入国を来月末まで停止すると発表した(内閣官房公式ホームページ・新型コロナウイルス感染症対策26日付「水際対策強化に係る新たな措置」)。政府間で合意している11の国・地域(中国、韓国、台湾、タイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、ミャンマー、カンボジア、ラオス、ブルネイ)の在留資格のあるビジネス関係者や教授職・留学生などについては例外的に新規入国を認める、としている。

         「水際対策強化」と銘打った措置だが、すでに後手ではないだろうか。そもそも、上陸する直前に防ぐことを「水際作戦」などと言ったりする。厚生労働省は今月26日に、イギリスから帰国したパイロットの男性と家族の女性(2人は東京在住)の変異種の感染を確認したと発表している。もう、国内で人から人への変異種の感染が初まっている。「水際対策強化」というのであれば、イギリスで変異種の感染が確認された時点で措置すべきではなかったろうか。イギリスは今月19日、ロンドンを含むイングランド南東部の大部分が対象に大規模なロックダウン(都市封鎖)に入った。日本も本来、このタイミングで措置すべきだった。1週間遅い。

   そもそも論だが、パンデミックとして広がった背景には、中国の旧正月の春節の大型連休(1月24日から)で日本を含め世界中に中国人観光客が訪れた。春節の前、1月20日、中国の習近平国家主席は武漢におけるコロナ禍の感染情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した。習主席の指示は「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めるよう」と求めたものだった。それは、春節での海外渡航を全面的に禁止するものではなかった。 

          習主席の指示を受けた中国の衛生当局は1月24日、武漢での患者数が830人、死者は25人に達したと発表した。WHOは同23日の緊急会合で、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言は時期尚早との判断を下した。同月14日にWHOは武漢の新型コロナウイルス感染症で、主に家族を中心として限定的なヒトからヒト感染が起こっている可能性があり、広範囲なアウトブレイクが発生する可能性があることを指摘していた(国立感染症研究所公式ホームページ)にもかかわらず、である。

       日本で認められた新型コロナウイルスの発症例は、武漢に滞在中に発熱があり、1月6日に帰国した日本人男性が同15日になって陽性と確認された。感染第一例目となった。WHOに対しては翌日16日に国際保健規則に基づいて症例の発生を通告した。その後、春節の旅行で東京を訪れていた武漢に住む40代の中国人男性が、同22日になって東京都内の医療機関を受診したところ、肺炎の兆候がみられたため入院、24日に感染が確認された。

   これまでブログで述べてきた新型コロナウイルス感染をたどたってみると、パンデミックになるべくしてなったと思えてならない。春節に始まったパンデミックは止まない。(※写真は厚生労働省公式ホームページより)

⇒27日(日)夜・金沢の天気     くもり

☆静かなる年末年始(1)「WHOの忖度コロナ禍」

☆静かなる年末年始(1)「WHOの忖度コロナ禍」

   きょう24日、大学当局から新型コロナウイルス対策として、「静かな年末年始」を要請する通達がメールで届いた。そのポイントは2つ。1)「飲食は、家族、いつもの仲間と」。飲食は家族、いつもの仲間と短時間で開催し、隣の席との間隔の確保や、会話時のマスク着用など、基本的な対策を徹底すること。2)「帰省は、慎重に検討を」。帰省については、慎重な検討を要請する。特に発熱などの症状がある場合は帰省を控えること。どうしても帰省が必要な際は「三密」回避を含め基本的な感染対策を徹底する。また、大人数での会食を控え、高齢者への感染につながらないよう注意すること。要は、忘新年会は避け、帰省もしない方がよい、と。

   確かに2020年の年末、そして2021年の年始はこれまでとはまったく異なった「静かなる」年越しになるだろう。そこで、このブログでは「静かなる年末年始」として題して、この一年を振り返り、そして来年を占ってみたい。

   このブログで「新型コロナウイルス」という言葉を初めて用いたのはことし1月20日付だった。「中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、当初は感染が限定的という報道だったが、それが直近の報道だと人から人への感染に広がっているようだ。深刻さを物語るように、中国で肺炎患者が増えていることを受けて、WHOの事務局長が22日にスイスのジュネーブで緊急の会合を開くことになったと報じている。まるで、パンデミック(pandemic)、世界的な感染の広がりを示唆する動きではないのか。」と述べた。

   自慢する訳ではないが、パンデミックはそのときオリジナルな言葉として使った。その後、WHOのテドロス事務局長が「パンデミックと表現できるとの判断にいたった」とパデミック宣言を表明し世界に注意を呼びかけたのは3月11日だった=写真・BBCニュースWeb版=。当時、中国にとどまらずイタリアや韓国、イランなど世界の広範囲に拡大し、世界で感染者数が12万人、死者は4380人に上っていた。

   WHOは1月31日付の公式ホームページ「WHO declares the new coronavirus outbreak a Public Health Emergency of International Concern.」(WHOは新型コロナウイルスの発生を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態として宣言する)と注意喚起はしていた。この時点でパンデミック宣言をしていば状況が違っていただろう。なにしろ、中国では1月24日から旧正月の春節の大型連休に入り、日本を含め世界中に中国人観光客が訪れ、コロナ禍が世界に拡散したのだ。

   このとき、テドロス事務局長のコメントも悪評を買った。新型の病気が過去にないほどの大流行につながっている。だが、中国の対応も過去にないほど素晴らしい。中国の尽力がなければ中国国外の死者はさらに増えていただろう。中国の対応は感染症対策の新しい基準をつくったともいえる」「この理由で緊急事態を宣言する。中国への不信感を示したわけではない」「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(1月31日付・日経新聞Web版)。WHOによる中国への忖度(guesswork)が世界に暴露されたこの一年だった。

⇒24日(木)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★コロナ禍、大雪が「医療崩壊」に拍車

★コロナ禍、大雪が「医療崩壊」に拍車

   けさ大学からの一斉メールで、鳥インフルエンザウイルスに関する注意喚起の文書が届いた。この鳥インフルエンザウイルスは新型コロナウイルスと同時に日本で猛威をふるっている。鳥インフルエンザウイルスは、野鳥観察など通常の接し方では、ヒトに感染しないと考えられているが、どのような注意喚起なのか。

   「野鳥との接し方について」とPDF文書だ、「○ 死亡した野鳥など野生動物は、素手で触らないでください。また、同じ場所でたくさんの野鳥などが死亡していたら、お近くの都道府県や市町村役場にご連絡ください。」「○ 日常生活において野鳥など野生動物の排泄物等に触れた後には、手洗いとうがいをしていただければ、過度に心配する必要はありません。」「○ 野鳥の糞が靴の裏や車両に付くことにより、鳥インフルエンザウイルスが他の地域へ運ばれるおそれがありますので、野鳥に近づきすぎないようにしてください。 特に、靴で糞を踏まないよう十分注意して、必要に応じて消毒を行ってください。」「○ 不必要に野鳥を追い立てたり、つかまえようとするのは避けてください。」

   金沢大学は中山間地、いわゆる里山に位置するため、バードウオッチィングなどには最適だ。双眼鏡を手にして山歩きをする学生たちの姿も見かける。そして、実際に山に入ってみると、鳥の死骸や排せつ物を見かけることがある。ただ、山道に落ちていると、知らぬ間にスニーカーで踏んづけているものだ。そう考えるとこの時季はうかつに山に入れない。そして、駐車場に車を停めておくと、鳥のフンがフロントガラスに落ちていることがある。これもガソリンスタンドで念のために洗車をした方がよさそうだ。あれこれ考えながら文書を読んだ。

   さらに鳥インフルエンザウイルスと同時に、シベリアから強烈な寒気団も近づいている。北陸地方はあす15日から16日ごろにかけて大雪となる恐れがあると予報が出ている。ここ数年、大雪になると気象予報士が使う言葉に「JPCZ」がある。日本海寒帯気団収束帯(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)のこと。シベリアからの寒気団が北朝鮮の最高峰である白頭山(標高2744㍍)にぶつかって分断されるが、その南の下で再び寒気団がぶつかって収束することで、帯状の雪雲の列となって日本の本州へ流れ込んでくるそうだ。2017年12月17日に降った大雪では、金沢市内で積雪が30㌢に達した。

   今回も大雪となると、つい案じてしまうのが雪道での交通事故だ。12月中頃では、金沢でもスタッドレスタイヤなど雪道用タイヤの取り換えに間に合っていない乗用車やトラックが多い。ましてや、16日に雪マークがついている名古屋では危険だ。凍結路面などでスリップ事故が多発するのだ。新型コロナウイルス感染で病床数にそれほど余裕がないところにきて、さらに交通事故で重傷患者が運ばれてきたら大変だ。「医療崩壊」に拍車をかけることになるのではないか、とさえ思ってしまう。

(※写真は、2017年12月、自宅近くの市道でスリップ事故で電信柱に衝突した貨物トラック)

⇒14日(月)午前・金沢の天気    くもり時々あめ 

    

★コロナ禍でも「あえのこと」は絶やさず

★コロナ禍でも「あえのこと」は絶やさず

   新型コロナウイルイスの感染拡大で能登半島でもイベントがほとんどが中止となった。何百年という歴史があるキリコ祭りも中止となった。ただ、家々で毎年12月5日に営まれる農耕儀礼「あえのこと」だけはささやかに行われた。「あえのこと」は田の神をご馳走でもてなす家々の祭りを意味する。2009年9月、ユネスコ無形文化遺産に単独で登録されている。   

   田の神はそれぞれの農家の田んぼに宿る神であり、農家によって田の神さまにまつわる言い伝えが異なる。共通しているのが、目が不自由なことだ。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂でうっかり目を突いてしまったなど諸説ある。目が不自由であるがゆえに、それぞれの農家の人たちはその障害に配慮して接する。座敷に案内する際に階段の上り下りの介添えをし、供えた料理を一つ一つ口頭で丁寧に説明する。もてなしを演じる家の主たちは、自らが目を不自由だと想定しどうすれば田の神に満足していただけるのかと心得ている。

   「あえのこと」を見学すると「ユニバーサルサービス(Universal Service)」という言葉を連想する。社会的に弱者とされる障害者や高齢者に対して、健常者のちょっとした気遣いと行動で、障害者と共生する公共空間が創られる。「能登はやさしや土までも」と江戸時代の文献にも出てくる言葉がある。初めて能登を訪れた旅の人(遠来者)の印象としてよく紹介される言葉だ。地理感覚、気候に対する備え、独特の風土であるがゆえの感覚の違いなど遠来者はさまざまハンディを背負って能登にやってくる。それに対し、能登人は丁寧に対応してくれる。もう一つ連想する言葉がSDGsだ。「誰一人取り残さない」という精神風土、あるいは文化風土をこの「能登はやさしや土までも」から感じ取る。

   去年、金沢大学で「あえのこと」見学ツアーを実施した。ブラジルからの女子留学生は「とても美しいと感じる光景の儀式でした。ホスピタリテーの日本文化を知る機会を与えていただき感謝しています」と喜んでいた。留学生たちは日本の「お・も・て・な・し」を体感したようだった。(※写真は、2019年12月5日の輪島市千枚田、川口家の「あえのこと」)

⇒5日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆チャイナ目線 3つの小話

☆チャイナ目線 3つの小話

   香港政府とバックの中国政府は2日と3日の連日、民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)周庭氏ら3人への実刑判決、中国に批判的な報道の黎智英(ジミー・ライ)氏の収監と、民主派への締め付けを強めている。ふと思うことは、中国政府は日本の今をどのように眺めているのだろうか。小話ではある。

   安倍前総理の後援会が「桜を見る会」の前日に開いた夕食会の費用負担の問題。新聞各社の記事によると、夕食会は年に1回、都内のホテルに山口県の支援者らを招き、1人5千円の会費制で開かれた。2015-19年の5回では合計2300万円の経費がかかったにもかかわらず、会費分は計1400万円で、差額の900万円は安倍氏側が補塡した。ホテルは安倍氏が代表の資金管理団体あてに補塡分の領収書を発行していた。東京地検特捜部は公設第1秘書と事務担当者の2人を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴する方向。罰金刑となり正式裁判は開かれない。

   このニュースを知った中国の要人は、「ところで、この件でいったい誰が損をして誰が得をしたのか。支援者が豪快に飲み食したツケを払った安倍氏がむしろ被害者ではないのか。それを罪に問うことは我々には理解できない。不思議な国だ」と言っているかもしれない。

   東京五輪・パラリンピックの1年延期に伴う追加経費と新型コロナウイルス対策費について、東京都が1200億円、国が700億円、大会組織委員会が700億円超を負担する方向で調整している。延期の追加経費は1700億円、新型コロナ対策費は900億円で調整している。組織委員会の森喜朗会長、都の小池百合子知事、橋本聖子五輪大臣が3者会談で決める。

   このニュースを知った中国の要人は、「森先生は大人(たいじん)で太っ腹だから、ついでに2022年2月からの北京冬季五輪の分も払ってくれないかと頼んでみよう。忘れもしない、2001年の李登輝の訪日問題では、あれほど我々が止めとけといったのにビザ発給したのは当時総理の森先生だ。あれは我々にとって『貸し』も同然だから、文句も言わないだろう」と言っているかもしれない。 

   ジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボードによると、新型コロナウイルスで亡くなった人の数は、世界全体の累計で150万人となった。コロナ禍の対応をめぐり、菅総理は国連の特別総会でビデオ演説し、「危機を乗り越えるべく『団結した世界』を実現しなければならない」と訴えたうえで、WHOの検証や改革に協力していく考えを示した(12月4日付・NHKニュースWeb版)。

   このニュースを知った中国の要人は、「我が国の社会学者が講演で、コロナ禍で中国の死者4千人は20万人のアメリカに比べれば1人も死んでいないに等しい、中国の人口14億人のうち4千人が死んでも、誰も病気になっていないのと同じだと語ったそうだが、偉大な指導者・毛沢東同志はかつて革命のためなら『1億死んでも構わない』とおっしゃった。数字はあくまでも演技、だからいちいち細かなコロナの数字なんて我が国では出さない。オリンピックもあることだし、菅総理もWHOにドンと100億㌦出すと言うべきではないか」と言っているかもしれない。 

⇒4日(金)午後・金沢の天気     はれ

☆勇気ある発言

☆勇気ある発言

           これは実に勇気のある発言だと感じ入った。ロイター通信Web版日本語(11月27日付)によると、WHOで緊急事態対応を統括するマイケル・ライアン氏が、新型コロナウイルスの起源が中国「外」とする主張について、かなりの憶測だという見方を示した。 中国は国営メディアを使って「コロナの起源が中国」との見方を否定する情報の拡散を続けている。

   さっそくWHO公式ホームページをチェックすると、27日の記者会見の動画が掲載されている。30分過ぎごろからのオンラインによる記者の質問で、「中国は、ウイルスは去年暮れに武漢の海鮮市場で確認されたが、それ以前に海外に存在していたと主張しているが、WHOの見解を述べてほしい」(意訳)と。これに対し、ライアン氏は「コロナウイルスが中国で発生しなかったとの主張はかなりの憶測で、公衆衛生の観点から、ヒトの感染が確認された場所から調査を始めるべきことは明白だ」(意訳)と述べ、WHOとしてウイルスの起源を調べるため、専門家らを武漢の食品市場に派遣する方針だと述べた。

   パンデミック以降、WHOの記者会見をたまにチェックしているが、ライアン氏は3月18日の会見では、アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼んでいることについて、「ウイルスを特定の国に関連させないよう言葉遣いに注意することが重要だ」と批判した。当時は中国寄りの発言との印象だったが、今になって考えれば、実に的を得た回答ではある。科学的な論拠を経ずに、政治が外交プロパガンダとしてウイルスを使うことに違和感を隠さない、そのような人柄を感じる。

   ただ、余計な心配かもしれないが、かなり「外圧」が今後、ライアン氏にかかるのではないだろうか。中国からだ。そもそも、WHOと中国の関係性が疑われたのは今年1月23日だった。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国で感染者が出ていたにもかかわらず、この日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、テドロス事務局長は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べていた(1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。

   さらにWHOが中国寄りの姿勢を露わにしたのは今回の年次総会だった。WHOに加盟していない台湾がオブザーバーとしての参加を目指し、中南米の国も参加を求める提案をしていたが、総会の議長は非公開での協議で提案の議論は行わなかった。このため、台湾のオブザーバー参加は認められなかった。台湾の参加はアメリカや日本などが支持した一方で、中国は強硬に反対していた(11月10日付・NHKニュースWeb版)。テドロス氏を通じた、中国からのライアン氏への圧力は心配ないのか。

⇒30日(月)午後・金沢の天気   はれ時々くもり 

☆この株高、「ワクチンバブル」なのか

☆この株高、「ワクチンバブル」なのか

   東京株式の日経平均はきのう27日も107円上げ2万6644円で終えた。メディア各社は、1991年4月以来およそ29年半ぶりの高値を連日で更新したと報じている。株高は日本だけではない。ニューヨークのダウも今月24日に初めて3万㌦の大台に乗せている。

   振り返ってみると、新型コロナウイルスのパンデミックによる世界的な景気後退の懸念や、ロシアとサウジアラビアの対立による原油価格の暴落なども絡まり、全体が「弱気相場」に入っていた。とくに3月に入り、ニューヨークの株価指数「S&P500」の下落率が7%を超えると自動的に売買を停止する「サーキットブレーカー=Circuit Breaker」が何度か作動し、3月23日にはダウが1万8591㌦にまで落ちていた。東京株式も3月19日に1万6500円まで下がり、ことしの最安値だった。

   今でもコロナ禍は世界、とくにアメリカでの猛威は止まない。ジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボード(日本時間28日午前9時現在)によると、アメリカの感染者総数は1307万人、死亡者は26万人と断トツに多い。そして日本でもきのう27日は全国で2531人の新規感染者が発表され、2日連続で2500人超だ。にもかかわらず、年末が近づくにつれて株価が上がり、日経平均もダウも株価は絶好調だ。この現象はいったい何んなのか、そのファクターは何か。

   マーケット関係の記事を読むと、アメリカではコロナ対策で政府や連邦準備理事会(FRB)がつぎ込んだマネーが膨張して株式市場に流れ込んでいるのではないかという論が散見される。ただ、3月の安値からの上昇率は6割以上に達する。マネーの流入にしては、最近の株価の加速性を見ると時期的にアンバランスのように思える。アメリカ大統領選があった11月3日以降が上昇のテンポが速いので、バイデン効果かとも推測する。

   むしろ、ワクチン開発がアメリカの期待度を高めているのかもしれない。アメリカの株価が持ち直してきたのは、ワクチン開発を国家プロジェクトで進める「ワープ・スピード計画」が8月以降で臨床試験が本格化したタイミングだった。それが11月に入り早期実現のメドが立ってきた。「トランプ大統領は、新型コロナウイルスのワクチンの供給が来週とその翌週に開始する見通しだと述べた」「感謝祭の祝日に合わせて行われた海外駐留米軍兵士とのテレビ会議で語った。当初はコロナ対応の最前線に立つ人たちや医療従事者、高齢者に供給されると述べた」(11月27日付・ロイター通信Web版日本語)。

   ワクチンに関しては、アメリカの製薬会社は90%以上の有効性が確認されたとして、すでに緊急使用許可を政府に申請している。アメリカで12月からワクチン投与が始まれば、コロナ禍が社会や経済に及ぼしている影響が大幅に緩和されるとの期待が高まるだろう。ただ、ワクチン頼みだと、その効果の持続性や副作用などのマイナス面が出ると反動も大きく、経済パニックが再来し、ワクチンバブルも一瞬にして弾ける。アメリカのワクチン効果が国際社会に及ぼす影響を観察していきたい。

⇒28日(土)午前・金沢の天気     あめ

★「テドロス氏が武器調達を支援」の衝撃

★「テドロス氏が武器調達を支援」の衝撃

           世界で新型コロナウイルスの感染が再拡大している。ジョンズ・ホプキンス大学のサイト「コロナ・ダッシュボード」(11月19日付)によると、世界での感染者は累計5680万人、国別でもっとも多いのはアメリカの1169万人だ。亡くなった人も世界で累計135万人で、うちアメリカは25万人となっており。欧米での感染の広がりも尋常ではない。フランスの感染者は213万人とブラジルに次いで世界で4番目に多い。人口6200万人、日本のほぼ2分の1ながら、日本の感染者数12万人と比べれば、感染の勢いの強さが分かる。

   欧米などはコロナ禍以前から一般的にマスクを着ける習慣がなく、着用が義務化されていない国や地域などでマスクをしないまま人との接触を続けるケースが相次いでいるようだ。ヨーロッパでのマスクの着用率はまだ60%以下で、このままでは外出制限の回避は難しく、マスクの着用率を上げることが大きな課題となっているようだ(11月20日付・NHKニュースWeb版)。

   WHO自体もマスクを各国に推奨したのは6月5日だった。それ以前は、健康な人がマスクを着けても感染を予防できる根拠はないとしていた。そもそも、WHOのテドロス事務局長がマスクをしている画像を見当たことがない。

   そのテドロス氏の「画策」が母国のエチオピアでクローズアップされている。AFP通信Web版日本語によると、エチオピア軍の参謀長は今月19日の記者会見で、政府軍と対立している同国ティグレ州の政党「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」にテドロス氏が武器調達を支援していると批判した。今月4日、TPLFが政府軍の基地を攻撃したのに対して、アビー首相が反撃を命じ、戦闘が続いている。テドロス氏はティグレ人でTPLFの支援に回っているというのだ。アピー首相は2019年ノーベル平和賞を受賞している。

   エチオピアでの政府軍とTPLFによる戦闘について、ユニセフ(国連児童基金)も懸念していて、「今後、数週間のうちに20万人以上が国を逃れることが予想される」と、人道支援を呼びかけた(11月20日付・NHKニュースWeb版)。

   テドロス氏が武器調達を支援をしていることが事実とすれば、どのようなルートで行っているのか。あるいは、内戦を煽る目的は何か。関係が取り沙汰される中国の関与はあるのか。今後テドロス氏をめぐるニュースの視点はここに向かっていくだろう。それより何より、コロナ禍のパンデミックがピークに達しているときに、会見でこのようなことが晒されること自体が不徳のいたすところ、ではある。

(※写真はことし8月21日のWHOの記者ブリーフィング=WHO公式ホームページ) 

⇒20日(金)夕・金沢の天気     あめ