#新型コロナウイルス

★大型連休 耐え忍んでコロナを払う

★大型連休 耐え忍んでコロナを払う

   きょうは大型連休の初日。例年なら金沢市内の兼六園や武家屋敷などは観光客でごった返すが、市内の中心街も閑散としていた=写真・上=。商店街の多くがシャッターを閉めていた。この大型連休は新型コロナウイルスを封じ込める正念場とも言える。

   金沢の観光名所の一つにもなっている「忍者寺」で有名な妙立寺の前を通ると、「一般の方の拝観を休止します」の貼り紙がしてあった=写真・中=。江戸時代の初期に加賀藩は幕府と緊張状態にあったことから、この寺を出城として造らせたという言い伝えがある。何度か入ったことがあるが、ガイド嬢の説明が面白かった。寺の井戸が金沢城に続く抜け道になっているとか、掛け軸の裏にある隠し扉、床板を外すと現れる隠し階段など凝った仕掛け。外観は2階建てのように見えるが、実際は7層構造で階段が29もある迷路になっている。海外でも忍者ブームで、忍者の装いをした子供をともなったインバウンド観光の家族連れを見かけたりする。

   能登の和倉温泉、老舗旅館「加賀屋」もあさって27日から休業に入ると報じられている(25日付・北陸中日新聞)。県内のグループ合わせて5館で27日以降の予約受付を停止する。大型連休に営業すると、客が来るので人の流れをつくってしまう。これは人の流れを最小化する政府方針に逆行することにもなり、感染防止に協力するかたちで予約をストップする。加賀屋は「もてなし」の質の高さに定評があり、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(主催・旅行新聞新社)で36年連続総合1位に輝いている。

   石川県内の感染者はきのう現在で222人となった(県発表)。人口10万人当たり感染者は石川県19.6人と、東京都26.8人に次いで多く、大阪府16.0人と続く(25日付・北國新聞)。妙立寺の近くに「コロナに負けるな!」と記されたのぼり旗が立ててあった=写真・下=。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が今月16日に7都府県から全国に拡大され、石川県は「特定警戒県」に指定された。耐え忍んで邪気を払う。県内はまさにそんな雰囲気だ。

⇒25日(土)午後・金沢の天気   はれ

☆コロナ的な常識 胃カメラは鼻から入れず

☆コロナ的な常識 胃カメラは鼻から入れず

   先日(22日)金沢市内の病院で胃カメラの検査を受けた。胃カメラを口からではなく、鼻から入れてほしいと頼んだ。すると看護師が一瞬身構えるように「当病院では鼻からの内視鏡検査は当面行わないことにしています。鎮静薬を注射して口から入れさていただきます。ご理解をお願いします」と言う。口からだと激しい吐き気をともなうので、これまで何回か左の鼻から入れてもらっていた。「なぜ、鼻からはダメなの」と聞き返した。

   病院では口からの胃カメラのことを「経口内視鏡」、鼻からの胃カメラのことを「経鼻内視鏡」と言っている。鼻からのチューブはやや細い。経口内視鏡は人体の防御反応による激しい吐き気をともなうケースがあり、最近では経鼻内視鏡での検査を希望する人が増えているそうだ。ところが、猛威をふるっている新型コロナウイルスは鼻の奥で多く増殖しているとされ、PCR検査も専用の綿棒を鼻から入れる。では、なぜ鼻から胃カメラを行わないのか。鼻から内視鏡を出し入れすると検査室にウイルスが飛び散る危険性があるというのだ。要は医療従事者への感染を防ぐ措置ではある。「ご理解ください」の意味が分かった。

   鎮静薬を注射して間もなく睡眠状態に入った。「終わりましたよ」の看護師の声で目が覚めた。吐き気も痛みもまったくない。案内された別室のベッドで再び眠りについた。30分ほどで目覚める。鼻の奥にある嗅覚細胞がウイルスに感染することで嗅覚障害が起こるとの説明を思い出し、室内の匂いを意識して嗅いでみる。院内独特の薬品のような匂いがして、鼻は健全だと確認して安心した。

   石川県で初めて新型コロナウイルスの罹患が確認されたのは2月21日のことで、あれから2ヵ月余り経った。罹患した50歳代の男性が前の17日と19 日にこの病院で受診していて、連日この病院のことがメディアで報じられた。それ以来、病院では感染予防に積極的な対応を取っている。検査室前の待ち合いのイスも間隔を空けて座るように工夫がなされている=写真=。

   検査後、医師の問診があった。体温の話をした。というのも、病院に入って内科のカウンターでコロナ感染予防のためと体温計を渡され3回測ったが、いずれも34度後半だったことを伝えた。医師は体調不良がなければ様子を見ましょう、ということになった。最後に「でも、コロナではなさそうですね」と。確かに、このご時世では高体温がむしろ怖い。

   一方で体温が下がると免疫力も低下するとも言われた。そこで、スマホで体を温める食材を調べ、帰りに病院近くのスーパーでキムチを買った。普段そのような思いでキムチを求めたことはない。日常でコロナ対策が常識化しつつある、ということか。

⇒24日(金)朝・金沢の天気    くもり時々あめ  

☆コロナの新学期 学生たちの危機感

☆コロナの新学期 学生たちの危機感

          新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、金沢大学ではきのう危機対策本部会議を開き、4月22日から5月6日まで教職員は原則として在宅勤務とした。学生はすでに登学禁止なっており、履修科目のオンライン登録も20日からようやく始まった。講義は基本的には遠隔講義(リモート)となる。教員も慣れないリモート講義に右往左往の状態ではある。

   「大学クラスター」という言葉もあるように、大学から感染者を出さないためにとくに海外からの留学や旅行から帰国した学生、教員には厳格な対応が求められている。大学からのメールを以下引用する。「1.新型コロナウイルスに感染した者との接触があった学生、教職員等の対応 ⇒ 海外への渡航歴がある学生、教職員ならびに新型コロナウイルスに感染した者との濃厚接触歴がある学生、教職員等は全員14日間自宅待機し、健康チェックシートを記入して必ず健康観察を行ってください。自宅待機中に症状が出た場合は新型肺炎に関する電話相談窓口に速やかに電話連絡の上、医療機関を受診してください」

          逆に、この夏休みを利用して海外に短期留学を計画していた学生たちも計画が狂ってしまった。ある学生の話だと、イギリスに夏季留学を計画しその費用を金沢市内の居酒屋でのアルバイト代で賄おうと頑張っていた。ところが、アルバイト先が今月17日から時間短縮となり、「稼げなくなった」とこぼしていた。

   さらに同情すべきは就活に入った学生だろう。政府が今月7日に緊急事態宣言を発令してから、選考活動そのものを一時停止している企業も多い。「売り手市場」だったこれまでとは状況が一変した。別の学生は、3月下旬に東京のIT企業の説明会に参加を申し込んでいたが中止になった。「ひょっとして就職氷河期がまた来るかも」と学生は顔を曇らせた。

   1980年代のバブル経済が崩壊し、大手金融機関などが破綻した1993年から2005年にかけて、有効求人倍率は13年間「1」 を下回った。これが就職氷河期だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、またその兆候が見え始めた。厚労省が発表したことし2月の有効求人倍率は1.45倍(昨年同期は1.63倍)だった。経済活動が減速原則することを懸念して、企業の採用意欲が急低下している。今回の「1.45」は緊急事態宣言を発令する前の数字だ。しばらくは下がることはあっても上がることはない。どこまで下がるのか。(※写真は金沢大学の掲示板にあった厚労省のポスター)

⇒22日(水)夜・金沢の天気   あめ時々くもり

★続々々・ 「ポスト・コロナ」を読む

★続々々・ 「ポスト・コロナ」を読む

   これも新型コロナウイルスの感染拡大による影響だろう。ガソリン価格の値下がりが続いている。きのう(20日)自宅近くのガソリンスタンドで給油すると1㍑あたり123円(会員価格)だった=写真・上=。2月1日は1㍑141円、3月5日は136円だったので、月あたり10円ほど価格が落ちたことになる。ウイルス感染で政府や行政からの不要不急の外出自粛でリモートワークや「巣ごもり」の生活スタイルが広がっている。金沢の街中でも普段の半分もないくらいの交通量だ。もちろん、これは金沢だけの話ではない。

   ロックダウンによる国内外で人々の出入りが規制され、ガソリン需要は世界的に急減している。20日のニューヨークの原油先物市場で史上初めて価格が1バレル当たりマイナス37㌦になったと、メディア各社が大々的に報じている。需要減で在庫が増えて保管スペースがなくなり、買い手がつかないのだ。売り手がお金を支払って原油を引き取ってもらうという、通常では考えられない事態だ。これを受けて、同日のニューヨーク株式市場のダウの終値は先週末に比べて592㌦値下がり。21日の東京株式も午前の終値を310円下げた。

   パンデミックの需要減、出口の見えないガソリン価格

   ガソリン価格の値下がりで記憶に残るのはリーマンショックだ。2008年12月31日夜に撮影した金沢市内のガソリンスタンドの電飾看板は「レギュラー99円(会員価格)」だった=写真・下=。リーマンショック後に安全通貨として円が買われ、1㌦が90円から87円台まで円高に動いた、このときは「円独歩高」という状態で、輸出企業は苦しんだが、ガソリンのような輸入製品は安価になった。その後も、2010年のユーロ危機で円が買われ1㌦83円に、さらに2011年の東日本大震災で日本の保険会社が支払準備として海外資産を円に換えるとの観測が広がり、円高は1㌦76円へと急激に進んだ。こうした円高でガソリン価格が低迷した時期が長く続き、国内のガソリンスタンドの廃業が相次いだ。

   ところが、今回のようにパンデミックで買い手がつかないマイナス取引となると、国際商品市場での異常事態だけに経済危機のレベル感がこれまでとは異なる。サウジアラビアなど産油国による供給過剰も今回のマーケット崩壊の背景にあるだろう。でも、今回のマイナス取引は果たして石油に限った問題なのだろうか。ポスト・コロナの見えない出口がさらに世界経済への不安を煽る。

⇒21日(火)正午すぎ・金沢の天気      はれ

☆花の命は短くも、コロナは散らず

☆花の命は短くも、コロナは散らず

   このところの雨風で桜吹雪が舞い散り、自家用車に花びらがこびりつく。給油スタンドで洗車すること2回、毎年のことながらようやく桜の季節が終わったと実感した。自宅の庭先には、ヤマシャクヤク(山芍薬)とイチリンソウ(一輪草)が競うように白い花を咲かせている=写真=。

   山芍薬の白い花は丸いボール型に咲く、「抱え咲き」の花である。3日か4日で散ってしまう。花の命が短いだけに、実にけなげで清楚な感じがする。名前の由来の通り、もともと山中に自生している。根は生薬として鎮痛薬として利用される。山の芍薬はかつて乱獲され、今では環境省のレッドリストで準絶滅危惧種に登録されている。花言葉は「恥じらい」「はにかみ」。日陰にそっと咲く。   

   写真手前のイチリンソウ(一輪草)は「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と称されるように、早春に芽を出し、白い花をつけ結実させて、初夏には地上からさっと姿を消す。一瞬に姿を現わし、可憐な花をつける様子が「春の妖精」の由来だろうか。1本の花茎に一つ花をつけるので「一輪草」の名だが、写真のように群生する。ただ、可憐な姿とは裏腹に、有毒でむやみに摘んだりすると皮膚炎を起こしたり、間違って食べたりすると胃腸炎を引き起こす。

   それにしてもなかなか咲かない花が、新型コロナウイルスの対策に伴う給付金だ。当初の「減収世帯へ30万円」から急きょ実施が決まった「1人一律10万円」。花の大きさにたとえると、減収世帯30万円はヤマシャクヤクのようで清楚さを感じたが、一律10万円はイチリンソウのよう。小さな花がたくさん咲いてにぎやかしく思えたが、少々毒があるようで世の中が落ちつかない。

   麻生財務大臣が今月17日の会見で「手を上げた方に1人10万円」と述べ、自己申告制で辞退もできると発言したことで物議をかもした。政府では、住民基本台帳で各家庭に申請書を送り、振込先の口座を書いて返送してもらい、送金となる。ただ、全国民を対象にした給付である以上、いわゆるネットカフェ難民といわれる人たちや、ホームレスの人たちなど住所がない人たちにはどう対処するのか、などの課題もある。

   当たり前のことだが、お金は花のようにきれいに咲かない。花は約束したように季節に咲いてくれるが、お金の約束はなかなかできない。ただ、花の命は短い。

⇒20日(月)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★続々・ 「ポスト・コロナ」を読む

★続々・ 「ポスト・コロナ」を読む

           石川県が新型コロナウイルスの「特定警戒県」に指定されたことを受けて、輪島市の曹洞宗大本山総持寺祖院があす20日から拝観を中止する(総持寺公式ホームページ)。「感染拡大の防止と山内僧侶・職員の健康安全の観点から」と説明している。禅宗の大本山として名をはせた総持寺も「流行り病」には勝てず。拝観中止は、山門などが被災した能登半島地震(2007年3月)以来となる。

   ロボットとAI、濃厚接触を避ける働く現場の未来

   イギリスのBBCニュースWeb版(19日付)に興味深い記事が載っていた。「Coronavirus: Will Covid-19 speed up the use of robots to replace human workers?」。コロナウイルスは労働者を人からロボットに置き換えるスピードを速めるかもしれない。記事は、これまで経済活動でフェイス・ト・フェイスの関係が求められてきたが、パンデミックの感染拡大の中ではむしろsocial-distance(社会的距離)が求められている、その切り札がロボットでありAIになりうるとその背景を説明している。

   記事では具体的に、医療専門家は2021年までに人と人の距離をとる措置を講じる必要があると警告していて、ロボットの医療現場での需要が高まる可能性がある、と紹介している。デンマークの紫外線消毒ロボットの製造会社はすでに数百台のマシンを中国とヨーロッパの病院に出荷している。また、ファーストフードチェーン「マクドナルド」は料理人やサーバーとしてロボットを活用するためのテスト段階に入っている、という。

  ロボットだけではなく、人と同じくらいリアルなAIによるレッスンの提供も可能だ。たとえば、研修会の講師やフィットネストレーナー、財務アドバイザーなども人に代わる人工知能が開発されている。画面上のインストラクターやアドバイザーは、実在の人物である必要はない。実在する人物のように知恵と行動指針をアドバイスしてくれればよい。

   日本でも、緊急事態宣言で「人との接触は最低でも7割減、極力8割減」のソーシャルディスタンスの概念が普及し、テレワークやリモートワークなどといった働き方が随分と広がった。意外なことにこの社会環境が人間にとってより快適だと気付き始めている人も多い。できればこの際、生産や流通、サービスの現場をロボットやAI化にシフトしようとの意識や発想が企業を中心に広がるかもしれない。導入のコストはかかるが、将来的にはコストカットできる。もちろん、懐疑的な見方もさまざまあるが、ポスト・コロナは働く現場の未来をイメージさせてくれる。

⇒19日(日)午後:金沢の天気    くもり時々あめ

☆続・「ポスト・コロナ」を読む

☆続・「ポスト・コロナ」を読む

    前回(17日付)のブログで「国難だからあえて給付を受け取らないという選択肢、あるいは志があってもよい」と書いた。すると、ブログを読んだ知人からさっそくメールがあった。「ということは、宇野さんは志が高いから、10万円を受け取らないんだよね(笑)」と。返答に窮したが、こう返信した。「志は半ばなので10万円は受け取ります。お金は循環させ日本経済の復興に寄与します。その一部は『ふるさと納税』に回し、返礼品に能登牛をお願いすることにします。窮する地方財政と需要減に陥っている畜産農家のお役に立ちたい。肉はすき焼きにして巣ごもり家族の融和をはかります(苦笑)」

   投資より内部留保、有事を想定した日本型経営戦略

   16日付「☆『ポスト・コロナ』の世界を読む」の続き。IMF調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミックと世界経済について厳しいシナリオも描いている。「世界的流行が今年後半に勢いを失わず、感染拡大防止措置が長引き、金融環境が悪化し、グローバルなサプライチェーンがさらに崩壊する可能性もある」(IMF公式ホ-ムページ)

    2008年のリーマンショックはアメリカの投資銀行の破綻がきっかけで連鎖的に世界規模の金融危機が発生し他産業にも波及した構図だ。しかし、今回のパンデミックでは国内外の「鎖国」政策でエアライン、鉄道を始め旅行業、ホテル・旅館業、製造業、地域の飲食店にいたるまでさまざま産業が痛手を被っている。まさにコロナ恐慌だ。

   国際線の9割、国内線の3割を減便を余儀なくされたANAホールディングスが日本政策投資銀行などに1兆3000億円規模の融資枠設定を要請していると報じられた(4月3日付・日経ビジネスWeb版)。定期航空協会のプレスリリース(4月9日付)によると、加盟各社の減収規模はことし2月から5月の4ヵ月間で全体で5000億円が見込まれる、としている。日本の航空業界にとって大打撃だ。ANAが金策に走るのも当然だろう。ところが、ANAの動きに比べ、JALは表立った融資に向けた動きなど報じられていない。

   そこで2019年3月期の有利子負債と利益余剰金(内部留保)を調べてみると理解ができた。ANAは負債7704億円に対し内部留保が5483億円と負債が上回る。JALは負債1368億円に対し内部留保が8225億円もあり、JALは資金調達に余裕があるのだ。ANAは政府目標である訪日4000万人達成に歩調を合わせ、機体を2017年294機から22年335機にするなど積極的に投資を続けてきた。一方、JALは日航機墜落事故(1985年、520人死亡)と経営破綻(2010年、負債2兆3200億円)という2つの十字架を背負い、この10年ひたすら内部留保を増やして財務体質の強化に邁進してきた。

   たとえるなら、ANAはアメリカ型経営、JALは日本型経営、と言えるかもしれない。アメリカ型は内部留保に慎重だ。むしろ、企業の成長戦略として株主への利益還元とさらなる投資を指向する。逆に、日本型は、債務超過に陥ると日本の銀行の融資が受けにくくなるという背景もあるが、今回のパンデミックや震災、あるいは大事故などの有事を想定して内部留保の蓄積を指向する。果たしてポスト・コロナの企業戦略はどうあるべきなのだろうか。

⇒18日(土)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

★一律10万円を受けないという国難の選択肢

★一律10万円を受けないという国難の選択肢

           「国難とも言うべき事態を乗り越えるため、日本全体が一丸となって取り組んでいくしかない」。安倍総理は昨夜午後8時17分から、総理官邸で新型コロナウイルスの対策本部会合を開き、国内のすべての都道府県に緊急事態を宣言した。これによって各県の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となった。期間は5月6日まで。GW中に人の移動を全国一斉に抑える狙いがある。海外のようなロックダウン(都市封鎖)はしない(16日付・共同通信Web版)。

   今回の宣言の柱は2つ。感染者が急増する石川県と北海道、京都府、愛知県など6道府県と7日に発令した東京、大阪など7都府県の合わせて13都道府県を「特定警戒」のエリアと位置づけ、重点的に対策を進める。また、減収となった世帯に限定した30万円の給付金はやめ、所得制限を設けずに全国民に一律10万円を給付することで再調整する。その理由は、緊急事態宣言を全国に拡大することで、行動が制限される全ての国民から協力を得るため、としている。いわば私権制限にともなう協力金のようなカタチだ。

   今回の緊急事態宣言の率直な印象。「卵が先か、ニワトリが先か」の論議ではないが、収入減の理由付けなど手続きがややこしそうだと不評を買っていた30万円給付を一律10万円にシフトさせるために、あえて全国に緊急事態宣言を拡大したのではないかと思えてならない。国内の感染者数にはかなりのばらつきがある。岩手はゼロ、鳥取は1、徳島3、鹿児島4などとなっている。ここに緊急事態宣言の網をかけてもよいものだろうか。

   岩手県庁公式ホームページをチェックすると、石川啄木祭短歌大会(5月3日・盛岡市)や日本ワインフェスティバル花巻大迫2020(5月30、31日・花巻市)といった大型イベントが次々と中止になっている。おそらく、首都圏など県外からの感染者には来てほしくないという防戦の態勢に入っている。緊急事態宣言でさらにそれを徹底できる。

   それにしても10万円を国民1億2595万人(総務省統計・3月1日現在)に一律給付すれば、ざっと12兆5950億円だ。さっそく、麻生財務大臣は、一方的に支給するのではなく「要望される方、手を挙げる方に配る」と述べた(17日付・共同通信Web版)。個人的にはこの案に賛成だ。必要な人、家族が近くの役所に給付を申請すればよい。 国難だからあえて給付を受け取らないという選択肢、あるいは志(こころざし)があってもよい。ただ、国からのマスクは受け取る。

⇒17日(金)午後・金沢の天気   はれ

☆「ポスト・コロナ」を読む

☆「ポスト・コロナ」を読む

   きのうのブログで紹介したIMF発表の世界経済見通しに関する調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミック終息後の世界経済の動きや国際関係について示唆に富んでいる。

            安全性が担保されたツーリズムへの転換

   たとえばこの一文。「今回は影響を免れる国のない、真にグローバルな危機だ。観光業、旅行業、ホスピタリティ産業、娯楽産業などに成長を依存している国々は、とりわけ大きな打撃を受けている。新興市場国と発展途上国はそれ以外の課題にも直面する。比較的脆弱な医療システム、支援策のための財政余地が限られたなかで危機への対応を迫られる一方、世界的にリスク選好が弱まるなかで先例のない額の資本逆流が発生し、通貨圧力にもさらされている。しかも複数の国が、経済成長の停滞と高水準の債務という脆弱な状態で今回の危機に突入した。」(IMF公式ホームページ日本語)

   この現象を自分なり解釈すると、前半は文字通り、観光産業に依存している国や地域はすでに大きな打撃に、そして後半は発展途上国における経済破綻と大量の難民発生の可能性を示唆しているのではないか。「ポスト・コロナ」の現実世界が見えて背筋が寒くなる。

   観光産業が柱の一つである金沢も例外ではない。金沢港に「クルーズターミナル」がこの春完成した=写真=。3階建ての建物で乗船待合室だけでなく、レストランや展望デッキ、会議室、宿泊施設などが入る。石川県が80億円の予算を投じて完成させた「海の玄関口」だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年は54本のクルーズ船が寄港する予定だったが、すでにイギリスやイタリアの客船などキャンセルが相次いでいる。当初4月4日オープンだったが営業開始の目途もたっていない。そもそも、世界旅行というクルーズ船観光の業態そのものが持つのかどうか。

   ただ、人というのは忘れっぽい。ポスト・コロナが定着すれば、抑えられていた旅行熱が再び高まるのではないだろうか。もちろん、そのときは今回の公衆衛生上の教訓が制度化され、より安全が担保されたクルーズ船運航となっていることが前提であることは言うまでもない。

⇒16日(木)午前・金沢の天気     はれ

★コロナ恐慌 経済損失9兆㌦の衝撃

★コロナ恐慌 経済損失9兆㌦の衝撃

   金沢市内のデパートが臨時休業を始めた。正月休みなどと状況が違って、問題は再開の見通しは立っていないということだ。市内中心部の香林坊、日銀金沢支店と道路を隔て向き合っている「香林坊大和」=写真・上、左側の建物=はきのう14日から臨時休業に入った。きょうからはもう一つの市内中心部の武蔵にある「めいてつ・エムザ」が休業に入る=写真・中=。それぞれの地下の食品売り場は時間を短縮して営業を続けるものの、市内の中心部にあるデパートが臨時休業すると、見慣れた繁華街だけに心にぽっかりと穴が開いたような気がする。

   臨時休業は新型コロナウイルスの感染拡大で、13日に石川県が独自の緊急事態宣言を出したことに応じたもの。きのうは金沢市など県内で感染による死者が3人も出て全国ニュースになった。臨時休業の判断は正解かもしれない。

   一方で別の不安がよぎる。金沢は消費経済都市でもある。北陸3県からこれらのデパートや専門店街に買い物に訪れる。金沢だけではなく、国内デパート最大手の三越伊勢丹は首都圏の6店舗を8日から臨時休業している。政府の緊急事態宣言が解除されるまで続く。こうなると、地域の経済は、日本、世界の経済は本当に大丈夫なのかと思いを巡らしてしまう。

   IMFが最新の世界経済見通しを公表した(14日)=写真・下、IMF公式ホームページ=。それによると、2020年の成長率はマイナス3%との予測だ。リーマンショックどころではない。1930年代の大恐慌(Great Depression)以来の最悪の景気後退に陥るとの見方だ。世界が今年中にウイルスの封じ込めに成功し経済活動を再開させることができれば、2021年の世界の成長率はプラス5.8%まで回復する。ただ、事態は楽観できない。経済見通しをまとめたIMF調査局長は「パンデミック危機による2020年から21年の世界GDPの損失は合計約9兆㌦に達する可能性があり、これは日本とドイツのGDPの合計を上回る」(IMF公式ホームページ日本語)と述べている。9兆㌦、日本円にしてざっと965兆円の経済損失だ。

   調査局長はコメントをこのように締めくくっている。「世界がこの危機をともに乗り越えるためには、医師や看護師の方々と同じような勇敢な行動が、世界中の政策当局者にも求められている」(同)と。

  「今頑張っているのは医師と看護師だ、次は経済政策担当者の出番、心して行動せよ。世界経済を死なせてはならぬ」と叫んでいるのだ。IMFも必至だ。

⇒15日(水)朝・金沢の天気    はれ