#彭帥選手

☆IOC声明 中国との妙な関係性を裏読み

☆IOC声明 中国との妙な関係性を裏読み

   北京オリンピックをはじめとして連日のように「中国」が日本のメディアをにぎわせている。「たかが中国、されど中国、やっぱり中国」と感じたニュースを。北京五輪で中国を訪れているIOCのバッハ会長は、中国の前の副首相から性的関係を迫られたことをSNSで告白したとされるプロ子テニスの彭帥(ペン・シュアイ)選手と5日、夕食をとりながら会談したとIOCが発表した(7日付・NHKニュースWeb版)。新型コロナの感染対策として北京オリンピックの大会関係者が外部の人と接触しないようにしているいわゆるバブル内で、別のIOC委員を含め3人での会食だった。会談で話した内容についても詳しくは言及されていないが、3人はそれぞれオリンピアンとしての経験を話し合ったとしている(同)。

   さっそくIOC公式ホームページをチェックした。サイドの「ニュース」覧に「IOC statement on meeting with Peng Shuai」の見出しで掲載されている=写真=。読んで感じたことは、なぜ3ショットの写真を掲載していないのか、そもそもこの会食はIOC公式ホームページで「声明」として取り上げるべき話題なのだろうか。さらに奇妙に感じたのはこの下りだ。

「In this context, she also shared her intention to travel to Europe when the COVID-19 pandemic is over, and the IOC President invited her to Lausanne to visit the IOC and The Olympic Museum, to continue the conversation on their Olympic experiences. Peng Shuai accepted this invitation.」(意訳:彭選手はパンデミックが治まったらヨーロッパを旅行したいと話題にすると、バッハ会長はスイス・ローザンヌにあるオリンピック博物館に彼女を招待したいと述べ、引き続きIOCとの対話を続けることを提案した。彭選手も承諾した)

   文面を読めば、和やかな雰囲気が伝わってくるのだが、このホームページの記事を読んだ世界の多くの人は、「IOCのバッハ会長はなぜペン・シュアイ選手と会食したり、誘ったりしているのか。彼女がSNSを発信して一時消息が分からなくなっていた。それが問題ではないのか」と勘繰っているに違いない。

   世界ではすでにIOCのバッハ会長は「Baron Von Ripper-off」(ぼったくり男爵)で知られている。IOCは公的な国際組織ではなく、非政府組織 (NGO) の非営利団体 (NPO)で、4年に1回のイベントで得た収入で運営される。収入の73%は放映権料、最上位スポンサーからの協賛金は18%を占める。収入の9割を各国・地域のオリンピック委員会(NOC)や国際競技団体(IF)に分配し、残り1割は運営費。金額で5.7億㌦(2013-16年収入実績)がIOCの手元に残る。なので、バッハ会長はパンデミックになろうと人権侵害・ジェノサイドがあろうと、オリンピックは簡単に中止にはしない。

   以下裏読みだ。IOCと中国の間で「密約」があるのではないか。中国は彭選手をIOC委員として送り込もうとしている。彭選手はオリンピック3回出場(2008年北京、12年ロンドン、16年リオ)のベテラン選手でもあるので、バッハ会長もこれに同意した。オリンピック博物館に彼女を招待するのはその雇用契約のためではないのか。中国側の狙いはバックヤードからIOCをコントロールするためではないか。このように憶測すると話のつじつまが妙に合ってくる。

⇒8日(火)午前・金沢の天気     くもり

★「お先棒担ぎ男爵」IOC会長への厳しい目線

★「お先棒担ぎ男爵」IOC会長への厳しい目線

   前回のブログの続き。 中国の元副首相に性的関係を強要されたとSNSで告発し、その後行方が分からなくなっていた女子テニスの彭帥選手がIOCのバッハ会長とビデオ通話を行ったことについて批判が噴出している。

   ロイター通信(日本語版、22日付)によると、女子テニスのツアーを統括するWTAの広報担当者は「動画で彭選手を確認できたのはよかったが、彼女の健康に問題がないかや、検閲や強制を受けずにコミュニケーションできるかという点についてWTAの懸念を軽減したり、解消したりするものではない」と述べた。IOCとのビデオ通話については「この動画で、彼女の性的暴行疑惑について検閲なしに完全かつ公正で透明な調査を行うという、われわれの要求が変わることはない。それがそもそもの懸念だ」とIOCを批判した。

   BBCニュースWeb版(22日付)も「WTA says concerns remain for Chinese tennis star after IOC call」(22日付・BBC)の記事で、アスリートの声として「IOCが中国当局の悪意のあるプロパガンダと基本的人権と正義に対するケアの欠如に加担している」と紹介している。

   また、NHKニュースWeb版(23日付)は、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は声明を発表し、バッハ会長が彭選手とテレビ電話で対話したと発表したことについて「中国政府のプロパガンダを助長してはならない」と、IOCの対応を批判したと報道している。さらに、テレビ電話の場がどのように経緯で設定されたのかIOCは説明していないと指摘したうえで「IOCは、言論の自由を侵害し、この問題を無視しようとする中国当局と積極的な協力関係に発展した。人権侵害者との関係を重視しているようだ」とのHRWの批判を紹介している。

   そこで、HRWの公式ホームページでこの声明=写真=をチェックすると、中国ではこれまで人権派弁護士やジャーナリスト、ノーベル平和賞受賞者、香港の出版社経営者、実業家らを当局の法に反したとして強制的に失踪していると人権侵害の広がりを指摘している。その上で、IOCに対して以下の要請を行うとしている。「ビデオ電話に関する声明を撤回する」「中国政府の関与の詳細を含め、テレビ電話に致る経緯など公に説明する」「中国政府に対し、彭選手の主張に対する独立した透明な調査を開始する」「中国政府に対し、彭選手が望むなら中国を離れることを許し、中国に残っている家族に報復しないよう強く求める」など。

   HRWのIOCへの要請はまっとうだ。理解しやすい。「一蓮托生」という言葉ある。バッハIOC会長が「お先棒担ぎ男爵」、あるいは「プロパガンダ男爵」として中国とこのまま運命をともにするのか。あるいは、悔い改めて、「ビデオ電話に関する声明を撤回する」のか。この議論はなかなか止まないだろう。北京オリンピックまであと70日余り。

⇒23日(火)夜・金沢の天気      あめ