#弾道ミサイル

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

★国連安保理は機能不全 付け込む弾道ミサイル

   国連安保理が事実上の機能不全に陥っているが、きのう6日朝の北朝鮮の弾道ミサイルの発射はそれに付け込んだかのようなタイミングだった。国連安保理は、北朝鮮が4日に日本列島を通過する中距離弾道ミサイルを発射したことを受けて緊急会合を開いた。その会合の終了間際に、北朝鮮が日本海に向けて発射したのだ(6日付・NHKニュースWeb版)。

   会合そのものも、常任理事国である中国とロシアが「朝鮮半島周辺でアメリカが日本や韓国と軍事演習を行い緊張を高めた結果だ」と反発したことから、アメリカやヨーロッパの各国と一致して安保理決議違反であるとの声明を出すことはできなかった(同)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   そもそも、中国とロシアがなぜ国連安保理の常任理事国なのか。中国の場合。もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れる。アメリカのニクソン大統領の中華人民共和国への訪問が公表され、国際社会がにわかに動いた。1971年10月のいわゆる「アルバニア決議」によって、国連における中国代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。代わって中国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。では、常任理事国として相応しいとする正当性はどこにあったのだろうか。

   ロシアも同じだ。もともと、戦勝国であるソビエトが崩壊した。それを、ロシアが常任理事国として拒否権を持ったまま引き継いでいる。それが、ウクライナ侵攻やウクライナ4州併合という行為があっても国連安保理は機能不全、という現実問題を生み出している。

   解せないもう一つの国連の姿がある。国連憲章(第53、107条)の「敵国条項」だ。日本はいまだに第二次世界大戦の「敵国」だ。ある国を攻撃する場合は国連安保理の承認が必要だが、「敵国」に再侵略の企てがあるとみなせば先制攻撃が可能で、安保理の承認は不要という規定だ。北朝鮮やロシア、中国はいつでも日本に対する先制攻撃が可能なのだ。

   日本人にはある意味で「国連離れ」という現象が起きている。データは少々古いが、アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」は2020年10月、国連の実績について先進14ヵ国で実施した世論調査を発表している。その中で、日本は国連に対する好感度は14ヵ国中で最も低く、「好感を持つ」29%、「好感を持たない」55%だった。

   アメリカでも国連に対する評価は低下している。ピュー・リサーチ・センターがことし6月に発表したアメリカ国内調査では、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

(※写真は、国連安全保障理事会の会議室。バックの壁画はノルウェーの画家ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥」=国連広報センター公式サイト)

⇒7日(金)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆異例の代表質問で議長沈黙 また弾道ミサイルが

☆異例の代表質問で議長沈黙 また弾道ミサイルが

   衆議院の「TVインターネット審議中継」の公式サイトにはライブラリー映像が掲載されている。参院選後で初の国家論戦なので、まさに安倍元総理の国葬や世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)と政治家の関係をめぐる不透明な関係をめぐって、追及する野党側の質問も熱を帯びて、言葉はふさわしくないかもしれないが、まるで「国会ワイドショー」の様相だ。

   きのうの衆院代表質問で立憲民主党の泉代表は、本来ならば岸田総理の所信表明演説に対する質疑となるが、矢面に立ったのは細田議長だった=写真・上=。旧統一教会の関連団体の会合に4回出席し、地元の島根1区で選挙支援を受けたことをA4用紙一枚でまとめ、記者に配布していた(9月29日)。ところが、その後も教団組織票の差配などの証言が次々と出ている。

   泉代表は真後ろの議長席を見上げて、細田議長に異例の質問を浴びせた=写真・下=。「細田議長、あなた自身その中心人物として、4つの会合への出席、関連団体の名誉会長就任、選挙の支持を得ていた、これを認めましたね。今うなずいていただきましたね」

   さらに、「あなたが示した一枚紙では全く説明不足で、もっと真相を語るべきです。議長、答弁していただけませんか。答弁できぬようでしたら、しぐさで答えていただきたい」と。質問は続く。「パーティー券の購入はありませんか。関連イベントの挨拶で『安倍総理にさっそく報告したい』。議長はこのように発言していました。その後の報告は、なされましたか」

   代表質問では議長に対する質疑をもともと想定していないので、細田議長は終始沈黙していた。ただ、臨時国会では物価高・インフレ対策など難問が山積している。重要な国会がこのあり様でよいのか。

   反社会的な宗教団体との関係性を絶つには、税務調査と警察による情報収集で実態解明に着手すること。その上で、問題が露呈すれば非課税などの優遇措置の解除、場合によっては解散命令(宗教法人法第81条)を検討すると総理が有権者に公約すればよい。信頼回復を急ぎ、本来の難問に議論を深めてほしい。 

   きょうも北朝鮮は午前6時と同15分の2回、弾道ミサイルを計2発発射した(6日付・防衛省公式サイト)。2発は飛翔距離が800㌔と推定され、日本のEEZ近く落下した。EEZ内では能登半島から漁船が出て、スルメイカのイカ釣り漁が行われている。北朝鮮の弾道ミサイルから安全操業をどう守るのか、早急に国会で議論してほしい。

⇒6日(木)午前・金沢の天気    くもり

★北朝鮮の挑発的な弾道ミサイル ロシアの終末的な核兵器

★北朝鮮の挑発的な弾道ミサイル ロシアの終末的な核兵器

   強烈なバトルとなるのか。NHKニュースWeb版(5日付)によると、きのう北朝鮮が中距離弾道ミサイル1発を発射したことへの対抗措置として、韓国軍とアメリカ軍はきょう未明に日本海に向けて地対地ミサイル4発を発射した。韓国軍が公開した映像では、移動式発射台から激しい光と煙を伴って発射されたミサイルが上昇していく様子が確認できる。米韓両軍による北朝鮮への対抗措置は、6月5日に短距離弾道ミサイルを8発発射したときも行っている。

   BBCニュースWeb版(5日付)=写真=も「North Korea fires ballistic missile over Japan」の見出しで日本列島を越えた北朝鮮の中距離弾道ミサイルの発射を伝えている。記事では、「Japan issued an alert to some citizens to take cover.」と、日本でのJアラートによる避難勧告の様子も伝えている。

   それにしても、世界の人々がこの北朝鮮の弾道ミサイルのニュースに接してどのような印象を抱いただろうか。日本を含め東アジアは戦争状態になりつつある、と。おそらく、インバウンド観光などへの影響も今度出てくるのではないだろうか。

   ここは終末期のバトルの様相だ。共同通信Web版(5日付)は、イギリスの『タイムズ(The Times)』の記事を引用して、ロシアのプーチン大統領がウクライナとの国境近辺で核実験を計画し、核兵器を使う意志を示そうとしているとの見方があり、NATOは加盟国に警告した、と報じている。その根拠として、ロシア国防省で核兵器の管理を担う秘密部門に関連があるとみられる列車がウクライナ方面に向けて動き出した、と報じている。

   プーチン氏はウクライナ侵攻についてのテレビ演説(9月22日)で、「西側諸国によるロシアへの核の脅威」と述べ、「反撃すべき兵器を多く持っている」「わが国の領土保全が脅かされるとき、ロシアと国民を守るために、ロシアが持つすべての手段を用いる。はったりではない」と発言していた(同日付・BBCニュースWeb版)。

   「はったりではない」とすれば、いよいよ本気だ。核兵器の使用がヒロシマとナガサキに続き現実となるのか。国連安保理が機能しない、混沌とした21世紀を象徴する展開となるのか。

⇒5日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★1週間で4回の弾道ミサイル発射 狙いはどこに

★1週間で4回の弾道ミサイル発射 狙いはどこに

   10月に入った途端にこのニュース。防衛省公式サイトによると、北朝鮮はきょう1日午前6時42分と同58分に平壌近くの半島西岸付近から、計2発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。いずれも最高高度50㌔程度で、飛距離は400㌔程度と350㌔程度と見られ、落下は日本のEEZ外だった。この1週間で4回(25日、28日、29日、1日)合計7発の弾道ミサイルを発射している。この間で行われてきた米韓、あるいは日米韓の合同訓練をけん制する狙いがあるにしても、頻繁だ。何に執着しているのか。

   前回ブログをアップして、ふと気が付いたことがある。防衛省サイトで一連の弾道ミサイルの落下場所(想定)を見ると、核実験がこれまで行われてきた北朝鮮北東部にある豊渓里(プンゲリ)と近い。9月28日に発射された弾道ミイサルは2発。午後6時10分の弾道ミサイルは最高高度約50㌔程度の低い高度で、約350km程度飛翔。午後6時17分の弾道ミサイルも最高高度約50㌔程度の低い高度で、約300㌔程度飛んだとみられる。その発射場所と落下場所を防衛省は略図で示している。落下場所は上の図の豊渓里ととても近いことが見て取れる。

           落下場所は日本海とされているが、それにしても豊渓里と一部重なっているようにも見える。あと3回の弾道ミサイルの落下場所をチェックしても、この豊渓里がある咸鏡北道の沖合になる。韓国の中央日報Web版日本語(29日付)は、28日の弾道ミサイルは2発ともに咸鏡北道吉州郡沖の無人島に向けて発射したと報じている。

   無人島という目標地に確実に着弾するか、弾道ミサイルの精度を試す目的があったのだろうか。以下はあくまでも憶測だが、とすれば、これは単に米韓、あるいは日米韓の合同訓練へのけん制ではなく、攻撃目標を見定めた上での着弾実験ではないか。それにしても、豊渓里と近い。ほかに意図があるのだろうか。見ようによっては、はやく核実験を行えと催促しているようにも読める、のだが。

⇒1日(土)午前・金沢の天気    はれ

☆弾道ミサイルの次は核実験なのか 北朝鮮の思惑は

☆弾道ミサイルの次は核実験なのか 北朝鮮の思惑は

   連日の弾道ミサイルの発射だ。防衛省公式サイトによると、北朝鮮は29日午後8時47分と同53分に平壌近くの半島西岸付近から、計2発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。いずれも最高高度50㌔程度で、300㌔程度飛翔したと見られ、落下は日本のEEZ外だった。前日28日にも午後6時10分と17分に計2発の弾道ミサイルを発射している。

    連日の弾道ミサイルの発射についてメディア各社は、29日にアメリカのハリス副大統領が韓国入りし、尹大統領と会談した後、南北の軍事境界線を挟む非武装地帯(DMZ)を訪れたことから、北朝鮮が強くけん制したと報じている。

   そして、もう一つの理由が、きょう30日に日本海で行われる日米韓3ヵ国の共同訓練へのけん制だ。NHKニュースWeb版(29日付)によると、海上自衛隊の護衛艦1隻、アメリカ海軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」や潜水艦など5隻、韓国海軍の駆逐艦1隻が参加する。訓練は潜水艦を探索・識別・追跡しながら、情報を相互交換する形で行われる。日米韓の海上共同訓練は2017年12月以来となる。

   この対潜水艦の共同訓練は明らかに、北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を想定したものだろう。防衛省サイトによると、北朝鮮は「新型潜水艦発射弾道弾」と称するSLBMをこれまで2021年10月19日と2022年5月7日に2度発射させている。SLBMは変則的な軌道で、低高度(最高高度50㌔程度)を飛ぶため、ミサイル防衛システムによる迎撃は困難とされる。

   日本海側に住む者として、SLBMもさることながら、さらに懸念するのは北朝鮮による核実験だ。IAEAのグロッシ事務局長が警告しているように、北朝鮮北部の豊渓里(プンゲリ)の核実験場の坑道の1つが再び開かれ、核実験の可能性が高くなっている(6月7日付・NHKニュースWeb版)。プンゲリでは2006年10月9日に最初となる核実験が行われ、2017年9月3日までに6回行われている。長崎大学核兵器廃絶研究センター公式サイトによると、6回目のとき、北朝鮮は「ICBMに搭載可能な水爆実験に成功」と発表している。このとき、核実験の地震規模は最大でマグニチュード6.3だった(米国地質調査所)。

   では、核実験はいつ行われるのか。韓国メディアは、10月16日に開催される中国共産党第20回党大会以降から11月8日のアメリカ中間選挙の間に行う可能性が高いと報じている(29日付・ハンギョレ新聞Web版)。ただ、北朝鮮では、「建国以来の大動乱」と称された新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大で国全体が混乱し、農作物の不作で食糧難と飢えがまん延しているとも言われる。このような状況の中でも、最高権力者には核実験を実行するモチベーションがあるのかどうか。

⇒30日(金)午後・金沢の天気    はれ

★「沈黙」の弾道ミサイルまた2発 北朝鮮の狙い

★「沈黙」の弾道ミサイルまた2発 北朝鮮の狙い

   今月25日に続いて、北朝鮮はまた弾道ミサイルを発射した。防衛省公式サイト(28日付)によると、北朝鮮は28日午後6時10分と17分に平壌近くの半島西岸付近から、2発の弾道ミサイルを、東方向に向けて発射した。いずれも落下したのは北朝鮮東岸に近い日本海であり、日本のEEZ外と推定される。弾道ミサイルはいずれも変則軌道で飛翔した可能性がある。

    飛翔距離については以下が記されている。午後6時10分の弾道ミサイルは最高高度約50㌔程度の低い高度で、約350km程度飛翔。午後6時17分の弾道ミサイルも最高高度約50㌔程度の低い高度で、約300㌔程度飛んだとみられる。25日に発射された弾道ミサイルは同じく最高高度約50㌔程度で、飛んだ距離は約400㌔程度だった。

   防衛省サイトで公開されている資料「2019年以降に北朝鮮が発射した弾道ミサイル等」によると、高度と飛距離から、一連の弾道ミサイルは北朝鮮が「極超音速ミサイル」と称しているミサイルと推測できる。ことし1月11日発射した「極超音速ミサイル」は最高高度約50km程度を最大速度約マッハ10で飛翔し、水平機動を含め変則的な軌道で飛翔した可能性がある。飛翔距離は約500㌔だった。「滑空再跳躍し、強い旋回機動」と北朝鮮の発表も記載している。

   防衛省の資料を読んでいて、一つ気が付いたことがある。この「極超音速ミサイル」の飛翔距離が1月11日は500㌔、9月25日は400㌔、そしてきのう28日は350㌔と300㌔だ。つまり、高度が同じでで距離が短縮されているのだ。飛翔距離は「最大射程距離」あるいは「限界射程距離」とも言われる。弾道ミサイルが大きく放物線を描いて到達できる最大の距離のこと。この最大射程距離が短くなれば、それだけ目標が定めやすくなる。

   平壌とソウル市内の距離は世界地図で見ると、およそ200㌔だ。マッハ10でしかも変則軌道の弾道ミサイルは、ミサイル防衛システムによる迎撃は困難とされている。さらに「核兵器の小型化・弾頭化を実現しているとみられる」(防衛省)。北朝鮮の狙いは、「瞬時にして火の海にする」奇襲攻撃の能力の向上を狙っているのかもしれない。

   それにしても、 きのうと今月25日の発射について、労働新聞Web版などをチェックしたが報道されていない。ことし5月4日の弾道サミイル発射以降、北朝鮮の国営メディアは「沈黙」を続けている。むしろ気になる。

(※写真は、北朝鮮が「極超音速ミサイル」と称する新型弾道ミサイル=防衛省公式サイト資料「2019年以降に北朝鮮が発射した弾道ミサイル等」より)

⇒29日(木)午前・金沢の天気    はれ

★1発の弾道ミサイル 北朝鮮の思惑

★1発の弾道ミサイル 北朝鮮の思惑

   北朝鮮が日本海に向けて弾道ミサイルを撃つのは112日ぶりだ。防衛省公式サイト(25日付)によると、北朝鮮はきょう午前6時52分ごろ、内陸部から少なくとも1発の弾道ミサイルを東方向に向けて発射した。最高高度約50㌔程度で、距離は通常の弾道軌道だとすれば、約400㌔程度飛翔し、北朝鮮東側の沿岸付近に落下。日本のEEZ外と推定される。また、弾道ミサイルは変則軌道で飛翔した可能性があり、関連する情報を収集・分析している。

   北朝鮮からの弾道ミサイルはこれを狙ったのかもしれない。共同通信Web版(23日付)によると、日本とアメリカ、韓国の3ヵ国の外務大臣はニューヨークで会談を開き、共同声明を発表。北朝鮮の度重なるミサイル発射を非難し、さらに核実験に踏み切れば、国際社会は毅然と対応すると警告を発した。この声明に反発する意味合いがあったのだろうか。

   もう一つの狙いが想定される。前回6月5日のとき、日本海に向けて立て続けに6発撃っている。今回と前回の共通点がある。アメリカの原子力空母「ロナルド・レーガン」が韓国の釜山に今月23日に入港している。月末から日本海で米韓合同演習に参加する予定だ(25日付・毎日新聞Web版)。前回のときも合同演習が行われ、原子力空母「ロナルド・レーガン」が加わっていた。BBCニュースWeb版(25日付)も「North Korea fires suspected ballistic missile into sea」の見出し=写真=で、合同訓練など最近の韓国とアメリカの緊密な関係に反発していると記している。

   上記の2つの反発から弾道ミサイルを発射したとしても、言葉に語弊はあるかもしれないが、前回の6発に比べ今回の1発は反発の意思表現が少々遠慮がちと思うのは自分だけだろうか。しかも、最高高度約50㌔程度で、約400㌔程度飛翔なので短距離弾道ミサイルのようだ。ただ、防衛省の記述にあるように、「変則軌道で飛翔した可能性」あるとすれば、通常よりも低高度を飛翔し、変則的な軌道で飛翔可能な「極超音速ミサイル」ということも想定される。防衛省の分析を注視している。

   もう一つ注視したいのが、北朝鮮メディアの発表についてだ。きょうの発射は労働新聞Web版などで公表されるだろうか。ことし5月4日に弾道ミサイル発射以降、国営メディアは沈黙を続けている。これまで発射の成功や核・ミサイル能力の開発を大々的に報じてきたのに、この沈黙は一体何を意味するのか。

   あくまでも憶測だ。おそらく、国家自体がデフォルト状態に陥っているのではないか。「建国以来の大動乱」と称された、新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大で国全体がロックダウンとなった。さらに気候変動による農作物の不作で食糧難と飢えがまん延。今もこのような状況下にあるとすれば、国営メディアが弾道ミサイルを報じても、人々は「ミサイルより、食べ物よこせ」とあがき叫ぶだろう。最高権力者はそれを恐れているのではないか。

⇒25日(日)午後・金沢の天気    はれ

☆「9・11」から21年、アメリカの徹底した対テロ戦争

☆「9・11」から21年、アメリカの徹底した対テロ戦争

   きょうは2001年に起きたアメリカでの同時多発テロ事件「9・11」から21年となる。国際テロ組織アルカイダによるテロは現地時間で午前8時46分だった。ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突した。日本でも当初、航空機事故としてテレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」などは生中継で伝えていた。間もなくして、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。世界中の視聴者がテロリズム(terrorism)の目撃者になった瞬間だった。日本人24人を含む2977人が死亡した。

   アメリカは「テロとの戦い(War on Terrorism)」を錦の御旗に掲げ新たな戦いを始める。当時のブッシュ大統領はアフガニスタンで政権を握っていたタリバンが、テロ事件の首謀者とされたオサマ・ビン・ラディンをかくまっていると非難。同年10月にはアメリカが率いる有志連合軍がアフガンへの空爆を始め、タリバン政権は崩壊する。

   テロとの戦いはオバマ大統領に引き継がれ、2011年5月1日、パキスタンのイスラマバードから60㌔ほど離れた、ビン・ラディンの潜伏先をステルスヘリコプターなどで奇襲し殺害。DNA鑑定で本人確認をし、アラビア海で待機していた空母カール・ビンソンに遺体を移送し、海に水葬した。

   ことし7月30日、アメリカはもう一人の首謀者とされていたアイマン・アル・ザワヒリを潜伏先のアフガンのカブール近郊のダウンタウンで、無人攻撃機に搭載した2発のヘルファイアミサイル(空からの対戦車ミサイル)で攻撃し殺害した。ホワイトハウスでの声明で、バイデン大統領は「Now, justice has been delivered and this terrorist leader is no more.」とアルカイダとの戦いの集結を宣言した。

   これで、対テロ戦争は終わったのか。テロリズムはテロ集団と国家だけではなく、国家と国家という図式もアメリカにはある。ブッシュ大統領が「9・11」の翌年2002年の一般教書演説で述べた「悪の枢軸」がこれだ。それ以前からイランやイラク、北朝鮮などを「テロ支援国家」や「ならずもの国家(rogue state)」などと称して敵視してきた。いまでもアメリカではこの認識は根強い。

   では、日本人はこの「9・11」から何を学んだのだろうか。その後も欧米で自爆テロなどが繰り返され、遠巻きながら日本人もテロに恐怖心を抱き、身構えるようになった。JR駅からゴミ箱が撤去されたのはその一例。2017年には北朝鮮による弾道ミサイル発射を警戒した全国瞬時警報システム「Jアラート」が作動するようになった。

   そのJアラートなどを用いた住民避難訓練について、政府は今月から北海道や沖縄県など8道県の10市町村で実施を再開する(今月10日付・時事通信Web版)。2018年6月に米朝首脳会談が行われて以降、緊張緩和が進んだとして政府は実施を見合わせていた。4年ぶりだ。

⇒11日(日)午後・金沢の天気     はれ

★隣国の「武力ハラスメント」に具体策を~参院選まで5日

★隣国の「武力ハラスメント」に具体策を~参院選まで5日

   参院選挙まであと5日、与野党が論戦を繰り広げている。物価高への対策にはボルテージが上がっているようだが、どうしても気になるのは、日本海側などの安全保障環境だ。

   中国軍とロシア軍の爆撃機4機が日本海や東シナ海などで長距離にわたって共同飛行している(5月24日)。そして、ロシアの駆逐艦5隻が日本海など列島を周回し、中国の駆逐艦3隻も日本列島に沿う形で航行するなど不気味な動きを繰り返している。北朝鮮のICBMの連続発射、さらに核実験と新たな核兵器開発も懸念される。隣国のこうした武力ハラスメンにどう対抗していくのか。参院選では防衛費の増額については聞こえてくるが、間近に迫っている危機については具体案が聞こえてこない。

   中でも気になるのが北朝鮮による核実験だ。北朝鮮の北部の日本海側にある豊渓里(プンゲリ)の核実験場では、核実験の準備がすでに進んでいると国際原子力機関の事務局長が発表している(6月6日付・IAEA公式サイト)。いつ核実験を行うのかと世界は注視していた。しかし、いままでのところ音沙汰はない。

   その理由として考えられるのは、核軍拡競争に終止符を打ち核戦争を防止することについて話し合う国連軍縮会議。北朝鮮はこの会議の議長の座にあった。議長は持ち回りの1ヵ月間で就任は5月30日付、6月25日までだった。議長の座にある間はいくらなんでも核実験はしないだろうと自身も読んでいたが、その座を降りてからすでに10日経つ。そろそろ動き出すのではないか。

   前回2017年9月の核実験(6回目、160kiloton=キロトン)では、北朝鮮はICBM用の水爆実験に成功と主張していた。キロトンは原爆や水爆の爆発力を表す単位で用いられ、1キロトンは火薬1000㌧に匹敵する爆発力とされる。その160倍の爆発力だった。これはアメリカが1945年8月、広島に落とした原爆の10倍、そして長崎の8倍に相当するもので、当時、世論は騒然となった。

   再開するであろう北朝鮮の新たな核実験の規模はさらに大型化する可能性もある。そして、核兵器を搭載した弾道ミサイルで日本と韓国を攻撃する軍事力をすでに有している、と考えても不自然ではない。隣国の脅威は着実に高まっているにもかかわらず、政治は具体策を示せないのか。

⇒5日(火)午後・金沢の天気     くもり時々あめ

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

★「針のむしろ」国連軍縮会議の議長国は北朝鮮

        国連の会議がまた大荒れに。NHKニュースWeb版(3日付)によると、国連軍縮会議が2日、スイス・ジュネーブで開かれ、その議長国に北朝鮮が就いた。65ヵ国が参加して核軍縮などについて話し合う軍縮会議は、各国がアルファベット順に毎年6ヵ国が会期中持ち回りで4週ずつ議長国を務めていて、11年ぶりに北朝鮮が議長国となった。

   会議の冒頭、G7を含む48ヵ国を代表してオーストラリアの代表が発言し、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させていることについて「軍縮会議の価値を著しくおとしめる無謀な行動に深い懸念を抱く」と批判。日本の梅津公使参事官も「北朝鮮は大量破壊兵器や弾道ミサイル計画に資金を充てることで、すでに悲惨な人道状況をさらに悪化させている」と非難した。これに対して議長を務める北朝鮮の大使は「いかなる国も他国の政策を批判し、干渉する権利はない」と反発した。また、中国やロシアなどは北朝鮮を擁護する発言を行い、欧米や日本などとの間で非難の応酬となって、実質的な議論は行われなかった(同)。

   軍縮は国連の役割そのものだ。国連憲章は、総会と安全保障理事会の双方に具体的な責任を委託している。そして、軍縮条例をまとめるのが軍縮会議だ。これまで、核兵器不拡散条約(NPT、1968年)、生物兵器禁止条約(BWC、1972年)、化学兵器禁止条約(CWC、1993年)、包括的核実験禁止条約(CTBT、1996年)などの重要な軍縮関連条約を作成。国連総会で採択された。各国による署名と批准で発効するが、CTBTについては核兵器保有国を含む44ヵ国の批准が完了していないため、26年経ったいまでも未発効の状態だ。

   さらに、CTBT以降、軍縮会議は機能不全に陥っている。外務省公式サイト「ジュネーブ軍縮会議の概要」によると、軍縮会議の議題は「核軍備競争停止及び核軍縮」「核戦争防止(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約を想定)」「宇宙における軍備競争の防止」など8つあるものの、実質的交渉や議論をほとんど行っていないのが現状だ。

   条例を作成し、総会で採択されたものの、核保有国などが批准しないため未発効の状態が続いているが、北朝鮮は批准の前段階である署名すらしていない。さらに、ミサイル発射と核実験で国連安保理から制裁措置を受けていても、ICBMの発射を繰り返している。4週間の議長国とは言え、北朝鮮は今後も各国から突き上げられ、針のむしろだろう。

(※写真は、現地時間6月2日にスイス・ジュネーブで開催された国連軍縮会議。天井画はスペインを代表する現代芸術家ミケル・バルセロの作品「Room XX」=国連本部公式サイトより)

⇒3日(金)午後・金沢の天気   くもり時々はれ