#文藝春秋

☆高額献金、ミサイル、防衛増税という負のスパイラル

☆高額献金、ミサイル、防衛増税という負のスパイラル

   『週刊文春』(11月10日号)による、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の韓鶴子総裁と教団幹部らが2008年から11年にかけてアメリカ・ラスベガスのカジノを訪れ、日本円に換算して64億円もの金をギャンブルに注ぎ込んで、9億円の損失を出していた疑いとの記事は衝撃的だった。さらに、『文藝春秋』(2023年1月号)の記事は衝撃を超えて怒りがこみ上げてくる。「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」という見出しの記事だ。

   10ページにわたって詳細に経緯が書かれている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が機密解除され、そのコピーを入手した韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。以下、記事の要約。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた。寄贈は現金での手渡しのほかに、旧統一教会がアメリカ・ペンシルベニア州で保有していた不動産の一部を売却し、300万㌦を中国、香港経由で北朝鮮に流れている。

   旧統一教会から北朝鮮に流れた資金はそれだけではない。教会日本本部運営局の2007年の資料では、教会の関連団体を通じて、毎月4000万円から4800万円の資金が北朝鮮に定期的に送金されたと記されている、という。こうした資金が北朝鮮で核やICBMの開発に使われた可能性があると、多くの証言や資料をもとに分析している。

   その一つとして、DIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。   

   旧統一教会は日本で集めた資金を北朝鮮に貢いで、それが北朝鮮からICBMとなって日本に向ってくる。そしていま、日本を騒がせている防衛費増税になっている。「負のスパイラル」とはこのことだ。

⇒14日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆秋の夜長3題~聴く、見る、読む~

☆秋の夜長3題~聴く、見る、読む~

   秋の夜長とはよく言ったものだ。たまにはゆったりと月を眺めて過ごしてみたいと思う気持ちは古今変わらない。昨夜は「ソナタの夕べ」と題したリサイタル=写真・上=を聴きに出かけた。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の第一バイオリンで活躍する原田智子さん、そして、原田さんが敬愛するというピアニスト小林道夫氏を招いて、ピアノとバイオリンのソナタの魅力を披露した。

   モーツァルトのピアノとバイオリンのためのソナタ(K379)、シューベルトのソナチネ第2番、ベートーベンのソナタ第10番の3曲。心に響いたのはベートーベンだった。森の中にいることを思わせる響きで、日光が差したかと思えば、暗闇になり、嵐になり、そして月影が現れ、また日光が差してくる。まるで、ドラマのような流れだった。アンコール曲は同じくベートーベンの「スプリング・ソナタ」。コロナ禍で席は一つ空けての着席。この方がむしろ、演奏者と空間を分け合い、そして音楽を聴きながら自分と対話しているような感覚になって、十分楽しむことができた。

    次の秋の夜長は、まるでベートーベンの「運命」をテレビで見るような感覚だった。10日に放送されたTBSの日曜劇場「日本沈没―希望のひと―」(午後9時)の初回=写真・中=。1973年の小松左京のSF小説が原作。2023年の東京を舞台に内閣府や環境省の官僚、東大の地震学者らが、天才肌の地震学者が唱える巨大地震説を伏せようと画策する。環境省の官僚が海に潜ると、海底の地下からガスが噴き出して空洞に吸い込まれそうになるシーンはリアル感があった。ラストシーンは実際に島が沈むというニュース速報が流れ、騒然となる。

   これまで小説も読み、映画も観たので既視感はあった。さらに、7日夜に首都圏で震度5強の地震があった直後だけに、関東の人たちはこの番組をどのような思いで視聴しているのだろうかなど案じながら見ていた。ビデオリサーチ社によると、初回の世帯平均視聴率は15.8%だった。ドラマを楽しむというより、自分たちの運命はどうなるのだろうという不安心理などがない交ぜになった高視聴率ではなかったか。

   月刊誌「文藝春秋」(11月号)の「財務次官、モノ申す 『このままでは国家財政は破綻する』」=写真・下=を秋の夜長に読んだ。「最近のバラマキ合戦のような政策論を聞いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っているわけにはいかない、ここで言うべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。」との出だし。現職の財務事務次官による、強烈な政治家批判だ。「数十兆円もの大規模な経済対策が謳われ」は岸田総理の自民党総裁選での主張のこと。また、「財政収支黒字化の凍結」は総裁選での高市早苗氏の政策だった。「さらには消費税率の引き下げまでが提案されている」は立憲民主党の枝野代表の公約だ。

 
   読んだ感想だが。財務事務次官の立場からすれば当然だろう。国庫には無尽蔵にお金があるはずがない。財政規律を唱えて当然だ。政治家は選挙を前に必死に財政出動を訴えるものだ。今月31日の衆院選を前に多様な議論があっていいのではないか。
 
⇒13日(水)夜・金沢の天気    くもり時々あめ