#新型コロナウイルス

★ある「オリンピック銘柄」の話

★ある「オリンピック銘柄」の話

   話は少々長くなるが、自身が「オリンピック銘柄」ということに気が付いたのは、2019年1月の第198回通常国会で安倍総理は施政方針演説がきっかけだった。演説の中で、能登半島の農家民宿で組織する「春蘭(しゅんらん)の里」(能登町)の取り組みを紹介した。「地方創生」の項目の中で、「田植え、稲刈り。石川県能登町にある50軒ほどの農家民宿には、直近で1万3千人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、アメリカ、フランス、イタリア。イスラエルなど、20ヵ国以上から外国人観光客も集まります。」と例に挙げ、「観光立国によって全国津々浦々、地方創生の核となる、たくましい一大産業が生まれた」と。

   春蘭の里はかつてこのブログでも取り上げたことはあるが、最近はごぶさただった。地域にある50軒ほどの農家民宿が実行委員会をつくって、インバウンド観光の里山ツアーや体験型の修学旅行の受けれを積極的に行っている。最近では民宿経営の人たちが自動翻訳機を使いこなして、インバウンド観光客に対応していることを知った。

   現地を訪れ、春蘭の里の代表から話を聞いた。「ポケトークだと会話の8割が理解できる。すごいツールだよ」と。見せてくれたのは、74言語に対応した音声翻訳機「ポケトーク」だった。この翻訳機を使うようになって、年間20ヵ国ほどから2000人余りを受け入れている、という。70歳や80歳のシニアが自動翻訳機を使いながら、笑顔でコミュニケーションを取っている姿は、言語の壁を楽々と超える文明の利器を感じさせた。

    そして、昨年10月、観光庁の観光振興に貢献した団体、個人を表彰する第11回観光庁長官表彰で、「春蘭の里」、そして、ポケトークを開発した「ソースネクスト」が同時に表彰を受けた。春蘭の里は農家民泊を運営するグリーンツーリズムの草分け的存在として、そしてソースネクストは技術による観光振興に貢献したとしてそれぞれ評価された。

   春蘭の里の代表と再度会った。「私たちが使っているポケトークは、来年の東京オリンピックでもっと有名になるよ」と話した。なるほど、オリンピックでは海外からの観光客が見込める。2020年は訪日外国人が3430万人(JTB)との見通しもあった。こうなると、ポケトークの需要がさらに高まるに違いない。ソースネクストは「オリンピック銘柄」だと気が付いた。この話を聞いて12月11日調べると、株価は480円だった。グーグルがスマホ向けの翻訳アプリを発表し一時的に下げたものの、その後は値を上げことし1月16日には590円をつけた。オリンピック銘柄は強いと思った。

   ところが、新型コロナウイルスの感染拡大が世界に広がると同時にソースネクトは値を下げ続ける。東京オリンピックそのものの開催が危惧され、そのまま株価に表れた。WHOのテドロス事務局長による「パンデミック宣言」は今月12日(日本時間)。13日には224円の底値となった。その後、IOCのバッハ会長が「延期や中止の理由はない」とコメントして値はやや戻したものの、きょうはオリンピック延期もありうるとの情勢で263円に下げている。新型コロナウイルスに翻弄される「オリンピック銘柄」の話である。

⇒23日(月)夜・金沢の天気   くもり

☆パンデミックの経済リスク

☆パンデミックの経済リスク

   新型コロナウイルスの感染拡大で自らも「巣ごもり」生活が続いている。外出はするが、人混みを避けている。そのような日常の中でささやかな楽しみが花を活けることかもしれない。きょうも玄関に黄色い花のヒュウガミズキと紅色のヤブツバキを飾ってみた=写真=。楚々とした雰囲気のヒュウガミズキと、存在感を示すようなヤブツバキの対称性が玄関という空間を演出してくれている。

   今月15日付のこのブログでも述べたが、この花を見ていて思うことは人の世の無常である。花は毎年変わらず咲くが、人の世は変わってしまう。本来ならば春の訪れを祝うかのように人の心はうららかになり、街も華やいでくる。ところが、人の世は新型コロナウイルスの流行(はや)りで滅入ってしまっている。人々はフェイス・トゥ・フェイスではなく、マスク・トゥ・マスクで対話し、世界は互いに国境を閉ざしている。

   今回のパンデミックで経済リスクが顕在化してきたようだ。日本をはじめ各国の中央銀行が事態がリーマン・ショックのような金融危機につながりかねないとの見方が強めている。ニューズウィーク日本語版(20日付)で、アメリカの中央銀行であるFRBが「通貨スワップ新たに韓国など9つの中銀と締結 新型コロナウイルス流行による混乱緩和へ」との見出しで報じていた。協定を結んだのはオーストラリア、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド(NZ)の中銀。規模は総額4500億ドル。協定の期間は少なくとも6ヵ月としている。

   各国の中央銀行が互いに協定を結ぶスワップ協定は、「通貨交換協定」とも呼ばれる。自国の通貨危機が起きた際、自国通貨の預け入れと引き換えに、協定を結んだ相手国の通貨をあらかじめ定めたレートで融通してもらう協定だ。日本とアメリカが結んでいるような無制限、無期限の国家間協定とは違う。

   コロナショックによる経済の変調によって、金融市場での決済外貨ドルが枯渇し、急激な為替変動などが生じれば世界経済全体にさらなるリスクが波及する。FRBと締結した9つの中央銀行はそのリスクの緊急性が高いとの判断したのだろう。コロナショックはまだまだ続くのか。週明けの金融、株式市場が気になる。

⇒22日(日)夜・金沢の天気    はれ

★コロナショック イタリアの現実

★コロナショック イタリアの現実

   けさのNHKニュースは政府の発表として、北朝鮮から弾道ミサイルとみられるものが日本海に向けて発射されたと伝えている。日本の領域には飛来せず、EEZ(排他的経済水域内)にも落下していないようだ。北朝鮮は新型コロナウイルスが各国に感染が拡大した今月2日と、1週間後の9日にも発射していて、今回で3度目だ。北朝鮮は弾道ミサイルの発射にどのような意図を込めているのだろうか、隣国の不安心理をさらに煽る狙いだろうか。

   このタイミングの発射に国際世論はどう受け止めるだろうか。「自国内のコロナ対策がうまくいかないので、人民の不満と不安を弾道ミサイルで逸らそうという金正恩委員長の魂胆か」とか、「北朝鮮軍は弾道ミサイルの発射能力があることをアメリカにアピールしたいだけ」「トランプ大統領に対する再会へのメッセージ」などと憶測を呼ぶだけではないか。

   国際世論は弾道ミサイルよりイタリアに向いている。同情と言ってよいかもしれない。イタリア政府は20日、新型コロナウイルスに感染した死者が前日から627人増え4032人になったと発表した。死者が4千人を超えたのは世界でイタリアが初めて(21日付・共同通信Web版)。昨夜、テレビのニュースで遺体を載せたイタリア軍のトラックが列をなして走行している様子が映し出されていた。これだけ多くの人々が感染の犠牲になったのかと想うと実に痛ましかった。    

   なぜイタリアで死亡者が多いのか。イタリアは平均寿命が男女共に80歳を超え、全人口に占める65歳以上の比率は23%とされる。高齢者の多くは持病を抱えており、死期を速めているのではないか。医療現場の混乱も相当だろう。とくに北イタリアでは感染者が急増しているので、医療従事者や医療器具が不足し、重症患者の治療に手が回らないという現実があるようだ。

   ヤフーニュースで、イギリスの「デーリー・テレグラフ紙」の記事(20日付・日本語)が以下紹介されていた。同紙はイタリア北部ピエモンテ州トリノの危機管理チームが作成した治療の実施要綱案を入手した。それによると、集中治療室が不足した場合、80歳以上の患者や元から健康状態が悪い患者には集中治療を受けさせないことになっている。医師らは集中治療を受けられない患者を事実上、死なせることになるのではないかと危惧している、と。これが現実になっているとしたらショックだ。

   この記事を読んで、2006年1月に訪れたバチカン美術館のシスティーナ礼拝堂で鑑賞した、ミケランジェロの天井壁画「最後の審判」を思い出した。壮大な壁画には400人以上の人物が描かれて、中央では再臨したイエス・キリストが死者に裁きを下していく様子が描かれる=写真=。デーリー・テレグラフの記事を読んだ多くの世界の人々はこの壁画のことをイメージしたのではないだろうか。

⇒21日(土)午後・金沢天気   はれ時々くもり

☆「巣ごもり」脱し「のとキリシマツツジ」へ

☆「巣ごもり」脱し「のとキリシマツツジ」へ

        新型コロナウイルスの感染拡大の影響で外出を控える風潮のことを「巣ごもり」という言葉で新聞やテレビメディアが紹介している。もともとは、鳥が巣の中に入ってじっとしていること、あるいは、冬を越すため虫などが土の中にもぐったままでいることの意味だ(三省堂『現代新国語辞典 第六版』)。なかなか言い得て妙かもしれない。

   この「巣ごもり」現象から派生して「巣ごもり消費」「巣ごもりグルメ」「巣ごもり銘柄」などさまざまな言葉が出てきているから面白い。確かに、近所でも宅配のトラックやバイクが普段より多く目にする。また、自身もスーパーマーケットでこれまで買わなかったカップ麺を手に取ったり、酒類などを買い込んでいる。まさに「巣ごもり消費」にシフトしてる。石川県白山市に本社があるドラッグストア(東証一部)は昨日の終値が前日より10%値を上げた。これは「巣ごもり銘柄」だろう。

   巣ごもりと言っても、鳥や虫のようにじっとしているわけではない。テレビを視聴したり、ネット検索など情報を得よう人は動いている。ネットを閲覧していて、目にとまったニュースがあった。19日に民放連(民間放送連盟)の大久保会長(日テレ会長)が記者会見し、コロナ感染拡大の影響で、テレビ視聴率が上昇しているのかとの記者からの質問に、「ここ2、3週間の視聴率などを見ていると、少し全世帯視聴率が上がっているのではないかと言うふうにテレビの編成の責任者が言っていたことを聞いたことがあります」と答えていた(19日付・スポーツ報知Web版)。これは「巣ごもり視聴」と言っていいだろう。

   巣ごもり視聴がトレンドかもしれないが、気になるのは、テレビCMが「ACジャパン」(公共広告機構)ものがやたらと多いと感じることだ。とくに、昼から夕方にかけてはスポットCMがつきにくくなっているのだろう。今月11日付のこのブログでも述べたが、電通がまとめた『2019年 日本の広告費』によると、通年で6兆9381億円で前年比101.9%と、8年連続のプラス成長。消費税率アップにともなう個人消費の落ち込みの中でも、全体を底上げしたのがインターネット広告費で、初めて2兆円超えてトップに。一方、テレビ広告費は減り、首位の明け渡した。これを電通は「広告業界の転換点」と伝えているが、その実感も伝わってきた。

  巣ごもりばかりでは気が滅入るので、きょう花展を見に金沢市の「しいのき迎賓館」に出かけた。深紅の花をつける「のとキリシマツツジ」=写真=。本来は5月に奥能登で見頃を迎えるのとキリシマツツジだが、花展を実施している地元のNPO法人と石川県立大の研究者が協力して開花時期を調整し、2ヵ月早く8分咲きのものが鑑賞できるようになった。深紅のツツジに生命力を感じる。「コロナウイルスなんかに負けるな」と励まされているようで、心が温まる。

⇒20日(金・祝)夜・金沢の天気   くもり

★もう引くに引けない東京オリンピック

★もう引くに引けない東京オリンピック

   新型コロナウイルス感染症への不安が拡大する中、アメリカ国内で銃や銃弾を購入しようとする動きが広がっているとアメリカのCNNなどメディアが伝えている。小売店で水や食料などの品切れが相次いでいることから、略奪行為に備える防衛本能だろう。銃に頼るアメリカ人の思考回路は変わらないようだ。

  いよいよ東京オリンピックがやって来る。報道によると、IOCは電話会議の形式で臨時理事会(17日)を開催し、以下のコミュニケを公式ホームページで発表した=写真=。「The IOC remains fully committed to the Olympic Games Tokyo 2020, and with more than four months to go before the Games there is no need for any drastic decisions at this stage; and any speculation at this moment would be counter-productive.」。要約すると、東京大会まで4ヵ月あり、今は抜本的な決定をすべき時ではなく、開催に向け準備を進めていく、と。

   これを受けて、オリンピックの聖火を開催都市の東京に引き継ぐセレモニーがきょう19日にギリシャで行われ、あす20日午前中に宮城県東松島市に聖火が到着する。聖火は東日本大震災の被災地の東北3県で展示され、今月26日から国内で聖火リレーがスタートする。

   ここからは憶測だ。IOCとすれば、新型コロナウイルスの感染防止のため、無観客の大会になろうとも東京オリンピックは予定通り実施するだろう。と言うのも、IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%とされる。放送権料の中でも大口とされるのはアメリカのNBCテレビだ。「刑事コロンボ」や「大草原の小さな家」など数々のヒット作を生み出したNBCが最初にオリンピックを放送したのが、1964年の1回目の東京大会。1988年のソウル大会以降は全米のオリンピックの放送権を独占している。

   では実際にNBCはどれだけIOCに払っているのか。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、21億9000万㌦とされる。日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んでIOCに払っているが、5億9400万㌦だ。アメリカと日本では人口の違いがあるので1人当たりで計算すると、アメリカの人口を3億2800万人として1人当たり6.7㌦、1億2600万人の日本は1人当たり4.7㌦なので、チカラの入れようが分かる。IOCにとって「NBC様様」なのだ。

   アメリカでは競泳、陸上、体操がオリンピックの花形競技に視聴率が集まる。先のリオ大会(2016年)でアメリカは46個の金メダルを獲得したが、競泳16個、陸上13個、体操4個と花形3種で7割を占める。これが大会に何をもたらすかと言うと、北京大会(2008年)でも問題になったが、NBCはこうした花形競技の決勝戦をアメリカのゴールデンタイムに強引にもってこようとする。つまり、日本とニューヨークの時差は13時間(サマータイム)なので、日本では午前中の決勝へとシフトしている。

   では、秋へ延期の可能性はどうか。これもないだろう。アメリカではアメリカンフットボールが始まり、メジャーリーグのポストシーズン、プロバスケットNBAとまさにスポーツの秋を迎える。NBCとすればCMスポンサーの獲得が難しくなるので、この時期でのオリンピックとの重複は避けたいだろう。

   東京ビックサイトに設営されたIBC(国際放送センター)には、来月4月になるとIOCから放送権を得たRHBs(Rights Holding Broadcasters)と呼ばれる放送メディアが続々と準備のためにやって来る。その第一陣はおそらくNBCか。IOCはもう後には引けない。無観客でも東京オリンピックは実施する。バッハ会長はそう覚悟を決めているのではないか。

⇒19日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆アメリカのブレーカーまた落ちる

☆アメリカのブレーカーまた落ちる

   仮に新型コロナウイルスの感染が世界的に治まったとして、人々はこれまで通りの消費活動に動くだろうか。今回のパンデミックで人々が学習したことは行動の抑制ではないだろうか。人との濃厚接触は避ける、行動範囲を極力抑えて合理的に動く、である。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と楽観的に評する人もいるが、熱さを忘れるにはかなり時間を要するのではないだろうか。行動の抑制が長引けば、それだけモノと金が動かなくなる。いわゆる経済の停滞だ。

   金融市場はそれを見越しているようだ。16日のニューヨーク株式市場のダウは、先週末に比べて2997㌦も安い2万188㌦だった。下落幅は今月12日を上回って過去最大となる。取り引き開始早々に15分間、自動的に売買を停止した。「サーキットブレーカー」がまた落ちた。ことの深刻さを浮き立たせたのは、前日の15日にアメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)が事実上のゼロ金利政策に踏み切ることを大々的に発表したにもかかわらず、暴落したことだ。「FRBの対策が出たものの、どう動けばよいのか。とりあえず売りだ」という市場の声が聞こえてきそうだ。

   イギリスのBBCニュースWeb版は「Coronavirus: Stocks plunge despite global central bank action」(コロナウイルス:世界的な中央銀行の行動にもかかわらず株式は急落)との見出しで伝えている=写真=。記事ではたとえ話を交えて述べている。「 バーが閉まり、フライトがキャンセルされたときに、顧客は外出してマルセイユやニューヨークに出かけようと思うだろうか」、「トレーダーが本当に望んでいるのは、ウイルスの件数がピークに達し、その後の財政回復が順調であることの兆候だ」と。FRBは経済のエンジンをふかそうとゼロ金利政策に打って出たが、事態の様子見の段階に入っている今は動けない。タイミングがよくない。記事を読んだ感想だ。

   FRBに比べ、きのうの日銀の発表はインパクトに欠けた印象だったものの、ある意味で正解だったのかもしれない。株価の下支えを狙って、ETF(上場投資信託)の購入枠を年間6兆円から12兆円に倍増させるとともに、企業の資金繰り支援も決めている。黒田総裁は「マイナス金利政策が限界で、これ以上できないということはない。深掘りが必要なら実施する」と述べていた。追加策を持っているとワンクッション置いた言い方だった。手の内をさらけ出すのではなく、説得力と安心感を持たせると言い方ではある。

⇒17日(火)朝・金沢の天気    くもり

★春風に笑む花と世の無常

★春風に笑む花と世の無常

   この時節庭の花が色とりどりに咲き始めている。フクジュソウ(福寿草)は黄色い花、カンシャクヤク(寒芍薬)は白や紫と、春を感じさせる。先日友人から花入れを頂戴したこともあって、さっそく活けてみた。

   まず床の間に飾ってみる。春先なので掛け軸は「桃花笑春風」(とうかしゅんぷうにえむ)を選んだ。唐代の詩人・崔護の漢詩の一部「桃花依旧笑春風」が元の書である。うららかな春風に揺られて咲く桃の花は、まるで微笑んでいるようだ。無心に咲く、花の美しさよ(淡交社『茶席の禅語大辞典』より)。床の間をじっと見つめていると、モモ、フクジュソウ、カンシャクヤクの花が春風にそよいでいるように思えるから不思議だ。

   さらに禅語風に、花は変わらず咲くが、人の世は変わってしまうという無常感とも解釈できる。本来ならば春の訪れを祝うかのように人の心はうららかになり、街も華やいでくる。ところが、人の世は新型コロナウイルスの流行(はや)りで滅入っている。春の選抜高校野球の快音と歓声は聞けなくなり、世界は互いに国境を閉ざしている。   

   WHOの記者発表(ジュネーブ・現地時間13日)をチェックすると、新型コロナウイルスの感染は139の国・地域に及び、感染者は13万2000人、死亡者は5000人超えとなった。テドロス事務局長は死者が5000人を超えたことを、「a tragic milestone」と述べている(WHOホームページ)。これを「悲劇的な節目」と解釈するか、あるいは「悲惨な節目」と解釈するかは別として、世の無常を感じさせる言葉ではある。

⇒15日(日)午前・金沢の天気    はれ

☆コロナ危機 アメリカの国家非常事態宣言

☆コロナ危機 アメリカの国家非常事態宣言

   新型コロナウイルスの舞台はアメリカに移ったようだ。ニューヨーク・タイムズWeb版によると、独自の集計でアメリカ国内の感染者が2100人となり、死亡は48人となった。感染が確認されたのは48州と首都ワシントン。トランプ大統領は13日の記者会見で、国家非常事態宣言を出した。これにより、FEMA(連邦緊急事態管理庁)の災害対策予算など最大で500億㌦(5兆4000億円相当)を、感染拡大の防止や各州ならびに地域行政の対策に投入することができるようになる。

   国家非常事態宣言とは別に、連邦保健機関に83億㌦を提供する緊急対策措置法も成立させる。健康保険に加入していなくてもウイルスの検査を受けられるようにする。また、休職や解雇を余儀なくされた人たちのために所得の保障や、失業保険を充当させる。すでに野党・民主党の合意を得ていて来週にも成立する。

   ニューヨーク・タイムズWeb版によると、今回の記者会見でトランブ大統領は政府の危機対策だけでなく、国民に大規模な集会を避け、出張を延期するなど「短期的な犠牲」を払うよう呼びかけた。これからの8週間はウイルス拡散を防ぐために重要であるとして協力を求めた。記事は、トランプ大統領の締めのコメントを紹介している。「“This will pass through,” Mr. Trump said, “and we’re going to be even stronger for it.”」

   意訳だが、「コロナ危機を乗り超えよう、そうすれば、私たちはパンデミックに対してさらに強くなるだろう、とトランプ氏は述べた」だろうか。国家非常事態宣言らしい、危機対応への戦闘意欲がにじみ出た言葉ではある。もちろん、来る11月の大統領選挙を意識したに違いない。   

            今回の記者会見は、ニューヨーク株式市場の取引終了前のタイミングだったこともあって大きく値上がりした。ダウの終値は前日に比べて1985㌦高い2万3185ドル。前日は2352㌦安と過去最大の値下がりだった。そこそこ値を戻したとは言え、1ヵ月前の2月12日は2万9551㌦の史上最高値をつけているので、きのう13日の終値は最高値に比べマイナス21.5%だ。今後「we’re going to be even stronger for it.”」と力強く動くかどうか。

   それにしても、民主党は大統領候補者選びの選挙がやりにくくなったのではないか。すでに、10日に予定されていたオハイオ州でのバイデン陣営とサンダース陣営の支持者集会はキャンセル。15日夜にアリゾナ州でバイデン氏とサンダース氏の討論会が開かれるが、主催するCNNは会場に観客を入れずに実施すると発表している。

⇒14日(土)午前・金沢の天気   くもり時々あめ

☆ついにパンデミック宣言、世界は

☆ついにパンデミック宣言、世界は

   WHOのテドロス事務局長は11日、新型コロナウイルス感染症について「パンデミックと表現できるとの判断にいたった」と表明した。中国にとどまらずイタリアや韓国、イランなど世界の広範囲に拡大し、これらの国からさらに他国に広がる例も多発。全世界で感染者数が12万人、死者は4380人に上っている。テドロス氏は「感染者や死者は今後も増える」と予測した(12日付・共同通信Web版)。

   パンデミック宣言を受けて、11日のニューヨーク株式市場のダウは前日比1464㌦安の2万3553㌦で取引を終えた。下げ幅は今月9日の2013㌦安に次ぐ過去2番目の大きさを記録した。パンデミックによる景気後退への懸念から投資リスクを回避する売り、「弱気相場」に入り込んだ(同)。

   さらにニューヨーク株式の流れを受けて、12日の東京株式の日経平均は一時1000円安で午前中は時1万9000円を下回る展開となった。この背景には、アメリカのトランプ大統領が感染拡大の防止措置として、イギリスを除くヨーロッパからアメリカへの入国を13日から30日間停止すると発表したことが、世界経済の減速要因ととらえられた(12日付・日経新聞Web版)。

  パンデミックは経済だけにとどまらない。ニューヨークに本部がある国連は、コロナ感染を防ぐため、今月下旬から来月にかけて予定されていた2つの国際会議の延期を決め、本部を閉鎖するかどうかについても具体的な検討に入った。国連では、今月すでに女性の地位向上を話し合う一連の会議が延期され、11日には新たに今月下旬から来月下旬にかけて開く予定だった生物多様性の保全に関する政府間協議と、先住民の権利保護を話し合う国際フォーラムなど次々と延期を決めている(12日付・NHKニュースWeb版)。

  ドイツのメルケル首相は11日の記者会見で、新型コロナウイルスのワクチンは存在しないと述べ、このままの状況が続けば「人口の6割から7割が感染すると専門家は言っている。ウイルスは身近にある」と語った。医療機関の受け入れ能力を維持するため、感染の急拡大防止に取り組んでいると訴えた(12日付・共同通信Web版)。(※写真は11日付・イギリスBBCニュースWeb版。「Italy shuts nearly all shops as WHO declares pandemic」、WHOがパンデミックを宣言したため、イタリアはほぼすべての店舗を閉鎖すると伝えている)

⇒12日(木)午前・金沢の天気    はれ

☆コロナ危機 経済のブレーカー落ちる

☆コロナ危機 経済のブレーカー落ちる

  「今さら発言」ではないだろうか。WHOのテドロス事務局長は9日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「パンデミックの脅威は現実味を帯びてきた」と述べた。一方で、依然、制御は可能だと強調し、感染国・地域が100を超えた現実を踏まえ、柔軟に対応していく考えを示した(10日付・共同通信Web版)。パンデミックはもう起きていると世界に警報を出すのがWHOのスタンスではないだろうか。

   世界の経済はすでにパニックに陥っている。週明け9日のニューヨーク株式のダウは暴落し、前週末比で2013㌦安となった。1日の下げ幅としては過去最大。ダウの下落率は7.79%で、アメリカの金融危機が深刻化したリーマンショックで2008年10月15日(7.87%)以来の大きさ(同)。アメリカ株式はどちらかと言うと、強気の相場感があったが、コロナショックに原油相場の急落が重なり一気に崩れたのではないか。

   ニューヨーク株式のダウ暴落のニュースをNHKで視聴していて、聞いたことのある横文字があった。「サーキットブレーカー=Circuit Breaker」。自動的に売買を停止する装置のようだ。ニューヨーク株式の主要500社の株価指数「S&P500」の下落率が7%を超えると自動的に15分間、売買が停止されるのが第一段階。取り引きは再開されるが、下落率が13%に達した場合は第2段階として再度15分間の売買停止。それでもさらに下がって下落率が20%を超えると第3段階としてその日の売買はすべて停止となる仕組みのようだ。今回は第一段階でのサーキットブレーカーだった。

   生活の中でも「ブレーカーが落ちる」という言葉を使うことがある。落雷や漏電、電気を使い過ぎるとブレーカーが自動的にダウンする、電気回路の遮断器のこと。フルの名称はサーキットブレーカーだ。

   「資本主義の総本山」ニューヨークで世界経済のブレーカーが落ちた。きのう2万円を割った東京株式の日経平均にどう連鎖していくのか。

⇒10日(火)朝・金沢の天気    あめ